ピッグブッチャリング(豚の屠殺)詐欺とは|手口の段階と被害後の手順

ピッグブッチャリング(Pig Butchering)は、SNSやマッチングアプリで知り合った相手が時間をかけて信頼関係を築き、偽の投資サイトやアプリにお金を入れさせる詐欺の呼び名です。日本語では「豚の屠殺」「豚の丸焼き詐欺」とも訳され、国内の統計では主にSNS型ロマンス詐欺やSNS型投資詐欺に含まれます。

このページは、手口の全体像をつかみたい人と、すでにお金を送ってしまった人の両方に向けた総合ガイドです。名前の由来、4つの段階ごとの兆候、国内の被害の規模、送金後に動く順番を順に説明し、細かい論点は個別の記事に案内します。

最初に結論を書いておくと、出金するために税金・手数料・保証金を先に入れるよう言われた段階は、この手口の最終局面で典型的に見られるものです。その時点で追加の入金を止め、記録の保存と相談に切り替えてください。

名前の由来と、別の呼び方

2023年9月8日、米財務省の金融犯罪対策部局FinCENが出した警告(FIN-2023-Alert005)は、この呼び名は屠殺の前に豚を太らせる行為になぞらえたものだと説明しています。架空の人物像や恋愛・友人関係の物語で被害者の信頼を「太らせ」、資産を奪う段階を「屠殺」と呼ぶという意味で、中国語の「殺猪盤(Sha Zhu Pan)」に由来するとされます。同じ警告は、実行役の多くが東南アジアに拠点を置く犯罪組織で、人身取引で連れてこられた人たちに世界中の相手へメッセージを送らせているとも述べています。

これに対しINTERPOLは2024年12月17日の声明で、この呼び名は被害者をおとしめ、名乗り出ることをためらわせるとして、「ロマンス・ベイティング(Romance baiting)」という言い方への切り替えを呼びかけました。当サイトでも、被害に遭った人を責める意図はなく、検索で使われる言葉として「ピッグブッチャリング」を併記しています。

言葉の成り立ちやXで広がった経緯は豚の丸焼き詐欺とは?意味と由来でさらに詳しく取り上げています。

手口の4段階と、それぞれの兆候

1. 接触:偶然を装って知り合う

マッチングアプリ、SNSのDM、「間違えて送った」メッセージなどから始まります。相手は魅力的な写真と安定した職業(投資家、経営者、海外勤務など)を名乗り、早い段階でLINEなど別のアプリに移ろうとします。

2. 育成:毎日のやり取りで信頼を積み上げる

数週間から数か月、朝晩の挨拶や食事の写真、悩み相談を重ねます。恋愛感情を向ける場合もあれば、友人や人生の先輩として接する場合もあります。この段階ではお金の話がほとんど出ないため、疑うきっかけがつかみにくいのが特徴です。

3. 誘導:少額の投資で「成功体験」をさせる

相手が「叔父から教わった方法」「自分が使っているプラットフォーム」として投資を勧め、口座開設や暗号資産の買い方を手取り足取り教えます。最初は少額で、画面上では利益が出ているように見え、小さな額なら出金もできることがあります。

4. 収穫:大きな入金と出金拒否

「今が好機」「期間限定のイベント」と入金額を増やさせた後、出金を申請すると、税金、手数料、口座の凍結解除費用、信用スコアの回復費などを理由に追加の入金を求められます。払っても出金はされず、相手とも連絡が取れなくなります。

各段階の具体例は、恋人役と「先生」が分担する流れ、LINEグループは今どの段階か、お金を出す前に気づける段階別サインでも解説しています。

よく使われる投資の話と、相手のせりふ

勧められる投資の中身は時期によって変わりますが、どれも「普通の人は知らない特別な方法」という形で持ちかけられます。

投資の名目よくあるせりふ確かめたい点
暗号資産の取引・アービトラージ「取引所の価格差で確実に増える」送金先が登録済みの交換業者か
金(ゴールド)・FX「叔父が分析したシグナルに乗るだけ」取引業者が金融庁に登録されているか
流動性マイニング・ステーキング「預けておくだけで毎日配当が出る」運営会社の所在地と、解約・出金のルール
EC店舗の運営・代理店「仕入れ代を出せば売上の差額が入る」仕入れ代の支払先が誰か

編集部の見方では、どの名目でも共通する最大の手がかりは「入金先を相手が指定する」点です。正規の業者なら、口座開設から入金まで利用者自身が公式の手順で進め、知り合った個人から入金先を指示されることは通常ありません。

国内の被害はどのくらいか|警察庁の統計

警察庁が2026年6月5日に公表した令和7年(2025年)の確定値では、次のとおりです。

区分(令和7年)認知件数被害額
SNS型投資詐欺9,523件(前年比+48.5%)約1,288.0億円(同+47.9%)
SNS型ロマンス詐欺5,645件(前年比+47.6%)約546.4億円(同+36.3%)

SNS型ロマンス詐欺のうち、暗号資産を直接送らせる形は2,177件・247.7億円で、前年から件数が約2.8倍になりました。振込で暗号資産を買わせる形と合わせると、実質的に暗号資産で被害金を渡した割合は件数の40.4%、被害額の48.6%に達しています。ピッグブッチャリングの特徴である「暗号資産の投資」が、国内でも被害の中心に移っていることが読み取れます。

2026年上半期の暫定値(7月31日公表)でも、SNS型投資詐欺は5,893件・797.9億円、SNS型ロマンス詐欺は2,509件・246.6億円と高い水準が続いています。SNS型ロマンス詐欺は40代から60代が被害の約8割を占め、最初の接触はダイレクトメッセージが約9割とされています。

お金を入れる前に確かめたいこと

SNSやマッチングアプリで出会った人、著名人を名乗る人からの投資の誘いについては、金融庁も専用のページで注意を促しています。相手が勧める業者が登録されていない場合、その時点で取引を始めないという判断が最も確実な予防策です。

送金してしまった後に動く順番

  1. 追加の入金を止める:出金のための手数料や税金を求められても払いません。払っても出金されない例がほとんどです。
  2. 記録を保存する:相手のプロフィールとID、トーク履歴、投資サイトのURLと画面、入金・送付の記録を、消される前に残します。手順は詐欺の証拠の残し方・保存方法、暗号資産の送付記録は暗号資産詐欺の証拠保全を参照してください。
  3. 支払い方法ごとに連絡する:下の表を目安にします。
  4. 警察に相談する:警察相談専用電話 #9110 か最寄りの警察署へ。被害届の出し方は仮想通貨詐欺で警察に被害届を出す方法にまとめています。
送ったときの手段連絡先と、できる可能性があること
国内の銀行口座への振込振込先の金融機関と警察に連絡し、口座の凍結を依頼。残高があれば振り込め詐欺救済法による分配の対象になりうる
暗号資産を外部アドレスへ送付利用した暗号資産交換業者と警察に連絡。送付先の情報を共有する。救済法の対象外で、取り戻しは難しいことが多い
カード決済で入金したカード会社の窓口に、どのサイトでいつ決済したかを伝えて対応を相談する

送付方法ごとの詳しい動き方は送ったお金はどこへ?送金方法別の対応で解説しています。

被害後に来る「資金回収します」に注意

被害を受けた後、SNSの広告やDMで「ブロックチェーンを追跡して取り戻す」「回収率〇%」と持ちかける連絡が来ることがあります。調査費や手数料を払わせる二次被害の典型です。INTERPOLや各国の警察の名前をかたる例もあります。

返金の交渉を報酬を得て代行できるのは弁護士などの資格者に限られます。相手が本物かどうかは、自分で調べた窓口に確認してください。見分け方は「資金回収します」は信用できる?と返金詐欺・二次被害の手口にまとめています。

家族が巻き込まれているかもしれないとき

本人は相手を恋人や恩人と信じているため、家族が「詐欺だ」と言うほど反発することがあります。スマートフォンを見る時間が急に増えた、預金の引き出しや暗号資産の購入が増えた、知らない投資アプリを入れている、といった変化があれば、責めずに話を聞くところから始めてください。

相手のプロフィール写真を一緒に画像検索する、勧められた業者を金融庁の登録一覧で一緒に調べる、といった「本人が自分で確かめる」手順は、説得より受け入れられやすい傾向があります。Facebookをきっかけにした50〜60代の事例はFacebookで始まる豚の丸焼き詐欺で取り上げています。

相談先に迷う場合は、ロマンス詐欺の相談窓口まとめで警察・188・金融庁の使い分けを確認できます。記録を手元にそろえたうえで相談予約を使っていただくこともできます。どの窓口に何を伝えるかの整理が目的で、返金を約束するものではない点はご了承ください。

よくある質問

Q. ピッグブッチャリングと国際ロマンス詐欺は何が違いますか?

A. 国際ロマンス詐欺は、恋愛感情を利用して送金を求める手口の総称です。ピッグブッチャリングはその中でも、長い時間をかけて信頼を築いた後に偽の投資へお金を入れさせる型を指すことが多く、恋愛ではなく友人関係として近づく場合もあります。

Q. 投資サイトで利益が出ていて、少額なら出金もできました。本物ではないのですか?

A. 少額の出金を認めて信用させ、より大きな入金を促すのはこの手口でよく見られる流れです。出金できた実績は、その業者が正規の事業者である根拠にはなりません。金融庁の登録一覧で業者名を確認してください。

Q. 暗号資産で送ったお金は取り戻せますか?

A. 取り戻せる場合もありますが、難しいことが多いのが実情です。暗号資産の送付は振り込め詐欺救済法の対象外で、送付先が海外の業者や個人のウォレットだと追跡や返還に時間がかかります。まず利用した交換業者と警察に連絡し、送付記録を保存してください。

Q. 「豚の屠殺」という言葉を使うのは失礼ではないですか?

A. INTERPOLは2024年12月、被害者をおとしめる言葉だとして「ロマンス・ベイティング」への言い換えを提案しています。当サイトでは検索で使われる言葉として併記していますが、被害に遭った人を責める意図はありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。