スマホ在宅ワークで先に払うのは普通?LINEグループの勧誘と内職商法の違い

LINEのグループで「スマホだけでできる在宅ワーク」を紹介され、仕事を始める前に登録料・マニュアル代・研修費などを払うよう言われた。それは普通のことなのか、と迷っている人に向けた記事です。

答えを先に書きます。在宅ワークでも、仲介サービスの手数料がかかること自体はあり得ます。ただし、金額や条件が申込み前に書面やウェブで示され、払った後に実際の仕事と報酬の支払日がはっきりしているのが本来の形です。「仕事を紹介するから、その前に商品や講座を買って」という順番なら、特定商取引法で内職商法(業務提供誘引販売取引)として規制される取引に当たる可能性があります。以下で、両者を見分ける物差しを順に説明します。

LINEグループで「仕事の前に」求められやすい支払い

グループに招待されると、管理人やメンバーが「今日は○円になった」「子どもが寝ている間に終わった」と投稿し、しばらくすると個別のトークで次のような支払いを求められる、という相談が各地の消費生活センターに寄せられています。

  • 登録料・会員費:「仕事を受けるための登録」として数千円から数万円
  • マニュアル・テンプレート代:「作業のやり方を書いた資料」として
  • 研修費・サポート費:「最初は先輩が付いて教える」として
  • 保証金・デポジット:「途中でやめない約束」や「報酬の受取枠」として

国民生活センターは2023年10月の発表で、簡単に稼げるとうたう副業について、副業のマニュアルを2万2,000円で買った後にキャンセルしたいという相談や、アフィリエイトの高額プランに約60万円を払ったのに利益が出ないという20代の相談を紹介しています。どれも「仕事」より先に「お金」が出ていく順番になっている点が共通しています。

本来の在宅ワークでは、お金はどう流れるか

厚生労働省は、インターネットを通じて自宅などで仕事を受ける働き方を「自営型テレワーク」と呼び、注文する側と仲介する側が守るべき事項を「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」にまとめています(平成30年2月に改正)。このガイドラインから、本来の在宅ワークの形が読み取れます。

募集の段階で示されるはずの6項目

  1. 注文する仕事の内容
  2. 成果物の納期予定日
  3. 報酬予定額、報酬の支払期日と支払方法
  4. 仕事にかかる諸経費の扱い
  5. 知的財産権(著作権など)の扱い
  6. 募集内容についての問合せ先

ガイドラインは、これらを文書・電子メール・ウェブサイトなどで明示するよう求めています。

手数料がかかる場合の条件

仲介事業者が在宅ワーカーから手数料を取る場合について、ガイドラインは「仲介手数料、登録料、紹介料、システム利用料などの名称を問わず」、額・発生条件・徴収の時期をあらかじめ明示してから徴収するよう定めています。つまり、登録料という名前の支払いがあること自体より、事前に条件が示されているか、後から名目を変えて増えていかないかのほうが見分けの手がかりになります。

報酬の支払日

ガイドラインは、報酬の支払期日を成果物を受け取った日から30日以内、長くても60日以内とするよう示しています。「一定額たまるまで出金できない」「次の段階に上がるまで報酬は保留」という説明は、この考え方と合いません。

仲介サービスを通して仕事を探す場合

クラウドソーシングなどの仲介サービスを使うなら、申込み前に次の3つが公開されているかを見てください。

  • 運営会社の名称・所在地・連絡先が載った会社概要
  • 手数料の率や額、いつ差し引かれるかを書いた料金のページ
  • 仕事ごとに、発注者・作業内容・報酬額が示された募集画面

反対に、仲介サービスの外に連れ出して「詳しくはLINEで」「このグループの中だけの案件」と案内される場合は、上の3つがどれも確かめられないまま話が進みます。在宅ワークを探している人ほど、仕事の中身より先に、誰と契約するのかを確かめる習慣を持つと安全です。

内職商法(業務提供誘引販売取引)とはどういう取引か

法律上の名前は「業務提供誘引販売取引」です(特定商取引法第51条)。仕事をあっせんして収入が得られると持ちかけ、その仕事のために必要だとして商品や役務を買わせ、金銭の負担(特定負担)を伴わせる取引を指します。一般には内職商法やモニター商法と呼ばれます。

都の消費生活情報サイト(東京くらしWEB)では、パソコン入力の仕事で月10万円と勧めて機材を買わせる、情報商材を買えばアフィリエイトで高収入になると勧める、といった例を挙げ、教材費や登録料を払ってもほとんど収入につながらないトラブルを紹介しています。

この取引に当たる場合、事業者には次のような義務があります。

  • 勧誘の前に、事業者名・勧誘の目的・商品の種類を告げる(法第51条の2)
  • 契約前に概要書面、契約後に契約書面を渡す(法第55条)
  • 仕事の内容や収入について、うそを言ったり重要なことを隠したりしない(法第52条)

消費者の側には、書面を受け取った日から数えて20日以内なら理由を問わず契約を解除できるクーリング・オフ(法第58条)があります。日数の数え方や通知の出し方はクーリング・オフの記事で詳しく説明しています。20日を過ぎた後でも、勧誘のときにうその説明をされ、それを事実と信じて契約した場合には取り消せることがあり(法第58条の2)、契約を解除した場合に事業者が請求できる損害賠償の額にも上限が設けられています(法第58条の3)。

スマホだけで完結する作業ならではの見えにくさ

パソコン入力や手作業の内職なら、納めた成果物が手元に記録として残ります。ところが「いいねを押す」「スクリーンショットを送る」といったスマホ上の作業は、何をどれだけ納めたのかを自分で証明しにくく、報酬額の根拠も相手の言い分しかありません。作業の記録が残らない仕事ほど、始める前に報酬の計算方法を文字でもらっておく意味が大きくなります。

並べて比べる:在宅ワークと、注意が必要な勧誘

見る点本来の在宅ワーク注意が必要な勧誘
最初に示されるもの仕事の内容・納期・報酬額と支払日「月○万円」「スキマ時間で」などの収入の話
お金を払う相手と理由仲介サービスの手数料(額と条件は事前に明示)マニュアル・講座・サポートなど、仕事に必要だという商品
払った後仕事を受けるかどうかは自分で選べる次の段階に進むための支払いが続く
報酬の受け取り成果物の納品から一定期間内に振り込まれるアプリ上の残高が増えるだけで、出金に条件が付く
相手の情報会社名・所在地・問合せ先が確認できるLINEのアカウント名しか分からない

表の右側に当てはまる項目が多いほど、契約前に立ち止まったほうがよいと考えてください。とくに「払った後も、次の段階に進むための支払いが続く」形は、業務提供誘引販売取引の枠にも収まらず、最初からお金を集めることが目的になっている可能性があります。

家内労働法が関わる内職もある

厚生労働省のガイドラインは、業者から材料や物品を受け取って製造・加工をする人を「家内労働者」と説明し、家内労働法で委託条件の明示や工賃の支払いが定められていると紹介しています。スマホだけで完結する作業は通常これに当たりませんが、「本物の内職」と比べる物差しの一つになります。

グループで話を聞いている段階で確かめたいこと

まだお金を払っていないなら、次の質問を管理人に投げてみてください。答え方そのものが判断材料になります。

  1. 仕事を注文しているのはどこの会社か。会社名と所在地を教えてほしい
  2. 1件あたりの報酬はいくらで、いつ・どの口座に振り込まれるのか
  3. 最初に払うお金は何の対価で、この先ほかに払うお金はあるのか
  4. 特定商取引法に基づく書面(概要書面)はもらえるか

「みんな始めているから大丈夫」「質問ばかりする人は向いていない」と話をそらされる、グループから外すと言われる、といった反応なら、その時点で抜けてかまいません。グループを抜ける前に、トーク画面・メンバー一覧・管理人のプロフィールを保存しておくと、後で相談するときに役立ちます。

登録料などを払ってしまったら、次にすること

払った金額が小さくても、次の支払いを求められる前に動くほうが被害を広げずに済みます。

  1. これ以上払わない。「今払えば前の分も戻る」という説明は信じないでください。
  2. 書面の有無を確かめる。概要書面や契約書面を受け取っていないなら、クーリング・オフの20日間がまだ始まっていないと考えられる場合があります。
  3. 支払いの記録をまとめる。振込明細、カードの利用明細、決済アプリの履歴を日付順に並べます。
  4. 188に電話する。業務提供誘引販売取引に当たるかどうか、どう通知を出すかを、地域の消費生活センターの相談員と一緒に確かめられます。

相手と連絡が取れない、個人名義の口座に振り込んだ、という場合は、警察(#9110)にも相談してください。窓口の選び方と、話す前の準備は相談先の記事にまとめています。支払い方法別の手続きはこちらを参照してください。

よくある質問

Q. スマホの在宅ワークで登録料を払うのは、すべて違法ですか?

A. すべてが違法というわけではありません。厚生労働省のガイドラインは、仲介事業者が登録料などの手数料を取る場合、額・条件・時期を事前に明示するよう求めています。事前の明示がない、名目を変えて支払いが続く、仕事の内容や報酬の支払日が分からない、という場合は注意してください。

Q. LINEグループで紹介された在宅ワークに、特定商取引法のクーリング・オフは使えますか?

A. 仕事を提供すると誘って、その仕事に必要な商品やサービスを買わせる取引なら、業務提供誘引販売取引に当たり、法定の書面を受け取ってから20日間はクーリング・オフで解除できる可能性があります。当てはまるかどうかは188で相談してください。

Q. マニュアル代は払いましたが、まだ仕事はしていません。今からでも止められますか?

A. 追加の支払いを止めることはすぐにできます。すでに払った分については、書面の受け取り状況や勧誘の説明内容によって解除・取消しの可能性が変わるため、支払いの記録とトーク画面をそろえて消費生活センターに相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。