SNSの恋人に「保釈金」「違約金」「治療費」を頼まれたら|立て替え依頼の見分け方

SNSで知り合い、まだ会ったことのない恋人から「今すぐ立て替えてほしい」と頼まれたら、どんなに切実な事情が書かれていても、その日のうちに送金するのはやめてください。拘束されて保釈金が要る、仕事の契約を解除する違約金が要る、家族が病気で治療費が足りない。こうした「急なトラブル」は、外務省や警察庁がロマンス詐欺の口実として具体的に挙げているものです。

この記事では、投資の勧誘ではなく、相手の身に起きたとされるトラブルを理由にお金を頼まれている人に向けて、よく使われる名目と、それぞれの話のどこに注目すればよいかを整理しました。急かされたときの時間の稼ぎ方、送ってしまった後の手順もあわせて説明します。

投資ではない「立て替え」型のロマンス詐欺

SNS型ロマンス詐欺というと投資の勧誘を思い浮かべる人が多いかもしれません。警察庁も、二人の将来のためなどと言って投資を勧める手口が7割以上を占めると説明しています。裏を返せば、残りは投資以外の名目でお金を求める手口です。

愛知県警察は、SNS型ロマンス詐欺を「投資目的」と「その他のロマンス等名目」に分け、後者を、恋愛感情や親近感を抱かせながら架空の事実を口実にして、さまざまな名目で金銭をだまし取るものと説明しています。立て替えや借金の依頼は、まさにこの「架空の事実」を口実にする形です。話の真偽を確かめる手段が少ないぶん、「本当だったらどうしよう」という気持ちが判断を左右しやすくなります。

投資型と違って、利益が出たように見せる画面もなく、相手を助けたいという気持ちだけで送金が決まるため、周囲から見ても気づきにくいのが特徴です。富山県警察が示すロマンス詐欺の特徴にも、「急なトラブルでお金に困っている」と相談される、という項目が入っています。

公的機関が紹介している「急なトラブル」の口実

外務省の海外安全ホームページと警察庁の特設ページには、実際に使われた口実が具体的に載っています。自分が言われた内容と照らし合わせてみてください。

  • 日本であなたと暮らしたいが、今の仕事の契約を解除するには違約金が必要(外務省)
  • 会いに行く旅費が必要だが、働いている国では大金を持っていないので立て替えてほしい(外務省)
  • 日本へ向かう途中、経由地の警察に拘束されたので保釈金が必要(外務省)
  • 家族が難病なので治療費を送ってほしい(外務省)
  • タイ・ミャンマー国境付近の特殊詐欺の拠点から抜け出すための費用が必要(外務省が最近の手口として紹介)
  • 仕事で必要なお金を立て替えてくれないと、契約違反で警察に捕まり刑務所に入ることになる(警察庁の事例)

警察庁の事例では、英国在住の韓国人を名乗る男性と一度も会わないまま結婚を約束した40代の女性が、この依頼を信じて指定口座に複数回振り込み、合計約500万円をだまし取られています。外務省は、紛争地で軍医や国連関連の仕事をしていると名乗る設定を、これまでの典型的な手口として挙げています。

名目ごとに見る、話のほころび

口実の中身は違っても、確かめるべき点には共通するものがあります。名目ごとに、立ち止まって考えたいポイントを表にしました。

名目相手の説明立ち止まって考えたい点
保釈金・罰金空港や経由地で拘束された拘束中の本人が自由にメッセージを送れるのはなぜか。本人の家族や勤務先ではなく、会ったこともない自分に頼むのはなぜか
違約金・休暇申請費契約を途中でやめるには費用が要る雇用主との契約の費用を、第三者の恋人が個人で払う必要がある理由を説明できるか
治療費・手術費本人や家族が病気・事故で入院した病院への直接の支払いではなく、個人の口座や暗号資産を指定されていないか
旅費・渡航費会いに行くための航空券代が足りない安定した仕事や財産があると話していたのに、航空券代だけが払えない理由
拠点からの脱出費用だまされて海外の拠点に閉じ込められている本当に危険な状況なら、まず現地の日本大使館や警察に助けを求めるはずではないか

どの名目でも、「なぜあなたなのか」という問いにまともな答えが返ってこないことが多いはずです。筆者は、会ったことのない相手に家族や同僚より先に頼られた時点で、その依頼を疑うのが妥当だと考えています。

「今日中に」と急かされたときの時間の稼ぎ方

立て替えの依頼には、ほぼ必ず期限がついています。「明日には手遅れになる」「今夜中に払わないと出国できない」といった言葉で、考える時間を奪うのが狙いです。時間を稼ぐために、次のような対応を試してください。

  1. 返事を保留する一言を決めておく。「今は手元にないので、明日銀行で相談してから返事をする」と伝え、その日は送金しません。
  2. 書類を求める。拘束なら当局の名称と連絡先、治療費なら病院名と請求書、違約金なら雇用主の正式名称。受け取った情報は相手に確認するのではなく、自分で公式の連絡先を調べて問い合わせます。
  3. 誰かに話す。家族や友人に「こういうことを頼まれている」と話すだけで、冷静さを取り戻しやすくなります。
  4. 相談窓口に電話する。警察相談専用電話#9110や消費者ホットライン188で、送金の前に意見を聞きます。

本当に切迫した事情があるなら、公的な機関がその人を助ける仕組みがあります。あなたが一晩考える時間をとったことで失われるものは、ほとんどありません。

立て替えを断るときの伝え方

断ると相手を傷つけるのではないか、関係が終わってしまうのではないかと考えると、なかなか「送れない」と言い出せないものです。けれども、断り方には相手を責めずに済む言い方があります。

  • 「会ったことのない人にお金を送らないと、自分の中で決めている。あなたを疑っているわけではない」
  • 「大きなお金のことは、家族と相談して決めることにしている」
  • 「病院や役所に直接払う形なら考える。個人の口座には送れない」
  • 「落ち着いたら会いに来て。そのときにきちんと話そう」

どれも、相手の話が本当なら受け入れられるはずの提案です。三つ目のように支払先を公的な機関に限る提案をすると、本物のトラブルかどうかがはっきりしやすくなります。これに対して怒り出したり、泣き落としに変わったり、別の人物から催促が来たりしたら、その反応自体を判断材料にしてください。

断ったあとは、やり取りを保存したうえで、しばらく返信の間隔をあけてかまいません。相手の感情に合わせて即答し続けると、また同じ依頼に押し戻されやすくなります。

一度払うと、次の名目がやってくる

「今回だけ」と思って立て替えると、その後に別の名目が続くことが少なくありません。保釈金を払ったら今度は航空券代、航空券代を払ったら空港での手数料、といった具合です。警察庁の事例でも、被害者は複数回にわたって振り込んでいます。

こうなる理由は単純で、相手にとって、一度払ってくれた人は次も払ってくれる可能性が高い相手だからです。「返す」「会ったら全部返す」という約束は、実際に会うまで確かめようがありません。筆者の考えでは、最初の依頼で断るのがもっとも損失の少ない選択です。すでに一度払っているなら、「これまでの分が無駄になる」という気持ちが次の送金を後押しします。その気持ちに気づいたら、これ以上は送らないと決めて、次の手順に進んでください。

送ってしまった後にやること

  1. 送金を止める。追加の依頼には応じず、新しい個人情報も渡さないようにします。
  2. 送金の記録を一覧にする。日付、金額、名目、振込先の口座名義、支払方法を書き出します。
  3. 振込先の金融機関に連絡する。口座が凍結されれば、残っているお金が被害者に分配される手続きの対象になることがあります。詳しくは振り込め詐欺救済法の口座凍結手続きをご覧ください。
  4. 警察に相談する。書き出した一覧とメッセージの記録をそろえ、警察署の窓口か#9110に連絡します。
  5. 「取り戻せる」という連絡に注意する。被害のあとに、返金を手伝うと持ちかけて費用を求める連絡が来ることがあります。

記録の残し方は出会い系詐欺の証拠保全、送金後の手順はロマンス詐欺で送金してしまった場合の返金と対処法も参考にしてください。

本当に困っている人かもしれない、と迷うとき

「もし本当だったら、見捨てることになる」という不安から送金を決める人もいます。その不安をやわらげる方法として、相手が日本人で海外にいると話している場合は、外務省の領事サービスセンター(代表03-3580-3311)や、現地の日本国大使館・総領事館に相談できます。外務省も、こうした状況に接したら一人で抱え込まず、家族や警察、在外公館に相談するよう呼びかけています。

相手が外国人だと話している場合でも、あなたが個人で送金することだけが助ける手段ではありません。本当に拘束や病気で困っているなら、現地の家族、雇用主、公的機関がまず対応するはずです。あなたにできる最善の行動は、送金ではなく、公的な窓口に状況を伝えることだと考えてください。

よくある質問

Q. 病院の請求書や診断書の画像が送られてきました。本物だと思っていいですか?

A. 画像だけでは本物かどうかを判断できません。病院名が書かれているなら、その病院の公式サイトを自分で調べて問い合わせてください。支払先が病院ではなく個人の口座や暗号資産のアドレスになっている場合は、支払わずに相談してください。

Q. 少額の立て替えなら、断らなくても大丈夫ですか?

A. 金額が小さくても、一度応じると次の名目で依頼が続くことが多く見られます。会ったことのない相手の立て替えは、金額にかかわらず断るのが安全です。

Q. 一度も会っていませんが、毎日電話で声を聞いています。それでも疑うべきですか?

A. 警察庁は、翻訳アプリやAIを使えば他人になりすまして音声や動画を作れるため、電話やビデオ通話で仲良くなっても本人ではない可能性があると注意しています。直接会ったことがなければ、お金の依頼には応じないでください。

Q. 「必ず返す」と約束されています。借用書を書いてもらえば安心ですか?

A. 相手の身元や所在が確かめられない以上、借用書があっても返済を求めるのは難しいのが実情です。約束や書面を理由に送金するのは避けてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。