電話でAI自動売買を勧められたら|不招請勧誘の禁止とクーリング・オフ

知らない番号から電話があり、「AIが相場を読んで自動で売買するシステムの無料モニターを募集している」「FXの自動売買で月々の収入を作りませんか」と勧められた。話を聞くうちにツールの購入を約束してしまった、あるいは口座のIDを伝えてしまった。この記事は、そうした状況で次に何をすればよいか知りたい方に向けたものです。

電話による投資の勧誘には、法律がいくつかの歯止めを設けています。登録を受けた業者であっても、FXのような店頭デリバティブ取引を個人に勧める電話を、頼まれてもいないのにかけることは原則として禁じられています(不招請勧誘の禁止)。ツールや情報商材を電話で売る契約なら、特定商取引法の電話勧誘販売として、書面を受け取ってから8日以内のクーリング・オフが使える場合があります。どちらに当たるかは契約の中身で変わるので、以下で順に確かめていきましょう。

電話で届くAI自動売買の勧誘に多い筋書き

電話の勧誘は、相手の顔も資料も見えないまま話が進むのが特徴です。よく聞かれる筋書きを並べると、次のようになります。

  • 「AIの自動売買ソフトを特別価格で提供できるのは今日の電話だけ」と、その場での返事を求める
  • ソフト代とは別に、特定の海外業者での口座開設を指示する
  • 「設定は代わりにやる」と言って、口座のIDとパスワードを聞き出す
  • 「運用を任せる」旨の書面や、英語の委任状への署名を求める
  • 断っても、担当者を変えて何度もかけてくる

この筋書きには裏づけがあります。金融庁が公表している無登録業者の警告一覧には、FXや日経225オプションの自動売買ソフトを買った人が、指定された業者で口座を開くよう指示された、口座のIDとパスワードを知らせるよう求められた、投資判断を他社に任せる「LIMITED POWER OF ATTORNEY」という書面の提出を求められた、口座に残高があるのに出金できない、といった情報が寄せられたと記載されています。

電話の相手が名乗る社名は、途中で変わったり、折り返し先の番号がつながらなかったりすることもあります。最初の電話で聞いた社名と番号は、必ずその場で書き留めておきましょう。

電話口で「ソフトを売っているだけで、運用はお客様ご自身です」と説明されても、実際にはIDを預かって売買している、という形は珍しくありません。その場合、無登録で投資運用をしている疑いが出てきます。

電話勧誘に法律が設けているルール

電話で勧められた内容が「投資の取引や助言そのもの」なのか、「ツールや情報の販売」なのかで、主に使われる法律が変わります。

勧められた内容主な法律電話勧誘についてのルール
FXなどの店頭デリバティブ取引の口座開設・取引金融商品取引法勧誘の要請をしていない顧客に、訪問や電話で勧誘することを禁止(第38条第4号)。個人を相手にする店頭デリバティブ取引が対象(施行令第16条の4)
投資の取引全般金融商品取引法断った人への勧誘の継続(第38条第6号)、断定的判断の提供(同条第2号)、虚偽の告知(同条第1号)を禁止
報酬を取って売買の助言をする契約金融商品取引法投資助言・代理業の登録が必要。登録業者との投資顧問契約には解除のルールがある(次章)
自動売買ソフト・情報商材の販売特定商取引法(電話勧誘販売)事業者名や勧誘目的の明示、断った人への再勧誘の禁止、法定書面の交付、クーリング・オフ

消費者庁の特定商取引法ガイドは、金融商品取引法など他の法律で保護される取引は特定商取引法の適用から外れると説明しています。ソフトの販売と投資の契約が一緒になっているような場合、どちらの法律で考えるかは専門家の判断が要ることもあります。契約書や送られてきた書面を手元に置いて、188に相談するのが近道です。

契約してしまった後、解除に使える制度

電話勧誘販売のクーリング・オフ(8日)

電話で勧誘されて申し込んだ場合は、電話を切ったあとに郵便や電話で申し込んだときも電話勧誘販売に含まれます。期限は8日間で、起算日は事業者から法定の書面を受け取った日です。その期間内なら、はがきなどの書面かメール等の電磁的記録を送ることで、申込みの撤回や契約の解除ができます。書面を受け取っていない、記載が欠けているといった事情があれば、8日を過ぎていても相談してみる価値があります。

投資顧問契約の解除(10日)

金融商品取引法第37条の6は、金融商品取引業者等と結んだ一定の契約について、書面等による解除を認めています。対象は投資顧問契約で、日数は10日です(施行令第16条の3)。解除の効力は、書面を発した時点で生じます。登録を受けた投資助言業者と「AIの売買シグナル配信」などの契約を結んだ場合は、この制度が使えるか確認してください。

通知の出し方

  • はがきや書面なら、両面をコピーしてから、記録の残る方法(特定記録郵便や簡易書留など)で送る
  • 電子メールなど電磁的記録で送る場合は、送信画面と送った内容を保存する
  • クレジットカードで払っているなら、カード会社にも通知の写しを送る

相手が海外の業者や、連絡先がはっきりしない業者の場合、通知を出しても返金に応じない可能性があります。その場合でも、期限内に通知した記録は、後で交渉や相談をするときの材料になります。

電話を受けたときの断り方と、記録の残し方

電話では、はっきり断ることが次の勧誘を止める根拠にもなります。断った人への勧誘の継続や再勧誘は、金融商品取引法でも特定商取引法でも禁じられているからです。

断るときの言い方の例

  • 「投資の勧誘は必要ありません。今後この番号にかけないでください」
  • 「契約するつもりはありません。資料も送らないでください」

「話だけでも」「資料を送るだけ」と言われても、住所やメールアドレスを伝えるとその後の連絡先が増えるだけです。資料が必要なら、会社名を聞いたうえで自分で公式サイトを探すほうが確実です。

理由を説明する必要はありません。「なぜですか」「損をしますよ」と食い下がられても、同じ言葉を繰り返して切ってかまいません。

聞いておくこと、書き留めること

話を続ける前に、次の点を尋ねてメモしてください。答えを渋る相手とは、それ以上話を進めないのが賢明です。

  1. 会社名と担当者名、折り返しの電話番号
  2. 金融商品取引業の登録があるなら登録番号(あとで金融庁の検索と照合する)
  3. 勧められた商品やサービスの名前と金額
  4. 電話がかかってきた日時と、かかってきた番号

着信履歴の画面も保存しておきましょう。録音できる環境があれば、やり取りを残しておくと、言った言わないの争いを避けられます。筆者の考えとしては、初めての電話でその日のうちの決断を求める投資話は、中身を聞く前に断ってよい部類です。

「損を取り戻せる」という別の電話に注意

一度お金を払うと、その情報が別の勧誘に使われることがあります。金融庁が詐欺的商法の疑いが強い勧誘として例示しているものには、被害回復を約束する代わりに別の株や社債の購入を求める誘いや、「金融庁(その他公的機関名)の者ですが」と名乗る連絡が含まれています。金融庁などの職員が、金融商品の取引の勧誘や被害の調査をすることはないとも明記しています。

次のような電話は、それだけで警戒してください。

  • 前に払ったAIソフトの代金を返すので、手数料や保証金を先に払ってほしい
  • あなたの被害を公的機関が調べている、口座の情報を確認したい
  • 別のAIツールに乗り換えれば損を取り戻せる

消費者庁も、被害回復をうたう二次被害への注意を呼びかけています。返金の話が来たら、その電話では何も約束せず、188や#9110に内容を伝えて確かめてください。

支払い方法ごとの連絡先と、相談窓口

  • クレジットカードで払った:カード会社に連絡し、クーリング・オフや解除の通知をしたことを伝える。分割払いやリボ払いにしていれば、販売業者に対して主張できる事情を理由にカード会社への支払いを止める制度(支払停止の抗弁)が使える場合がある
  • 銀行振込で払った:振込先の銀行と警察に連絡する。凍結が間に合えば、救済法の分配手続きの対象になりうる
  • 口座のIDやパスワードを教えた:その証券会社・FX会社の公式サイトに載っている窓口に連絡し、パスワードの変更と不審な取引の確認を頼む

相談窓口は次のとおりです。

  • 消費者ホットライン188:クーリング・オフの通知の書き方、契約の解除や返金交渉
  • #9110(警察の相談専用番号):だまされてお金を払ったかもしれないとき
  • 金融庁 金融サービス利用者相談室:詐欺的な投資の相談ダイヤル(0570-050588)で、相手が登録業者かどうかの確認や情報提供ができる

電話以外の経路で勧誘された場合との違いはAIトレード自動売買詐欺の対処法、ツールで損失が出たときの考え方はFX自動売買ツールで損失が出た場合の相談先と対処法にまとめています。警察に行く前の準備は暗号資産詐欺を警察に相談する際の準備も参考になります。

よくある質問

Q. 登録番号を名乗る業者からAI自動売買の電話が来ました。登録業者なら安心ですか?

A. 登録業者であっても、個人にFXなどの店頭デリバティブ取引を頼まれていないのに電話で勧めることは原則禁止です。また、実在の業者の名前や番号をかたる例もあります。金融庁の金融事業者一括検索で照合し、公式サイトに載っている番号へ自分からかけ直して確かめてください。

Q. 電話で「買います」と口頭で言っただけです。契約は成立していますか?

A. 口頭でも契約が成立したと扱われることがあります。電話勧誘販売に当たるなら、クーリング・オフの8日間は書面の受領日から数え始めます。書面が届いたら日付を控え、早めに188に相談してください。

Q. 設定のためと言われて、FX口座のIDとパスワードを教えてしまいました。

A. すぐにその口座のパスワードを変更し、口座を開いている会社の公式窓口に連絡して不審な取引がないか確認してください。取引の判断を他人に任せる形になっていた場合、無登録の運用にあたる疑いがあるので、金融庁の相談室にも情報を寄せてください。

Q. クーリング・オフの8日を過ぎてしまいました。もう解約できませんか?

A. 書面が交付されていない、記載が不十分、うそを告げられたなどの事情があれば、期間を過ぎても解除や取消しを主張できる場合があります。契約書面と通話のメモを持って188に相談してください。結果は個別の事情によります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。