マッチングアプリの相手がAI自動売買を勧めてきたら|利益画面の見方と送金前の確認

マッチングアプリで知り合い、LINEに移ってやり取りを続けている相手から、「AIが24時間自動で売買してくれるから、私は見ているだけで増えている」と運用画面のスクリーンショットを見せられた。口座を作れば一緒に始められると言われ、迷っている。この記事は、そうした状況にいる方と、すでに少額を入れてしまった方に向けて書いています。

最初に結論を書きます。アプリで出会った相手に言われるまま投資を始めないこと。国民生活センターも、出会いの場で知り合った人の指示による投資はやめるよう求めています。相手が見せてくる「AIの利益画面」は、その投資が実在することの証明にはなりません。迷っている段階なら、次の3つを先に済ませてください。

  1. 入金・送金はいったん保留し、相手には「会ってから考える」とだけ伝える
  2. 相手のプロフィール、LINEのID、投資の話が出たトークを画面ごと保存する
  3. 勧められたサービス名と入金先の名義を控え、金融庁の登録業者検索で調べる

送金してしまった後の動き方は、後半で支払い方法ごとにまとめています。

マッチングアプリから「AIに任せる投資」の話になるまで

令和7年の確定値として警察庁が公表した数字を見ると、恋愛感情を利用したSNS型の詐欺は1年で5,645件起き、被害は546.4億円に達しています。最初の接点になったツールの内訳ではマッチングアプリが1,846件と全体の32.7%を占めて首位で、被害に遭った時点の連絡ツールはLINEが5,294件(93.8%)を占めています。アプリで出会い、LINEに移ってからお金の話が始まる、という順番が数字にも表れています。

国民生活センターが相談事例から整理した流れは、おおむね次のとおりです。

  1. マッチングが成立し、会う前にアプリ外の連絡手段へ移ろうと持ちかけられる
  2. 相手が投資サイトやアプリを案内し、始めるよう勧める
  3. 最初は少額で、画面上では利益が出る
  4. もっと増やそうと高額の入金を勧められる
  5. 出金しようとすると、手数料や税金などの名目で追加の送金を求められる
  6. 相手とも運営とも連絡が取れなくなる

「AI」が出てくる場合、2の段階で「自分で相場を読む必要はない」「設定だけしておけばAIが勝手に取引する」と説明されることが多く、投資経験のない人にも始めやすそうに見せる役割を果たしています。国民生活センターのチェックリストには、相手の特徴として「暗号資産やFXでもうけている」「副業で投資をやっている」、誘い文句として結婚資金を一緒に貯めよう、将来のために二人で資産運用しよう、という趣旨の言葉が並んでいます。AIという言葉が加わっても、話の骨組みは同じです。

見せられる「AIの利益画面」が判断材料にならない理由

相手が送ってくる運用画面や、自分のスマホに入れたアプリの残高表示は、信じてしまう一番の理由になりがちです。しかし金融庁は、証券口座を装ったスマホアプリが使われる事例として、振り込んだ額と同額が入金されたように残高が表示される、利益が出ているかのように装う、最初のうちは出金できるがまとまった金額を出そうとすると断られる、といった特徴を挙げています。

見せられるものそこから分かること分からないこと
相手の運用画面のスクリーンショット画面の画像が存在することその数字が実際の取引の結果かどうか
自分のアプリに表示される残高や利益運営側がその数字を表示していることそのお金が本当に保管・運用されているか
数万円の出金ができた運営が少額の支払いに応じたこと大きな金額を出金できるか、運営が登録業者か
「AIの勝率」「月利」の説明相手がそう説明していること第三者が検証した成績かどうか

国民生活センターの相談事例には、SNSで知り合った相手に勧められて暗号資産を投資サイトへ送り、利益の一部を出金できたので信用して40万円相当を追加したところ、出金時に「12%の税金」として約86万円の支払いを求められた、というものがあります。少額の出金が通ることは、安心材料ではなく、次の入金を促す段階だと考えておくほうが安全です。

相手との関係を保ったまま確かめられる4つのこと

いきなり「詐欺でしょう」と問い詰める必要はありません。次の4つは、相手に聞かなくても自分で確かめられます。

1. 勧められたサービスを運営する業者が登録を受けているか

暗号資産の売買や交換を扱う業者は暗号資産交換業の登録が、FXなどを扱う業者は金融商品取引業の登録が必要です。金融庁の「金融事業者一括検索」に、アプリやサイトに書かれた会社名や電話番号を入れて検索してください。会社名がどこにも書かれていない時点で、取引の相手としては不十分です。

2. 入金先が個人名義の口座になっていないか

消費者庁は、投資資金の振込先として個人名義の口座を指定されたら、それを詐欺と位置づけて振り込まないよう呼びかけています。金融庁も、入金の際に証券会社が個人名義の銀行口座を指定することはないと明記しています。

3. 国内の取引所で買った暗号資産を、外部のアドレスへ送るよう指示されていないか

「国内の取引所で暗号資産を買い、AIのプラットフォームのアドレスに送って」という指示は、よく見られる形です。国内の取引所が登録業者でも、送り先のプラットフォームが登録業者とは限りません。いったん送った暗号資産は、取引所に頼んでも取り消せないと考えてください。

4. 会う予定より先に、お金の話が出ていないか

一度も会っていないのに投資の話が具体的になっているなら、その順番自体が警戒のサインです。筆者の考えとしては、投資の話が出た時点で「会って話してから決めたい」と返し、それでも急かしてくるかどうかで判断するのが、関係を壊さずに済むいちばん穏やかな確かめ方です。急かす理由として「AIの枠が今日までしか空いていない」などと言われたら、そこで止めてください。

アプリ運営への通報と、相手の情報を残す順番

通報やブロックの前に、証拠を残してください。相手がアプリを退会するとプロフィールは見られなくなり、LINEのアカウントも消されることがあります。

  1. マッチングアプリの画面を保存する:相手のニックネーム、年齢、写真、自己紹介、マッチングした日、アプリ内のメッセージ全体
  2. LINEの情報を保存する:相手のLINE名とID、アイコン、投資の話が出たトーク(日付が入るように)、送られてきた運用画面の画像やURL
  3. 投資サービスの情報を保存する:サイトのURL、アプリ名、ログイン後の残高画面、入金指示の画面、入金先の口座番号や暗号資産のアドレス
  4. アプリ運営へ通報する:アプリ内の通報機能から、金銭や投資の勧誘を受けたことを伝える

運営への通報は、同じ相手からほかの利用者が被害を受けるのを防ぐためのものです。支払ったお金の返金手続きではない点は理解しておいてください。国民生活センターは、マッチングアプリ等は規約などのルールに従って使うよう呼びかけています。アプリによっては会員同士の金銭の要求や勧誘行為を規約で禁止しています。該当する条項があれば、その箇所も画面に残しておくと、相談のときに説明しやすくなります。

保存したデータのまとめ方は証拠の残し方で詳しく説明しています。

送金してしまった後、支払い方法ごとの動き方

送金した後は、早く動くほど選べる手段が残ります。追加の入金はどんな名目でも止めてから、次の順で進めてください。

銀行振込(ネットバンキングを含む)

振込元の自分の銀行と、振込先の銀行の両方に連絡し、詐欺の疑いで振り込んだことを伝えます。あわせて警察にも届けてください。相手の口座が凍結まで進めば、振り込め詐欺救済法にもとづき、凍結時点の残高を被害者で分け合う手続きが始まることがあります。対象口座と申請期間は預金保険機構のサイトで公告されます。残高がほとんど残っていなければ、戻る額もその分だけ小さくなります。

暗号資産で送った場合

送金に使った国内の取引所の履歴(日時、数量、送り先アドレス、トランザクションID)を保存し、取引所の問い合わせ窓口と警察に伝えます。警察庁の統計では、SNS型ロマンス詐欺のうち暗号資産を送信させる形の被害が2,177件と前年の約2.8倍に増えました。送り先が海外のプラットフォームだと追跡は難しく、取り戻せる見込みは低いと考えておく必要があります。記録の残し方は暗号資産詐欺の証拠の残し方を参考にしてください。

出金のために「税金」「手数料」を求められている場合

払えば出金できるという保証はありません。国民生活センターの事例では、保証金として総資産の15%を求められ、追加で借り入れまでした後に連絡が途絶えています。この名目の特徴は「税金を払えば出金できる」という要求の特徴にまとめています。

「取り戻してあげる」と連絡してくる業者や個人にも注意してください。消費者庁は、被害回復をうたう二次被害にも注意を呼びかけています。

相談先と、相談の前にまとめておくもの

  • 警察相談専用電話 #9110、または最寄りの警察署:送金してしまった、相手と連絡が取れない
  • 消費者ホットライン 188:投資サービスやアプリとの契約、退会、返金の交渉について
  • 金融庁 金融サービス利用者相談室「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」0570-050588(平日10時〜17時、IP電話は03-6206-6066):勧められた業者が登録業者か、無登録の疑いがあるか

窓口に連絡する前に、手元で次の4点を用意しておくと、状況を一度で伝えやすくなります。

  • アプリで出会った日、LINEに移った日、投資を勧められた日、入金した日を並べた時系列のメモ
  • 入金ごとの日付・金額・入金先(口座名義や暗号資産アドレス)の一覧
  • 前の章で保存した画面一式
  • 借り入れをした場合は、その契約内容

恋愛と投資が組み合わさった手口の全体像はマッチングアプリで投資を勧められたら、AI自動売買をうたう勧誘の経路別の違いはAIトレード自動売買詐欺の対処法で確認できます。専門家への相談を考えている方は相談予約のページもご覧ください。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手に勧められたAI自動売買で、少額の出金ができました。本物ではないのですか?

A. 少額の出金ができたことは、そのサービスが登録を受けた正規の業者である証明にはなりません。金融庁は、最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出そうとすると断られる事例を挙げています。追加の入金は止め、運営会社名を金融庁の登録業者検索で確かめてください。

Q. AI自動売買のアプリがアプリストアで配信されていれば安全ですか?

A. ストアで配信されていることは、金融庁の登録を受けていることを意味しません。金融庁は、証券口座を装ったスマホアプリや、既存の証券会社に似せた名称のアプリが使われる事例を公表しています。アプリ名ではなく、運営会社名と登録の有無で判断してください。

Q. 投資をやめたいと伝えたら、相手の態度が急に冷たくなりました。

A. 態度の変化は、関係がお金を目的にしていた可能性を示す手がかりの一つです。引き止めのために「あと一回だけ」と入金を求められても応じず、やり取りを保存したうえで、#9110や188に状況を話してください。

Q. マッチングアプリの運営に通報すれば、払ったお金は返ってきますか?

A. 運営への通報は、相手のアカウントへの対応やほかの利用者の保護のためのもので、支払ったお金の返金手続きではありません。お金の取り戻しについては、振込先の銀行への連絡や警察への相談を並行して進めてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。