振り込め詐欺救済法の分配金を申請する手順|公告の探し方・申請書・受け取りまで

詐欺で振り込んだ先の口座を、銀行に連絡して止めてもらった。けれど、その後どうすればお金が戻るのか、いつ何が届くのかがわからない。この記事は、口座凍結の依頼を済ませた方、またはこれから依頼する方が、振り込め詐欺救済法の「被害回復分配金」を実際に受け取るまでの手順を知るためのものです。

最初に押さえておきたいのは、口座が凍結されただけでは、お金は戻ってこないという点です。支払手続が始まった旨の公告が出た後、決められた申請期間(公告の翌日から30日以上)のうちに、振込先の金融機関へ申請書を出す必要があります。期間を過ぎると、この法律による分配金は受け取れません。

預金保険機構の公表では、2026年度に入ってから8月17日公表分までに支払手続が終わった口座の残高(消滅預金等債権)は合計約38.8億円、そのうち被害者に支払われた総額は約32.2億円でした。残りの約6.7億円は預金保険機構に納付される予定の額です。戻る可能性のあるお金を確実に受け取るために、流れを順に見ていきましょう。

凍結から支払いまでの3つの段階と、かかる期間

振り込め詐欺救済法の手続きは、大きく3つに分かれます。

段階何が起きるか期間の目安
1. 取引停止警察や被害者からの連絡を受け、金融機関が振込先口座の取引を止める連絡後すぐ
2. 債権消滅手続預金保険機構が口座の情報を公告し、名義人が権利を主張しなければ預金の権利が消える届出期間は公告の翌日から60日以上
3. 支払手続支払手続開始の公告が出て、被害者が申請し、金融機関が支払額を決めて振り込む申請期間は公告の翌日から30日以上

全国銀行協会は、2と3の期間を合わせると支払手続までに少なくとも90日以上かかると説明しています。金融庁は、実際に支払いを受けられるまでに少なくとも半年以上かかるのが一般的としています。公告は原則として毎月1日と16日の月2回です。

筆者が強調したいのは、1の段階で被害を申し出た人には、支払手続のときに金融機関から個別に連絡が来るという点です。金融庁のQ&Aもそう説明しています。反対に、振込先の金融機関へ連絡していない人は、自分で公告を探し続けなければなりません。まだ連絡していなければ、今日のうちに済ませてください。

自分の振込先が公告されているか調べる

公告の掲載先は、預金保険機構が運営する専用のサイトです。調べ方は2通りあります。

  • 口座番号で検索する:トップページの口座番号欄に、半角数字8桁以下で入力します。ゆうちょ銀行の場合は通帳番号を使います。
  • 名義人の氏名などで詳細検索する:口座番号がわからない場合は、「詳細検索」から名義人の氏名や名称で探せます。公告一覧から年度と回数を選んでたどる方法もあります。

公告には、金融機関と店舗、預金の種別、口座番号、名義人の氏名、対象となる預金の額、届出や申請の期間などが載ります。つまり、凍結された時点でその口座にいくら残っていたかが、ここで初めてわかります。

見つからないからといって、対象外と決まったわけではありません。預金保険機構のQ&Aは、金融機関が公告の準備が整った口座から順に依頼するため、連絡から公告まで時間がかかると説明しています。進み具合や自分の口座の公告予定は、振込先の金融機関に問い合わせるのが確実です。預金保険機構は公告前の残高などの情報を持っていないため、問い合わせても答えられないとしています。

申請書(様式第一号)の書き方

申請に使うのは「被害回復分配金支払申請書」(様式第一号)です。金融庁と預金保険機構のサイトからPDFとExcelで入手できます。金融庁のQ&A資料にある記載例をもとに、つまずきやすい欄を整理します。

  1. 申請人情報:氏名、住所、電話番号、生年月日を書きます。
  2. 代理人情報:弁護士などの代理人が申請する場合だけ記入します。自分で申請するなら空欄です。
  3. 公告番号:支払対象の口座ごとに付けられた12桁の番号を、預金保険機構の公告で確かめて写します。
  4. 振込先の口座名義人:犯人の名前や団体名がわかる場合は、あわせて書きます。
  5. 被害額と内訳:振込金額の合計と、振込みごとの年月日・金額を並べます。
  6. 被害にあった状況:犯人からの連絡方法(電話、メール、SNSなど)、振り込んだお金の名目、振り込んだ結果、警察への被害届の有無と受理番号を、できるだけ具体的に書きます。

状況欄は、金融機関があなたを「対象被害者」と判断する材料になります。筆者は、最初の接触から振込までを日付つきの箇条書きにしてから清書するやり方を勧めます。被害届の受理番号は、警察に届け出たときに控えておくと、この欄でそのまま使えます。

(書き方の一例・架空の事例)
・5月10日 SNSのダイレクトメッセージで投資の勉強会に誘われる
・5月14日 LINEに移り、「講師のアシスタント」を名乗る人物から入金を勧められる
・5月20日、27日 指示された個人名義の口座へATMから計2回振り込む(名目は「運用資金」)
・6月3日 出金を求めると「手数料が必要」と言われ、詐欺に気づく。6月4日に○○警察署へ被害届(受理番号○○)

このように日付と出来事を一行ずつ並べると、読む側も経緯をつかみやすくなります。

添付する書類と、提出のしかた

申請書には、次の資料を添えます。細かな点は申請先の金融機関に確かめてください。

  • 本人確認資料:申請日に有効な運転免許証など。法人の場合は登記事項証明書と、申請日前6か月以内に作られた印鑑登録証明書など
  • 被害者であることを示す資料:振込明細書の写しなど
  • 代理人が申請する場合:代理権を証する資料

振込明細書をなくしていても申請はできます。その場合は、振込の内容を金融機関に十分に説明する必要があります。ネットバンキングで振り込んだなら、取引履歴の画面を印刷しておくと説明の助けになります。

提出先は、振込先の金融機関です。持参か郵送で出します。振込みに使った自分の金融機関に出して、振込先へ取り次いでもらうこともできます。申請手数料はかかりません。

分配額の決まり方と、受け取るまで

分配金の原資は、凍結された口座に残っていたお金です。被害者が1人で、振り込んだ額がそのまま残っていれば全額が支払われる見込みです。一方、申請された被害額の合計が残高を超えるときは、残高を各人の被害額に応じて按分します。

金融庁が示している按分の例

被害者が3人(Aさん50万円、Bさん150万円、Cさん300万円)で、口座に300万円が残っていた例です。Aさんが申請しなかった場合、BさんとCさんの被害額450万円で300万円を分けることになり、Bさんに100万円、Cさんに200万円が支払われます。申請しなかったAさんには支払いがありません。

この例が示すのは、分配は申請した人の間でだけ行われるということです。冒頭で紹介した約6.7億円の納付予定額には、申請がなかった分なども含まれていると考えられます。受け取れるはずのお金を取りこぼさないためにも、申請期間は必ず確認してください。

決定後の流れ

  • 支払額は、支払手続のときに個別に連絡されるほか、金融機関の「決定表」に記載されます
  • 決定表は、閲覧請求書(様式第四号)と本人確認資料を出せば閲覧できます。写しを取ることはできません
  • 分配金は、基本的に口座への振込みで支払われます
  • 支払われた分配金は、課税の対象になりません
  • 分配金を受け取ると、犯人への損害賠償請求権などは、受け取った額の分だけ消えます

口座の残高が1,000円未満だった場合は、支払手続そのものが行われません。

申請期間を逃さないために、しておくこと

  • 振込先の金融機関に連絡先を伝えておく:引っ越しや電話番号の変更があれば、変更の届出書と資料を出します。個別の連絡が届かないと、申請期間に気づけません。
  • 公告の検索結果を保存する:自分の口座が載った公告の画面を保存し、申請期間の終わりの日をカレンダーに書き込みます。
  • 家族にも手続きのことを伝えておく:支払いの決定前に被害者が亡くなった場合でも、相続人が承継を示す書類を出せば、分配金を受けられる可能性があります。決定後であれば、様式第五号の届出書を使います。

「救済法で返金します」という連絡に注意

預金保険機構は、救済法にもとづく返金制度を装った詐欺や、機構の職員を名乗る勧誘について、何度も注意を呼びかけてきました。救済法の手続きで被害者が費用を払うことはありません。「手数料を払えば優先的に分配される」といった話が来たら、振込先の金融機関か警察に確かめてください。

凍結を依頼する最初の段階は口座凍結申請の手順、全体の流れは口座凍結申請の流れで説明しています。口座にお金が残っていなかった場合など、この制度で戻らないケースは救済法で戻らないときの手段にまとめました。

よくある質問

Q. 被害回復分配金の申請に費用はかかりますか?

A. かかりません。金融庁のQ&Aは、申請手数料等はとられないと説明しています。手数料や保証金を求める連絡があれば、救済法の手続きではありません。

Q. 振込明細書をなくしてしまいました。申請できますか?

A. 申請はできます。その場合は、振込の日時や金額、経緯を金融機関に十分に説明する必要があります。ネットバンキングの取引履歴や、通帳の記帳がある場合はそれも用意してください。

Q. 申請してから、どのくらいで振り込まれますか?

A. 金融庁は、実際に支払いを受けられるまでに少なくとも半年以上かかるのが一般的だとしています。手続きの進み具合は口座ごとに異なるため、振込先の金融機関に問い合わせてください。

Q. 申請期間を過ぎてしまいました。もう受け取れませんか?

A. 支払申請期間が過ぎると、この法律による分配金は受け取れません。ただし、加害者に対する民事上の請求などを行うことは可能です。弁護士や法テラスに相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。