口座凍結でもお金が戻らないとき|振り込め詐欺救済法の対象外5ケースと次の手段

銀行に連絡して振込先の口座を止めてもらったのに、「残高がほとんど残っていない」と言われた。あるいは、払ったのは現金の手渡しや電子マネー、暗号資産で、そもそも口座凍結の話にならなかった。そんな状況で、もう打つ手はないのかと考えている方に向けた記事です。

振り込め詐欺救済法は、銀行などの預金口座への振込みが使われた詐欺で、凍結の時点で口座に残っていたお金を被害者に分ける制度です。この条件から外れると、救済法では戻りません。警察庁の統計でも、令和7年の特殊詐欺のうち振込型は認知件数の60.7%で、残りは現金の手渡し、キャッシュカードの受け渡し、電子マネー、暗号資産の送信などでした。救済法の外側にいる被害者は、決して少数ではありません。

ただ、救済法が使えないことと、回復の手段がまったくないことは同じではありません。以下で、対象外になる5つのケースと、それぞれの場合に残る手段を順に説明します。

救済法が使えるかどうかを決める4つの条件

条文と預金保険機構・金融庁の説明をもとに、救済法で分配金を受け取るための条件を並べると次のようになります。

  1. 振込みが使われた詐欺等であること:預金保険機構は、特殊詐欺であっても預金口座等への振込みが利用されていない場合は対象にならないと明記しています。
  2. 振込先が法律の定める「金融機関」の口座であること:法律第2条は、銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫などを列挙しています。
  3. 凍結した口座に1,000円以上が残っていること:消滅した預金の額が1,000円未満だと、支払手続は行われません。
  4. 支払申請期間内に申請すること:期間は支払手続開始の公告の翌日から30日以上で、過ぎると受け取れません。

自分の被害がどれに引っかかるかを見れば、次に向かう窓口が決まります。条件を満たしている場合の申請の進め方は、被害回復分配金を申請する手順で詳しく説明しています。

ケース1・2:お金が引き出されていた、または振込ではなかった

ケース1 口座から引き出された後だった

金融庁のQ&Aは、口座から一部が引き出されていれば分配額はそれに応じて減り、残高が1,000円未満なら支払いはないと説明しています。この場合は、犯人に対する民事上の請求などで回復を図るほかない、というのが金融庁の説明です。

ただし、あきらめる前に一つ確かめたいことがあります。法律は、直接の振込先だけでなく、その口座のお金を移すためだけに使われた別の口座で、中身が実質的に同じ資金と認められるものも「犯罪利用預金口座等」に含めています。金融機関は、資金の移し先と疑われる他行の口座があれば、その金融機関へ情報を提供することとされています。振込先の銀行に「移し先の口座も止まっているか」を聞いてみてください。

ケース2 現金、キャッシュカード、電子マネー、暗号資産で渡した

振込みを使っていない被害は救済法の対象外です。警察庁の令和7年の統計では、特殊詐欺の認知件数のうち現金手交型が14.6%、キャッシュカード手交型・窃取型が11.3%、電子マネー型が5.7%を占めました。暗号資産を直接送らされた「暗号資産送信型」も1,243件あり、前年の約10倍に増えています。

このケースでは、警察への被害届がすべての出発点になります。電子マネーなら発行会社に、暗号資産なら送信に使った交換業者に、取引の記録を示して連絡します。まだ使われていない残高を止められる可能性があるため、連絡は早いほど有利です。

ケース3:振込先が銀行ではなく、決済サービスや暗号資産交換業者だった

相手に指定されたのが、スマホ決済アプリの残高や、暗号資産交換業者のアカウントだった場合です。救済法の「金融機関」は第2条で列挙されており、2026年9月にe-Govで確認した条文には、資金移動業者(スマホ決済などの送金サービス)や暗号資産交換業者は含まれていません。

そのため、これらのサービス上の残高は救済法の口座凍結・分配の手続きには乗りません。取れる行動は次のとおりです。

  • 送金に使ったサービスの運営会社に、送金履歴の画面を示して不正利用・詐欺被害として連絡する
  • 相手のアカウント名、ID、送金日時と金額を記録して、警察に届け出る
  • 銀行口座からサービスへチャージした記録も残しておく

警察庁の統計には「暗号資産振込」という区分もあります。振込先が交換業者の口座だったもので、令和7年は628件、被害額80.3億円でした。振込先の名義が交換業者だった場合、入金はすぐに暗号資産の購入に回されている可能性があります。筆者は、この形では銀行口座の凍結より、交換業者に連絡して入金先のアカウントを止めてもらえるかどうかが焦点になると考えています。振込の明細に交換業者の名前が出ていたら、その会社の問い合わせ窓口にも同じ日に連絡してください。

筆者の見方では、このケースで大切なのは「銀行振込ではなかった」と最初に自覚することです。銀行に凍結を頼んで返事を待っている間に、サービス側への連絡が遅れてしまう例を避けたいからです。

ケース4・5:手続き上の理由で分配されない

ケース4 口座が消滅手続に入らなかった、または途中で止まった

金融庁のQ&Aによると、口座のお金について払戻しの訴えが起こされている場合や、強制執行、仮差押え、仮処分、国税の滞納処分などの手続きが行われている場合は、消滅手続に入りません。また、公告の期間中に口座名義人が権利行使の届出をすると、消滅手続はそこで終わります。こうした状況は被害者の側からは見えにくいため、振込先の金融機関に進み具合を尋ねることが必要です。

ケース5 受け取る資格が認められない、または期間を過ぎた

法律第9条は、被害の全部を別の人から賠償されている場合や、犯行に加わった人、財産を失ったことに自分の不法な原因がある人などは、分配金を受け取れないと定めています。支払申請期間を過ぎた場合も、この法律による分配金は受け取れません。

期間を過ぎた方が悔やむ気持ちはよくわかります。ただ、金融庁も預金保険機構も、その場合でも加害者への民事上の請求は可能だと説明しています。道が一本閉じただけ、と考えてください。

救済法の外で残る回復の手段

被害回復給付金支給制度

詐欺などの財産犯で、犯人が被害者から得た財産が刑事裁判で没収・追徴された場合に使える制度です。法務省のQ&Aによると、はく奪した財産を金銭にして保管し、検察官が支給手続を開始します。開始は官報や検察庁のホームページに掲載され、通知できる被害者には個別の通知もあります。支給額の上限は各人の実際の被害額で、資金が足りなければ被害額に応じて按分されます。金融庁も、救済法以外の制度としてこれを紹介しています。

同じQ&Aによれば、検察官は弁護士を「被害回復事務管理人」に選び、被害者の調査や通知、申請の受付、審査といった事務を任せることがあります。そのため、弁護士名で案内の書面が届く場合もありえます。本物かどうか迷ったら、書面の連絡先ではなく、官報や検察庁のホームページで手続きの開始が掲載されているかを自分で確かめてください。

この制度は、犯人が検挙され、刑事裁判が確定して初めて動き出します。警察への被害届が、将来この制度につながる入口にもなります。

民事上の請求

犯人や、事情によっては口座の名義人に対して、損害賠償を求める道があります。相手の特定や財産の調査には専門的な手続きが要るため、弁護士に相談するのが現実的です。弁護士費用の負担が重いと感じるなら、法テラス(日本司法支援センター)に、費用の立替えを使える条件を問い合わせてみてください。

「取り戻せる」と近づく連絡には応じない

預金保険機構は、救済法の返金制度を装った詐欺や、被害回復を持ちかける勧誘について繰り返し注意を出してきました。先に費用を求める連絡には応じないでください。

いま手元の状況から、次に連絡する先

いまの状況次に連絡する先
銀行振込で、口座の残高がわからない振込先の金融機関(凍結と公告の予定を確認)
残高がほぼなかったと言われた振込先の金融機関(移し先の口座の有無)、警察
現金・キャッシュカードを渡した警察(110番、または最寄りの警察署)
電子マネー・決済アプリ・暗号資産で送った発行会社や運営会社、交換業者、警察
申請期間を過ぎた、民事で請求したい弁護士、法テラス

どこへ向かえばよいか決めきれないときは、#9110(警察の相談窓口)や188(消費生活センターの案内)に電話すれば、行き先を一緒に考えてもらえます。凍結を頼む最初の段階は口座凍結申請の手順、相談前に集めておく記録は証拠の残し方を参考にしてください。

よくある質問

Q. 口座を凍結してもらったのに、お金が戻らないと言われました。なぜですか?

A. 分配金の原資は凍結時の残高だけで、それを超えて払われることはありません。引き出された後だったり、残高が1,000円未満だったりすると、支払いは少なくなるか行われません。移し先の口座が止められていないか、振込先の金融機関に確認してください。

Q. PayPayなどの決済アプリで送金した場合も、振り込め詐欺救済法の対象になりますか?

A. 救済法の「金融機関」は法律第2条で銀行や信用金庫などが列挙されており、資金移動業者は含まれていません。送金に使ったサービスの運営会社と警察に、すぐ連絡してください。

Q. 被害回復給付金支給制度は、どうすれば使えますか?

A. 犯人から没収・追徴された財産があり、検察官が支給手続を始めた場合に申請できます。開始は官報や検察庁のホームページで公告され、通知できる被害者には個別に通知されます。警察に被害届を出しておくことが前提になります。

Q. 救済法で一部だけ戻りました。残りはもう請求できませんか?

A. 分配金を受け取ると、犯人への損害賠償請求権は受け取った額の分だけ消えますが、残りの部分は請求できます。相手の特定や回収の見込みは事案によって大きく違うため、弁護士に相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。