家族の詐欺被害を消費生活センターに代わりに相談するには|本人の同意と伝え方

離れて暮らす親の通帳に見慣れない振込が並んでいた。高校生の子どものスマホに、知らない会社からの請求メールが届いている。本人はうまく説明できない、あるいは恥ずかしがって話したがらない。そんなとき、家族が代わりに消費生活センターへ相談してよいのか迷う方は多いはずです。

結論から言うと、家族からの相談は受け付けてもらえる場合がありますが、原則は本人からの相談です。国民生活センターは、トラブルにあった本人が認知症や病気などで電話することが難しい場合に、介護や見守りをしている人からの相談も受け付けるとしています。また、センターが事業者との間に入る「あっせん」には、契約者本人の申し出が必要だと案内している自治体もあります。

この記事では、公表されている受付のルール、家族が代わりに相談するときの準備、本人の力が必要になる場面、本人への切り出し方を順に説明します。

家族からの相談について、公表されているルール

国民生活センターが自らの相談窓口について公表している「相談時のポイント」(2026年6月16日更新)には、次のように書かれています。

  • 相談は本人から電話するのが原則
  • 本人が認知症や病気などで電話することが難しい場合は、介護や見守りをしている人からの相談も受け付ける
  • 個人情報は相談の処理のためだけに使い、法令にもとづく場合などを除いて、本人の同意なく第三者に渡さない
  • 個人間のトラブル、人間関係、労働問題、相続や家族関係のトラブルは受け付けていない

神奈川県消費生活センターも同じ趣旨の留意事項を掲げ、あっせんの申し出には契約者本人からの申し出が必要で、匿名での申し出は受け付けていないとしています。

整理すると、家族は「相談」の入口には立てても、「あっせん」などの手続きを進めるには本人の意思が欠かせないということです。家族だけで話を完結させようとせず、本人と一緒に進める前提で準備するのが近道だと筆者は考えます。

なお、最後の項目にあるとおり、家族の間の金銭トラブルそのもの(兄弟に貸したお金が返ってこない、など)は消費生活センターの対象外です。事業者との契約や勧誘のトラブルかどうかが分かれ目になります。

本人以外が相談することが多い年代

国民生活センターが2026年8月に公表した「2025年度 全国の消費生活相談の状況」によると、全国の消費生活センター等が受け付けた相談は100万6,377件でした。契約当事者の年代別では70歳以上が25.6%で最も多く、さらに契約当事者が20歳代以下と70歳以上の相談では、契約当事者とは別の人が相談する割合が高くなっていると分析しています。

つまり、家族が代わりに相談するのは珍しいことではありません。むしろ、高齢の親や若い子どものトラブルは、家族が気づいて相談につなげることで表に出ている面があると筆者は見ています。

家族が異変に気づくきっかけとしては、次のようなものが考えられます。

  • 通帳やカードの明細に、見覚えのない振込や高額の引落しがある
  • 同じような商品の段ボールが家に積み上がっている
  • 知らない会社や「担当者」からの電話が頻繁にかかってくる
  • 本人がお金の話になると急に口数が減る、話題を避ける
  • 郵便受けに、覚えのない会社からの請求書や契約書の控えが届いている

一つだけなら偶然かもしれません。けれど二つ以上が重なったら、様子を見るより、早めに本人と話す時間をつくるほうがよいと筆者は考えます。

相談の前に、家族がしておくこと

家族が相談するときに相談員から聞かれるのは、基本的に本人が相談する場合と同じ内容です。ただ、家族は経緯を直接見ていないことが多いため、事前に次の点を確かめておくと話が早く進みます。

  1. 契約者は誰か:本人の名前で契約しているのか、家族のカードや口座が使われているのか
  2. 相手の情報:会社名、電話番号、サイトのURL、担当者名。郵便物や請求書、メールから拾い出す
  3. お金の流れ:いつ、いくらを、どの方法(振込、カード、電子マネー、現金)で払ったか
  4. いまの状況:請求が続いているか、次の支払い日はいつか、相手から連絡が来ているか
  5. 本人の状態と意向:本人が電話口に出られるか、出られない理由(入院中、聴力、認知症の診断など)、本人はどうしたいと言っているか

相談の最初に、「本人は○○で、自分は同居していない長男です」のように、本人との関係と、本人が直接相談できない事情を伝えてください。国民生活センターの受付ルールに照らしても、ここが伝わっているかどうかで相談の進み方が変わります。

書類や画面の記録を集めるときは、本人に断ってから行いましょう。集めた記録の保管方法は証拠の残し方が参考になります。

支払いが続いているなら、止めるのが先

定期購入の引落しや、相手から「今週中に追加の入金を」と迫られている状況なら、相談の準備より先にお金の流れを止めます。カード払いであれば本人と一緒にカード会社へ連絡し、振込を求められているなら「家族と相談するまで払わない」と本人に約束してもらいます。相手からの電話には、しばらく家族が一緒に出るようにするのも一つの方法です。相談窓口では、止めたことも含めて経緯を伝えれば十分です。

本人の力が必要になる場面

家族が入口を開いても、次のような場面では本人が表に出る必要があります。

  • あっせんを頼むとき:センターが事業者と話し合う手続きは、契約者本人の申し出が前提です
  • 解約や取消しを事業者に伝えるとき:通知は契約者の名前で出すのが基本です。家族が文面を一緒に考え、本人が署名する形にすると進めやすくなります
  • カード会社や銀行に申し出るとき:契約者本人の確認を求められるのが一般的です。本人と一緒に電話をかけ、途中で家族に代わってもらう方法もあります

本人の判断する力に不安がある場合は、家族だけで抱え込まないでください。親の住む市区町村の高齢者向けの相談窓口などで、お金の管理や成年後見制度について相談する道もあります。消費生活センターの相談員に、ほかにどんな窓口があるかを聞いてみるのもよいでしょう。

国民生活センターは、高齢者や障がい者、子ども・若者のトラブル防止を目的とした「見守り情報」を公開しています。周りの人が気づくためのポイントがまとめられているので、家族で共有しておくと次の被害を防ぐ助けになります。

子どもや若い家族の契約の場合

民法第4条は18歳を成年と定めています。18歳未満の子どもが、親などの法定代理人の同意を得ずに契約した場合は、民法第5条にもとづいて取り消せるのが原則です。ただし、親が目的を決めて自由に使うことを許したお小遣いの範囲の支出などは、この限りではありません。

一方、18歳・19歳は成年として扱われ、未成年者であることを理由にした取消しはできません。PIO-NETの分析でも、20歳代以下の契約当事者の相談は本人以外が相談する割合が高いとされており、進学や就職で一人暮らしを始めた子どものトラブルを、親が先に知るという形は十分に考えられます。

この年代の場合、筆者は親が代わりに話を進めるより、子ども本人が相談員と話す場をつくることを勧めます。成年として契約した以上、解約や返金の交渉は本人の名前で進むからです。親は、188にかける横に座って、日付や金額のメモを渡す役に回るくらいがちょうどよいと考えています。

本人への切り出し方と、相談の窓口

家族の被害に気づいたとき、最初の一言が難しいものです。「なんでこんなことしたの」と問い詰めると、本人は自分を守るために事実を隠しがちになります。次のような言い方から始めてみてください。

「最近、こういう手口が増えているらしいよ。うちにも関係ありそうだから、一緒に確かめてみない?」

責めるのではなく、「一緒に確かめる」という立場を取ると、本人も話しやすくなります。相談の電話をかけるときも、本人に同席してもらい、途中で代わってもらえれば、あっせんに進む場合もスムーズです。

相談が一段落した後も、しばらくは見守りを続けてください。一度お金を払った人のもとには、「被害を取り戻せる」「以前の契約の返金手続きをする」といった別の勧誘が届くことがあります。家族で「お金の話が来たら、まず誰かに言う」と決めておくだけでも、次の被害を防ぐ力になります。

相談したいこと窓口
契約の解約、返金、請求への対応188(消費者ホットライン)。本人の住む地域の窓口で相談すると、来所やあっせんに進むときも話を続けやすい
だまし取られた、または脅しを受けている警察(#9110、緊急時は110番)
銀行振込で送金した振込先の銀行と警察

Webで相談できる窓口については消費生活センターにWebで相談する方法で、電話での相談の流れは消費生活センターへの相談方法で扱っています。

よくある質問

Q. 家族が消費生活センターに相談した内容は、本人に伝わりますか?

A. 国民生活センターは、個人情報を相談処理のためだけに使い、法令にもとづく場合などを除いて本人の同意なく第三者に提供しないとしています。ただ、あっせんなどの手続きには本人の申し出が必要になるため、最終的には本人と話し合って進めることになります。

Q. 本人が相談を嫌がっています。家族だけで相談してもいいですか?

A. まずは家族として、どうすればよいかの助言を求める形で相談してみてください。ただし国民生活センターは、本人からの相談を原則とし、本人が病気などで電話できない場合に見守りをしている人からの相談を受け付けるとしています。あっせんを頼む段階では本人の申し出が必要です。

Q. 離れて住む親の被害は、どこの消費生活センターに相談すればいいですか?

A. 188にかけると、入力した郵便番号などをもとに近くの窓口が案内されます。来所やあっせんに進む可能性を考えると、親の住む地域の窓口で相談するほうが話を続けやすいでしょう。迷ったら最初の電話で相談員に聞いてください。

Q. 17歳の子どもが親に黙って契約していました。取り消せますか?

A. 親などの同意がないまま未成年の子が結んだ契約は、民法第5条にもとづいて取り消せるのが原則です。ただし、親が使い道を決めて渡したお金の範囲の支出などは対象外です。18歳以上は成年のため、この理由での取消しはできません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。