仮想通貨・暗号資産詐欺で損失が出た場合の返金相談方法
仮想通貨・暗号資産を使った詐欺は、偽の取引所・DeFi・NFTへの投資勧誘、ウォレット接続による資産の不正抜き取りなど多岐にわたります。 仮想通貨・暗号資産詐欺…
「本人確認なし」「メールアドレスだけですぐ取引できる」と案内される暗号資産の取引サイトを見かけたら、国内の登録業者の仕組みとは違うと考えてください。日本で暗号資産交換業の登録を受けた業者は、犯罪収益移転防止法(犯収法)の特定事業者として、口座開設などの際に本人確認を含む取引時確認を行う義務があります。確認をしないことを売りにしている時点で、国内の登録業者のルールの外にあるサービスだと分かります。
この記事は、本人確認不要の取引所を勧められた人、手軽さにひかれて登録を考えている人、逆に「本人確認のため」と言われて身分証の画像を送ってしまった人に向けたものです。
犯収法第2条第2項は、法律の義務を負う「特定事業者」を列挙しており、資金決済法に規定する暗号資産交換業者もその一つです(第32号)。特定事業者は第4条により、法律で定められた取引を行う際に、顧客の本人特定事項(氏名・住居・生年月日など)や取引の目的、職業などを確認しなければなりません。これが「取引時確認」です。
さらに2023年6月からは、暗号資産交換業者が顧客の依頼で暗号資産を他の業者の顧客へ移転する際、送る人と受け取る人の情報を相手先の業者に通知する義務(犯収法第10条の5、いわゆるトラベルルール)も設けられました。つまり国内の登録業者では、誰がいつ、どこからどこへ暗号資産を動かしたかを記録しておく仕組みが法律で組み込まれています。
本人確認を求めない取引所を使うと手続きは楽に見えますが、それは同時に、トラブルがあったときに「誰と取引したのか」をたどる手がかりが残りにくいということでもあります。
警察庁の統計でも、暗号資産は詐欺の支払い手段として増えています。令和7年のSNS型投資詐欺9,523件のうち、暗号資産を送らせる「暗号資産送信型」は1,898件、被害額は215.5億円で、件数は前年から149.1%増えました。いったん送った暗号資産は銀行振込のように組戻しを頼める仕組みがなく、送金先の相手が誰なのかが分からなければ、取り戻しの交渉を始めることすら難しくなります。
警察庁が公表している犯収法施行規則の改正に関するQ&Aによると、改正後の施行規則は令和9年(2027年)4月1日に施行されます。改正の中心は本人確認の方法の見直しで、ICチップが組み込まれた本人確認書類の読み取りや、マイナンバーカードの公的個人認証を用いる方法が軸になります。
国内の登録業者で口座を作る場合、今後は手続きの負担が増える方向です。その流れの中で「面倒な確認なしで取引できる」とうたうサービスが目につくようになるかもしれません。しかし手続きが簡単であることは、利用者を守る仕組みが整っていることとは別の話です。新しい方式への切り替えの時期や手順は取引所ごとに案内されるので、口座開設の画面や公式のお知らせで確かめてください。
| 比べる点 | 国内の登録業者 | 本人確認なしをうたうサービス |
|---|---|---|
| 口座開設時の確認 | 犯収法に基づく取引時確認が必要 | 確認しない、または形式だけ |
| 預けた資産の管理 | 資金決済法第63条の11で分別管理と外部監査が義務 | 確かめる手段がない |
| 送付時の記録 | トラベルルールによる情報の通知 | 記録の有無が分からない |
| 日本の登録 | 金融庁の登録一覧に掲載 | 一覧に載っていない |
本人確認をしない取引所を使ったからといって、必ず被害に遭うわけではありません。ただ、相談の場面では次のような流れがよく問題になります。
出金時に費用を請求される形については「手数料を払えば出金できる」の特徴で詳しく扱っています。
本人確認なしのサービスを勧める人は、手軽さを別の言葉で言い換えてきます。よく聞かれる説明と、その裏で確かめたい点を並べておきます。
| 勧誘の言い方 | 確かめたい点 |
|---|---|
| 「海外の取引所だから本人確認がいらない」 | 日本居住者を相手に営業するなら日本の登録が必要。金融庁の登録一覧と警告資料を見る |
| 「少額なら確認なしで出金できる」 | 出金の上限や条件が規約に書かれているか。後から条件を変えられないか |
| 「個人情報を出さないので安全」 | 運営者の名前・所在地が分からないのは、利用者の側も同じ。トラブル時の連絡先があるか |
| 「国内の取引所は手数料が高いから」 | 手数料の差と、分別管理や紛争解決の仕組みがないことを比べて考える |
どの説明にも共通するのは、国内の登録業者で受けられる保護を「面倒な手続き」として切り捨てている点です。便利さと引き換えに何を手放すのかを、登録前に一度書き出してみてください。書き出したメモは、あとで家族や相談窓口に状況を説明するときの資料にもなります。
本人確認をしない取引所とは反対に、本人確認を口実に必要以上の情報を集めようとする相手もいます。国内の登録業者の口座開設でも本人確認書類の提出は求められますが、その手続きは業者の公式アプリや公式サイトの中で完結します。次のような求めがあったら、手続きを止めて確かめてください。
日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)は、秘密鍵やシードフレーズ、二段階認証コードは「本人確認」などの理由があっても共有しないよう呼びかけています。本人確認の名目で集められた情報は、別の口座開設などに悪用されるおそれがあります。
送ってしまった情報は取り戻せませんが、悪用される範囲を狭めることはできます。次の順番で進めてください。
やり取りの画面や送信履歴は削除せずに残しておきましょう。保存の方法は証拠の残し方で説明しています。
本人確認の有無だけでなく、次の3点を合わせて確かめると判断がしやすくなります。
サービスの利用規約や会社概要のページに書かれた運営会社名と所在地を控えます。国内の法人名が書かれていれば、国税庁の法人番号公表サイトで、その名前と所在地の法人が実在するかを調べられます。法人が実在しても登録業者であることの証明にはなりませんが、表記そのものがない、所在地が何度も変わっている、といった点は判断材料になります。
判断に迷ったら、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、消費者ホットライン188に相談できます。すでに入金してしまい、詐欺の疑いがあるときは警察相談専用電話#9110へ。弁護士への相談を考えている場合は相談予約のページも参考にしてください。いずれも、返金を約束するものではありません。
A. 国内の登録業者は犯罪収益移転防止法の特定事業者で、口座開設などの際に取引時確認を行う義務があります。本人確認をしないことをうたうサービスは、国内の登録業者の仕組みとは異なると考え、金融庁の登録一覧で運営会社を確かめてください。
A. 出金のための確認手数料や保証金を求められても、追加で支払わないでください。残高画面や規約、やり取りを保存し、金融庁の相談室や消費者ホットライン188、詐欺の疑いが強ければ警察に相談します。
A. 警察庁のQ&Aでは、改正後の施行規則の施行前に行った取引時確認に基づく、いわゆる「済み確認」が可能で、施行後に改めて確認をやり直す必要はないとされています。個別の手続きは利用している取引所の案内を確認してください。
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。
サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。
LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。