詐欺の被害届の書き方|様式の記入欄と警察署へ行く前の下書きメモ

詐欺でお金を払ってしまい、警察に被害届を出すと決めた人に向けて、被害届の「中身」をどう書くかに絞って説明する記事です。

先に結論を書きます。被害届は、警察官が話を聞きながら様式に書き込む(代書する)ことが珍しくありません。完璧な書類を自分で仕上げて持っていく必要はありません。ただ、様式にどんな欄があるかを知り、欄に沿った下書きメモを用意しておくと、聞き取りの時間が短くなり、金額や日付の書き漏れも防げます。

ここでは、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範と、警察庁が都道府県警察に出している通達を手がかりに、欄ごとの書き方を見ていきます。警察へ行く前に記録をまとめる方法は証拠の残し方もあわせて参照してください。

被害届の様式は犯罪捜査規範で決まっている

被害届の扱いを定めているのは、犯罪捜査規範の第61条です。被害の届出があれば、その事件が自分の署の管轄かどうかに関係なく警察官は受理する、というのが条文の趣旨です。同じ条の第2項には、届出が口頭のときは「被害届(別記様式第6号)」への記入を求めるか、警察官が代書する、とあります。

この別記様式第6号はA4判2枚の書式で、e-Gov法令検索で誰でも見られます。欄の構成は次のとおりです。

欄の名前書く内容の例
届出人の住居・氏名・電話警察署に来た人の連絡先
被害者の住居・職業・氏名・年齢お金を払った本人の情報
被害の年月日時支払った日時(複数回ならそのすべて)
被害の場所振込や送金の操作をした場所など
被害の模様だまされた経緯を時系列で
被害金品(品名・数量・時価・特徴・所有者)振込金、電子マネー、暗号資産など
犯人の住居・氏名又は通称・人相・着衣・特徴等名乗った名前、アカウント、電話番号など
遺留品その他参考となるべき事項相手から届いた書類、補足事項

大阪府警察の旭警察署も、被害届の作成時に聞く事項として、被害者の住所・職業・氏名・生年月日・連絡先、被害の年月日と場所、被害の状況(いつ、どこで、誰が、何を、どのような状態で、どうされたか)、犯人の心当たりを挙げています。どの警察署でも、おおむねこの枠に沿って聞かれると考えておけば準備しやすくなります。

欄ごとに、詐欺の被害で書くこと

被害の年月日時

空き巣のような被害と違い、詐欺では支払いが何回にも分かれていることがよくあります。最初の支払いから最後の支払いまで、1回ごとの日付と時刻を並べておきます。時刻は、振込の受付票やネットバンキングの取引履歴に残っている数字をそのまま使うと食い違いが起きません。

被害の場所

ネット上でだまされた場合、「どこで被害にあったのか」と聞かれて戸惑う人が多い欄です。振込の操作をしたのが自宅のスマートフォンなのか、コンビニのATMなのか、銀行の窓口なのかを答えられるようにしておきましょう。ATMや窓口なら店舗名と所在地を控えておくと確実です。

被害の模様

様式のなかで最も広い欄で、ここが被害届の中心になります。詐欺の場合は「相手が何と言ったから、自分はお金を払ったのか」が要点です。「必ずもうかる」「手数料を払えば出金できる」など、決め手になった言葉はできるだけそのまま書き出します。あわせて、うそだと気づいたきっかけ(出金できない、連絡が途絶えたなど)も入れておきます。SNSからLINEへ、LINEから投資サイトへ、というように連絡の手段が移っているなら、その移り変わりも順番どおりに書きます。

被害金品

もともと物の盗難を想定した欄なので「品名・数量・時価」とありますが、詐欺では支払ったお金や価値がここに入ります。

  • 銀行振込:振込日、金額、振込先の金融機関名・支店名・口座番号・口座名義
  • 電子マネー(プリペイドカード):種類、購入した店舗、額面、カード番号
  • 暗号資産:銘柄、数量、送付先アドレス、送付時点の円換算額

暗号資産は値動きがあるため、円換算額をどこで確かめたか(交換業者の取引履歴など)も一緒に控えておくと、後で数字の根拠を聞かれたときに答えやすくなります。

犯人の住居・氏名又は通称など

顔も住所も分からないのが普通です。分かる範囲で、名乗った名前、SNSのアカウント名とID、電話番号、メールアドレス、案内されたサイトのURLを書きます。「たぶん○○という会社だと思う」といった推測は、事実と分けて伝えるのが無難です。

遺留品その他参考となるべき事項

相手から送られてきた契約書類や画像、同じ相手とやり取りしていた人がいることなど、ほかの欄に入らない情報をまとめる欄です。

警察署へ行く前に作る下書きメモ

下書きは、様式の欄と同じ順番で作ると警察官に渡しやすくなります。A4用紙1〜2枚を目安に、次の順でまとめてみてください。

  1. 自分の氏名・住所・連絡先・職業・年齢
  2. 相手と接点ができた日と経路(広告、SNSのDM、マッチングアプリなど)
  3. 支払いの一覧(日時・方法・金額・支払先)
  4. 相手が支払いを求めたときの言葉
  5. おかしいと気づいた日と、そのきっかけ
  6. 相手について分かっていること(名前・ID・電話番号・URL)
  7. 保存してある記録の一覧(画面の画像、取引明細、メールなど)

支払いの一覧は表にすると読み違いが減ります。

日時支払い方法金額支払先相手の名目
例:○月○日 14:05ネットバンキング振込○○円○○銀行○○支店 名義○○「出金手数料」

書くときのこつは二つです。一つは、事実と推測を分けること。もう一つは、金額の合計を最後に書き、明細の数字と一致しているかを確かめることです。合計が合わないまま警察で話し始めると、確認に時間を取られます。メモができたら、行く前に警察署へ電話を入れ、担当の係と日時を決めておくのも一つの方法です。旭警察署のページでも、被害の種類によっては提出時に特定の資料が必要になるとして、担当係への事前相談を勧めています。何を持ってくればよいかをその電話で聞いておけば、同じ日に出直す手間を減らせます。聞き取りには時間がかかることが多いため、時間に余裕のある日を選んでおくと落ち着いて話せます。

項目の抜けが心配なら相談前チェックリストで照らし合わせておくと安心です。

家族が代わりに届け出るとき

高齢の親がだまされた、本人が体調を崩して動けない、といった事情で家族が警察署に行くこともあります。別記様式第6号には「届出人」と「被害者」の欄が別々にあり、注意書きには、届出人と被害者が異なるときは両者の関係と、本人が届け出ない理由を「遺留品その他参考となるべき事項」欄に書くよう定められています。つまり、家族が届出人になる場面が様式上も想定されています。

家族が行く場合は、次のものを持っていくと話が進めやすくなります。

  • 被害者本人の通帳、取引明細、スマートフォン(本人の同意を得たうえで)
  • 本人から聞き取った経緯のメモ
  • 本人が来られない理由を説明できるもの(入院中であれば病院名など)

捜査の過程で、本人から直接話を聞きたいと警察から求められる場合があります。本人の連絡先と、連絡がつきやすい時間帯を伝えておきましょう。

受理されたら控えておくことと、もらえる書面

警察庁は令和6年3月22日付の通達「迅速・確実な被害の届出の受理等について」で、被害の届出を受理した際は、届出人に対し、届出の日時や連絡先などを記載した書面を交付できることを説明し、希望があれば交付するよう都道府県警察に求めています。問い合わせ先が分からなくなるのを防ぐための書面なので、受け取っておくと後で役立ちます。

書面とは別に、自分のメモにも次の点を残しておきます。

  • 届け出た警察署名と日付
  • 担当した係と警察官の名前
  • 受理番号など、問い合わせのときに伝える番号(案内があった場合)

振込で払った場合は、届け出たことを振込先の金融機関にも伝えます。警察と金融機関の双方に同じ説明を繰り返す場面が出てくるため、下書きメモを1部コピーして手元に残しておくと便利です。届け出の後の進め方は返金相談の流れで全体像を確認できます。

被害届を書くときにつまずきやすい点

  • 記憶だけで日付を書く:取引明細と数日ずれることがよくあります。明細を見ながら書きましょう。
  • 被害を大きく書いてしまう:実際より多い金額や、確かめていない事情を書くと、後で説明が合わなくなります。分からないことは「分からない」と伝えれば足ります。
  • 届け出の後で思い出したことを放置する:支払いがもう1回あった、相手の別アカウントを見つけた、といった追加情報は、担当の警察官に連絡して伝えます。
  • 「被害届の代行」や「返金の代行」を名乗る業者に頼む:被害届は本人か家族が警察署で出せます。手数料を求める連絡には応じないようにしましょう。

被害届は、お金を取り戻す手続きそのものではありません。返金の見込みや支払い方法ごとの手続きについては、相談予約から状況を伝えていただくこともできます。

よくある質問

Q. 詐欺の被害届は、自分で書いた書面を持って行ってもいいですか?

A. 下書きとして持参するのは有効です。様式に沿って欄ごとにまとめたメモがあれば、警察官が聞き取りながら被害届に書き写しやすくなります。最終的にどの書式に記入するかは、警察署の案内に従ってください。

Q. 相手の本名も住所も分かりません。被害届の犯人欄はどう書きますか?

A. 分かる範囲で書けば足ります。名乗った名前、SNSのアカウント名やID、電話番号、振込先の口座名義、サイトのURLなどが手がかりになります。推測で会社名などを書くのは避け、事実と分けて伝えましょう。

Q. 何回にも分けて振り込んだ場合、被害届は振込ごとに出すのですか?

A. 同じ相手に一連の流れで払ったものは、まとめて説明することが多いですが、どう扱うかは警察の判断です。1回ごとの日時・金額・振込先を一覧にしておけば、どちらの扱いになっても対応できます。

Q. 被害届を出したら、何か控えはもらえますか?

A. 警察庁の通達では、受理した際に届出の日時や連絡先などを記載した書面を交付できることを説明し、希望すれば交付することになっています。受け取りたい場合はその場で申し出てください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。