詐欺の被害届が受理されないときは?相談扱いとの違いと受理後の流れ

警察署で詐欺の被害を話したのに「今日は相談として伺っておきます」と言われ、被害届を出せたのか分からないまま帰ってきた。この記事は、そうした状況の人に向けて書いています。

要点を先にまとめます。捜査の手続きを定めた国家公安委員会規則(犯罪捜査規範)と、警察庁の通達は、どちらも被害の届出を原則として即時に受理するよう求めています。それでも相談扱いで終わることはあり、その場合は理由を確かめ、足りない資料を補って出直すのが現実的な進め方です。対応そのものに納得できないときは、都道府県の公安委員会へ文書で苦情を申し出る制度もあります。

もう一つ押さえておきたいのは、受理と返金が別の話だということです。お金を取り戻すための手続きは警察とは別の窓口で進めるもので、その点も後半で触れます。

受理の原則を定めた規範と通達

犯罪捜査規範の第61条は、犯罪による被害の届出を受けた警察官に対し、管轄区域の事件かどうかを問わず受理するよう定めています。さらに警察庁刑事局長は、令和6年3月22日、各都道府県警察の長にあてて被害の届出の受理に関する通達を出し、次の点を徹底するよう求めています。

  • 届出の内容が「明白な虚偽又は著しく合理性を欠くもの」である場合を除き、即時受理すること
  • この例外は、届出人から聞いた内容から容易に判断できるものを指し、改めて捜査や調査をして検討することを意味しない
  • 例外に当たるとして受理しなかった届出は、内容や状況を記録し、所属長に報告すること
  • 管轄区域外の被害でも即時受理し、捜査は犯罪地を管轄する警察に引き継がれうることを説明すること

通達は同時に、「即時受理」とは、たとえばパトロール中や現場で届出を受けた場合に、その場で必ず受理することまでを求めるものではない、とも書いています。警察署の窓口で落ち着いて説明できる状況をつくることが、受理につながりやすいといえます。

「相談」と「被害届の受理」はどう違うか

警察署で話をした記録は、相談として残る場合と、被害届として受理される場合があります。帰り道に「結局どちらだったのか」と迷わないよう、違いを整理しておきます。

相談として扱われた場合被害届として受理された場合
作られる書類警察内部の相談記録被害届(様式に沿った書面)や供述調書
自分の関わり方話をして終わることが多い内容を確認し、署名などを求められる
その後必要に応じて助言や他の窓口の案内事件として捜査の対象になる

見分ける一番確実な方法は、その場で聞くことです。「今日の話は被害届として受理されましたか、それとも相談として記録されましたか」と尋ねれば、答えははっきりします。受理された場合は、届出の日時や連絡先を書いた書面を希望すれば交付してもらえる運用になっているので、あわせて申し出ておきましょう。

受理に至らなかったときは、理由を聞いて出直す

相談扱いになった場合は、何が足りなかったのかを担当者に確認します。よくあるのは次のような場面です。

  • 支払いの裏付けが手元にない:取引明細や振込の控えを持っていなかった
  • だまされた経緯がうまく伝わらなかった:時系列が前後し、相手の言葉が特定できなかった
  • 契約上のもめごとに見えた:相手が商品やサービスを一応提供しており、警察から消費生活センターや弁護士を案内された

三つ目の場合でも、「最初から出金させるつもりがなかったと考える理由」があれば、それを具体的に伝えることが大切です。たとえば、出金の条件が支払いのたびに変わった、運営者の表示が実在しなかった、連絡先が一斉に消えた、といった事実です。

出直す前に準備しておきたいものは次のとおりです。

  1. 支払いの一覧表と、それを裏付ける明細
  2. 相手が支払いを求めた場面の画面の画像やメッセージ
  3. 時系列のメモ(A4用紙1〜2枚)
  4. 前回対応した警察官の名前と日付

記録の集め方は証拠の残し方、警察に行く前の準備は警察に相談する際の準備にまとめています。どこに相談すべきか迷う段階なら、警察相談専用電話の#9110で先に相談する方法もあります。

出直すときの伝え方の例

2回目に警察署へ行くときは、前回と同じ説明を繰り返すより、何を補ってきたのかを最初に伝えるほうが話が進みます。窓口では、たとえば次のように切り出すと要点が伝わります。

「○月○日にこちらで詐欺の被害について相談し、担当の○○さんに対応していただきました。そのときは相談として記録されたと理解しています。今日は、振込の明細と、相手が出金手数料を求めてきたメッセージの画面を持ってきました。被害届として受理していただけるか、確認をお願いしたいです」

ポイントは三つです。前回の日付と担当者を示すこと、新しく持ってきた資料を具体的に挙げること、そして「被害届として出したい」という意思をはっきり言葉にすることです。遠慮して「一応聞いてほしい」とだけ伝えると、再び相談として扱われることがあります。

説明の途中で感情が高ぶりそうなら、時系列メモを見せながら話すと落ち着いて伝えられます。家族や信頼できる人に付き添ってもらうのもよい方法です。

対応に納得できないとき:公安委員会への苦情申出

警察法の第79条は、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある人は、都道府県公安委員会に対して文書で苦情を申し出ることができる、と定めています。申出を受けた公安委員会は、これを誠実に処理し、処理の結果を文書で申出者に通知しなければなりません。

大阪府公安委員会の案内を例にとると、申出書には次の事項を書きます。様式は特に定められておらず、郵送のほか、e-Gov電子申請による申出も案内されています。

  • 申出者の氏名・住所・電話番号
  • 苦情の原因となった職務執行の日時・場所と、警察職員の対応の内容
  • その対応によって受けた具体的な不利益や不満の内容

ただし、同じ案内には、公安委員会は個別の犯罪捜査を直接指揮できない、告訴や捜査に関する質問・要望は直接警察署に申し出てほしい、とも書かれています。苦情申出は「対応が不適切だった」ことを正すための仕組みで、被害届の受理を代わりに決めてもらう手続きではない点に注意が必要です。

処罰を求める意思をはっきり示したい場合は、被害届とは別に告訴という方法もあります。犯罪捜査規範の第63条は、司法警察員である警察官が告訴を受理しなければならないと定めています。告訴状の作成を考えるなら、弁護士に相談して進めるのが一般的です。

受理された後に起きること

被害届が受理されると、事件として捜査が進みます。被害者側から見て、起こりうることを挙げておきます。

  • 捜査の経過についての連絡:犯罪捜査規範の第10条の3は、捜査にあたって被害者等に刑事手続の概要を説明し、捜査の経過などを通知するよう定めています。ただし、捜査や関係者の権利に支障がある場合は除かれるため、細かな内容まで伝えられるとは限りません。
  • 別の警察からの連絡:相手の拠点や振込先が遠方にある場合、捜査を引き継いだ警察から事情聴取などを求められることがあります。
  • 追加資料の依頼:取引明細の原本や、スマートフォンの画面の確認を求められることがあります。記録は消さずに保管しておきましょう。

進み具合を尋ねたいときは、受理の際にもらった書面の連絡先に問い合わせます。担当者名と届出日を伝えると、話が早く通じます。捜査中は答えられない事柄もあるため、すぐに詳しい回答がなくても、それだけで放置されていると決めつけないほうがよいでしょう。新しく思い出したことや、相手から再び連絡が来たことがあれば、その都度伝えておくことも大切です。

お金の面では、振込で払った場合、振込先の金融機関に被害を申し出て口座の取引停止を求める手続きを、警察への届け出と並行して進めます。支払い方法ごとの進め方は返金相談の流れで確認できます。

取り下げを考えたとき、相手から持ちかけられたとき

被害届を出した後で、「返金するから被害届を取り下げてほしい」と相手側から連絡が来ることがあります。応じる前に、次の点を考えておきましょう。

  • 取り下げたいと警察に申し出ても、詐欺罪は原則として告訴がなくても起訴できる犯罪(親告罪ではない犯罪)のため、捜査がそこで止まるとは限りません。
  • 「返金する」という約束が守られる保証はありません。先に取り下げを求め、支払いを後回しにする話には特に慎重になるべきです。
  • 示談の条件(金額、支払日、支払われなかった場合の扱い)を書面にするなら、弁護士に内容を見てもらうのが安全です。

相手からの連絡があったこと自体も、捜査の参考になりえます。取り下げを決める前に、まず担当の警察官に連絡の内容を伝えてください。

よくある質問

Q. 最初に行った警察署で受理されなかった場合、別の警察署に行ってもいいですか?

A. 犯罪捜査規範は、管轄区域の事件かどうかを問わず被害の届出を受理するよう定めています。自宅近くの警察署でも届け出はできます。前回の警察署で対応した日時と担当者名を伝え、経緯を説明すると話が通じやすくなります。

Q. 警察で「民事の問題なので」と言われました。もう被害届は出せませんか?

A. そう判断された理由を確認し、だまされたと考える具体的な事実(出金条件が何度も変わった、運営者が実在しないなど)を資料とともに示して、改めて相談する方法があります。並行して消費生活センター(188)や弁護士への相談も検討してください。

Q. 被害届が受理されたかどうか、後から電話で確認できますか?

A. 受理の際に交付される連絡先の書面があれば、そこに問い合わせるのが確実です。書面がない場合は、届け出た警察署に日付と担当者名を伝えて確認してください。

Q. 被害届が受理されれば、支払ったお金は戻ってきますか?

A. 受理は捜査の出発点で、返金を約束するものではありません。振込の場合は金融機関への申し出や振り込め詐欺救済法の手続き、カードや電子マネーの場合はそれぞれの会社への連絡を、別に進める必要があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。