マッチングアプリの相手に上場前のコイン・ICOを勧められたら|判断材料と送金後の手順

マッチングアプリで知り合った相手に「上場前の新しいコインを今のうちに買っておこう」「ICOに参加すれば何倍にもなる」とすすめられているなら、購入先が金融庁の登録を受けた暗号資産交換業者かどうかを確かめるまで、お金を動かさないでください。相手が指定するサイトやアプリでしか買えない、会ったことがない、出金しようとすると税金や保証金を求められる、の3つがそろう場合は、国民生活センターや警察庁が注意を呼びかけている「ロマンス投資詐欺」の特徴と重なります。

この記事は、恋愛感情のある相手から暗号資産の新規発行(ICO)や未上場トークンの購入を持ちかけられた人に向けて、相手を疑うことに迷いがあっても使える確認方法と、送ってしまった後の手順をまとめたものです。SNS・LINEグループを含む勧誘経路の違いはICO詐欺の経路別の記事で比べています。

マッチングアプリ発の暗号資産トラブル、公表データで見える規模

警察庁が公表した令和7年の数字では、SNS型ロマンス詐欺の件数が5,645件、被害額が546.4億円に達しています。最初の接触ツールで最も多かったのはマッチングアプリの1,846件です。被害金の受け渡しが実質的に暗号資産だったものは、件数の40.4%、被害額の48.6%を占め、前年から大きく増えています。

国民生活センターに寄せられる暗号資産の相談は、2025年度に8,132件ありました。公表されている最近の事例には「マッチングアプリで知り合った相手に運用をすすめられ、引き出そうとしたら税金を請求された」という内容が含まれています。同センターは2022年3月に「ロマンス投資詐欺が増加しています!」という注意喚起を出し、出会いそのものが投資に誘う目的で仕組まれている可能性を指摘しました。

こうした数字から言えるのは、マッチングアプリで知り合った相手からの暗号資産の話は、個人の見る目の問題ではなく、全国で繰り返されている型だということです。「自分が疑い深すぎるのでは」と感じる必要はありません。

「ICO」「上場前」という言葉を、相手の説明抜きで理解する

ICOとは

ICO(Initial Coin Offering)は、企業などが独自のトークンを発行して資金を集める方法です。金融庁は2017年10月の注意喚起で、ICOで買ったトークンは価格が急に下がったり価値がなくなったりするおそれがあること、発行者が作る計画書(ホワイトペーパー)の内容が実行されないおそれがあること、ICOを利用した詐欺も報じられていることを挙げています。ICOの仕組みによっては資金決済法や金融商品取引法の規制対象となり、事業者が必要な登録をせずに行えば罰則の対象になるとも説明しています。

「上場する」とは

暗号資産の「上場」は、交換業者が売買の取り扱いを始めることを指して使われます。国内の登録業者が扱う暗号資産は、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)が会員ごとの取扱い一覧を公表しています。「近く上場が決まっている」と言われても、発行側や紹介者の説明だけでは外から確かめられません。国民生活センターには以前から、知人に「取引所が開けば値上がりする」とすすめられて新しい仮想通貨を買ったものの、売ることも残高を確かめることもできなくなったという相談が寄せられています。

筆者の見解

未上場のトークンは、プロの投資家でも価値を判断しにくいものです。交際相手の説明を信じて買う理由はなく、「上場前だから今しか買えない」という言葉が出た時点で購入の検討はやめてよいと考えます。

恋愛感情と投資判断を切り分けるためのチェック

相手を嫌いになる必要はありません。お金の話だけを切り離して、次の項目に当てはまるかを数えてみてください。

  1. 実際に会ったことがない、またはビデオ通話を理由をつけて避けている
  2. 知り合って間もなくLINEなど別のアプリに移るよう求められた(警察庁の統計では、ロマンス詐欺の被害時の連絡ツールはLINEが9割以上)
  3. 購入するサイトやアプリを相手が指定し、そのURLはメッセージでしか知らされていない
  4. 指定されたサービスの運営会社が、金融庁の暗号資産交換業者の登録一覧に見当たらない
  5. 利益が出ている証拠が、そのサイトの画面に表示された数字だけである
  6. 「二人の将来のため」「誰にも言わないで」と言われている
  7. 最初の少額は出金できたが、その後に大きな入金をすすめられた

1つでも当てはまれば、入金は止めてください。3つ以上なら、相手とのやり取りを保存したうえで、次の見出し以降の手順に進むことをすすめます。確認先は金融庁の暗号資産向けの案内ページです。そこに登録業者の一覧と、無登録で警告を受けた業者の一覧(国内・海外)が並んでいるので、両方に目を通します。正規の業者名を名乗る偽サイトも出回っているため、相手に教えられたURLと、一覧から開いた公式サイトのURLが同じかどうかも比べてください。

出金に「税金」「保証金」を求められたとき

2024年1月23日に国民生活センターが紹介したケースを見てみます。SNSで知り合った相手にすすめられて暗号資産の投資を始め、最初の2万円は利益つきで出金できたものの、40万円を入れた後に出金しようとすると「12%の税金」として約86万円を求められました。

暗号資産でもうけが出たときの税金は、基本的に自分で確定申告をして税務署に納める仕組みです。取引サイトの運営者に「出金前の税金」を払わないとお金が戻らない、という仕組みは、国内の税の納め方とは異なります。保証金、アカウントの凍結解除料、マネーロンダリング審査料など名目が変わっても、同じように考えてください。

国民生活センターの別の公表事例では、税金と保証金を払った後に、さらに手数料を求められています。この段階で払っても、次の名目が出てくると考えておくほうが現実的です。相手が「自分が半分出すから」と言ってきても、送金はしないでください。

相手に断りを伝えるとき、関係をどうするか

確認の結果に不安が残っても、相手に正面から「詐欺ですか」と聞く必要はありません。返事の仕方しだいで、相手の目的が見えてくることがあります。

  • 「お金のことは家族と決めているので、相談してから返事をする」と伝える
  • 「金融庁に登録している業者の口座でなら考える」と条件を出す
  • 「まず一度会ってから話したい」と、対面を先に提案する

こうした返事に対して、急に不機嫌になる、連絡の頻度を極端に上げて説得してくる、「信じてくれないなら別れる」と迫る、といった反応が続くなら、関心の中心はあなたではなくお金にあると受け止めてよいでしょう。逆に、投資の話をやめても関係が変わらない相手なら、お金の話を抜きにして付き合いを続ける選択もあります。

どちらの場合も、やり取りの記録は消さずに残しておいてください。後から相談が必要になったとき、いちばん頼りになるのは最初のメッセージからの流れです。

送ってしまった後の動き方(送金方法別)

国内の銀行口座へ振り込んだ

国民生活センターは、個人名義の口座を振込先に指定されたら振り込まないよう呼びかけています。すでに振り込んだなら、振込先の銀行と警察に連絡し、口座の凍結を依頼してください。振り込め詐欺救済法の手続きにより、口座に残ったお金が分配される場合があります。

国内の交換業者で暗号資産を買い、外部に送った

交換業者の取引履歴から、送付日時・数量・送付先アドレス・取引ID(トランザクションID)を保存し、交換業者と警察に届け出ます。暗号資産は送付後に取り消せないため、記録の正確さが相談の土台になります。詳しくは暗号資産の証拠の残し方を参照してください。

クレジットカードで購入した

請求の明細に載っている決済先の名前を控え、カード会社に経緯を説明します。支払いを取り消せるかどうかは、最終的にカード会社が決めることになります。

マッチングアプリの運営にも通報する

相手のアカウントを、アプリ内の通報機能で報告します。同じ相手が別の利用者に近づくのを防ぐためにも役立ちます。退会や相手のブロックは、メッセージを保存してからにしましょう。

相談先と、相談の前にそろえるもの

  • 警察:被害に気づいたら最寄りの警察署へ。まず話を聞いてほしいときは #9110。
  • 188:消費者ホットラインの番号で、契約や返金の相談にのる自治体の窓口へ案内されます。
  • 金融庁の相談窓口:金融サービス利用者相談室(0570-016811)が、暗号資産や投資の勧誘についての相談を受けています。

そろえておくと話が進みやすいのは、①相手のプロフィール画面(アプリとLINEの両方)、②投資の話が出た前後のメッセージ、③購入を指示されたサイトのURLと画面、④送金の記録、⑤求められた税金などの請求画面です。相談予約はこちらのページから受け付けています。

「必ず取り戻せる」と広告で持ちかけてくる相手には注意してください。専門家に依頼する場合も、費用と見込みの説明を書面で受け取ってから判断するのが安全です。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手が「ICOは合法だから大丈夫」と言います。本当ですか?

A. ICOという方法自体が全面的に禁じられているわけではありません。ただ、どんな権利を売るかによって資金決済法か金融商品取引法の網にかかり、必要な登録なしに売れば処罰されうる、というのが金融庁の説明です。合法かどうかを相手の言葉で判断せず、販売している事業者が登録を受けているかを金融庁の一覧で確かめてください。

Q. 最初に少しだけ出金できました。本物の投資ではないのですか?

A. 少額の出金に応じて信用させ、その後に大きな入金をさせる流れは、国民生活センターの公表事例にもあります。一度出金できたことは、安全の根拠にはなりません。

Q. 相手に「税金は私が半分出す」と言われました。払えばお金は戻りますか?

A. 戻る保証はありません。暗号資産の利益の税金は本人が確定申告で納めるのが原則で、取引サイトに払う仕組みとは違います。追加の送金はせず、警察や 188 に相談してください。

Q. 金融庁の登録業者と同じ名前のサイトで買いました。安全ですか?

A. 登録業者の名称をかたる偽サイトもあると金融庁は注意しています。サイトのURLが、金融庁の一覧から開いた登録業者の公式サイトと一致するかを確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。