仮想通貨・暗号資産詐欺で損失が出た場合の返金相談方法
仮想通貨・暗号資産を使った詐欺は、偽の取引所・DeFi・NFTへの投資勧誘、ウォレット接続による資産の不正抜き取りなど多岐にわたります。 仮想通貨・暗号資産詐欺…
暗号資産(仮想通貨)の詐欺では、銀行振込のように通帳を見れば流れが分かる、ということがありません。相手とのやり取りはSNSやアプリの中、日本円の動きは銀行と取引所、暗号資産の動きはブロックチェーンの上と、記録が別々の場所に散らばっているのが特徴です。どれか一つが欠けると、警察や相談窓口に「何が起きたか」を一続きで説明しにくくなります。
この記事は、暗号資産の被害で残す記録の全体像をつかむための入口です。記録を3つの層に分けて考え方を示し、手口の型ごとに落としやすいもの、提出先ごとに求められやすいものを整理しました。個別の手口の詳しい手順は、文中で案内する記事に譲ります。
| 層 | 主な記録 | その記録で示せること |
|---|---|---|
| 1. 相手とのやり取り | SNS・LINE・マッチングアプリのメッセージ、相手のアカウント、勧誘に使われた広告や投資サイトの画面 | 誰が、どんな言葉で、何をさせたか |
| 2. 日本円の出入り | 銀行の入出金明細、クレジットカードの明細、取引所への入金記録 | 自分のお金がいくら、いつ出ていったか |
| 3. ブロックチェーン上の記録 | 送付の履歴、送付先アドレス、トランザクションID、エクスプローラーの画面 | 暗号資産が実際にどこへ移ったか |
警察や弁護士が状況を理解するには、この3つが「同じ出来事」としてつながっている必要があります。たとえば「5月10日に相手からこのアドレスに送るよう言われた(層1)」「同じ日に銀行から取引所へ30万円入金した(層2)」「その30万円分のUSDTを指定アドレスへ送った(層3)」という形で、日付と金額で結びつけられる状態が理想です。
筆者の考えでは、最も失われやすいのは層1、最も後から集め直しやすいのは層2です。銀行や取引所の記録は時間がたっても取り寄せられることが多い一方、相手のアカウントや投資サイトは、ある日突然消えることがあります。優先順位に迷ったら、層1から手をつけてください。
日本円の動きは、銀行の通帳アプリやネットバンキングの入出金明細で、多くの場合さかのぼって確認できます。国内の交換業者を使っていれば、会員ページから入出金や売買の履歴をファイルとして保存できることが多く、見当たらなければサポート窓口に取り寄せ方を尋ねる方法もあります。ブロックチェーン上の記録は、トランザクションIDや送付先アドレスさえ分かれば、後述のエクスプローラーで何度でも確認し直せます。層1の保存を急ぎ、層2と層3は落ち着いてから集める、という順番で十分間に合います。
| 手口の型 | 落としやすい記録 |
|---|---|
| 偽の取引所・投資アプリで「利益」が表示される型 | アプリの正式な名前と入手先(どのストア、どのURLか)、表示された残高と利益の推移、出金を断られた画面や運営チャットの文面 |
| 恋愛・副業の相手から送金を指示される型 | 送付先アドレスを伝えてきたメッセージそのもの(アドレスだけを控えると、誰が指示したかが残らない) |
| ウォレットをサイトに接続し「承認」してしまう型 | 接続したサイトのURL、署名や承認をした日時、その後に資産が動いたトランザクション |
| 取引所のアカウントを乗っ取られる型 | 取引所からのログイン通知メール、ログイン履歴の画面、自分が送っていない出金の記録 |
| 「特別枠」「割当」の前払いを求められる型 | 案内のメールやメッセージの全文、支払期限を示した文面、払った後に届いた追加要求 |
どの型でも共通するのは、相手が用意した画面は相手の都合で消せるということです。投資アプリの「利益」の表示は、実際に資産があったことを示すものではありませんが、どのように信じ込まされたかを説明する材料になります。消される前に残してください。承認の取り消し手順はrevokeで承認を取り消す手順、国内の取引所から送った後の動き方は送金後に取引所へ伝えることで扱っています。
ブロックチェーン上の送付は、誰でも閲覧できる「ブロックエクスプローラー」というサイトで確認できます。取引所やウォレットの履歴に表示されるトランザクションIDを、そのチェーンに対応したエクスプローラーの検索欄に入れると、その送付の詳細が表示されます。
同じUSDTでも、どのチェーン上で送ったかによって、使うエクスプローラーが違います。取引所の送付画面で選んだネットワーク名を必ず控えておきましょう。また、エクスプローラーの日時は協定世界時(UTC)で表示されることが多く、日本時間はそれに9時間を足した時刻になります。メッセージの日時と照らし合わせるときに、1日ずれて見えることがあるので注意してください。
画面を残すときは、アドレスバーのURLが写るようにします。URLにトランザクションIDが含まれていれば、あとで誰でも同じ画面を開き直せるからです。送付の回ごとの記録の付け方はLINEの投資グループで送った人向けの記録の残し方でも説明しています。
集めた記録は、量が増えるほど「どれが元の画面か」が分かりにくくなります。次の決まりを最初に作っておくと、提出の段階で困りません。
相手から「アプリを入れ直せば出金できる」「サポートのために遠隔操作アプリを入れて」と言われても、応じないでください。端末の初期化や遠隔操作で、手元の記録がまとめて失われたり、さらに資産を動かされたりするおそれがあります。スクリーンショットの撮り方の基本は日時やURLが分かるスクリーンショットの撮り方にまとめています。
| 提出先 | 主に求められやすいもの |
|---|---|
| 警察(被害の相談・届出) | 時系列のメモ、相手のアカウントとやり取り、送付先アドレスとトランザクションID、日本円の入出金の記録 |
| 送付に使った国内の交換業者 | 自分の口座の情報、送付の日時・数量、トランザクションID、送付先アドレス |
| 消費生活センター(188) | 相手の業者名やサイトのURL、契約や支払いの内容、相手から求められていること |
| 弁護士 | 上のすべてと、お金の出どころ(預金、借入れなど)が分かる資料 |
どこに出すにしても、中心になるのは時系列のメモです。1行に1つの出来事を書き、各行に証拠の一覧表の番号を添えておくと、相手が何を見ればよいかがすぐに伝わります。相談窓口の使い分けは暗号資産トラブルの相談先の使い分け、警察へ行く前の準備は警察相談の準備ページを参考にしてください。
国税庁は、雑損控除の対象を災害・盗難・横領による損失とし、詐欺や恐喝の場合は雑損控除を受けられないと案内しています。一方で、暗号資産を売ったり別の暗号資産に換えたりして利益が出ていた場合、その所得の扱いは被害とは別に問題になることがあります。取引の履歴は、確定申告について税務署や税理士に相談するときにも使うため、被害の相談が終わった後も消さずに保管しておきましょう。
被害の記録がそろってくると、「調査して資金を回収する」「ブロックチェーンを追跡して取り戻す」という業者やSNSのアカウントから連絡が来ることがあります。記録を見せるだけならと思っても、次の情報は、相手が誰であっても渡さないでください。
公的な相談窓口や、送付に使った交換業者の正規の窓口が、シードフレーズやパスワードを聞くことはありません。自分から探したのではない「回収」の申し出は、着手金を払わせる二次被害の入口になりやすいため、契約の前に188や弁護士会の法律相談で確かめてください。記録は、警察、正規の交換業者、自分で選んだ弁護士など、相手がはっきりしている提出先にだけ渡すのが原則です。
A. 画面の記録に加えて、取引所の取引履歴を書き出したファイルと、エクスプローラーでトランザクションIDを検索した画面があると、送付が実際に行われたことを別の角度から示せます。
A. サイトの画面は残せなくても、相手とのメッセージ、日本円の入出金、ブロックチェーン上の送付の記録は後からでも集められることがあります。残っているものから時系列のメモを作り、警察や188に相談してください。
A. エクスプローラーは協定世界時(UTC)で日時を表示することが多く、日本時間はそれより9時間進んでいます。深夜や早朝の送付では日付が変わって見えることがあります。
A. 国税庁は、詐欺や恐喝による損失は雑損控除の対象外と案内しています。暗号資産の売却などで利益が出ていた場合の扱いを含め、税務署や税理士に相談してください。
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。
サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。
LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。