法テラスの費用立替とは|詐欺の返金請求で弁護士費用を分割で払う条件

弁護士に依頼したいのに着手金をまとめて払えない。そんなときに使えるのが、法テラスの費用立替制度(代理援助・書類作成援助)です。法テラスが弁護士や司法書士に費用を払い、利用者は無利息で月々5,000円から1万円程度ずつ返していきます。

ただし、立て替えてもらったお金は、裁判に負けても、思った結果にならなくても全額返す必要があります。また、相手からお金を回収できる見込みがない事件は、援助の対象外になることがあります。詐欺の返金請求は、まさにこの点が問題になりやすい分野です。この記事では、法テラスが公開している「民事法律扶助のしおり」(2026年3月現在の標準額)をもとに、立替えの条件、費用の目安、返し方、詐欺事案で検討するときの注意点を順番に説明します。

立替制度は「代理援助」と「書類作成援助」の2種類

法テラスの立替制度には、依頼する範囲によって2つの種類があります。

種類弁護士・司法書士がすること向いている人
代理援助代理人として示談交渉、調停、訴訟を進める最初の交渉から専門家に任せたい人
書類作成援助裁判所に出す書類を作成する(手続きは本人が行う)費用を抑えて自分で手続きを進めたい人

代理援助の対象には、裁判の前に行う和解の交渉で特に必要と認められるものも含まれます。総合法律支援法第30条も、民事裁判等の手続きに先立つ和解交渉を立替えの対象として定めています。

どちらを使う場合でも、先に法テラスの無料法律相談を受けるのが原則です。相談を担当した弁護士・司法書士が事件の調書を作り、援助の申込みを審査に回します。すでに依頼する予定の弁護士がいて、その人が法テラスと契約していれば、その弁護士を通じて申し込むことで無料相談を省略できます。

立替えを受けるための3つの要件

次の3つをすべて満たすと、原則として援助開始が決定されます。

  1. 収入と資産が基準以下であること:単身なら手取り月収182,000円以下などの基準に加え、立替えの段階では有価証券や不動産の時価も含めて資産を判断します。
  2. 勝訴の見込みがないとはいえないこと:判決で勝てる見込みがある場合だけでなく、専門家がつくことで和解や示談による解決が期待できる場合も含まれます。
  3. 民事法律扶助の趣旨に適すること:報復や自己宣伝を目的とする訴訟、権利の濫用にあたる訴訟は援助されません。

詐欺事案で問題になりやすい点

しおりには、請求額が極端に少ない訴訟や、回収の可能性がない場合は、費用対効果の観点から援助できないと書かれています。さらに、外国で事件を処理する必要があるときは、要件を満たしていても援助できない場合があるとされています。

SNSで知り合った相手の本名も住所も分からない、振込先がすでに空の口座になっている、運営会社が海外にある。こうした詐欺の典型的な状況は、どれも回収の見込みや外国での処理という点で審査に影響しうる事情です。逆に、相手が国内の会社で所在がはっきりしている場合や、振込先の口座にお金が残っている場合は、見通しを立てやすくなります。

立替額の目安:100万円を請求する訴訟の場合

法テラスは、事件の種類ごとに標準的な立替額を公開しています。詐欺の返金請求に近い「訴額100万円の貸金返還請求を行い、100万円の返還を受けた場合」の例は次のとおりです。

項目代理援助書類作成援助
実費35,000円15,000円
着手金・初回報酬132,000円27,500円
報酬金110,000円なし
合計277,000円42,500円(書類作成1回のみ)

これはあくまで標準額で、事件の難しさによって着手金や報酬金が増えることがあります。印紙代などの実費が追加で必要になったときは、法テラスの決定を経て追加で立て替えてもらえる場合があり、その分も返済の対象です。

報酬金は、全面敗訴などの場合を除いて発生します。お金を回収できなかったとしても、勝訴判決を得たなど法的な成果があれば報酬金がかかる点は、見落としやすいので覚えておいてください。判決が出ても相手に財産がなければ回収はできないため、詐欺の相手に対して勝訴しても、報酬金の返済だけが残るという事態は理屈の上では起こりえます。

書類作成援助を選ぶと、費用と手間はどう変わるか

上の表のとおり、100万円の返還請求の例では、代理援助の合計277,000円に対して書類作成援助は42,500円です。差は大きいものの、書類作成援助では裁判所への出頭や相手とのやり取りを自分で行います。

書類作成援助が合いやすい人

  • 相手の氏名と住所がはっきりしていて、争点が少ない
  • 平日に裁判所へ出向く時間を確保できる
  • 請求額が大きくなく、費用を抑えることを優先したい

代理援助のほうが合いやすい人

  • 相手が反論してくる見込みがあり、交渉が長引きそう
  • 複数の相手や口座が関わっていて、事実関係が入り組んでいる
  • 体調や仕事の事情で、自分で手続きを進めるのが難しい

司法書士が関わる場合、扱えるのは簡易裁判所の事件で請求額が140万円を超えないものに限られます。被害額がこれを超えるなら、弁護士への依頼を前提に考えることになります。どちらが向いているかは、無料相談の担当者に「自分でやるなら何が必要か」を具体的に聞いてから決めても遅くありません。

返し方:毎月の分割と、回収できたときの一括精算

援助開始が決まると、事件の進行中から月々5,000円〜10,000円程度の分割で返済が始まります。返済月額は法テラスが決め、事件が終わった後は原則3年以内に完済できる金額に設定されます。利息はかかりません。

知っておきたい返済のルール

  • 負けた場合や望んだ結果にならなかった場合も、立替金は全額返す
  • 相手からお金を受け取ったときは、その中から立替金と報酬金を原則一括で精算し、残りを受け取る
  • 返済は給与や年金が入る口座からの自動引落が原則で、引落手数料(ゆうちょ銀行33円、その他の金融機関40円)は利用者の負担
  • 正当な理由なく滞納すると督促や法的手続きの対象になり、年3%の損害金もかかる

生活保護を受けている場合

生活保護を受けている人や、それに近いほど生計が苦しい人は、申請によって事件の進行中の返済を猶予してもらえる場合があります。事件終了後に返済の免除が認められることもあります。ただし、相手からお金を得たときは、原則としてその25%に当たる額を返済に充てるまで免除は受けられません。

申込みから契約までの流れと、そろえる書類

  1. 無料法律相談を受ける:担当の弁護士・司法書士に、依頼したい内容を伝えます。
  2. 援助申込書と法律相談票を出す:法律相談の後、1か月以内に法テラスの事務所へ提出します(FAXも可)。
  3. 審査用の書類を用意する:直近2か月分の給与明細と直近の賞与明細、または生活保護受給証明や非課税証明などの収入資料。世帯全員が載った住民票(本籍・筆頭者・続柄の記載があり、マイナンバーの記載がないもの)。返済用口座の資料。
  4. 審査・援助開始決定:書類がそろった段階で、法テラスが援助するかどうかを判断します。
  5. 三者契約:利用者、弁護士・司法書士、法テラスの三者で契約書を3通作り、1通を手元に保管します。

契約後は、法テラスが決めた場合を除いて、弁護士・司法書士に直接お金を払う必要はありません。日当などを直接請求されても払わないよう、しおりでも注意されています。

事件が進んでいる間は、担当の弁護士・司法書士に相談せずに相手と示談したり、訴えを取り下げたりしないことも大切です。その場合でも報酬金を払うことがあるとされています。引っ越しなどで住所や氏名が変わったときは、返済が終わるまで利用している地方事務所に連絡を入れてください。

詐欺の返金請求で立替えを検討する前に確かめたいこと

編集部の考えとして、詐欺被害で立替制度を使うかどうかは「相手が誰で、どこにお金が残っているか」がある程度見えてから決めるのが現実的です。次の点を無料相談の場で確認しておくと、判断しやすくなります。

  • 相手の氏名・住所・会社名が分かっているか:分からなければ、訴えを起こす前に相手を特定する手間と費用がかかります。
  • 振込先の口座は凍結されたか:凍結済みなら、口座に残った預金から被害額に応じて分配を受ける手続き(振り込め詐欺救済法)の対象になりうるので、訴訟の前にまずこちらを確かめます。
  • カード払いなら、カード会社への申し出が済んでいるか:訴訟とは別に並行して進められます。
  • 立替金を返し続けられるか:回収できなくても月々の返済は続きます。

一方で、「着手金ゼロで全額返金」などと広告で誘う業者に依頼する前に、法テラスで見通しを聞く意味は大きいと考えます。費用の相場は詐欺被害の弁護士費用相場、口座凍結後の手続きは振り込め詐欺救済法の口座凍結手続き、弁護士をかたる勧誘の見分け方は弁護士費用詐欺の見分け方で解説しています。

よくある質問

Q. 法テラスの費用立替を使って裁判に負けたら、返済はなくなりますか?

A. なくなりません。立替金は、敗訴した場合や望んだ結果にならなかった場合でも全額返す必要があります。生活保護を受けているなど生計が苦しい場合は、申請により返済の猶予や免除が認められることがあります。

Q. 海外の業者にだまされた場合も立替制度を使えますか?

A. 法テラスの資料では、外国で事件を処理する必要があるときは援助できない場合があるとされています。まず無料法律相談で、国内で取れる手続きがあるかを確かめてください。

Q. 着手金は弁護士に直接払うのですか?

A. 法テラスが立て替えて弁護士・司法書士に支払うため、原則として利用者が直接払うことはありません。利用者は法テラスに分割で返済します。

Q. 返済はいつから始まりますか?

A. 援助開始が決まった後、事件の進行中から月々5,000円〜10,000円程度の分割返済が始まります。事件の終了後は、原則3年以内に完済できる月額が法テラスによって決められます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。