SNSの恋人に荷物の受け取り・転送を頼まれたら|通関料の請求と加担の危険

会ったことのない恋人から荷物の受け取りを頼まれたら、引き受けずに断るのが安全です。頼みごとの形は大きく二つあり、一つは「あなた宛てに荷物を送るから受け取って」と言われ、受け取りの段階で通関料や手数料を請求されるもの。もう一つは「届いた荷物を指定の住所へ送り直して」と頼まれるものです。前者はお金を失う被害、後者は知らないうちに犯罪の流れに組み込まれる危険があります。

この記事では、国民生活センターが公表した相談事例と警察庁の統計をもとに、荷物にまつわる頼みごとの見分け方と、すでに受け取ったり転送したりしてしまった場合に何をすればよいかを説明します。

荷物の頼みごとは「受け取り型」と「転送型」に分かれる

国民生活センターは2020年2月の発表で、SNSやマッチングアプリで知り合った外国人から荷物を送ると言われ、受け取る際に通関料などを請求される相談が目立つと注意を呼びかけました。一方、2016年7月には「荷受代行」「荷物転送」をうたう仕事の相談について速報を出しています。恋愛のやり取りの中で持ちかけられる場合も、この二つの型に当てはめて考えると整理しやすくなります。

型頼まれ方の例起こりうること
受け取り型「プレゼントを送った」「私の財産を預かってほしい」配送業者や税関を名乗る連絡から、通関料・受取人払い・保管料などを請求される
転送型「私の代わりに荷物を受け取って、この住所へ送って」荷物の中身が不正な契約で手に入れた品物だった場合など、犯罪の受け渡し役にされるおそれがある

筆者は、転送型のほうがより警戒すべきだと考えています。受け取り型はお金を払わなければ被害は止まりますが、転送型は荷物を一度でも動かすと、自分の名前と住所が配送記録に残るからです。

受け取り型|「プレゼント」「資産」が届く前の請求

国民生活センターの事例には、次のようなものがあります。

  • ソマリアで従軍していると名乗る女性から荷物の受け取りを頼まれ、個人情報を伝えたところ、配送事業者を名乗る者から受取人払いで50万円かかると連絡が来た(50歳代男性)
  • アメリカ人を名乗る男性にギフトを贈ると言われて住所を教え、指定されたサイトで配送状況を確認すると30万円の通関手数料を求められ、無視するとペナルティーが加算されると連絡が来た(40歳代女性)
  • 相手と発送役の医師のパスポート画像が送られてきたため受け取りを了承し、税関で差し止められたとして約200万円を振り込んだところ、さらに約400万円を求められた(40歳代女性)
  • ネットで知り合った海外の女性が財産の一部を譲るとして、キャッシュカード入りの郵便物をアフリカの運送会社が預かっているとメールが届き、海外輸送手数料約400ドルと通関証明手数料1,400ドルを求められた(60歳代男性)

どの事例でも、請求は荷物が届く前に来ています。中身を確認できないまま「払わないと受け取れない」「期限を過ぎると加算される」と急かされる流れです。本物の税関や配送業者の手続きかどうかは、送られてきたリンクや電話番号ではなく、自分で調べた公式の窓口に問い合わせて確かめてください。税関は、関税局・税関が自動音声で電話をかけることはないと公式サイトで案内しており、実在する税関の番号が表示される電話でもいったん切って確認するよう求めています。税関の名をかたる請求の特徴は「税関で荷物が止まっている」名目の送金要求でまとめています。

転送型|受け渡し役にされるおそれがある理由

「受け取った荷物をそのまま別の住所へ送るだけ」という頼みは、手間も少なく、恋人の役に立てるように感じられます。しかし国民生活センターの2016年の速報では、荷物を転送するだけで報酬がもらえると誘われて身分証明書の画像を送った人が、知らない間に自分の名義で携帯電話を契約されていたという相談が紹介されています。不正に契約された携帯電話が届き、それを指定先へ送る役を担わされる仕組みです。

同じ速報は、数千円の報酬のつもりが、自分名義の契約を解約するために1契約あたり数万円の解約金や端末代金を払わなければならなくなる場合があると指摘しています。名義を使われた本人が、支払いの請求を受ける立場になるわけです。

詐欺の「受け子」と重なる役割

警察庁の統計では、令和7年にSNS型投資・ロマンス詐欺の受け子等として検挙された被疑者は304人でした。受け子等になった経緯は「SNSから応募」が119人、「知人等紹介」が115人です。荷物やお金を受け取って別の場所へ渡す役割は、本人に自覚がなくても、この流れの一部として扱われるおそれがあります。恋人の頼みだったという事情があっても、受け渡しをやめるのが先です。

引き受ける前に確かめたい4つの点

荷物の話が出た段階で、次の4点を自分に問いかけてみてください。一つでも答えに詰まるなら、断る理由として十分です。

  1. その荷物は、なぜ本人が直接受け取れないのか。海外にいる、忙しい、住所がないといった説明は、会ったことのない相手の言葉としては確かめようがありません。
  2. 中身と送り主を具体的に説明できるか。「開けないで」「中身は着いてから話す」と言われるなら、なおさら受け取るべきではありません。
  3. 身分証明書の画像を求められていないか。受取人の登録や通関のためと言われても、恋人に身分証の画像を送る必要はありません。
  4. 受け取りや転送にお金が絡んでいないか。手数料を払う話も、お礼を受け取る話も、どちらも危険な兆候です。

断り方に迷ったら、「会ってから直接受け取りたい」「自分の住所には家族宛て以外の荷物を受け取らないことにしている」と伝えるだけで十分です。理由を細かく説明する必要はありません。

「一度だけ」「今回が最後」という頼み方にも注意が必要です。最初の一回を引き受けると、次は「前回と同じようにお願い」と言われ、断る理由を見つけにくくなります。受け取り型でも転送型でも、最初の依頼の段階で線を引いておくほうが、後から抜け出すよりずっと簡単です。

「恋人を疑いたくない」ときの考え方

荷物を受け取ってほしいという頼みは、お金を貸してほしいという頼みより軽く聞こえます。自分の財布は痛まないうえ、「信頼しているからあなたに頼む」と言われれば、断るほうが冷たいように感じるかもしれません。

けれども、相手が本当にあなたを大切に思っているなら、あなたの名前と住所を危険にさらす頼みごとはしないはずです。筆者は、会ったことのない相手から荷物・お金・身分証のどれか一つでも頼まれた時点で、関係そのものを見直すきっかけにしてよいと考えています。断ったとたんに態度が急に冷たくなったり、「愛していないのか」と責められたりしたら、それ自体が答えになります。

一人で判断がつかないときは、やり取りの画面を信頼できる家族や友人に見せ、「この頼みを引き受けてよいと思うか」と聞いてみてください。第三者の目が入るだけで、違和感に気づけることがあります。国民生活センターも、周囲の人が気づいて支えたことで被害を防げた例があると紹介しています。

すでに受け取った・転送してしまったときの対処

まだ荷物が届いていない、または届いたばかりの場合

国民生活センターは、海外から身に覚えのない荷物が届いた場合は受け取りを拒否するよう呼びかけています。配達時に受け取りを断り、以後の荷物も同じように扱いましょう。手数料の請求には応じないでください。

転送してしまった場合

  • それ以上の転送をやめ、相手には新しい住所や個人情報を渡さない
  • 送り状の控え、追跡番号、配送業者名、転送先の住所、指示のメッセージを保存する
  • 報酬やお礼を受け取っていれば、その記録(振込明細など)も残す
  • 自分から警察に相談する。#9110でも最寄りの警察署でもかまいません

身分証明書の画像を送っていた場合

名義を使った携帯電話やクレジットの契約を防ぐため、信用情報機関への本人申告などの手続きを検討してください。契約された覚えのない請求が届いたら、その会社の公式窓口に連絡し、自分は契約していない旨を伝えます。個人情報を渡したあとの対応は詐欺被害で個人情報が漏洩した場合の対処も参考になります。

相談先と、相談のときに見せるもの

通関料などの請求を受けている段階なら、消費者ホットライン188で最寄りの消費生活センターにつないでもらえます。国民生活センターは、国際ロマンス詐欺は一度送金すると取り戻すのが非常に難しいため、支払う前に相談するよう呼びかけています。転送や受け取りに関わってしまった場合は、警察相談専用電話#9110か警察署へ連絡してください。

相談の際は、次のものがそろっていると話が早く進みます。

  • 相手のアカウント名、プロフィール画面、やり取りの画面
  • 荷物について頼まれたメッセージと、その日付
  • 配送業者・税関などを名乗る者からのメール、SMS、書面
  • 支払った場合は振込先と金額、受け取った場合は伝票の控え

保存の手順は出会い系詐欺の証拠保全を参照してください。SNSで知り合った相手とのお金の話全般はSNS型ロマンス詐欺とはでまとめています。

よくある質問

Q. 荷物の中身を知らずに転送しただけでも、問題になりますか?

A. 中身を知らなかったことを含め、どのような事情で関わったのかは個別に確認されることになります。確かなのは、転送を続けるほど関わりが深くなるという点です。気づいた時点で転送をやめ、指示のメッセージや伝票を保存して、自分から警察に相談してください。

Q. 恋人から届いたプレゼントの配送状況を見たら、通関手数料を請求されています。払うべきですか?

A. 支払いはせず、まず188に電話して最寄りの消費生活センターで相談を受けてください。国民生活センターは、荷物を受け取る際に手数料などを求められても支払わず相談するよう呼びかけています。案内されたサイトや電話番号ではなく、自分で調べた公式の窓口で確認しましょう。

Q. 住所と名前をすでに教えてしまいました。どうすればいいですか?

A. 心当たりのない荷物は受け取りを拒否し、代金引換や受取人払いの荷物には応じないでください。身分証の画像まで送っている場合は、信用情報機関への本人申告など名義の悪用を防ぐ手続きも検討してください。

Q. 転送のお礼としてお金を受け取っています。返したほうがいいですか?

A. 自分で相手に送り返すのは避けてください。受け取った記録を残したまま警察に相談し、どう扱うべきか指示を受けるのが安全です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。