恋人の関係者を名乗る弁護士・空港職員から電話が来たら|劇場型の確かめ方

SNSで知り合った恋人とのやり取りの途中で、「彼の弁護士です」「空港の職員ですが、あなたの婚約者を保護しています」「荷物を預かっている運送会社です」と、別の人物から電話やメールが届くようになったら、支払いの前に必ず立ち止まってください。複数の人物が役を分けて登場し、話に信ぴょう性を持たせる手口は、国民生活センターが「劇場型」と呼んで注意を呼びかけているものです。

この記事では、第三者を名乗る人物が出てきたときに、その肩書が本物かを自分で確かめる方法を肩書ごとに整理しました。電話がかかってきたときの受け答え、書類やメールの見方、支払い方法で見分けるポイント、相談先の順に説明します。

登場人物が増えたら「劇場型」を疑う

外務省は2025年4月の広域情報で、ロマンス詐欺の詐欺師は単独犯とは限らず、詐欺団を結成している場合も多いと注意しています。被害者を信じ込ませて送金させるため、共謀して友人や弁護士、空港係官などの役を演じたり、1年以上かけて信頼関係を築いてからだましたりする例もあるとしています。

国民生活センターも2020年の発表で、実在の税関をかたったと思われる通知文が送られてきた相談や、公的な機関に所属しているという第三者が登場して支払いを迫る劇場型の手口がみられると紹介しました。

恋人ひとりの言葉だけなら疑えても、弁護士や役所の人間が同じ話をすると、急に本当らしく聞こえるものです。筆者は、お金の話に恋人以外の人物が加わった時点で、話の真偽を疑う段階に入ったと考えるべきだと思います。本物の弁護士や公的機関が、会ったこともない恋人の代わりにあなたへ支払いを求めてくる状況は、ほとんど考えられないからです。

名乗られやすい肩書と、それぞれの確かめ方

第三者の肩書は、恋人の話の筋書きに合わせて選ばれます。下の表は、公的機関の資料に出てくる設定と、その肩書が本物かを確かめるための一般的な方法をまとめたものです。

名乗る肩書よく使われる言い分確かめ方
弁護士「彼の財産を相続させる手続きに費用が要る」「契約違反で訴えられている」日本弁護士連合会の弁護士検索で、名前や登録番号から現在登録されているかを調べる
空港係官・現地警察「経由地で拘束された。保釈金が必要」日本人が海外で拘束されたなら、現地の日本国大使館・総領事館や外務省に相談する
運送会社・配送業者「荷物を預かっている。受取人払いの料金が必要」案内されたサイトではなく、自分で調べた会社の公式窓口に問い合わせる
税関「荷物が差し止められている。通関料を払え」税関の公式サイトに載っている税関相談官の窓口に、自分でかけ直す
国連・軍・大使館の職員「休暇の許可」「退役の手続き」に費用が要る外務省領事サービスセンターや現地の在外公館に問い合わせる

日本弁護士連合会の弁護士検索では、現在登録されているすべての弁護士の基本情報を確認できます。検索で見つかった場合でも、その弁護士の事務所の電話番号を自分で調べてかけ直し、本人が本当にその件を扱っているかを確かめてください。名前だけを借りた「なりすまし」の可能性があるためです。

電話がかかってきたときの受け答え

第三者を名乗る電話は、急を要する内容で冷静さを奪うように作られています。次の3つを守るだけで、その場で支払いに追い込まれることはかなり防げます。

  1. その場で約束しない。「確認してから折り返します」とだけ伝えて電話を切ります。相手の名前、所属、電話番号、話した内容はメモしておきます。
  2. 折り返しは自分で調べた番号へ。相手が伝えてきた番号にかけ直すと、同じ仲間につながるだけです。税関も、実在する税関の番号が表示される電話であっても、いったん切ってから税関に相談するよう案内しています。
  3. 自動音声の案内は疑う。税関の公式サイトには、関税局や税関から自動音声の電話をかけることはないとはっきり書かれています。

国際電話番号からの着信を減らす

警察庁は、+1や+44など、日本の国番号+81以外で始まる番号からの電話に注意するよう呼びかけています。自宅の固定電話なら、無料で国際電話の発着信を止める手続きがあり、申込先は国際電話不取扱受付センター(電話0120-210-364、ウェブ申込みも可)です。オペレーターの受付は平日午前9時から午後5時まで、自動音声は24時間です。手続きが難しいと感じる場合は、最寄りの警察署でも相談に応じています。携帯電話の場合は、見知らぬ番号や国際電話番号からの着信には出ない設定を検討してください。

メールや書類の「本物らしさ」に頼らない

第三者を名乗る人物は、公印の入った書類、ロゴ入りの請求書、パスポートや身分証の画像などを送ってくることがあります。国民生活センターの事例でも、相手とその関係者のパスポート画像が送られてきたことで信用し、高額の手数料を払ってしまった相談が紹介されています。

こうした書類の見た目は、本物かどうかの判断材料になりません。画像はいくらでも作れますし、実在する組織の名前やロゴを使うことも簡単です。メールアドレスも同じで、税関は、自らのドメインのアドレスを不正に使った「なりすましメール」が送られた事例があると公表しています。差出人の表示が公的機関のアドレスに見えても、それだけで本物とはいえません。

確かめるときの基本は一つです。送られてきた連絡先は使わず、その組織の公式サイトを自分で検索して、そこに載っている窓口に問い合わせる。これだけで、多くのなりすましは見分けられます。

支払い先で見分ける|公的な手続きならありえない払い方

肩書や書類よりも見分けやすいのが、支払い方法です。次のような払い方を求められたら、名乗っている組織が何であれ、支払わずに相談してください。

  • 個人名義の銀行口座への振込
  • ギフトカードやプリペイドカードの番号を送るよう指示される
  • 暗号資産を買って、指定のアドレスに送るよう求められる
  • 現金を宅配便やレターパックで送るよう言われる
  • 「今日中」「数時間以内」と期限を切られ、確認する時間を与えられない

外務省の広域情報には、「あなたに会うため日本へ向かっているが、経由地で現地警察に拘束され、保釈金が必要」という例が挙げられています。同じ広域情報で外務省は、こうした状況に接したら一人で抱え込まず、家族などの近しい人や警察、現地の日本国大使館・総領事館に相談するよう呼びかけています。恋人の知人を名乗る人物に、個人の判断で保釈金を送るという流れ自体が不自然だと考えてください。

第三者が現れたタイミングに注目する

第三者がいつ登場したかも、見分ける手がかりになります。国民生活センターの事例では、銀行で海外送金を断られたことを伝えた直後に、国連を名乗る機関から別の送金先を指示されています。外務省の広域情報でも、渡航の途中で拘束された、仕事の契約を解除するには違約金が要るなど、恋人本人がお金を払えない事情を作ったうえで、関係者が支払いを求める筋書きが紹介されています。

振り返ってみて、次のような流れになっていないか確かめてください。

  • 自分が送金を渋った、または銀行に止められた直後に、第三者から連絡が来た
  • 恋人と連絡が取れなくなったのと入れ替わるように、第三者が話を進めている
  • 第三者の連絡先を教えたのは恋人本人で、自分で調べた窓口からは同じ話が出てこない

当てはまるなら、恋人と第三者は同じ筋書きの中にいると考えるのが自然です。恋人に「その人は本当に弁護士なの?」と尋ねても、同じ側の答えが返ってくるだけなので、確認は必ず外部の公式窓口で行ってください。

相談先と、伝えるときのポイント

第三者から支払いを求められている段階なら、送金の前に次の窓口へ相談してください。

  • 警察相談専用電話 #9110、または最寄りの警察署
  • 消費者ホットライン 188(最寄りの消費生活センターにつながります)
  • 外務省領事サービスセンター(海外での拘束や大使館職員を名乗る連絡について。代表03-3580-3311)

相談のときは、登場した人物ごとに「名乗った名前・肩書・連絡手段・最初に連絡が来た日・求められた金額」を一覧にしておくと、話が伝わりやすくなります。恋人本人とのやり取りと、第三者とのやり取りを分けて保存しておくのもポイントです。

第三者からの連絡は、夜間や週末など、相談窓口が閉まっている時間を選んで来ることもあります。すぐに相談できないときは、身近な家族や友人に電話の内容を話し、「窓口が開くまでは払わない」と声に出して約束しておくだけでも、その場の勢いで送金してしまうことを防ぎやすくなります。

すでに支払ってしまった場合は、振込先の金融機関への連絡を急いでください。手続きは出会い系で振込した後の対処法で説明しています。税関の名をかたる請求については「税関で荷物が止まっている」名目の送金要求、軍人を名乗る相手の手口は軍人をかたる男性との出会い系詐欺も参考にしてください。

よくある質問

Q. 恋人の弁護士を名乗る人から「訴えられたくなければ払え」と連絡が来ました。

A. 支払う前に、日本弁護士連合会の弁護士検索でその名前が登録されているかを調べ、事務所の番号に自分でかけ直して確認してください。確認できない場合や、個人名義の口座を指定された場合は、支払わずに#9110へ相談してください。

Q. 空港で恋人が拘束されたと、空港職員を名乗る人から電話がありました。

A. 外務省は、経由地で現地警察に拘束され保釈金が必要だという話を、ロマンス詐欺の口実の例として挙げています。支払わずに、外務省領事サービスセンターや警察に相談してください。

Q. 運送会社からのメールで、追跡番号も本物のように見えます。

A. メールに記載されたリンクや電話番号は使わず、運送会社の公式サイトを自分で検索して問い合わせてください。受け取りに料金がかかると言われても、国民生活センターは手数料などを支払わずに相談するよう呼びかけています。

Q. 第三者と恋人の話が一致しています。それでも疑うべきですか?

A. 話が一致しているのは、同じグループが役を分けているためかもしれません。外務省も、詐欺師が共謀して友人や弁護士、空港係官などを演じる例があると注意しています。一致していることを安心材料にせず、公式の窓口で確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。