取引所を名乗るメール・SMSは本物?偽サポートと口座乗っ取りの確かめ方

「お客様の口座に不正アクセスがありました」「本人確認を更新しないと出金を停止します」。国内の暗号資産取引所の名前でこうしたメールやSMSが届いても、本文のリンクから開いた画面にはIDやパスワード、認証コードを入れないでください。本物かどうかは、届いたメッセージの中ではなく、自分で開いた公式アプリや金融庁の登録一覧に載っている情報で確かめます。

この記事は、実在する登録業者を名乗る連絡が届いた人、LINEやSNSで「サポート担当」から声をかけられた人、すでにログイン情報を入力してしまった人に向けたものです。登録業者そのものではなく、その名前をかたる第三者への備えを扱います。

登録業者の名前をかたる連絡に見られる形

日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)は、詐欺に遭わないための情報ページで、実在する団体や取引所を装う手口と、カスタマーサポートを名乗る手口を取り上げています。そこで挙げられている形を、連絡の入口ごとに整理すると次のようになります。

入口よくある文面・誘導狙われるもの
メール・SMS不正ログインの通知、本人確認の更新、口座凍結の予告ID、パスワード、二段階認証のコード
LINE・SNSのDM「サポート担当です」「口座開設のご案内」個人情報、本人確認書類、入金
検索結果・SNS広告公式サイトに似せたページや偽アプリログイン情報、アプリ経由の入金
ウォレット接続の案内「接続すると報酬がもらえる」「エアドロップ」ウォレット内の資産、秘密鍵・リカバリーフレーズ

JVCEAは、見た目が似ていても微妙に異なるURLの例として「jvcea.or.jp」を「jvcea.co.jp」に変えたものを挙げています。取引所の名前も同じように、1文字の違いやドメインの末尾の違いで本物に見せかけられることがあります。

届いた連絡を本物か確かめる順番

確かめる作業は、届いたメッセージを使わずに進めるのが基本です。

  1. メッセージ内のリンクと電話番号は使わない:リンクを押す前に、差出人アドレスや表示されたURLを控えておくだけにします。
  2. 公式アプリか、ブックマークしてある公式サイトから入る:本当に口座に問題があるなら、ログイン後のお知らせ画面にも表示されるのが普通です。
  3. 金融庁の登録一覧で代表電話番号を確かめる:暗号資産交換業者登録一覧には、業者ごとの本店所在地と代表電話番号が載っています。電話で確かめる場合は、メッセージに書かれた番号ではなく一覧や公式サイトの番号にかけます。
  4. 業者の公式サイトの注意喚起ページを見る:自社をかたるメールやSMSが出回っている場合、公式サイトで注意を呼びかけていることがあります。

金融庁も、同庁を装ったメールについて「当庁から直接皆様へ本人確認を行うことや現金等の支払いを要求することはありません」と注意を呼びかけています。行政機関や業界団体の名前が出てきたときも、同じ順番で確かめてください。

電話がかかってきた場合

取引所の担当者を名乗る電話で「不正送金を止めるために、いまから届くコードを教えてください」と言われるケースも考えられます。電話口では何も操作せず、いったん切ってから、登録一覧や公式サイトに載っている番号へ自分でかけ直してください。相手が本物の担当者であれば、かけ直すことで困ることはありません。着信番号、名乗った氏名、話の内容はその場でメモしておくと、後で相談するときに役立ちます。

偽サイト・偽アプリで見落としやすいところ

本物そっくりの画面を前にすると、デザインやロゴでは判断できません。見るべきなのは、画面の外側にある情報です。

URL

アドレスバーのドメインを、公式サイトのものと1文字ずつ比べます。「-」や「.」の位置、末尾の「.com」「.net」「.jp」の違い、英字のlと数字の1、英字のOと数字の0の入れ替えがよく使われます。スマートフォンではURLが途中で省略されることがあるため、長押しや共有メニューで全体を表示させると確かめやすくなります。

アプリの発行元

アプリストアの配布ページでは、アプリ名ではなく発行元(デベロッパー)の名前を見ます。取引所の公式サイトからアプリストアへのリンクをたどれば、少なくとも正しい配布ページにたどり着けます。JVCEAも、正規の取引所や金融機関の名前・ロゴをまねたアプリを配布し、インストールさせて情報を盗む手口を挙げています。

検索広告

JVCEAは、検索結果やSNS広告に偽サイトが紛れ込むことがあるとも注意しています。取引所名で検索して一番上に出たリンクが公式とは限りません。

絶対に渡してはいけない情報

取引所の口座を守るうえで、次の情報はどんな理由をつけられても他人に伝えたり、案内されたページに入力したりしないでください。

  • 二段階認証(多要素認証)のコード:SMSや認証アプリに表示される数字は、ログインや出金の最後の鍵です。「本人確認のために読み上げて」と言われても応じません。
  • 秘密鍵、リカバリーフレーズ(シードフレーズ):JVCEAは、これらを教えることは財布ごと渡すのと同じだとして、「本人確認」「復元のため」といった理由でも入力・共有しないよう呼びかけています。
  • ログインパスワード:正規の取引所のサポートが、電話やチャットでパスワードを尋ねることは通常ありません。
  • 本人確認書類の画像や顔写真:公式アプリの手続き以外で送ると、別の口座開設などに悪用されるおそれがあります。

JVCEAは2025年6月、金融庁との意見交換を踏まえ、会員に対して利用者のログイン時の多要素認証を必須とするよう求めることを公表しました。多要素認証は強力な対策ですが、コードそのものを相手に渡してしまえば役に立ちません。

ログイン情報やコードを入力してしまったとき

偽のページにIDやパスワードを入れた、あるいは認証コードを伝えてしまった場合は、時間との勝負になります。JVCEAが示している初動の流れを参考に、次の順で動いてください。

  1. 正規の公式アプリ・サイトからパスワードと二段階認証の設定を変更する:同じパスワードを他のサービスでも使っていれば、そちらもすべて変えます。
  2. 取引所の公式サポートに連絡する:問い合わせフォームや公式サイトに載っている窓口から、不正ログインの疑いを伝え、出金の停止ができないか相談します。JVCEAは、サービスによっては資産の凍結や調査に対応できる場合があるとしています。
  3. ログイン履歴と出金履歴を確認する:覚えのない出金や送付先アドレスの登録がないかを見て、画面を保存します。
  4. ウォレットを接続した場合は連携を解除する:接続を続けると資産を抜き取られる危険があります。
  5. クレジットカードを入力した場合はカード会社へ:利用停止と再発行を依頼します。

すでに資産が外部へ送られていた場合の考え方は、ウォレットを乗っ取られた場合の確認事項でも取り上げています。

被害を記録して相談する

国民生活センターによると、全国の消費生活センター等が受けた暗号資産に関する相談は、2025年度に8,132件がPIO-NETに登録されています(2026年5月31日現在の集計)。相談の中身はさまざまですが、乗っ取りや偽サポートの被害は、あとから経緯を説明するのが難しくなりがちです。気づいた時点で、次のものを保存しておきます。

  • 届いたメール・SMSの全文と、差出人・受信日時(メールはヘッダー情報も)
  • 誘導されたページのURLと画面のスクリーンショット
  • LINEやSNSのアカウント名、IDと、やり取りの画面
  • 取引所のログイン履歴、入出金履歴、送付先アドレスとトランザクションID

保存の方法は証拠の残し方で説明しています。相談先は、詐欺の疑いがあれば警察相談専用電話#9110か最寄りの警察署、勧誘の手口について相談したいときは消費者ホットライン188です。取引所の名前をかたる連絡を受けたこと自体は、名前を使われた取引所にも知らせておくと、注意喚起につながることがあります。JVCEAにもウェブのお問い合わせフォームがあります。

日ごろからできる予防

名前をかたる連絡は、登録業者の口座を持っている人ほど本物らしく感じます。次の習慣をつけておくと、届いたときに迷わずに済みます。

  • 取引所の公式サイトはブックマークか公式アプリからだけ開き、検索結果の広告枠からは入らない
  • 取引所からの連絡を受け取るメールアドレスを、他のサービスと分けておく
  • 出金先アドレスの登録に承認手続きを設けている取引所なら、その設定を有効にしておく
  • 取引所のお知らせ欄と、なりすましに関する注意喚起を時々見ておく

これらは被害を完全に防ぐものではありませんが、偽の連絡に気づくきっかけを増やします。とくに、不安をあおる文面(「24時間以内に手続きしないと資産が失われる」など)が来たときほど、いったん画面を閉じて、落ち着いて公式アプリを開き直すことが大切です。自分では判断がつかない連絡が来たら、操作をする前に家族や相談窓口に一度見てもらうのも有効です。

よくある質問

Q. 取引所から「口座を凍結する」とSMSが来ました。本物か見分ける方法は?

A. SMSのリンクや電話番号は使わず、公式アプリやブックマークした公式サイトにログインしてお知らせを確認します。電話で確かめたいときは、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧か公式サイトに載っている番号にかけてください。

Q. LINEで取引所のサポート担当を名乗る人から連絡が来ました。

A. JVCEAは、LINEやメールでサポート担当を名乗り、個人情報や資金をだまし取ろうとする手口を注意喚起しています。取引所の公式サイトでLINEの窓口が案内されているか確かめ、分からないうちは返信や入金をしないでください。

Q. 偽サイトにパスワードを入れましたが、まだ残高は減っていません。何をすべきですか?

A. 公式アプリからパスワードと二段階認証を変更し、取引所の公式サポートに不正ログインの疑いを伝えます。ログイン履歴や出金先アドレスの登録に覚えのない操作がないかも確認し、画面を保存しておきましょう。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。