「遺産を受け取ってほしい」というDMやメールは詐欺?遺産相続を名目にした手口

見知らぬ相手や、SNSで親しくなった相手から「遺産を受け取ってほしい」「相続した財産の受け取りに協力して」と持ちかけられ、その前提として手数料・税金・送金費用を求められたら、払わず、返信も控えてください。外務省は、遺産相続などの架空の話を持ちかけ、手数料や前金の名目でお金を振り込ませる手口を「419事件」として紹介し、形を変えながら今も続いていると注意を促しています。

この記事では、遺産の話がどんな入口から届くのか、お金を求める名目がどう移っていくのか、日本の相続の仕組みから見て何がおかしいのか、そして返信や支払いをしてしまった後に何をすべきかを取り上げます。X(旧Twitter)のDMで届いた人にも、メールで届いた人にも当てはまる内容です。

遺産の話が届く3つの入口

1. 見知らぬ差出人からの一斉送信

外務省の海外安全ホームページには、アフリカの産油国の弁護士を名乗る人物から、現地で成功した日本人夫妻が事故で亡くなり、同じ名前のあなたを親族として12億円以上の遺産を相続させたい、手続き料200万円を送ってほしい、というメールが届いた例が載っています。故人の弁護士や、紛争地の有力者の家族を名乗る文面、慈善団体や大学などの団体に「遺産が寄付されることになった」と伝える文面も紹介されています。

2. SNSで親しくなった相手から

DMでやり取りを重ねた相手が、ある時期から「親の遺産を相続した」「遺産の受け取りに手続きが要る」と話し始める形です。恋愛感情や信頼ができた後に持ち出されるため、見知らぬ差出人の一斉送信より断りにくくなります。東京弁護士会は2026年2月、SNSで知り合った人物から多額の報酬を約束され、手数料などの名目でお金をだまし取られる事例が複数あるとして注意を呼びかけました。

3. 有料のサイトやアプリへの誘導

大阪府は、SNSで知り合った資産家を名乗る人物から「高額の資金援助をする」と言われ、個別にやり取りするために指示された有料サイトで利用料を払ったが、お金は受け取れなかったという相談について、いわゆるサクラサイトの手口だと説明しています。「遺産を渡すための連絡用」と称してサイトに誘う場合も、同じ構図が考えられます。

お金を求める名目は、段階ごとに変わっていく

外務省の説明では、話に乗ると、遺産の現金化や海外送金にかかる手数料、現地政府に納める税金などの経費が必要だとして、数百万円の送金を求められます。そして手数料を払い込むと、それ以降の連絡は途絶えるとされています。

SNSで親しくなった相手の場合は、次のように少しずつ名目が変わっていく流れに注意してください。

  1. 受け取りの意思確認:「あなたを受取人にしたい」と伝え、氏名・住所・口座番号・身分証の写しを求める。
  2. 最初の手数料:「書類の作成費」「弁護士の立会い費用」など、比較的少ない金額を求める。
  3. 税金や送金費用:「日本に送るには税金を先に払う必要がある」と、より大きな金額を求める。
  4. トラブルの解決費:「送金が止められた」「追加の審査が入った」と、さらに支払いを重ねさせる。

警察庁も、ロマンス詐欺では架空の事実を口実にさまざまな名目でお金を求めてくると説明し、出金などを理由に送金を重ねて求められる場合がほとんどだとしています。一度払うと「ここでやめたら今まで払った分が無駄になる」という思いから、次の支払いも断りにくくなりがちです。最初の要求の段階で止めることが、被害をいちばん小さくします。

日本の相続の仕組みから見た「おかしな点」

日本の相続では、誰が相続人になるかは民法で決まっています。相続人ではない人が財産を受け取るのは、亡くなった人が遺言でその人に財産を譲ると定めていた場合などに限られます。この前提に照らすと、遺産の話には次のような不自然さがあります。

持ちかけられる話おかしな点
同じ名字だから親族として相続できる名字が同じだけで相続人になることはない。
会ったこともない資産家があなたに遺産を託した面識のない人を遺言で指定する理由が説明されない。
受け取る前に手数料や税金を送ってほしい受け取る側が、見知らぬ代理人の口座へ先にお金を送る形になっている。
急いで、誰にも言わずに進めて確認の時間と、家族に相談する機会を奪う働きをしている。

外務省は、この種の話の特徴として、急ぐよう迫ること、何十億円もの大金が関わると強調すること、秘密を守るよう求めることを挙げています。この3つがそろっていれば、話の中身を確かめる前に距離を置いて構いません。

また外務省は、見ず知らずの相手に銀行の口座番号などを教えたり、話に乗ってお金を振り込んだりすると、思わぬことに巻き込まれるおそれがあると警告しています。一度返事をすると、共犯の疑いをかけられる危険もあるとしています。

「弁護士」「銀行」の書類が出てきたら

遺産の話では、故人の弁護士、遺産を管理する銀行、送金を担う会社などを名乗る別の人物が登場し、書類や身分証の画像を送ってくることがあります。

日本弁護士連合会は、LINEなどでは弁護士になりすました人物が偽造した身分証を見せ、本物だと信じ込ませる手口が報告されていると注意を呼びかけています。データの加工は簡単なので、画像に載っている名前や写真が実在の弁護士のものでも、SNS上のやり取りだけで本人と判断するのは大変危険だとしています。東京弁護士会は、日本弁護士連合会の弁護士検索で電話番号を調べ、その事務所に自分から電話して確かめるよう案内しています。

海外の弁護士や銀行を名乗る場合、日本の検索では確認できないことがほとんどです。外務省は、確認が必要な案件に思えるときは、国際法に通じた弁護士などに相談するよう勧めています。相手が示した連絡先や「提携の弁護士」には連絡しないでください。

送られてきた書類ごとの確かめ方は、資産家を名乗る相手の「証拠」の確かめ方で詳しく扱っています。

X(旧Twitter)のDMや、団体あてに届いたとき

XのDMで届いた場合

XのDMは、フォローしていない相手からもメッセージを受け取れる設定になっていることがあります。遺産の話がDMで届いたら、次の点を見てください。

  • 相手のアカウントは最近作られたものではないか。投稿がほとんどなく、フォロワーも少ないのに、資産家や弁護士を名乗っていないか。
  • DMの中のリンクや、「詳しくはこちらで」と別のアプリやサイトへ移るよう求めていないか。
  • 返事をしていないのに、似た内容のDMが別のアカウントから続けて届いていないか。

当てはまるなら、返信せずに画面を保存し、Xの報告機能で知らせたうえでブロックして構いません。DMを受け取る相手の範囲は、Xの設定から絞ることもできます。

会社や団体あてに届いた場合

外務省は、個人だけでなく、慈善団体や研究所、大学などに「亡くなった日本人の遺言で遺産が贈られることになった」と持ちかける例も紹介しています。団体の窓口で受け取った担当者が一人で判断せず、上司や事務局と共有し、先方に送金や口座情報の提供をしないよう、組織として決めておくと安心です。

返信した・個人情報を送った・払ってしまった後

どこまで進んでしまったかによって、やることが変わります。

  • 返信しただけ:以後は返信しない。同じ相手から別の名前で連絡が来ることもあるため、届いたメッセージは消さずに保存しておきます。
  • 氏名・住所・生年月日を伝えた:家族に事情を話し、しばらくは不審な電話や郵便物、訪問に用心します。
  • 口座番号を伝えた:取引のある金融機関に連絡し、口座に不審な入出金がないか見てもらいます。知らないお金が振り込まれても、指示に従って引き出したり送ったりしないでください。
  • 身分証の写しを送った:悪用が心配なときは、警察や消費生活センターに相談し、取るべき対応を聞いてください。
  • 手数料などを払った:追加の支払いを止め、振込先の金融機関に口座の凍結を相談し、警察に届け出ます。

払ってしまった後に、「遺産は確かにある。最後の手続き費用だけ払えば受け取れる」と言われることがあります。外務省の説明のとおり、手数料を払っても遺産が届くことはなく、支払いを重ねるほど被害が大きくなります。やり取りの記録は、DMやメールの画面、振込の控え、送られてきた書類の画像をまとめて保存してください。記録の取り方は証拠の残し方にあります。

相談先

  • 最寄りの警察署・#9110:お金を払った、口座番号や身分証を渡した、脅されているとき。
  • 消費者ホットライン 188:有料サイトやアプリへの支払いが絡むとき。
  • 弁護士会の法律相談センター:取り戻す手段や、相手とのやり取りの止め方を相談したいとき。

相談のときは、最初に届いたメッセージ、相手が名乗った名前と肩書き、払った日と金額、振込先を時系列でまとめておくと説明しやすくなります。相談の進め方は相談の流れを参考にしてください。払ったお金が戻ってくるかどうかは、払い方と時期で大きく左右され、保証はできません。

よくある質問

Q. 遺産の受取人に選ばれたというメールが届きました。本物の可能性はありますか?

A. 面識のない相手から、受け取りの前に手数料や税金を送るよう求める話であれば、外務省が注意を呼びかけている419事件と同じ形です。本当に相続や遺贈の手続きがあるなら、受け取る側が見知らぬ代理人に先払いする形にはなりにくいため、返信せず、気になるときは消費生活センターや弁護士会に相談してください。

Q. XのDMで親しくなった相手から「親の遺産の受け取りを手伝って」と言われました。

A. 会ったことのない相手から遺産や財産の話が出て、その過程でお金や口座番号を求められたら、送金も情報の提供も控えてください。実際に会ったことのない人がお金の話を始めたら要注意だ、というのが警察庁の呼びかけです。

Q. 少額の手数料なら払っても大丈夫ですか?

A. おすすめできません。外務省の説明では、手数料を払い込むとその後の連絡は途絶えるとされ、払っても遺産が届くわけではありません。SNSで親しくなった相手の場合は、名目を変えて支払いを重ねさせる流れも考えられます。最初の支払いを止めることが、被害をいちばん小さくする方法です。

Q. 相手から弁護士の身分証が送られてきました。本物かどうか確かめる方法は?

A. 日本の弁護士なら、日本弁護士連合会の弁護士検索で名前を調べ、載っている事務所の電話番号に自分からかけて確認します。相手が教えた番号やメールアドレスは使いません。海外の弁護士を名乗る場合は確認が難しいため、その時点でお金を送らない判断をしてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。