資産家を名乗る相手の「証拠」は本物?残高画面・弁護士の身分証・送金予約の確かめ方

資産家や、離婚・相続で財産を得たと話す相手が、銀行の残高画面、弁護士の身分証、送金予約や配送状況の画面を送ってきても、その画像だけで本物と判断しないでください。日本弁護士連合会は、データの加工は容易であり、身分証の画像がどれほど本物らしく見えても、SNSで見せられただけでは弁護士本人である証明にならない、という趣旨の注意喚起を出しています。

確かめる方法は1つで、発行元とされる機関に、自分で調べた連絡先から問い合わせることです。それができない、または相手が嫌がるなら、その時点でお金を送らない判断をして構いません。この記事では、相手が見せてくる「証拠」の種類ごとの確かめ方と、友人や知人の紹介で知り合った場合に気をつけたい点をまとめます。

相手が信用させるために見せてくる「証拠」

公的機関の注意喚起を読むと、信用させるための材料として次のようなものが出てきます。

見せてくるもの公的機関が紹介している使われ方
パスポートや身分証の画像国民生活センターの2020年の注意喚起で、相手がパスポートを送って信頼させた事例が紹介されている。
弁護士の身分証日本弁護士連合会・東京弁護士会が、LINE上で偽造した弁護士の身分証を見せる手口を報告している。
配送状況の確認サイト国民生活センターの同じ注意喚起で、指定されたサイトで荷物の配送状況を確かめたところ、手数料の支払いが表示された事例がある。
投資アプリの利益画面警察庁は、初めは利益が出たように見せかけ、出金しようとするとさらに送金を求める流れを示している。
銀行の残高・送金予約の画面「資産はある」「送金の予約は済んでいる」と示すために使われることがある。見た目だけでは真偽を決められない。

どれも、相手が用意した画像や、相手が教えたサイトの中でしか確認できない点が共通しています。確認の経路を相手が握っている限り、それは確認になりません。

画像や画面で本物かどうかを決められない理由

1つめの理由は、加工が簡単なことです。日本弁護士連合会が指摘するとおり、名前や写真、登録番号を差し替えた画像は誰でも作れます。翻訳アプリやAIの広がりで、誰でも別人を演じられるようになった点は警察庁も指摘しています。

2つめは、本物の画像が盗用される場合があることです。東京弁護士会の注意喚起は、名前も登録番号も所属事務所も、さらに顔写真まで実在の弁護士のものだった場合を想定したうえで、それでもSNSで見せられただけで本人だと決めつけないよう求めています。画像が本物でも、それを送ってきた相手が本人とは限りません。

3つめは、サイトそのものが偽物の場合があることです。配送状況や送金状況を「確認できる」と教えられたサイトは、相手が作ったものかもしれません。そこに表示される数字や手数料の請求は、相手がいくらでも書き換えられます。

筆者の考えでは、「証拠を見せられた」と感じた瞬間こそ、確認の手順に切り替える合図です。本当に資産がある相手なら、あなたが別の経路で確かめることを嫌がる理由はないはずです。

証拠の種類ごとの確かめ方

弁護士の身分証・弁護士からの書面

日本の弁護士であれば、日弁連(日本弁護士連合会)が公開している検索ページで名前を引き、表示された事務所の番号にこちらから電話をかけます。東京弁護士会もこの方法を案内しています。書面に載っている電話番号や、相手から教えられた番号は使いません。所属事務所のウェブサイトで、自分は関与していないと公表している弁護士もいます。

海外の弁護士・銀行・送金会社

日本の検索では確かめようがないことがほとんどです。外務省も、遺産相続などを持ち出す国際的な詐欺に関して、確かめる必要がありそうなら国際的な法律問題に詳しい専門家へ相談するよう促しています。確認できないまま送金を求められているなら、送らないことを先に決めてください。

銀行の残高・送金予約の画面

銀行は、口座の持ち主以外に残高や送金の予定を教えないのが普通です。つまり、あなたの立場からは確かめる手段がありません。確かめられないものを根拠に、お金を送る判断はしない、と決めておくのが現実的です。

配送状況の追跡サイト

相手が教えたURLではなく、運送会社の名前を自分で検索して公式サイトを開き、伝票番号を入れます。公式サイトに出てこない、または国際郵便なのに聞いたことのない会社名しか出てこない場合は、その荷物が存在しない可能性を考えてください。

パスポートや運転免許証の画像

身分証の画像は、他人のものを流用したり、名前や写真を差し替えたりできます。国民生活センターが紹介した事例でも、相手はパスポートを送ってきたうえで手数料を求めていました。身分証の画像を受け取ったことは、相手が誰かを確かめたことにはなりません。反対に、こちらの身分証の画像を求められても送らないでください。

投資アプリ・取引所

金融庁は、免許・許可・登録を受けている事業者の一覧を公表しています。暗号資産交換業者や金融商品取引業者として登録があるかを、この一覧で確かめます。載っていない業者に送金するのは避けてください。

友人や知人の紹介で知り合った場合も、確認は省かない

SNS型ロマンス詐欺の入口は、令和7年の警察庁統計で92.8%がダイレクトメッセージでした。ただ、共通の知人を通して紹介された、SNSのグループで友人から教えられた、というきっかけもあります。紹介者がいると、相手の話を確かめる前に安心してしまいがちです。

次の点を落ち着いて考えてみてください。

  • 紹介者本人は、相手に会ったことがあるか:紹介者もSNS上でしか知らないなら、確認はまだ誰も済ませていません。
  • 紹介者もお金を送っていないか:紹介者自身が「利益が出た」「受け取りの手続き中」と話しているなら、紹介者も同じ話の中にいる可能性があります。
  • 紹介者と相手の関係は何か:「昔からの知り合い」と言われても、具体的にいつどこで知り合ったのかが出てこない場合は注意します。

紹介者に確かめるときは、責める言い方を避け、「一緒に確認したい」と伝えるほうが話が進みます。紹介者が善意であっても、紹介者も同じ相手にだまされている場合があるからです。警察庁の統計では、令和7年に犯人側が名乗った身分の地域の約6割が日本(国内)でした。「日本人だから」「知人の知人だから」という理由だけで、確認を省く根拠にはなりません。

確認を持ちかけたときに気をつけたい相手の反応

本物かどうかを別の経路で確かめたい、と伝えたときの反応も判断材料になります。次のような返事が来たら、送金を止める理由として十分です。

  • 「疑うなら、この話はなかったことにする」「信じてくれないなら別れる」と、関係を人質に取る。
  • 「今日中に払わないと資産が凍結される」「期限が過ぎると受け取れない」と、急がせる。
  • 「この弁護士に確認して」と、相手側の人物の連絡先を差し出す。
  • 「家族や銀行には言わないで」と、第三者に相談させない。

急がせる、金額の大きさを強調する、口外を禁じる。外務省が国際的な詐欺の特徴として挙げるこの3点は、確認を拒むときの反応とよく重なります。

家族が「証拠」を見せてきたときの話し方

親やきょうだいが「この人は本当にお金持ちで、ほら証拠もある」と画像を見せてきたとき、頭から否定すると、本人は相手をかばう側に回りやすくなります。画像の真偽を言い争うより、確かめる作業を一緒にやるほうが話が進みます。

  • 「弁護士の名前、一緒に日弁連の検索で調べてみよう」と、具体的な手順を提案する。
  • 「振込先の名義は誰になっている?」と、事実だけを聞く。
  • 「確かめて本物なら、それで安心できるよね」と、相手との関係を否定しない形で伝える。

家族だけで話が進まないときは、#9110や消費生活センターに家族から相談することもできます。本人を責めない姿勢を保つことが、次の送金を止めるいちばんの近道です。

送ってしまった後と、「取り戻せる」という連絡

すでにお金を送っていたら、まず追加の送金を止めます。相手とのトーク、送られてきた証拠の画像、教えられたサイトのURL、振込や送金の記録を保存し、振込先の金融機関と警察に連絡してください。手順の詳細は、財産分与を口実にされた場合を扱った離婚した資産家を名乗る相手に頼まれたときや、証拠の残し方にまとめています。

被害に遭った後に、「弁護士が取り戻せる」「被害回復の手続きがある」と声をかけてくる相手にも注意が必要です。日本弁護士連合会は、弁護士になりすます手口が、進行中の詐欺の途中だけでなく、被害に遭って困っている人に対して被害救済の名目で行われる場合もあると警告しています。弁護士に相談するときは、SNSで声をかけてきた人ではなく、弁護士会の法律相談センターから探してください。

相談先は、最寄りの警察署か #9110、支払いの相談なら消費者ホットライン 188 です。相談の前にチェックリストで手元の記録を整理しておくと、説明が短く済みます。送ったお金が戻るかどうかは状況によって違い、必ず戻るとは限りません。

よくある質問

Q. 相手が送ってきた弁護士の身分証は、登録番号も実在しました。信じてよいですか?

A. それだけでは判断できません。実在の弁護士の名前や番号を借りた偽の身分証が使われる例を、東京弁護士会が報告しています。日弁連の検索ページで事務所の番号を調べ、こちらから電話をかけて、本人がその件に関わっているかを聞くのが確実です。

Q. 銀行の残高証明の画像を見せられました。本物か確かめる方法はありますか?

A. 銀行は口座の持ち主以外に残高を教えないのが普通なので、あなたの側から確かめる方法はほとんどありません。確かめられない画像を根拠にお金を送らない、と決めておくのが安全です。

Q. 友人の紹介で知り合った資産家から投資に誘われています。友人は信頼できる人です。

A. 友人が善意でも、友人自身も相手に会ったことがない、あるいは同じ話でお金を送っている場合があります。投資先が金融庁の登録業者一覧に載っているか、振込先が個人名義でないかを確かめ、確認できないうちは送金しないでください。

Q. 「弁護士に頼めば被害金を取り戻せる」という連絡が来ました。

A. 日本弁護士連合会は、被害に遭った人に対して被害救済の名目で弁護士になりすます手口も報告しています。SNSやメッセージで声をかけてきた相手ではなく、弁護士会の法律相談センターなど、自分で調べた窓口に相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。