「離婚して資産がある」と名乗る相手のロマンス詐欺|財産分与を理由に頼まれたら

会ったことのない相手が「離婚して財産分与で資産を得た」と話し、そのうえで弁護士費用や口座の凍結を解く費用、税金などの立替を頼んできたら、送金はいったん止めて、家族か公的な窓口に相談してください。財産分与は元の夫婦の間の話し合いか家庭裁判所の手続きで決まるもので、交際中の第三者が費用を肩代わりする場面は、手続きの仕組みから見て考えにくいものです。

この記事は、InstagramのDMやマッチングアプリで知り合った「離婚した資産家」とやり取りしていて、お金の話が出てきた人に向けて書いています。警察庁の統計で分かっていること、財産分与を口実にしたお金の頼まれ方、送る前に確かめたい点、送ってしまった後の動き方を順に説明します。

「離婚した資産家」という人物像が使われやすい理由

警察庁は、SNSなどで知り合い、会わないまま連絡を重ねて恋愛感情や親近感を抱かせ、お金をだまし取るものを「SNS型ロマンス詐欺」と定義しています。令和7年の確定値では、犯人側が名乗った職業として投資家が627件、会社員が507件、会社役員が378件ありました。名乗った身分の地域は日本(国内)が3,461件で、全体の約6割を占めています。「海外の軍人」や「外国の医師」だけが典型ではなく、国内のお金に余裕がありそうな人物を演じる例も多い、ということです。

なお、警察庁の統計に「離婚した」という身の上を数えた項目はありません。そのうえで筆者の見方を書くと、「離婚した資産家」という設定は、独身でいる理由・お金を持っている理由・寂しさを打ち明ける理由を一度に用意できるため、恋愛感情を育てる筋書きに組み込みやすいと考えられます。

最初の接触に使われたツールは、令和7年の場合、1位がマッチングアプリで1,846件、2位がInstagramで1,288件、3位がFacebookで1,049件でした。この3つで全体のおよそ7割です。お金の話が出る段階の連絡手段はLINEが9割を超えています。DMで知り合い、早い段階でLINEに移ろうと言われた流れは、統計に表れている典型と重なります。

財産分与を理由にしたお金の頼まれ方

警察庁が挙げるロマンス詐欺の送金名目には、結婚や二人の将来のための資金、仕事で必要なお金の立替、投資、会うための旅費、荷物を送るための手数料などがあります。「離婚した資産家」の設定では、これらが財産分与の話と結びついて出てくることがあります。たとえば次のような説明です。

  • 「元妻(元夫)との財産分与が終わるまで口座が動かせない。弁護士に払う分だけ一時的に立て替えてほしい」
  • 「分けてもらった不動産の名義を変えるのに税金がかかる。手続きが終われば倍にして返す」
  • 「分与金が海外の口座にあり、日本に移す手数料が必要」
  • 「分与された資産を運用して増やしている。二人の将来のために一緒に始めよう」

上の文言は、よくある筋書きを示すための例です。どれにも共通するのは、「資産はあるが、今は使えない」という説明で少額から頼み、あとで大きく返すと約束する形です。4つめのように投資へ誘う型は、警察庁が手口の流れとして示している「投資サイトへの誘導」「出金時の追加送金の要求」にそのままつながります。

投資をすすめられている場合は、相手に暗号資産の買い方を教わっているときの確認もあわせて読んでください。

家庭裁判所の手続きから見て、ここが不自然

裁判所の案内によると、財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚するとき、または離婚後に分けるものです。話し合いがまとまらなければ、相手方の住所地などの家庭裁判所に調停を申し立てます。申立ての費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手で、申立てができるのは離婚した日の翌日から5年まで(令和8年4月1日より前に離婚した場合は2年まで)とされています。

この仕組みと、相手の説明を照らし合わせてみてください。

相手の説明照らし合わせると
手続きの費用が足りない調停の申立て費用そのものは数千円程度。何十万円もの立替を交際相手に頼む理由にはなりにくい。
弁護士費用を立て替えて弁護士費用は依頼した本人と弁護士の間の契約。第三者の口座へ振り込ませる形は、確認が必要な点が多い。
分与が終わるまで全ての口座が使えない本当に資産がある人が、会ったこともない相手に少額を頼まなければならない状況自体が不自然。
税金や手数料を先に払えば受け取れる支払いの必要があるなら、税務署や金融機関など支払先が明確なはず。個人名義の口座を指定されたら要注意。

警察庁は、投資話について「本物なら個人名義の口座を振込先に指定されることはまずない」「振込のたびに口座が変わることもない」と注意を促しています。財産分与の立替でも、振込先が相手本人とも弁護士事務所とも関係のない個人名義なら、その時点で送金をやめる理由になります。

InstagramのDMから始まったときに見ておきたい点

警察庁の統計では、最初の接触手段の9割以上がダイレクトメッセージで、ツール別ではInstagramがマッチングアプリに次いで多くなっています。Instagramで知り合った相手について、次の点を落ち着いて見直してみてください。

  • 声をかけてきたのはどちらか:投稿に反応したわけでもないのに、相手から突然DMが届いたのなら、同じ文面を多くの人に送っている可能性も考えます。
  • 投稿の中身と時期:高級車や旅行、ホテルの写真ばかりで、本人の生活の様子が見えない。アカウントを作った時期が最近。写真の雰囲気が投稿ごとにばらばら。こうした点が重なるなら、他人の写真を集めたアカウントかもしれません。
  • すぐにLINEへ移ろうとしたか:知り合って間もないうちにLINEへ移るよう求められるのは詐欺の可能性がある、と警察庁も指摘しています。警察庁の説明はマッチングアプリの例ですが、InstagramのDMでも同じことが言えます。
  • 質問への答え方:離婚の時期や住んでいる街について聞くと、答えがあいまいだったり、前に聞いた話と食い違ったりしないか。

気になるアカウントは、Instagramの報告機能で知らせることもできます。ただし報告やブロックの前に、プロフィールとDMの画面を保存しておいてください。後で警察に相談するときの手がかりになります。

送る前に自分に確かめたい5つの質問

  1. 実際に会ったことがあるか:警察庁は、会ったことのない人からお金の話が出たら注意するよう呼びかけています。ビデオ通話ができた場合の考え方は電話やビデオ通話ができたら本物かで扱っています。
  2. 相手の話を自分で裏付けられるか:名乗った会社名や肩書き、弁護士の名前を、相手が教えたURLではなく自分で検索して確かめられるか。
  3. 振込先は誰の名義か:相手本人の名前でも、弁護士事務所でもない個人名義なら危険信号です。
  4. 家族や友人に話せるか:「二人だけの秘密に」「家族に言うと話が壊れる」と言われているなら、それ自体が確認を妨げる働きをしています。
  5. 断ったときの反応はどうか:少し待ってほしいと伝えただけで、急に責めたり、別れをほのめかしたりしないか。

1つでも答えに詰まるなら、送金は保留にして構いません。本当に信頼できる相手なら、確認のための時間を取っても関係が壊れることはないはずです。

すでにお金を送ってしまったときの動き方

最初にやるのは、追加の送金を止めることです。「あと少しで分与金が入る」「最後の手数料」と言われても応じないでください。そのうえで、次の順に進めます。

  1. 記録を残す:相手のプロフィール画面、LINEのトーク、送られてきた書類の画像、振込の控えを保存します。相手にブロックされる前に、画面ごと撮っておくのが確実です。手順は証拠の残し方にまとめています。
  2. 振込先の金融機関に連絡する:銀行振込なら、自分の銀行と振込先の銀行に詐欺の疑いを伝え、口座の凍結を相談します。凍結された口座にお金が残っていれば、振り込め詐欺救済法に基づいて被害額に応じた分配を受けられることがあります。
  3. 暗号資産で送った場合:利用した交換業者に連絡し、送金の記録(日時・数量・送金先アドレス)を確保します。
  4. 警察に届け出る:最寄りの警察署に、記録を持って相談します。迷うときは #9110 へ。

被害に遭った後は、「取り戻してあげる」という連絡にも気をつけてください。日本弁護士連合会は2026年3月、SNS上で弁護士になりすまし、偽造した身分証を見せて信用させる手口が、被害に遭った人に向けて被害救済の名目で行われることもあると注意を呼びかけています。

相談先と、家族が気づいたときの接し方

  • #9110(警察の相談専用窓口):詐欺かどうか分からない段階でも話を聞いてもらえます。
  • 最寄りの警察署:お金を送った後の相談や被害届。
  • 188(消費者ホットライン):地元の消費生活センターの相談員と話せます。サイトの利用料やアプリへの支払いが絡む場合も対象です。
  • 弁護士会の法律相談センター:お金を取り戻す手段を相談したいとき。弁護士を探すときは、SNSで声をかけてきた相手ではなく、弁護士会の窓口から探してください。

家族が気づいた場合、相手を頭ごなしに否定すると、本人がかえって相手をかばうことがあります。「その人の会社名を一緒に調べてみよう」「振込先の名義を見せて」と、確かめる作業を一緒にする形のほうが話を進めやすくなります。相談前に整理したい点はチェックリストを使ってください。送ったお金が戻るかどうかは、送金方法や時期、相手口座の状況によって変わり、必ず戻るとは限りません。

よくある質問

Q. 「離婚して資産がある」と言う相手は、みんな詐欺なのですか?

A. そうとは限りません。離婚を経験した人が資産を持っていること自体は珍しくありません。注意が必要なのは、会ったことのない段階で、財産分与や口座の凍結を理由にお金の立替や投資を持ちかけてくる場合です。その組み合わせが出たら、送金を保留して相談してください。

Q. 財産分与の手続きに、本当にお金がかかることはありますか?

A. 家庭裁判所に調停を申し立てる場合、収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手が必要です。弁護士に依頼すれば弁護士費用もかかりますが、それは依頼した本人と弁護士の契約です。会ったこともない交際相手が肩代わりする仕組みにはなっていません。

Q. 相手から弁護士の身分証の画像が送られてきました。信じてよいですか?

A. 画像だけで判断しないでください。東京弁護士会は、実在する弁護士の名前や登録番号、顔写真が使われていても、SNS上のやり取りだけで本人と即断するのは危険だとしています。日本弁護士連合会の弁護士検索で事務所の電話番号を調べ、自分から電話して確かめます。

Q. 離婚した資産家を名乗る相手に送金しました。返金は期待できますか?

A. 送金方法と時期によって変わります。銀行振込で相手口座にお金が残っていれば、口座の凍結を経て、振り込め詐欺救済法に基づく分配の対象になることもあります。ただ、必ず戻るわけではありません。まず追加の送金を止め、記録を残して金融機関と警察に連絡してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。