マッチングアプリの相手に暗号資産の買い方を教わっている人へ|送る前の確認

マッチングアプリで知り合った相手が、交換業者の口座の作り方から暗号資産の買い方、送り先のアドレスまで丁寧に教えてくれる。この段階にいる人に伝えたい結論は一つです。会ったことのない相手が指定する宛先には、1円分も送らないでください。一度も対面していない相手が金銭の話を持ち出したら詐欺を疑うよう、警察庁も繰り返し呼びかけています。警察庁の令和7年の統計でも、ロマンス型の被害で相手と最初に接した場所はマッチングアプリが1,846件と最多でした。

この記事は、まだ送っていない人、少額だけ送ってしまった人の両方に向けて書いています。相手とのやり取りのどこで立ち止まればよいか、交換業者の送付画面で何が確認の手がかりになるか、アプリ運営や公的窓口へどうつなぐかを順に説明します。特定の人物やサービスを詐欺と決めつける記事ではありません。

「一緒に始めよう」から送付までに踏まされる段取り

国民生活センターが公表した相談事例では、マッチングアプリで知り合った相手とメッセージアプリに移ったあと、結婚後の生活資金を理由に暗号資産の購入を勧められ、相手が指定した先へ数日にわたって送った結果、連絡が途絶えたケースが紹介されています。相談の多くは、次のような順番で進みます。

  1. アプリ内で数日やり取りしたあと、LINEなど別のアプリに移ろうと言われる
  2. 毎日のように連絡が来て、将来の話や家族の話が増える
  3. 相手が「自分は暗号資産で資産を増やしている」と画面を見せてくる
  4. 国内の交換業者で口座を作るよう勧められ、手順をスクリーンショット付きで教わる
  5. 購入したビットコインやUSDTを、相手が案内する投資サイトの入金アドレスへ送るよう指示される
  6. 最初の少額は利益が付いて出金でき、次はもっと大きな額を勧められる

国内の交換業者で口座を作り、自分の名義で購入する部分だけを見れば、手続きそのものは正規のものです。問題はその先の「送り先」にあります。自分の口座で買った暗号資産も、相手の指定するアドレスへ送った瞬間に手元を離れ、原則として取り消せません。相手が親切に手順を教えてくれるほど、最後の一押しの危うさが見えにくくなります。

送付ボタンを押す前に確かめたい5つの点

次のうち一つでも答えられない項目があれば、送付は見送るのが筆者の結論です。

1. 送り先は「誰の、何のアドレス」か

アドレスの文字列だけを見ても、持ち主が誰なのかは分かりません。「投資プラットフォームの入金口」と説明されても、その運営会社の名前、所在地、登録番号を相手が示せないなら、送る根拠がありません。

2. 運営会社は金融庁の一覧に載っているか

日本で暗号資産の売買や交換を業として行う事業者は、資金決済法にもとづいて暗号資産交換業の登録を受けなければなりません。登録済みの業者は金融庁が一覧で公表しており、令和8年9月1日現在の掲載数は27です。案内された投資サイトの運営者名がこの一覧にも、金融庁の金融事業者検索にも見当たらない場合は、送付を止める十分な理由になります。

3. 相手と実際に会ったことがあるか

写真、声、ビデオ通話は本人確認になりません(通話については電話・ビデオ通話で話せた相手の確かめ方で詳しく扱っています)。一度も会っていない相手から投資や送金の話が出た時点で、いったん手を止めてください。

4. 小さな出金の成功を根拠にしていないか

少額の出金に応じるのは、信用させて次の入金を引き出すための典型的な段取りとされています。「前回は戻ってきた」は安全の証明になりません。

5. 家族や第三者に話せる内容か

「二人だけの秘密にしよう」「家族に言うと反対される」と口止めされていたら、それ自体が強い警告です。送る前に信頼できる人へ画面を見せ、説明してみてください。説明しながら違和感に気づくことはよくあります。身近に話せる人がいなければ、#9110に「送る前の相談」として電話しても構いません。

交換業者の送付画面で聞かれることは立ち止まる合図

2023年6月に施行された改正犯罪収益移転防止法により、国内の交換業者には、利用者から依頼を受けて暗号資産を送る際の「トラベルルール」への対応が求められるようになりました。日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の案内によると、送り先が一定の国・地域で登録を受けた交換業者であれば、送り手と受取人に関する情報を送付先の業者へ通知します。個人のウォレットや無登録業者宛ての場合も、交換業者は送り先の属性を調べてリスクを評価することになっています。

このため、多くの交換業者では送付の手続き中に、受取人の氏名、送り先の業者名や種類、送付の目的といった項目を入力する画面が出ます。ここで次のような状態になったら、手を止めてください。

  • 受取人の名前を相手に聞かないと書けない、または相手が教えてくれない
  • 送り先の業者名が分からず、「個人のウォレット」「その他」を選ぶしかない
  • 送付目的を正直に書くと「知人に勧められた投資」になる
  • 相手から「この欄にはこう書いて」と入力内容を指示される

本当に信頼できる相手なら、受取人の名前や送り先の業者名を尋ねられて困ることはないはずです。入力欄を埋められないのは、送り先の実態が見えていないということです。交換業者の問い合わせ窓口に「知人に勧められてこのアドレスへ送ろうとしている」と相談すれば、注意点を教えてもらえる場合があります。交換業者からの確認の連絡を「面倒な手続き」とみなさず、判断材料として使ってください。

相手に渡してはいけない情報と、させてはいけない操作

手取り足取り教わるうちに、次のものを相手に渡してしまう人がいます。渡したものは取り戻せないので、送金と同じくらい慎重に扱ってください。

渡してはいけないもの渡した場合に起こりうること
交換業者のログインIDとパスワード相手があなたの口座を操作し、残高を勝手に送る
SMSやアプリに届く認証コードログインや送付の最後の確認を突破される
ウォレットの復元フレーズ(12語や24語の英単語)ウォレットの中身をそのまま持ち出される
運転免許証やマイナンバーカードの画像あなた名義の口座やアカウントを勝手に作られる

もう一つ気をつけたいのが、「自分の代わりに受け取って、別のアドレスへ送ってほしい」という頼みごとです。警察庁は、SNS型ロマンス詐欺で被害者が「投資の手伝い」などの名目で自分の口座に入ったお金を別の口座へ送らされ、マネー・ローンダリングの道具として使われる事例があると注意を促しています。この場合、被害者であるはずのあなたが組織的犯罪処罰法違反に問われるおそれもあります。口座やアカウントを他人のために使うことは、どんな理由があっても断ってください。

マッチングアプリ運営への報告と、相手の情報の控え方

国民生活センターは、マッチングアプリの利用規約が外部サービスへの誘導を禁じている場合があると指摘し、そうした行為を持ちかけられたら運営会社へ報告するよう勧めています。報告は、相手がアプリを退会してしまう前に行うのが理想です。

報告の前に、次の情報を画面の撮影などで手元に残しておきます。

  • アプリ上のプロフィール(表示名、年齢、自己紹介、職業、写真)
  • アプリ内のメッセージ全体(特に外部アプリへ移ろうと誘われた部分)
  • 移行先で使われたLINEのIDやアカウント名
  • 投資サイトのURL、交換業者の口座開設を勧めたメッセージ、送付先アドレスを指示したメッセージ

アプリ運営に報告しても、相手の身元を教えてもらえるわけではありません。それでも、同じアカウントが別の利用者に近づくのを止めるきっかけになります。報告を済ませたら相手をブロックし、別のアカウントから連絡が来ても応じないでください。やり取りの残し方をもっと細かく知りたい人はLINEと暗号資産の送付記録を残す手順も参考になります。

すでに一部を送ってしまった場合の連絡先

少額でも送ってしまったなら、今すぐ追加の送付を止め、次の順に連絡してください。

  1. 利用した交換業者:送付の日時、数量、送付先アドレスを伝え、詐欺の疑いがあることを申告します。送付そのものを取り消すことは原則としてできませんが、口座の保全や今後の注意について案内を受けられます。
  2. 警察:警察相談専用電話#9110で相談し、最寄りの警察署に被害を届け出ます。
  3. 金融庁:金融サービス利用者相談室に、詐欺的な投資の相談専用番号0570-050588があります(電話は平日10時〜17時、ウェブは24時間)。相手に案内された投資サイトの情報も伝えておきましょう。
  4. 消費生活センター(188):マッチングアプリの運営やサイトとのやり取りについて、進め方を相談できます。

送った後に取れる手段は、支払い方によって大きく変わります。銀行振込と暗号資産の送付で何が違うのかは暗号資産を送った後に取り戻せる場合と難しい場合、送付直後の具体的な動き方は仮想通貨を送金してしまった場合の対応手順にまとめています。専門家への相談を考える場合は当サイトの相談予約も使えますが、返金を約束できるものではありません。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手に交換業者の口座開設を手伝ってもらいました。口座を作っただけでも危ないですか?

A. 口座を作っただけで直ちにお金が失われるわけではありません。ただ、ログイン情報や認証コード、本人確認書類の画像を相手に送っていたら、すぐにパスワードを変え、交換業者に連絡してください。送付の指示にはこれ以上応じないことが大切です。

Q. 少額なら出金できました。本物の投資ではないのですか?

A. 初めに小さな額を引き出させて安心させ、その後で大きな入金を求める展開は、公的機関が紹介する相談事例で何度も確認されています。一度引き出せた実績があっても、それで安心はできません。運営会社が金融庁の登録一覧に載っているかを先に確かめてください。

Q. マッチングアプリで知り合った相手が指定したアドレスが、どこの交換業者のものか調べられますか?

A. アドレスの文字列から持ち主を特定するのは、一般の利用者には難しいのが実情です。送付を依頼しようとしている交換業者に問い合わせるか、送る前に警察相談専用電話#9110へ相談してください。

Q. 相手とビデオ通話もしています。それでも疑うべきですか?

A. 警察庁は、AIなどを使えば本人の音声や動画まで作れてしまうとして、電話やビデオ電話で仲良くなっても会ったことがなければ注意するよう呼びかけています。通話できたかどうかではなく、お金の話が出たかどうかで判断してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。