Facebookで知り合った相手に暗号資産を送った後|取り戻せる場合と難しい場合

Facebookで知り合った相手に好意を持ち、勧められるまま投資資金や暗号資産を送ってしまった。取り戻せるかどうかは、お金がどういう形で相手に渡ったかでほぼ決まります。日本円を国内の銀行口座へ振り込んだのであれば、振り込め詐欺救済法の手続きで一部が戻る可能性があります。一方、暗号資産を相手のアドレスへ送った場合、この法律は使えず、回収のハードルは大きく上がります。

この記事では、支払い方ごとに使える制度と限界を整理し、「必ず取り戻せる」とうたう勧誘に引っかからないための注意点もあわせて説明します。筆者の結論を先に書くと、制度の違いを知ったうえで、まず警察と送金に使った金融機関・交換業者に同じ日のうちに連絡するのが最善です。

Facebook発のロマンス被害は金額が大きくなりやすい

警察庁によると、SNS型ロマンス詐欺で最初の接点がFacebookだった被害は、令和7年に1,049件(全体の18.6%)ありました。令和8年上半期の暫定値では件数が449件で、マッチングアプリとInstagramに次ぐ3番目ですが、被害額では63.2億円とマッチングアプリの67.7億円に迫る2番目です。単純に割ると1件あたり約1,400万円となり、ロマンス型全体の既遂1件あたり984.1万円を大きく上回ります。

Facebookでは、実名風のプロフィールや長い投稿履歴があるアカウントから友達申請が届くため、相手を「身元のはっきりした人」と感じやすい面があります。警察庁も、SNSで友達申請してきた相手と連絡を取り合ううちに恋愛感情を抱き、投資用アプリを入れて指定口座へ振り込んだ事例を紹介しています。Meta(FacebookとInstagramの運営会社)に対しても、警察は犯人が使ったアカウントの停止を求めて情報を送っています。令和7年の件数は422件で、そのうちSNS型投資・ロマンス詐欺にかかわるものが351件でした。

まず「お金がどう動いたか」を仕分ける

取り戻す手段を考える前に、支払い1回ごとに次のどれに当たるかを確かめてください。1つの被害の中に複数の型が混ざっていることも珍しくありません。

特に分かりにくいのがBです。交換業者の銀行口座へ振り込んだ場合、振込先の名義は交換業者ですが、入金されたお金が誰のアカウントに入り、どこへ送られたかによって、使える手続きが変わります。自分で判断せず、交換業者と振込先の銀行、警察の三者に同じ内容を伝えておくのが安全です。

支払いの形主な連絡先使える可能性がある制度
A:日本円を個人や会社名義の銀行口座へ振り込んだ振込先の銀行、警察振り込め詐欺救済法による被害回復分配金
B:日本円を交換業者の口座へ振り込み、相手の指示で暗号資産に換えたその交換業者、振込先の銀行、警察個別の事情による(口座の名義や入金先アカウントで変わる)
C:自分の交換業者アカウントから暗号資産を相手のアドレスへ送った自分が使った交換業者、警察振り込め詐欺救済法は対象外。刑事手続での被害回復給付金、民事での請求
D:相手に勧められた海外業者や個人ウォレットを経由した警察、国民生活センター越境消費者センターCと同じで、相手の特定がさらに難しい

銀行の振込明細、交換業者の取引履歴、トランザクションIDをそろえておくと、この仕分けが正確にできます。記録の集め方はLINEと送付記録の残し方で詳しく説明しています。

銀行振込なら振り込め詐欺救済法の手続きがある

一般に振り込め詐欺救済法と呼ばれる法律(平成19年法律第133号)は、詐欺などで預金口座への振込みが使われた場合に、その口座に残っているお金を被害者に分配する仕組みを定めています。

  1. 被害者が振込先の銀行と警察に連絡します。捜査機関からの情報なども踏まえて不正利用の疑いがあると銀行がみれば、その口座の入出金が止められます(第3条)。
  2. 銀行の求めにより、預金保険機構がその口座の預金債権を消滅させる手続きの開始を公告します。名義人などが権利を主張できる期間は、公告の翌日から60日以上です(第5条)。
  3. その後、分配金の支払手続が公告され、被害者は30日以上の申請期間内に、被害を示す資料を添えて銀行に申請します(第11条・第12条)。

どの口座が手続きに入ったかは、預金保険機構が運営する公告専用のウェブサイトで口座番号や名義から調べられます。注意したいのは、分配されるのは口座に残っていたお金の範囲に限られることです。犯人がすでに引き出していれば、戻る額はわずか、あるいはゼロになります。時間がたつほど残高は減っていくため、振込に気づいたらその日のうちに銀行へ連絡してください。手続きの流れは振込後の口座凍結と救済法の手順でも解説しています。

暗号資産で送った場合に残る道と、その限界

暗号資産の送付は銀行振込ではないため、振り込め詐欺救済法の対象になりません。ブロックチェーン上の送付は、送った側から取り消すこともできません。それでも、次のような道は残っています。

送付先が国内の交換業者のアカウントだった場合

国内の交換業者は本人確認を行ったうえで口座を開設しているため、捜査の過程で送付先アカウントの名義人が明らかになることがあります。警察に届け出る際、送付先アドレスとトランザクションIDを必ず伝えてください。

刑事手続による被害回復給付金

組織的な詐欺やマネー・ローンダリングが絡む事件では、刑事裁判で犯人から没収・追徴された財産を金銭化し、被害者に給付する「被害回復給付金支給制度」があります。検察庁によると、平成18年12月1日から始まった制度で、支給手続が始まると検察庁のウェブサイトなどで事件ごとに案内されます。ただし、犯人が検挙され、財産の没収・追徴まで進んだ事件に限られます。

民事での請求

だまされてした意思表示は民法第96条で取り消すことができ、不法行為による損害賠償を求める道もあります。ただ、請求するには相手の氏名や住所が分からなければなりません。Facebookのプロフィールに書かれた名前が本名とは限らず、海外にいると名乗る相手ならなおさら特定は困難です。弁護士に相談する場合も、回収の見込みと費用を最初に確かめてください。相談前の整理は弁護士に相談する前の準備が役立ちます。

期限にも気をつける

民法では、詐欺を理由とする取消しは追認できる時から5年、行為の時から20年を過ぎるとできなくなります(第126条)。損害賠償の請求についても第724条に期間の定めがあり、被害と相手の両方を知ってから3年、だまされた行為から20年のどちらかが過ぎると請求できなくなります。相手が分からないうちは期限が問題になりにくいとはいえ、名義人が判明したときに慌てないよう、記録は長く保管しておいてください。スマートフォンを買い替えるときは、画面の保存データやトーク履歴を移し忘れないよう注意が必要です。

「取り戻せます」という連絡は二次被害を疑う

被害に遭った人のもとには、「暗号資産の追跡ができる」「着手金を払えば全額回収する」といった連絡が届くことがあります。Facebookの広告やメッセージ、検索結果から誘導されるケースもあります。国民生活センターは、投資したお金を取り戻すなどと被害回復をうたう団体に注意するよう呼びかけており、二次被害につながるおそれを指摘しています。

次のような話が出たら、その場で契約や支払いをしないでください。

  • 「今払えば、凍結されたあなたの資産を解除できる」
  • 「警察や弁護士と提携している」と言いながら、事務所名や登録番号を示さない
  • 回収の成功を約束し、費用を暗号資産で払うよう求める
  • 最初の加害者しか知らないはずの情報を知っている

検察庁も、検察官や検察庁をかたった虚偽の公告に注意を呼びかけています。給付金の手続きがあるかどうかは、自分で検察庁の公式サイトを開いて確かめるのが確実です。弁護士に依頼する場合は、日本弁護士連合会の弁護士情報検索などで登録を確認できます。

今日やること・今週やること

今日

  • 相手への追加の支払いを止める。「最後の手数料」と言われても払わない
  • 銀行振込があれば、振込先の銀行に電話して口座の凍結を依頼する
  • 暗号資産を送った交換業者に、送付の日時・トランザクションID・送付先アドレスを伝える
  • #9110に電話し、警察署へ行く日を決める

今週

  • 警察署で被害を届け出る。やり取りの記録、振込明細、取引履歴を持っていく
  • 消費生活センター(188)や、海外業者が絡む場合は国民生活センター越境消費者センター(CCJ)に相談する
  • 家族や信頼できる人に事情を話し、ひとりで判断しない体制をつくる

送金の直後に何をすべきかは仮想通貨を送金してしまった場合の対応手順、警察庁の統計で見た被害の傾向はロマンス詐欺の暗号資産被害の統計にまとめています。当サイトの相談予約から専門家につなぐこともできますが、返金や回収を保証するものではありません。

よくある質問

Q. Facebookで知り合った相手に暗号資産で送ったお金にも、振り込め詐欺救済法は使えますか?

A. 使えません。この法律は預金口座への振込みを利用した犯罪を対象にしているためです。ただし、暗号資産を買うために日本円を銀行口座へ振り込んだ部分があれば、その振込先によっては対象になる可能性があるので、銀行と警察に相談してください。

Q. 被害回復給付金の手続きが始まったかどうかは、どうやって知ればよいですか?

A. 支給手続を行っている事件は、検察庁のウェブサイトの被害回復給付金支給制度のページに一覧で掲載されます。検察庁を名乗る電話やメールで知らされた場合は、公式サイトで事件が載っているかを自分で確かめてください。

Q. 相手のFacebookアカウントが消えてしまいました。もう何もできませんか?

A. アカウントが消えても、保存しておいたプロフィールやメッセージの画面、送金の記録は証拠として使えます。警察への届け出はそのまま進められます。

Q. 弁護士に頼めば必ず取り戻せますか?

A. 相手の特定ができない、財産が残っていないといった理由で回収できない場合もあります。依頼前に、回収の見込み、費用の総額、回収できなかった場合の扱いを書面で確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。