ロマンス詐欺の暗号資産被害は増えている?警察庁統計とX(旧Twitter)の位置

結論から書くと、恋愛感情を利用して暗号資産を送らせる被害は、ここ2年で急速に増えています。令和7年の確定値を見ると、相手の指定したアドレスへ暗号資産を送らされた「暗号資産送信型」のロマンス被害は2,177件で、前年の約2.8倍に膨らみました。さらに令和8年上半期には被害額の57.5%を占めて、銀行振込による被害額を上回りました。

一方、X(旧Twitter)が最初の接点になったケースは、ロマンス型の中では多くありません。この記事では、警察庁の公表資料をもとに全体の件数と金額、暗号資産の比重、Xを含む入口ごとの割合、年代と性別の傾向を順に確認し、数字から見えてくる注意点をまとめます。統計は警察が把握した件数であり、届け出られていない被害は含まれない点も踏まえて読んでください。

SNS型ロマンス詐欺の件数と被害額(令和6年〜令和8年上半期)

警察庁の定義では、SNSなどで知り合い、一度も会わないままやり取りを続けるなかで好意や親しみを持たせ、お金をだまし取る手口が「SNS型ロマンス詐欺」に当たります。主な数字を並べると次のとおりです。

期間認知件数被害額既遂1件あたり
令和6年(1年間)3,824件400.9億円1,048.5万円
令和7年(1年間)5,645件546.4億円969.6万円
令和8年上半期(1〜6月、暫定値)2,509件246.6億円984.1万円

令和7年は件数が前年比47.6%増、被害額が36.3%増でした。月別に見ると、令和7年1月の360件から12月には600件まで増えています。令和8年上半期は前年同期とほぼ同じ水準で、増加はいったん横ばいになりました。

取り締まりも強化されています。令和7年にSNS型ロマンス詐欺で検挙された件数は261件(前年比+97.7%)、人員は173人(同+143.7%)でした。ただ、被害の件数に比べれば検挙はまだ一部にとどまり、送ったお金がそのまま戻ってくる見込みにつながるとは限りません。

なお、警察庁は令和8年から、SNS型投資・ロマンス詐欺を「特殊詐欺」の手口の一つとして位置付け直しています。令和7年までの資料と見比べるときは、分類の呼び方が変わっただけで、ロマンス型の数字は引き続き個別に公表されていることを押さえておくと混乱しません。

暗号資産で送らされる割合が急上昇している

被害金をどのような形で渡してしまったかを見ると、この2年で最も大きく変わったのが暗号資産の比重です。

  • 令和7年:暗号資産送信型は2,177件(前年比+177.0%)、247.7億円(同+189.7%)。交換業者の口座へ日本円を振り込ませる「暗号資産振込」と合わせると、実質的に暗号資産で渡した被害は件数の40.4%、被害額の48.6%に達しました。
  • 令和8年上半期:暗号資産送信型は1,118件、141.8億円。被害額では57.5%を占め、振込型の90.2億円を上回っています。暗号資産振込と合わせた割合は、件数で45.4%、金額で58.7%です。

月単位では、令和7年2月の時点で暗号資産による被害の割合が31.8%となり、インターネットバンキングによる振込の31.0%を上回ったと警察庁が注意喚起しています。

1件あたりの金額も大きく、令和7年の既遂1件あたりの被害額は、暗号資産送信型が1,137.9万円、振込型が903.3万円でした。暗号資産は一度送ると取り消せず、銀行振込のように振込先口座を凍結して残高から分配を受ける仕組みも使えません。金額が大きく、戻りにくい。この二つが重なっている点が、暗号資産型の被害を深刻にしています。

統計上の「暗号資産送信型」は、被害者がもともと持っていた暗号資産、または犯人の指示で新たに買った暗号資産を、指定されたアドレスへ送った場合を指します。つまり、国内の正規の交換業者で自分名義の口座を開き、自分で購入したとしても、最後に相手の指定先へ送れば、この分類に入ります。「ちゃんとした取引所を使っているから大丈夫」という感覚が通用しないことを、数字が示しています。

X(旧Twitter)はどれくらい入口になっているか

ロマンス型の被害で、相手と最初に接したSNSやアプリの内訳は次のとおりです。

最初の接点令和7年令和8年上半期
マッチングアプリ32.7%(1,846件)30.0%(753件)
Instagram22.8%(1,288件)19.4%(486件)
Facebook18.6%(1,049件)17.9%(449件)
TikTok8.3%(471件)11.3%(284件)
X(旧Twitter)「その他SNS」に含まれ個別の数値なし5.2%(131件)

令和7年の確定値ではXが独立した項目として示されておらず、令和8年上半期の資料で初めて131件(5.2%)という数字が出ています。ロマンス型に限れば、Xは主要な入口の中で最も少ない部類です。

ただし、投資をうたう詐欺の側では事情が違います。SNS型投資詐欺でXが最初の接点になったのは令和7年に815件(前年比+99.8%)、令和8年上半期は677件(11.5%)でした。Xでは恋愛の形をとらずに投資の話から入り、個別のメッセージで親しくなっていく流れもありうるため、「恋愛目的の相手ではないから大丈夫」とは言い切れません。趣味の話題や相場の解説への返信から始まり、DMでのやり取りが続くうちに「あなたにだけ教える」と特別扱いされる、といった形で距離を縮められる場合もあります。どの入口から始まっても、やり取りの舞台はLINEへ移る傾向がはっきりしており、令和7年のロマンス型で被害時の連絡手段がLINEだった割合は93.8%でした。

年代と性別の傾向

令和7年のロマンス型被害は、40代から60代で全体の75.6%を占めました。被害者の性別を見ると、件数でも金額でもおよそ6割が男性で、女性は約4割(2,012件、217.7億円)でした。

令和8年上半期は50代が755件で最も多く、50代と60代を合わせると件数の53.6%、被害額の62.4%になります。70代も157件から207件へ増えており、警察庁は増加傾向にあると指摘しています。

暗号資産送信型については、振込型と比べて20代・30代の被害も目立ち、幅広い年代に広がっていると警察庁は分析しています。暗号資産の扱いに慣れている世代ほど、送付の心理的なハードルが低いのかもしれません。「中高年が狙われる詐欺」と決めつけず、若い世代も自分ごととして見ておく必要があります。

統計から読み取れる3つの注意点

ここからは公表データをもとにした筆者の見解です。

1. 送り方の指定そのものを警戒のサインにする

ロマンス型の被害額の半分以上が暗号資産で動いている以上、交際中の相手や知り合ったばかりの相手から「暗号資産で送って」「このアドレスに入金して」と言われた時点で、話を止める理由として十分です。

2. 入口の種類で安心しない

マッチングアプリが最多とはいえ、InstagramやFacebook、TikTok、Xも一定の割合を占めています。「このSNSなら安全」という入口はありません。見るべきは入口ではなく、会ったことがない相手がお金の話をしているかどうかです。TikTokのように比重が増えている入口もあり、割合の順位は年ごとに入れ替わる可能性があります。

3. 1件あたりの金額の大きさを直視する

既遂1件あたり約1,000万円という数字は、少額で終わらずに送金が繰り返されることを示しています。最初の送付を踏みとどまれるかどうかが、損失の規模を大きく左右します。

X上のやり取りから暗号資産の話が出てきた段階の確かめ方は暗号資産の買い方を教わっているときの確認点、出会い系サイト全般の被害統計は出会い系詐欺の被害統計で扱っています。

Xで知り合った相手とのやり取りで迷ったときの相談先

統計上の件数が少ない入口でも、被害に遭えば1件の重みは変わりません。Xで知り合った相手との会話に暗号資産や投資の話が出てきたら、次の窓口に早めに相談してください。

  • #9110(警察相談専用電話):まだ1円も送っていない段階でも、相手の話が怪しいかどうかを相談できます。
  • 局番なしの188:消費者ホットラインにつなぐと、お住まいの自治体の相談窓口に回してもらえます。出会いのきっかけになったサービスとのやり取りも相談の対象です。
  • 金融庁 金融サービス利用者相談室:詐欺的な投資については0570-050588で受け付けています。

送金後の回復手段が支払い方でどう変わるかはFacebookで知り合った相手に送った後の手続き、恋愛を入り口にしたSNS詐欺の全体像はSNS型ロマンス詐欺とはを参照してください。届け出た被害は警察の認知件数に反映され、対策の優先順位を決める材料にもなります。恥ずかしさから黙っているより、相談することを筆者は勧めます。

よくある質問

Q. SNS型ロマンス詐欺の被害額は年間どのくらいですか?

A. 令和7年の1年間で警察が把握したのは5,645件、金額にして546.4億円です。令和8年上半期(暫定値)は2,509件、246.6億円です。

Q. ロマンス詐欺で暗号資産を使う被害は、なぜ増えているのですか?

A. 警察庁は増加の数字を公表していますが、理由までは詳しく示していません。筆者の考えでは、送ると取り消せないこと、銀行口座の凍結のような仕組みが及ばないことが、だます側にとって都合がよいのだと思われます。

Q. Xで知り合った相手からのロマンス詐欺は多いのですか?

A. 令和8年上半期の警察庁資料では、ロマンス型で最初の接点がXだったのは131件(5.2%)で、マッチングアプリやInstagramより少数です。ただし投資詐欺ではXが入口の11.5%を占めており、Xだから安全とは言えません。

Q. 統計には自分のような相談していない被害も含まれていますか?

A. 認知件数は警察が被害を把握した件数です。届け出ていない被害は含まれないため、実際の被害は公表値より多い可能性があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。