メール占いの支払いを取り消す手順|霊感等による勧誘と消費者契約法4条3項8号

メール占いで「あなたには悪い霊がついている。このままではご家族が病気になる。避けるには特別鑑定を受けるしかない」と言われ、不安になってポイントを買い足した――。こうした勧誘で結んだ契約は、消費者契約法第4条第3項第8号(霊感等による知見を用いた告知)に当てはまれば、取り消せる可能性があります。2023年1月5日に施行された改正で対象が広がり、取消しができる期間も延びました。

この記事は、メール占いの支払いについてこの取消権を使えるか検討したい人に向けて、条文の要件、メッセージへの当てはめ方、期限の数え方、取消しの通知の出し方を順番に説明します。当てはまるかどうかは最終的に個別の事情で判断されるため、この記事は検討の出発点として使い、実際に動く前には消費生活センターや弁護士に相談してください。

4条3項8号が対象にしている勧誘

消費者契約法第4条第3項は、事業者が勧誘の際に一定の行為をしたことで消費者が困惑し、それによって契約の申込みや承諾をしたときは、これを取り消すことができると定めています。第8号が対象にしているのは、次のような勧誘です(条文を要素ごとに分けたもの)。

  1. 霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として
  2. 消費者本人またはその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について
  3. そのままでは現在生じ、または将来生じ得る重大な不利益を回避できないとの不安をあおり、またはそのような不安を抱いていることに乗じて
  4. その重大な不利益を回避するためには、その契約を結ぶことが必要不可欠である旨を告げること

消費者庁の逐条解説は、「霊感」を、除霊、災いの除去や運勢の改善など超自然的な現象を実現する能力と説明しています。いわゆる超能力のように、霊感以外の「合理的に実証することが困難な特別な能力」も対象です。また、「このままでは不幸になる」といった漠然とした言い方でも、勧誘の内容全体から、重要な事項について重大な不利益を回避できない旨を伝えたとみられる場合は含まれるとされています。「必要不可欠」という言葉そのものを使っていなくても、勧誘全体として同じ程度の必要性・切迫性が示されていれば足りる、という考え方も示されています。

改正でどう変わったか

この規定は平成30年の改正で設けられ(当時は第6号)、令和4年の改正で第8号に移りました。改正前は「契約を結べば確実に重大な不利益を回避できる」と告げることが要件でしたが、規定が十分に活用されていないことなどを踏まえ、令和4年法律第99号による改正で、「不安を抱いていることに乗じて」告げる場合や、親族についての不利益を告げる場合も対象に加えられ、「必要不可欠である旨」を告げれば足りる形に改められました。

メール占いのメッセージを要件に当てはめてみる

メール占いのやり取りは文字で残るため、要件に当てはまる言葉があるかを後から確認しやすいのが特徴です。典型的な文面を、要件との関係で並べると次のようになります。

メッセージの例要件との関係
「あなたの守護霊が弱っている。このままでは大病を患う。浄化の鑑定(○ポイント)を受けなければ防げない」特別な能力による知見・身体への重大な不利益・契約の必要不可欠性がそろっており、8号が問題になりやすい
「ご家族に悪い縁が絡んでいる。今夜中に祈祷鑑定を申し込まないと取り返しがつかない」親族についての不利益も対象。期限を切って必要性を強調している点も材料になる
「あなたは特別な金運の持ち主。当選番号を導くために、あと10通やり取りを」利益を約束する内容で、不利益の回避を告げていないため、8号には当てはまりにくい
「今日の運勢は良好です」といった一般的な鑑定不安をあおる要素がなく、8号の対象外と考えられる

消費者庁の逐条解説には、運勢相談をしたところ「あなたには悪霊がついており、そのままでは病状が悪化する。この数珠を買わないと悪霊が去らない」と言われて50万円を支払った事例が、8号に該当する例として挙げられています。数珠を「鑑定」や「祈祷」に置き換えると、メール占いでも同じ構図になりうることが分かります。

編集部の見方としては、「このままでは」「〜しなければ」という、不利益と支払いを結びつける言い回しが残っているかどうかが、最初の見極めのポイントになると考えています。表の3行目のような金運型のやり取りは8号には当てはまりにくいものの、別の取消事由や制度が問題になる余地はあるため、当てはまらないと自己判断で諦めず相談してください。

取り消せる期限を数える:3年と10年

消費者契約法第7条は、取消権の行使期間を原則として「追認をすることができる時から1年間」「契約締結の時から5年」と定めていますが、8号による取消権については特別に「追認をすることができる時から3年間」「契約締結の時から10年」とされています。どちらか早いほうが過ぎると、時効によって消滅します。

「追認をすることができる時」について、消費者庁の逐条解説は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権を持っていることを知った時と説明しています。困惑させられて契約したケースでは、困惑から抜け出した時がこれにあたります。3年という長めの期間が置かれたのは、霊感を持ち出した勧誘の影響から抜け出すまでには時間がかかり、外からは普段どおりに見えても本人の中では迷いが続いている、という指摘を踏まえたものだと解説されています。

改正の概要資料によれば、この期間の伸長は、改正時点でまだ時効が完成していなかった取消権にも適用されます。メール占いではポイントの購入が何回にも分かれていることがあるため、購入ごとに日付を確かめ、どの支払いがどの勧誘の後だったかを対応づけておきましょう。支払いの一覧の作り方はメール占いの支払総額を明細と購入履歴から出す方法で説明しています。

取消しの通知を出すまでの手順

取消しは、事業者に対して取り消すという意思を伝えることで行います。消費者庁の逐条解説は、取消しの意思表示は方法を問わないものの、後で争いにならないよう、裁判外では内容証明郵便・配達証明郵便が使われることが多いと説明しています。準備は次の順で進めます。

  1. やり取りを保存する:不安をあおる言葉、支払いを求める言葉が書かれたメッセージを、日時が分かる形でスクリーンショットします。退会すると見られなくなる可能性があるので、退会より先に行います。
  2. 勧誘と支払いを対応させる:「○月○日のこのメッセージの後に、○円のポイントを購入した」という形で一覧にします。
  3. 事業者を特定する:特定商取引法に基づく表記から、運営者の名称と住所を確認します。鑑定師が運営者の社員でなくても、運営者から委託を受けて勧誘していた場合は、第5条により同じように扱われます。
  4. 通知書を作る:契約の特定(サイト名、会員ID、購入日と金額)、取消しの根拠(消費者契約法第4条第3項第8号)、取り消すという意思、支払った代金の返還を求めること、返還先と回答期限を書きます。
  5. 送る:内容証明郵便(配達証明付き)で送り、控えを保管します。

取り消された契約は初めから無効だったものとみなされ(民法第121条)、事業者は受け取った代金を返す義務を負うのが原則です(同法第121条の2)。一方、消費者の側が返す義務について、第6条の2は、給付を受けた当時に取り消せると知らなかった場合、「現に利益を受けている限度」にとどまると定めています。カードで払った分がある場合は、通知書の写しをカード会社にも送り、分割払い・リボ払いなら支払停止の抗弁もあわせて検討します。

事業者が応じないとき・8号が使えないときの道

通知を送っても回答がない、返金を拒まれた、という場合は、次のような道があります。

  • 消費生活センターのあっせん:消費者ホットライン「188」から最寄りのセンターへ。事業者との間に入って話し合いを進めてもらえることがあります。
  • 国民生活センターのADR(裁判外紛争解決手続):令和4年の改正では、国民生活センターの紛争解決手続の迅速化や、事業者名の公表などの役割強化もあわせて盛り込まれました。
  • 弁護士への依頼・訴訟:金額が大きい場合や、交渉が必要な場合。費用が心配なら法テラスの制度も確認できます。

期限を過ぎていた、要件に当てはまらない、という場合でも、ほかの手段が残ることがあります。改正の概要資料は、不法行為に基づく紛争であれば契約締結後20年まで被害回復が可能と整理しています。特定商取引法の最終確認画面の表示に問題があった場合の取消し(同法第15条の4)など、別の制度が関係することもあります。霊感や「縁切り」などを名目にした請求全般については霊的な問題を名目とした高額請求の解説、弁護士に頼むかどうかの判断は占い詐欺を弁護士に依頼する判断基準も参考にしてください。

相談の前に準備しておくこと

8号による取消しは、条文の要件にどの言葉が当てはまるかが勝負になります。相談の前に、次のものを用意しておくと検討がスムーズです。

  • 不安をあおる言葉と、支払いを求める言葉が写ったスクリーンショット(日時入り)
  • 勧誘と支払いの対応表(日付・金額・支払い方法・直前のメッセージ)
  • サイトの利用規約と特定商取引法に基づく表記の画面
  • 最後に支払った日と、「おかしい」と気づいた時期のメモ(期限の起算点を考える材料)

当サイトの相談予約でも、どの支払いが対象になりそうかの整理をお手伝いしています。取消しが認められるか、返金されるかは個別の事情によるため、結果を保証するものではありません。

よくある質問

Q. メール占いの支払いなら、どれでも4条3項8号で取り消せますか。

A. いいえ。条文が求めるのは、霊感など実証の難しい能力にもとづく話として、本人や家族の命・健康・財産などに深刻な害が及ぶと不安にさせ、「この契約なしには防げない」と告げ、それによって困惑して申し込んだ、という流れです。金運の向上を約束するだけのやり取りや、一般的な運勢の鑑定は当てはまりにくいと考えられます。

Q. 利用規約に「いかなる理由でも返金しない」と書いてあります。

A. 取消権は法律に基づく権利で、規約の文言だけで結論が決まるわけではありません。規約と法律の関係は個別に判断されるので、規約の画面も保存したうえで、消費生活センターや弁護士に相談してください。

Q. 親がメール占いで霊感を理由に課金していました。子どもの私が取り消せますか。

A. 取消しの意思表示をするのは、原則として契約をした本人(または本人の代理人)です。家族ができるのは、やり取りの保存や支払いの整理を手伝い、本人と一緒に消費生活センターへ相談することです。消費生活センターには家族からも相談できます。

Q. 最初の支払いから3年以上たっています。もう取り消せませんか。

A. 3年の起算点は支払った日ではなく、困惑から抜け出し、取消権があると知った時です。契約締結から10年という上限もあわせて確認が必要です。期限を過ぎていても、不法行為に基づく請求など別の道が残ることがあるので、日付を整理したうえで相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。