友人に誘われた情報商材・副業はマルチ?|連鎖販売のクーリング・オフと断り方

学生時代の友人や職場の先輩から「いい話がある」と呼び出され、稼ぎ方の教材やオンライン講座、投資の勉強会を勧められた。しかも「あなたも誰かを紹介すれば報酬が入る」と言われた。この記事はそんな場面にいる方、すでに契約してしまった方に向けたものです。

先に押さえたいのは次の三点です。紹介すると報酬が得られる仕組みに参加するためにお金を払う取引は、特定商取引法の「連鎖販売取引」に当たる可能性があること。当たる場合は、法定の書面を受け取った日から20日間クーリング・オフでき、その後も将来に向かって退会できること。そして、断るときは「お金がない」ではなく「契約しない」と伝えることです。

友人からの誘いで広がる「モノなしマルチ」

国民生活センターは2019年7月の注意喚起で、マルチ商法の相談のうち、健康食品や化粧品などの「商品」ではなく、投資や副業といった「役務(サービス)」に関する相談が増え、2017年度と2018年度は役務の相談が商品を上回ったと報告しました。こうしたモノの受け渡しがないマルチを同センターは「モノなしマルチ商法」と呼び、特に20歳代や20歳未満の若者で増えているとしています。

発表の相談事例では、中学時代の友人から電話で呼び出され、レストランで別の勧誘者も交えて「海外の不動産に投資すれば暗号資産で配当がある」「人を紹介すれば紹介料が入るので借金はすぐ返せる」と説明された20歳代の男性が、消費者金融4社から約130万円を借りて友人に手渡したものの、契約書面も領収書も受け取っていなかったというケースが紹介されています。

誘われ方に出やすいサイン

  • しばらく連絡のなかった友人から、急に「会って話したい」と言われる
  • 行ってみると、知らない「先輩」や「成功している人」が同席している
  • 仕組みの説明より、紹介報酬や達成者の生活ぶりの話が長い

最近の相談にも同じ形が続いている

2026年7月31日に更新された同センターのマルチ取引の相談傾向ページにも、友人に勧められてオンラインゲームのアフィリエイトの副業を申し込み、借金して支払った後にマルチ取引ではないかと気づいた、という事例が載っています。教材や講座という形をとっていても、中身が「紹介して広げること」で成り立っているなら注意が必要です。

連鎖販売取引に当たるかを見分ける3つのポイント

消費者庁の特定商取引法ガイドによると、連鎖販売取引(第33条)は次の要素を備えた取引です。誘われている話にあてはめて考えてみてください。

要素法律上の考え方副業・情報商材での例
販売やあっせんをする人を増やす商品や役務を再販売したり、あっせんしたりする人を勧誘する「あなたも講座を人に勧めて広げて」
特定利益他の人を勧誘して入会させると得られる紹介料など「1人紹介するごとに〇万円」「下の人が増えると報酬が増える」
特定負担取引に参加するための1円以上の金銭負担教材代、入会金、講座費、ツールの利用料

同ガイドは、入会金、保証金、サンプル商品など名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があれば連鎖販売取引に該当するとしています。一方、国民生活センターは、一般に「マルチ商法」と呼ばれるものと法律上の連鎖販売取引は必ずしも一致しないとも注記しています。当てはまるかどうか迷う場合は、勧誘の資料を持って消費生活センターで確認してもらいましょう。

勧誘する側が守るべきルール

連鎖販売取引では、組織を実質的に動かしている「統括者」だけでなく、その指示で勧誘する友人・知人(勧誘者)にも規制がかかります。主なものは次のとおりです。

  • 氏名等の明示(第33条の2):勧誘の前に、統括者の名称、契約を勧誘する目的であること、商品や役務の種類を告げる
  • 禁止行為(第34条):特定利益や特定負担、契約解除の条件などについて事実を告げない、事実と違うことを告げる、威迫して困惑させる。また、勧誘目的を告げずに誘い出した相手に、公衆の出入りしない場所で勧誘すること
  • 書面の交付(第37条):契約前に概要書面、契約後に契約書面を渡す。特定利益や特定負担、契約解除に関する事項も記載事項

「ごはんに行こう」と誘われて行った先がカラオケボックスや誰かの自宅で、そこで初めて契約の話をされた。そうした経緯は、相談の際に大事な情報になります。誘われたときのメッセージや、会った場所と時間を残しておいてください。

契約した後に使える制度:20日間のクーリング・オフと中途解約

クーリング・オフ(第40条)

連鎖販売取引の契約は、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しが後なら、その日)から数えて20日以内なら、書面または電子メールなどの電磁的記録で解除できます。損害賠償や違約金を払う必要はなく、商品の引取り費用も事業者の負担です。「解約はできない」と偽りを言われたり、脅されたりして手続きをあきらめていたのなら、20日が過ぎた後でも解除が可能です。

通知に書く内容の例

通知書
次の連鎖販売契約を解除します。
契約日:〇年〇月〇日
契約の内容:副業講座〇〇への参加(入会金・教材費 〇円)
勧誘者:〇〇(友人の氏名)
統括者:(書面に記載の会社名)
支払済みの〇円の返金を求めます。
〇年〇月〇日 住所・氏名

宛先は契約書面に記載された契約の相手方(統括者や連鎖販売業を行う会社)にし、勧誘した友人にも同じ内容を知らせておくと行き違いを防げます。カードの分割払いを使った場合は、カード会社にも同時に送ります。

20日を過ぎた後の中途解約(第40条の2)

クーリング・オフの期間が過ぎても、組織に入会した個人は、将来に向かって連鎖販売契約を解除(退会)できます。商品を買っていた場合は、入会後1年以内、引渡しから90日以内、再販売していない、使用していないなどの条件をすべて満たせば、商品の販売契約も解除できるとされています。

取消し(第40条の3)

勧誘の際に事実と違うことを告げられて誤認した、あるいは重要な事実をわざと告げられずに誤認した、という場合は、契約の意思表示を取り消せる場合があります。

書面を受け取っていない、友人に現金を手渡しして領収書もない、という状況でも、あきらめる前に消費生活センターへ相談してください。国民生活センターは、クーリング・オフの送付記録や関係書類を少なくとも5年間保管するよう勧めています。

関係をこじらせずに断るための具体策

国民生活センターは2019年8月、支払えないと言って断る相手にまで、借金やクレジットを組ませて契約させる強引な勧誘への注意を呼びかけました。大学やSNSで知り合った友人・知人に誘われて行った先で、「お金がなければ借りればいい」「儲かるから借金はすぐ返せる」と断る理由を封じられるのが典型だとされています。同センターのアドバイスは、「お金が支払えない」という断り方をやめ、きっぱり断ることです。

使いやすい断り方

  • 「話は分かったけど、契約はしない」と結論だけを伝える(理由を並べると、一つずつ反論される)
  • 「その場では決めないと決めている」と伝えて、書面だけ受け取って帰る
  • 勧誘者が複数いる場、長時間になりそうな場からは、用事を理由に離れる
  • メッセージでの誘いには、既読のまま急いで返事をしない

友人自身も誘われた側かもしれない

勧めてくる友人も、仕組みをよく知らないまま「紹介すれば取り戻せる」と言われて参加している可能性があります。断ることは友人を否定することではありません。心配なら、「この仕組みについて消費生活センターに聞いてみたら」と一緒に相談を勧めるのも一つの方法です。

18歳・19歳が知っておきたいことと相談先

民法の成年年齢は2022年4月1日から18歳に引き下げられました。成年に達すると、親の同意なしに一人で契約を結べるようになる一方、未成年であることを理由にした契約の取消しはできなくなります。18歳・19歳で友人から誘われて結んだ契約も、ほかの大人と同じルールで扱われると考えておきましょう。成人になったばかりの時期は、社会経験の少なさや人間関係の近さにつけこまれやすい、という前提で身構えておくくらいでちょうどよいはずです。

借金を勧められた場合は、絶対に応じないでください。2026年5月20日の国民生活センターの発表でも、副業や投資の勧誘をきっかけに短い期間で何社もの貸金業者から借りさせられる相談が目立つとされ、借りたお金の返済は本人の責任になると書かれています。

相談先

  • 消費者ホットライン188:連鎖販売取引に当たるか、クーリング・オフの書き方、返金の求め方
  • 在学中の人:大学などの学生相談の窓口も、身近な相談先になります
  • 警察相談専用電話 #9110:脅された、お金を返してもらえず連絡が取れなくなった、といった場合

勧誘の入口ごとの見分け方は情報商材の副業勧誘を見抜く方法、動画から始まるケースはYouTubeの稼げる動画と情報商材、記録の残し方は証拠の残し方、個別の相談は相談予約をご覧ください。

よくある質問

Q. 友人に紹介された情報商材は、クーリング・オフできますか?

A. 人に紹介すると報酬が得られる仕組みへの参加が条件で、そのために1円以上を払っているなら、連鎖販売取引として法定書面の受領日から20日間のクーリング・オフができる可能性があります。紹介の仕組みがない単純な教材の購入なら、別のルールになります。

Q. 20日を過ぎてしまいました。もう抜けられませんか?

A. 連鎖販売取引に当たる場合は、クーリング・オフの期間が過ぎても、将来に向かって契約を解除(退会)できる中途解約の制度があります。勧誘時に事実と違う説明を受けていたなら、取消しを主張できる場合もあります。

Q. 友人に現金を手渡しで払い、書面も領収書もありません。

A. 法定の書面を受け取っていない場合、クーリング・オフの期間がまだ始まっていないと考えられることがあります。お金を渡した日時、場所、金額、やりとりのメッセージをメモにまとめ、消費者ホットライン188経由で地元の相談窓口に見てもらってください。

Q. 自分も誘われるまま、ほかの友人を勧誘してしまいました。

A. 連鎖販売取引では、勧誘する人にも事実と違う説明をしてはいけないなどのルールがかかります。これ以上の勧誘はやめ、自分の契約の解除とあわせて、勧誘した相手への対応も消費生活センターに相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。