友人・知人からLINEで副業に誘われたら|マルチ商法との境目と断り方

久しぶりに連絡をくれた同級生から「いい副業があるから一回話を聞いてほしい」とLINEが来た。職場の先輩に誘われてセミナーに行ったら、人を紹介すると報酬が入る仕組みだった。この記事は、知っている人から副業に誘われて、断り方に迷っている方に向けて書いています。

結論として、「人を紹介すれば稼げる」と説明され、始めるためにお金を払う必要がある話なら、特定商取引法の「連鎖販売取引」(いわゆるマルチ商法)にあたる可能性があります。知人からの誘いでも、その場で契約する必要はありません。国民生活センターは、友人・知人から誘われても、きっぱり断るよう呼びかけています。すでに契約した場合も、書面を受け取ってから20日以内ならクーリング・オフができます。

なお、この記事は誘ってきた友人や特定の会社を否定するためのものではありません。仕組みを知ったうえで、自分が参加するかどうかを判断するための材料としてお読みください。

友人・知人からの副業の誘いでよく見られる形

国民生活センターの「マルチ取引」の相談ページには、次のような最近の事例が載っています。

  • 友人に勧められてオンラインゲームのアフィリエイトの副業を申し込み、借金をして支払ったが、マルチ取引のようだ
  • 知人に誘われて健康食品のセミナーに参加したら、マルチ取引への勧誘だった
  • 職場の先輩に補正下着を勧められ、マンションの一室で高額な契約をした
  • アプリで出会った相手の案内でセミナーに行ったところ、人を紹介すれば報酬が出ると説明された

LINEが使われるのは、多くの場合この入口の部分です。「久しぶり、元気?」から始まり、「会わせたい人がいる」「オンラインで少し話を聞いてほしい」と、副業の中身を伏せたまま会う約束を取りつけようとします。

国民生活センターが2019年に公表した注意喚起では、商品のない「モノなしマルチ商法」が若者に広がっているとして、中学時代の友人から「いい話があるから会わないか」と電話を受け、レストランで別の勧誘者も同席する中で投資の話を持ちかけられた20歳代男性の事例が紹介されています。相談事例から見る問題点としては、次の4つが挙げられています。

  1. 契約のきっかけは友人・知人からの誘い
  2. 人を紹介すれば報酬を得られることばかりが強調され、もうけ話の実態はよくわからない
  3. 友人・知人から勧誘されると断りにくく、借金をしてまで契約するケースもある
  4. 解約や返金を求めようとしても連絡先が不明確で、交渉が難しい

「連鎖販売取引」にあたるかどうかの目安

消費者庁の特定商取引法ガイドによると、連鎖販売取引とは、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に次の販売員を勧誘させる形で、販売組織を連鎖的に広げていく取引のことです(特定商取引法第33条)。見分けるときは、次の2つの要素がそろっているかを確かめます。

要素法律上の呼び方誘われたときの言葉の例
人を誘ったり商品を売ったりすると利益が入る特定利益「紹介すると1人につき◯円入る」「下の人が増えるほど収入が増える」
始めるためにお金を払う必要がある特定負担「入会金」「初期費用」「最初に商品を買う」「講座代」

消費者庁は、入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものはすべて連鎖販売取引に該当すると説明しています。商品が健康食品や化粧品でなく、「副業のノウハウ」「投資の勉強会」「オンラインゲームのアフィリエイト」のように形のないものでも同じです。

連鎖販売取引そのものは、法律のルールを守っていれば直ちに違法というわけではありません。ただ、勧誘のしかたや契約の手続きには厳しいルールがあり、守られていない場合は取消しなどを主張できる余地があります。

話を聞く場で確かめたいこと

特定商取引法は、連鎖販売取引の勧誘をする側に、いくつかの義務を課しています。話を聞くことになったら、次の点が守られているかを見てください。

  • 勧誘に先立って、目的と名前を告げているか。勧誘する人は、統括者の名称、契約を勧誘する目的であること、商品や役務の種類を先に告げなければなりません(第33条の2)。「ご飯に行こう」と誘われ、行ってみたら勧誘の場だった、というやり方は、この点で問題になり得ます。
  • 契約前に「概要書面」を渡されたか。契約の締結前には、事業の概要を記載した書面を渡すことが義務づけられています。契約後には契約内容を記載した「契約書面」も必要です(第37条)。
  • うそや脅すような言い方がないか。利益について事実と違うことを言ったり、威迫して困惑させたりすることは禁じられています(第34条)。
  • 「必ずもうかる」と言っていないか。利益が確実だと誤解させる断定的な言い方で勧誘する行為は、適格消費者団体による差止請求の対象とされています。

もう一つ気をつけたいのが、お金がないと言ったときの反応です。国民生活センターは、「お金がなければ借りればいい」「もうかるので借金はすぐに返済できる」と持ちかけて強引に契約させる手口について注意を呼びかけています。借入れの話が出たら、その場で帰ってかまいません。

関係を壊しにくい断り方

知っている人からの誘いほど、断ることに気が引けます。ただ、国民生活センターのアドバイスは明快で、「お金が支払えない」という断り方はやめ、きっぱりと断ること、としています。理由を「お金」にすると、借入れやクレジットの提案で断る理由を封じられてしまうからです。

断るときのポイント

  • 理由は「やらないと決めている」にする。「今は余裕がない」「考えておく」は、次の誘いの口実になります。
  • LINEで先に伝えておく。対面の場で、勧誘者が複数いる状況で断るのは難しくなります。会う前に「副業の話ならやらないと決めているから、それ以外なら会おう」と送っておくと、話がこじれにくくなります。
  • 相手の人格ではなく、仕組みに対して断る。「あなたが嫌なわけではなく、人を紹介して稼ぐ仕組みには参加しない」と分けて伝えます。
  • その場で契約しない。どうしても話を聞く場合でも、書面を持ち帰って家族や消費生活センターに相談してから決めると伝えます。

それでも誘いが続く、グループに勝手に追加される、といった場合は、LINEの通報やブロックも選択肢です。人間関係の事情でブロックしづらいなら、トークの通知をオフにするだけでも、返事を急かされる負担は減らせます。

契約してしまった後にできること|クーリング・オフと中途解約

消費者庁の特定商取引法ガイドによると、連鎖販売取引で契約した消費者(店舗を持たない個人)には、次のような民事上のルールがあります。

制度使える条件ポイント
クーリング・オフ(第40条)法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しが後ならその日)から数えて20日以内書面または電磁的記録で通知。損害賠償や違約金は請求されない。うそや威迫でクーリング・オフを妨げられた場合は期間後でも可能
中途解約(第40条の2)クーリング・オフ期間の経過後も、将来に向かって退会できる入会後1年以内、引渡しから90日以内で未使用の商品など、条件を満たせば商品の売買契約も解除できる
取消し(第40条の3)事実と違うことを告げられた、故意に事実を告げられなかったために誤認して契約した契約の申込みや承諾の意思表示を取り消せる

クーリング・オフの通知は、後でトラブルにならないよう、記録が残る方法で出すことが大切です。書面を受け取っていない、書面の内容が不十分といった場合は、20日の期間がまだ始まっていないと考えられることもあります。自分のケースで使えるかどうかは、188番で最寄りの窓口に聞くのが確実です。はがきで出す場合の記載例は、国民生活センターの「クーリング・オフ」のページで見られます。

借金をして支払った場合は、借入先への返済義務がなくなるわけではありません。一人で抱えず、早めに相談することが負担を減らす近道です。

相談先と、家族・友人として気づいたときの動き方

  • 消費者ホットライン 188:クーリング・オフや中途解約の手続き、勧誘のしかたに問題がないかの相談。
  • 警察相談専用電話 #9110:脅された、払ったお金が戻らず相手と連絡が取れない、といった場合。
  • 消費者庁の申出制度:特定商取引法に違反する疑いがある勧誘について、情報を提供できます。
  • 当サイトの相談予約:経緯の整理から相談したい場合。

国民生活センターによると、2025年度の18歳・19歳の相談件数は10,250件で、2021年度以降で最も多くなりました。「内職・副業」などお金に関する相談が多いとされています。マルチ取引に関する相談も、2023年度の5千件台から減ったとはいえ、2024年度・2025年度はともに4,000件を上回っています(2025年度は4,003件)。

家族や友人が誘われていると気づいたら、頭ごなしに否定するより、「始めるのにいくら払うのか」「その会社の書面はもらったか」と具体的に聞いてみてください。本人が仕組みを説明できないことに気づくきっかけになります。

知らない相手から届く副業の誘いについては、マッチングアプリの相手に勧められた場合やLINEグループに招待された場合、全体像は副業勧誘の経路別の見分け方で扱っています。

よくある質問

Q. 友人に誘われた副業がマルチかどうか、どこで見分ければいいですか?

A. 「人を誘うと報酬が入る」という説明があり、始めるために入会金や商品代などのお金を払う必要があるなら、連鎖販売取引(マルチ商法)にあたる可能性があります。消費者庁は、名目を問わず何らかの金銭負担があれば該当すると説明しています。

Q. マルチ商法は違法なのですか?

A. 連鎖販売取引そのものは、特定商取引法のルールを守っていれば直ちに違法というわけではありません。ただし、勧誘目的を告げずに呼び出す、うそをつく、威迫する、書面を渡さないといった行為は法律で禁止・規制されています。

Q. 友人の誘いで契約してから2週間たちました。まだ解約できますか?

A. 連鎖販売取引の場合、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しが後ならその日)から数えて20日以内なら、クーリング・オフができます。期間を過ぎても中途解約の制度があります。急いで消費生活センター(188)に相談してください。

Q. 断ったら友人関係が壊れそうで不安です。

A. 「副業はやらないと決めている」と、方針として伝えるのがおすすめです。「お金がない」を理由にすると、借入れを提案されるなど話が続きやすくなります。副業の話以外なら会いたい、と伝えれば、関係そのものを否定せずに済みます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。