マッチングアプリの相手に副業を勧められたら|好意とお金の話の見分け方

アプリで出会ってLINEに移った相手から「一緒に副業しない?」「私はこれで月に数万円増えた」と持ちかけられた。そんな場面で迷っている方に向けた記事です。

先に結論を書きます。まだ会ったこともない相手から、お金の出し入れがある副業を勧められた時点で、話を先に進めないほうが安全です。警察庁は、SNSで恋愛感情を抱いた相手からネットショップの副業を勧められ、合計約70万円をだまし取られた事例を公表しています。好意が本物かどうかを確かめる必要はありません。副業の話にだけ「やらない」と答えれば足ります。

アプリからLINEへ移る流れそのものや、トーク記録の残し方はマッチングアプリからLINEに誘導されたらで詳しく扱っています。この記事では、恋愛のやり取りの途中で「副業」が出てきた場合に絞って説明します。

恋愛のやり取りに副業の話が混ざる流れ|警察庁が公表した事例

警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)は「副業を名目とした詐欺」として、令和6年上半期の事例を2件載せています。そのうち1件は、SNSで知り合った相手に恋愛感情を抱いた人が被害にあったケースです。

  1. SNSで知り合った相手とやり取りを重ねるうちに、恋愛感情を抱くようになった
  2. 相手から「元手3万円で始められる、雑貨を売るネットショップの副業」を勧められた
  3. 登録したサイトには、仕入金としてチャージした金額や収益が表示され、当初は少額の報酬も受け取れた
  4. その後「チャージ金が足りず注文が処理できない」「処理できないと違約金が発生する」と言われ、合計約70万円を支払った

警察庁はこの事例を「SNS型ロマンス詐欺」に分類しています。投資ではなく「副業」「ネットショップ運営」と説明されるため、投資詐欺の注意喚起を読んだことがある人でも、自分の話とは結びつけにくいかもしれません。

この流れで押さえておきたいのは、最初に少しだけお金が戻ってくるという点です。画面に売上が表示され、実際に数千円が振り込まれると「本当に稼げる副業なのだ」と感じます。国民生活センターも、タスク型の副業で最初に少額の報酬を受け取った後、高額な振込を求められる相談が目立つと注意を呼びかけています。

入口はマッチングアプリ、連絡はLINEという組み合わせ|令和7年の統計

警察庁が2026年6月に出した令和7年の確定値の資料によると、SNS型ロマンス詐欺は認知件数5,645件、被害額546.4億円にのぼりました。どちらも前年を上回っています。

項目令和7年の数値(SNS型ロマンス詐欺)
当初接触ツール 1位マッチングアプリ 1,846件(前年比 +40.8%)
当初接触ツール 2位Instagram 1,288件
当初接触ツール 3位Facebook 1,049件
被害時の連絡ツールLINE 5,294件(全体の9割以上)

出会いのきっかけはマッチングアプリ、お金の話が進むのはLINE。統計からは、この組み合わせがはっきり読み取れます。統計上は「投資」「ロマンス」の区分で集計されており、副業名目の件数だけを取り出した数字ではありません。それでも、前の章で見たネットショップ副業の事例がロマンス詐欺に分類されているように、副業の誘いがこの数字の中に含まれていることは十分に考えられます。

詐称された職業を見ると、最多は投資家の627件で、会社員が507件、会社役員が378件と続きます。「会社員だけど副業で稼いでいる」という自己紹介は、ありふれていて疑われにくい設定だと言えます。

相手の話を聞きながら確かめたい5つの点

国民生活センターは2022年12月、アプリで出会った相手に関するチェックリストを出しています。対象は投資の勧誘ですが、項目の多くは副業の誘いにもそのまま使えます。ここでは副業の場面に合わせて5つに整理しました。

  1. 知り合って間もないのに、アプリの外(LINE)へ移ろうと急いだか。チェックリストでも「マッチングアプリから早々にLINE等のSNSへ変更を提案」が挙げられています。
  2. 相手が「自分も副業で稼いでいる」と話しているか。チェックリストにある「副業で投資をやっている」と同じ型です。
  3. 副業の説明に「二人の将来」「結婚資金」などの言葉が添えられているか。好意と金銭の話がセットになっていると、断ることが相手を拒むことのように感じられてしまいます。
  4. 登録先のサイトやアプリを、相手が指定してくるか。運営会社の名前や所在地がわからないサイトなら、振り込んだお金を取り戻す相手も特定できません。
  5. 一度も会っていないか、会う約束が先延ばしにされていないか。ビデオ通話ができても、それだけでは身元の裏づけになりません。

国民生活センター自身も注記しているとおり、当てはまる項目があっても、相手が必ず悪意を持っているとは限りません。反対に、どれにも当てはまらなければ安心というわけでもありません。判断の軸はシンプルで、相手が誰であっても、お金を先に払う副業には手を出さないことです。

関係を壊さずに「副業はやらない」と伝える方法

好意を持っている相手の提案を断るのは気が重いものです。ただ、副業の誘いを断ることと、相手との関係を切ることは別の話として扱えます。

理由を「お金がない」にしない

「今は余裕がないから」と断ると、「最初は3万円でいい」「足りない分は借りればすぐ返せる」と、支払いの方法を提案される余地が残ります。国民生活センターは、お金がないと断った人に借金をさせてまで契約させる手口を繰り返し取り上げています。「副業はしないと決めている」と、方針として伝えるほうが話は続きにくくなります。

本当に好意があるなら、この返事で離れていかない

「副業の話はなしで、今度会って話そう」と返してみてください。相手が純粋に交際を望んでいるなら、副業を断ったくらいで連絡が途絶えることは考えにくいはずです。副業を断った途端に冷たくなる、あるいは何度も同じ話を持ち出してくるなら、目的がどこにあるのかは見えてきます。

渡さないものを先に決めておく

  • 運転免許証やマイナンバーカードの画像
  • 銀行口座の番号や、ネットバンキング・暗号資産取引所のログイン情報
  • 画面共有アプリ・遠隔操作アプリのインストール

国民生活センターは、副業の申込みにあたって身分証や口座の情報を求められても安易に教えないこと、遠隔操作アプリを安易にインストールしないことを呼びかけています。

アプリの運営会社とLINEの両方に知らせる

相手とのやり取りを終わらせると決めたら、ブロックする前に通報しておくと、同じ相手に別の人が狙われるのを防ぐ手がかりになります。記録は通報前にスクリーンショットで残しておきましょう。

マッチングアプリ側

多くのマッチングアプリには、プロフィール画面やメッセージ画面から運営に違反を報告する機能があります。知り合ったアプリの画面で、相手のプロフィールがまだ表示されているうちに報告してください。報告の項目名や手順はアプリごとに異なるため、各アプリのヘルプを確認します。

LINE側

LINEの公式ガイドによると、トーク画面右上の[≡]メニューから[設定]→[通報]と進み、理由を選んで送信できます。通報したことは相手には伝わりません。投資や副業の勧誘であれば、理由は「詐欺」または「なりすまし」のうち近いほうを選ぶよう案内されています。

ブロックについても、LINEの公式ガイドは「ブロックしても相手には通知されない」と説明しています。警察庁の資料では、令和7年中にLINEヤフー株式会社へ情報提供した詐欺関連のアカウントが18,214件あったとされ、通報がアカウント停止の手がかりとして使われていることがうかがえます。

副業サイトに登録した・お金を入れてしまった場合

すでに相手が指定したサイトに登録している場合は、状況によって次の一手が変わります。

今の状況まずやること
登録しただけで入金はしていない追加の入金をしない。サイトのURL、登録時の画面、相手とのトークを保存する
少額の報酬を受け取った受け取った事実も記録しておく。「次はもっと大きい案件を」という誘いに応じない
チャージ・仕入金などの名目で入金した振込先の金融機関に連絡し、口座の取引停止を相談する。警察(#9110)にも相談する
「違約金」「手数料」を追加で求められている支払わずに、消費生活センター(188)か警察へ。出金のための費用という説明には特に注意

警察庁は、投資や副業で得た利益を引き出す際に、事前に説明のなかった高額な手数料を追加で要求することは一般的にない、と注意喚起しています。支払った後の具体的な手順はLINE副業詐欺で支払った後の初動対応、証拠の集め方は証拠の残し方を参考にしてください。

なお、返金の見通しは支払い方法や相手の口座の状況によって大きく異なり、必ず戻るとは言えません。「返金を代行する」と連絡してくる業者に、さらにお金を払うことは避けてください。

相談先と、相談するときに手元にあると話が早いもの

  • 警察相談専用電話 #9110:お金を振り込んだ、または振り込むよう強く迫られている場合。発信地を管轄する警察本部などの窓口につながります。
  • 消費者ホットライン 188:契約や解約、返金の交渉について。最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。
  • 当サイトの相談予約:経緯を整理したうえで、次に何をすべきか一緒に確認したい場合。

相談の前に、次のものをそろえておくと説明がスムーズです。

  • マッチングアプリ上の相手のプロフィール画面(名前、写真、自己紹介)
  • LINEに移った日と、副業の話が最初に出た日
  • 勧められたサイトのURLと、登録後の画面(残高や売上の表示)
  • 振込や入金の日時・金額・振込先がわかる明細

ほかの経路で届く副業の誘いについては、LINEグループ・オープンチャットに招待された場合や友人・知人から誘われた場合の記事でも取り上げています。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手に副業を勧められました。本当に好意がある可能性はありますか?

A. 可能性はゼロではありません。ただ、好意の有無と副業の安全性は別の問題です。お金を先に払う副業の話には乗らず、「副業はしないけれど、会って話したい」と伝えてみてください。それでも副業の話を繰り返すなら、目的が交際ではない可能性を考えたほうがよいでしょう。

Q. 最初に数千円の報酬が振り込まれました。それでも怪しいのでしょうか?

A. 報酬を受け取れたことは、安全の証拠にはなりません。警察庁や国民生活センターが公表している事例でも、最初に少額の報酬が支払われ、その後に高額の入金を求められる流れが確認されています。受け取った記録は残しつつ、追加の入金はしないでください。

Q. 相手をブロックすると、証拠が消えてしまいませんか?

A. ブロックしても自分の側のトーク履歴は残りますが、念のためブロックの前にスクリーンショットとトーク履歴の保存を済ませておくと安心です。そのうえでLINEとマッチングアプリの両方から通報し、最後にブロックする順番をおすすめします。

Q. ネットショップの副業に登録して入金しました。取り戻せますか?

A. 支払い方法や、振込先口座がまだ動いているかによって見通しは変わるため、一概には言えません。銀行振込なら振込先の金融機関への連絡と警察への相談を急いでください。「必ず取り戻せる」と勧誘してくる業者には注意が必要です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。