縁結び祈祷・霊視の高額請求は取り消せる?霊感商法の規定と相談先

結論から書きます。霊能者や祈祷師を名乗る相手から「今のままでは良縁が切れる」「祈祷をしないと結婚できない」と不安をあおられて契約した場合、消費者契約法第4条第3項第8号の「霊感等による知見を用いた告知」にあたれば、契約を取り消せる可能性があります。この取消権は他の取消事由より期間が長く、取り消せると気づいた時から3年、契約から10年です(同法第7条)。自宅への訪問や相手からの電話で契約した場合は、特定商取引法のクーリング・オフ(書面を受け取ってから8日)が使える場面もあります。

この記事は、縁結びの祈願料、霊視の鑑定料、除霊・お祓いの費用、開運グッズの代金などを払った、または払うよう迫られている方と、その家族に向けたものです。どんな言葉が取消しの対象になりうるのか、どこに何を持って相談すればよいのかを、条文と消費者庁の資料をもとに説明します。取消しが認められるかは個別の事情しだいで、返金を約束するものではありません。

縁結び・霊視を名目にした請求はどんな形で届くか

消費者庁が2022年8月の検討会に出した資料では、PIO-NETに「開運商法」のキーワードで登録された相談が、2012年度の3,267件から減った後、2017年度以降は年1,200〜1,500件ほどで推移しています(2021年度は1,435件)。同じ資料の商品・役務の上位には「占い・祈とうサービス」が訪問販売等とインターネット通信販売等の両方で並んでいます。

結婚や恋愛を入口にした請求は、次のような形をとることが多いとされています。

  • 縁結び祈願・縁切り祈願:「相手の気持ちをこちらに向ける祈祷」「悪縁を断つ儀式」として祈願料を求める
  • 霊視・先祖供養:「結婚できないのは先祖の因縁」などと告げ、供養料や浄霊の費用を求める
  • 開運グッズ:数珠、印鑑、置物などを「持たないと縁が遠のく」として販売する
  • 段階的な追加:最初の祈祷の後に「まだ障りが残っている」と別の儀式を勧める

入口は対面の鑑定会、自宅への訪問、電話、SNSのメッセージなどさまざまです。どの経路で契約したかによって使える制度が変わるため、最初に契約の経緯を思い出して書き出しておくことをすすめます。

消費者契約法で取消しの対象になりうる勧誘

消費者契約法第4条第3項は、事業者の不当な勧誘で困惑して結んだ契約を取り消せる場合を列挙しています。結婚・縁結びの相談に関係しやすいのは次の三つです。

第8号:霊感等による知見を用いた告知

霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、本人や親族の生命・身体・財産その他の重要な事項について「そのままでは重大な不利益を回避できない」と不安をあおり、または不安に乗じて、契約が必要不可欠だと告げる勧誘です。消費者庁の逐条解説は、「霊感」を除霊、災いの除去や運勢の改善など超自然的な現象を実現する能力と説明し、「このままでは不幸になる」のような漠然とした言い方でも、個別の勧誘の内容から重大な不利益を伝えたとみられる場合は含まれるとしています。

第5号:社会生活上の重要な事項への願望につけこむ告知

社会生活上の経験が乏しいことから、進学・就職・結婚・生計などの願望の実現に過大な不安を抱いていると知りながら、その不安をあおり、正当な理由なく「この契約が願望の実現に必要だ」と告げる勧誘です。逐条解説は、経験が乏しいかどうかは年齢で決まらず、中高年でも該当しうるとしています。

第9号:契約前に中身を実施してしまう勧誘

申込みの前に、契約したら負うことになる義務の全部または一部を実施し、元に戻すことを著しく困難にする行為です。「もう祈祷を始めたから払ってほしい」と言われたケースがこれにあたるかは、祈祷が通常その契約で行う行為か、原状回復が困難といえるかなどで判断が分かれるため、相談窓口で経緯を具体的に伝えてください。

勧誘で出てきた言葉を条文に照らしてみる

相談の場で役に立つのは、「何を言われたか」を具体的に伝えることです。下の表は、縁結びや結婚運の相談で出てきやすい言い回しと、検討の対象になりうる規定を並べたものです。あくまで目安で、実際に該当するかは前後の文脈や相手の立場、支払いの経緯を含めて判断されます。

言われた言葉の例検討の対象になりうる規定確かめたい点
「あなたには悪い因縁が見える。祓わないと一生結婚できない」消費者契約法 第4条第3項第8号霊視などの特別な能力を根拠にしていたか、祈祷が「必要不可欠」と告げられたか
「今年を逃すと婚期はもう来ない。この講座を受けるしかない」同 第5号結婚への不安をあおられたか、契約が願望の実現に必要だと告げられたか
「もう祈祷を始めてしまったので、費用を払ってもらう」同 第9号申込みの前に一方的に実施されたか、取りやめが実際に難しい状態にされたか
「帰らないでほしい。今決めないと縁が切れる」と引き止められた同 第2号(退去させない)帰りたいと伝えたのに引き止められたか
「お守りを家族分そろえないと効かない」と数を増やされた同 第4条第4項(過量契約)通常必要な量を著しく超えていたか、相手がそれを知っていたか

表の言葉は説明のための例で、実際の相談事例を引用したものではありません。自分が言われた言葉を、覚えている範囲でそのまま書き出しておくと、窓口での判断が早くなります。

取消しの期限と、訪問・電話勧誘のクーリング・オフ

制度期間主な対象
消費者契約法 第4条第3項第8号(霊感等)による取消し追認できる時から3年、契約から10年霊感等を用いて不安をあおられた契約
消費者契約法 その他の取消し(第5号・第9号など)追認できる時から1年、契約から5年願望への不安をあおる告知、契約前の義務実施など
特定商取引法 訪問販売のクーリング・オフ法定書面を受け取った日から8日自宅への訪問、目的を告げずに呼び出されての契約など
特定商取引法 電話勧誘販売のクーリング・オフ法定書面を受け取った日から8日事業者からの電話で勧誘された契約

「追認できる時」とは、困惑した状態から抜けて、取り消せることを知った時点をいいます。霊感等による勧誘の期間は、令和4年の臨時国会での改正で延ばされました。消費者庁の逐条解説は、霊感等によって正常な判断ができない状態から抜け出すには相当の時間がかかるという指摘を踏まえたものと説明しています。

消費者庁の特定商取引法ガイドは、電話や郵便、SNSなどで販売目的を告げずに呼び出して営業所などで契約させる方法(アポイントメントセールス)も訪問販売に含まれると説明しています。「無料で相談にのる」と呼ばれて出向いた先で祈祷を契約した場合は、この点も確認する価値があります。クーリング・オフは書面か電磁的記録で行い、送った記録を残してください。

祈祷料を払う前・払った後にやること

払う前(迫られている段階)

  • その場で返事をしない。「家族と相談してから」と伝えて帰る
  • 金額と名目、次にいくら必要になるかを紙に書いてもらう
  • 「誰にも言ってはいけない」と口止めされたら、第三者に話す合図と受け止める
  • 借金やカードの分割で払うよう勧められたら、いったん止める

払った後

  1. 領収書、契約書、振込の控え、カードの明細を集める
  2. 言われた言葉をできるだけそのまま書き出す(「このままでは一生独り」など、日付つきで)
  3. 電話やメッセージの履歴を保存する。録音があれば消さない
  4. 追加の祈祷や供養の申込みは止める
  5. 消費生活センターに経緯を伝え、取消しやクーリング・オフの通知の書き方について助言を受ける

「言われた言葉」の記録は、第8号の「不安をあおり」「必要不可欠である旨を告げ」にあたるかを判断する材料になります。記録の方法は証拠の残し方を参考にしてください。

宗教団体への寄附として求められた場合

祈祷料が「お布施」「寄附」として求められることもあります。売買やサービスの契約ではなく寄附の形をとる場合は、消費者契約法ではなく、2023年に施行された法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)の対象になるかが問題になります。どちらの法律が関係するかは、支払いの名目や相手の法人の形態で変わるため、名目が書かれた領収書や振込先の名義を必ず残してください。

判断が難しい場合も、窓口はまず消費者ホットライン188で構いません。消費者庁の資料には、消費生活センターが相談者が恐怖を感じる場合は警察を、返金を求める場合は法律相談を紹介している、と書かれています。

家族が縁結び祈祷にのめり込んでいるとき

本人が「効果がある」と信じている間は、周囲が強く否定すると相手の側に戻ってしまうことがあります。次の順で関わると、話を聞いてもらいやすくなります。

  1. 祈祷や鑑定の内容そのものを否定する前に、これまでにいくら払ったかを一緒に数える
  2. 「次はいくら必要と言われているか」を聞き、支払いが終わる見通しがあるかを確かめる
  3. 取消しの期間があることを伝え、急いで決める必要はないと安心してもらう
  4. 本人の同意を得て、188や相談予約に一緒に連絡する

占いサイトでのポイント課金による請求は、結婚占い・恋愛鑑定サイトの課金が止まらない時の対処で別に説明しています。占い全般の相談の流れは占い詐欺の相談をご覧ください。

よくある質問

Q. 縁結び祈祷の効果がなかったことを理由に返金を求められますか?

A. 「効果がなかった」だけでは取消しの理由になりにくいです。消費者契約法で問題になるのは、契約の際に霊感等で不安をあおられた、願望への不安につけこまれた、といった勧誘の仕方です。言われた言葉の記録が判断材料になります。

Q. 5年前に払った祈祷料も取り消せますか?

A. 霊感等による勧誘(第4条第3項第8号)なら、取り消せると気づいた時から3年、契約から10年以内であれば取消権を行使できる可能性があります。それ以外の取消事由は1年・5年です。個別の該当性は消費生活センターや弁護士に確認してください。

Q. 電話占いで勧められた縁結び祈願にもクーリング・オフは使えますか?

A. 自分からサイトに申し込んだ通信販売には、法律上のクーリング・オフはありません。事業者の側から電話をかけてきて勧誘した場合は、電話勧誘販売として書面受領から8日のクーリング・オフが使える場合があります。

Q. 「誰にも話すな」と言われています。相談してよいのでしょうか。

A. 相談して構いません。口止めは第三者の意見が入るのを避けるためであることが多く、消費生活センター(188)に相談しただけで、その内容が相手に知らされることは通常ありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。