同じ相手にだまされた人が見つかったら|被害者同士で情報を共有するときの注意点

自分と同じ相手に、別のアプリでだまされかけた人がいると分かったら、情報を持ち寄ることには意味があります。ただし、共有する相手は「信頼できる知人」と「警察・専門家」に絞り、ネットで名前や写真をさらすことは避けるのが基本です。

この記事は、友人や知人から「私も同じような人とやり取りしていた」と打ち明けられた方、SNSで同じ写真の相手についての投稿を見つけた方に向けて書いています。被害者同士がつながるときに起きやすい二次被害や、思わぬ形で自分が加害側になってしまうリスクも含めて整理しました。

同じ相手とやり取りしていた人が見つかる場面

複数のマッチングアプリやSNSを使い分けて動く相手の場合、被害者同士が別々の入口から同じ人物につながっていることがあります。気づくきっかけとしては、次のような場面が考えられます。

  • 友人に相手の写真を見せたら、「別のアプリで同じ人に声をかけられた」と言われた
  • 職場や趣味の仲間から、よく似た身の上話と投資の誘いを受けたと聞いた
  • SNSで、同じ写真を使った相手への注意を呼びかける投稿を見つけた
  • 知人から、あなたも登録している投資サイトやアプリを勧められた

最後の例のように、紹介してきた知人自身が、自分はだまされていると気づかないまま勧めていることもあります。その知人を責めるより、同じ相手からの影響を受けている「もう一人の当事者」として話を聞くほうが、状況をつかみやすくなります。

情報を持ち寄ると役に立つこと

被害者同士で情報を合わせることで、一人では見えなかったことが見えてくる場合があります。

  • 送金先の一致:同じ口座や同じ暗号資産のアドレスが使われていれば、同じ筋書きの中の被害である可能性が高まります
  • アカウントのつながり:アプリごとに違う名前でも、写真や文面、移った先のLINEが共通なら、同じ人物やグループが関わっている可能性を示す材料になります
  • 時期の重なり:誰に、いつ、どんな話がされていたかを並べると、手口の流れが浮かび上がります

ただし、情報を合わせるのは「相手の正体を自分たちで暴く」ためではなく、警察や弁護士に伝える材料をそろえるためだと考えてください。同じ口座への被害が複数の人から届けば、銀行や警察が状況をつかみやすくなります。つながりの整理のしかたは送金先がばらばらな被害の整理も参考になります。

記録は混ぜずに「誰のものか」を分けておく

持ち寄った画面や控えは、一つのフォルダにまとめてしまうと、後で誰の被害の記録なのか分からなくなります。提供してくれた人ごとにフォルダを分け、受け取った日付をファイル名に入れておくと、警察や弁護士に説明するときに混乱しません。他人から受け取った画面を加工したり、一部だけ切り取って別の人に回したりするのも避けてください。記録の信用性が下がるうえ、提供者の個人情報が思わぬところへ広がるおそれがあります。

ネットで名前や写真をさらす前に知っておきたいこと

「ほかの人が同じ目にあわないように」とSNSで相手の写真や名前を投稿したくなる気持ちは自然です。ただ、その投稿が別の人を傷つけたり、自分が法的な責任を問われたりすることがあります。

写真の人物は無関係の第三者かもしれない

詐欺に使われるプロフィール写真は、モデルや一般の人の写真を無断で使ったものであることが少なくありません。写真を載せて「この人は詐欺師」と書けば、写真を盗まれた無関係の人をさらに傷つけることになります。振込先の口座名義も、売買された口座や、だまされて口座を貸してしまった人のものかもしれません。

名誉毀損にあたるおそれがある

刑法第230条は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。公共の利害に関する事実で、目的がもっぱら公益を図ることにあり、真実であることが証明された場合の特例(第230条の2)はありますが、その判断は簡単ではありません。個人が不確かな情報で特定の人を名指しすることには、大きなリスクがあります。

注意を呼びかけたいときは、特定の人物を名指しするより、「マッチングアプリで知り合った相手から投資サイトに誘導された」といった手口そのものを伝えるほうが安全です。

注意喚起をするなら、人ではなく手口を書く

たとえば次のような書き方なら、特定の人を名指しせずに、ほかの利用者へ注意を促せます。

マッチングアプリで知り合った相手から、数日でLINEに移るよう言われ、投資サイトへの登録を勧められました。別のアプリでも、同じ流れの誘いを受けた知人がいます。似た誘いを受けている方は、入金する前に188や#9110に相談してください。

写真やアカウント名、口座名義は載せず、手口の流れと相談先だけを書くのがポイントです。反対に、自分の名前や写真を誰かにネットでさらされてしまったときの相談先としては、違法・有害情報相談センター(総務省の委託事業)があり、削除を求める手順などの助言を受けられます。

「被害者の会」「集団で返金請求」という誘いの見分け方

被害者同士がつながる場には、被害にあった人をもう一度狙う動きが入り込むことがあります。SNSで「同じ人に被害にあった方はDMください」「被害者の会で一緒に返金を求めましょう」と呼びかけるアカウントの中には、参加者から費用を集めることが目的のものも考えられます。

次のような点が見られたら、慎重に考えてください。

  • 参加費や着手金を、弁護士との面談より先に、個人名義の口座や電子マネーで払うよう求める
  • 「必ず戻る」「◯割は取り戻せる」と結果を約束する
  • 弁護士ではない団体や調査業者が、返金の交渉まで引き受けると言う
  • 相手のアカウントや送金先の情報を、根拠を示さずに大量に集めようとする

そもそも、報酬をとって他人の返金交渉を引き受けられるのは、原則として弁護士(または弁護士法人)だけです。弁護士法は第72条で、それ以外の者がこうした法律事務を仕事として扱うことを禁じています。探偵や調査会社の業界団体である日本探偵業協会も、被害金を取り戻すことは探偵業者にはできないとはっきり書いています。「被害者の会」の窓口に弁護士を名乗る人がいる場合は、名前と所属弁護士会を尋ね、その弁護士会に問い合わせて在籍を確かめてから話を進めてください。

友人や家族がまだ相手を信じているとき

情報を共有した結果、友人や家族が「今やり取りしている相手」と同じ人物らしいと分かることもあります。本人がまだ相手を信じている場合、伝え方によっては反発を招き、かえって相手との結びつきを強めてしまいかねません。

  • 「だまされている」と決めつける言い方ではなく、「私の相手と写真や話がよく似ている」と、自分が見た事実を伝える
  • 相手の写真の画像検索の結果や、自分とのやり取りの画面を見せ、判断を本人に委ねる
  • 「お金の話が出たら、払う前に一度だけ相談してほしい」と、具体的なお願いを一つに絞る
  • 本人の代わりに相手へ連絡したり、問い詰めたりしない

本人が迷っているようなら、「188に電話すれば近くの消費生活センターにつながる」「警察には#9110で相談できる」と伝えておくだけでも、いざというときの助けになります。

相手が親やきょうだいなど家族の場合は、お金の管理に口を出されたと感じて心を閉ざしてしまうこともあります。一度の話し合いで結論を出そうとせず、「最近どんな人とやり取りしているの」と日常の会話の延長で話を聞き、変化があれば記録を一緒に保存しておく、といった関わり方も考えてみてください。

共有してよい情報と、控えたい情報

被害者同士でも、渡す情報は必要な範囲にとどめます。

共有してよい情報の例控えたい情報の例
相手のプロフィール画面や表示名自分の住所、勤務先、家族の情報
送金先として指定された口座やアドレス自分の口座番号やカード番号、暗証番号
勧められた投資サイトやアプリの名前・URL自分がログインに使うIDやパスワード
やり取りの時期と、話の大まかな流れ身分証の画像

SNSで知り合ったばかりの「同じ被害者」を名乗る人には、とくに慎重になってください。本当に被害者であっても、グループの中に相手側の人物が紛れ込んでいる可能性は否定できません。

一緒に相談に行くときの進め方

知人と一緒に相談するのは心強いものですが、手続きは基本的に一人ひとり別々に進みます。被害届も、銀行への連絡も、返金の申請も、それぞれが自分の記録をもとに行います。

  1. 各自が自分の支払いの記録とやり取りの画面を用意する
  2. 共通していた点(写真、送金先、投資サイト)を1枚のメモにまとめ、全員が持っていく
  3. 警察や消費生活センターには「知人も同じ相手と思われる人物から被害を受けている」と伝える

記録の残し方はアカウントが消える前に残す記録、相談窓口の選び方は出会い系詐欺の相談の仕方で詳しく説明しています。個別の状況を話したい方は、相談予約からご連絡ください。

よくある質問

Q. SNSで「同じ人に被害にあった方はDMください」という投稿を見ました。連絡しても大丈夫ですか?

A. 連絡する場合も、自分の個人情報や支払いの記録を渡す前に、相手が何者で、何のために情報を集めているのかを確かめてください。費用を求められたり、返金を約束されたりしたら、いったん手を止めて188や弁護士に相談しましょう。

Q. 被害者同士で集まれば、返金されやすくなりますか?

A. 人数が集まったからといって返金が保証されるわけではありません。ただ、同じ送金先や同じアカウントについての情報が複数の人から警察や銀行に届くことは、状況を伝えるうえで役に立つことがあります。

Q. 相手の写真をSNSに載せて注意を呼びかけてもいいですか?

A. おすすめしません。写真は無関係の人のものを無断で使っている可能性があり、名誉毀損などのトラブルにつながるおそれもあります。注意喚起をするなら、人物ではなく手口を伝える形にしてください。

Q. 紹介してくれた友人に、責任をとってもらうことはできますか?

A. 友人自身もだまされていた可能性があり、一概には言えません。友人との関係をどうするかは、まず自分の被害について警察や弁護士に相談し、全体の事情が見えてから考えても遅くはありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。