複数のアプリで知り合った相手に送金した|送金先がばらばらな被害の整理と返金手続き

いくつものアプリで知り合った相手から、そのたびに違う口座や支払い方法で送金を求められた場合、最初にやるべきことは「誰に払ったか」ではなく「お金がどこへ行ったか」を一覧にすることです。返金を求める手続きは、支払った手段と送金先ごとに窓口が分かれているからです。

この記事は、複数の相手(あるいは名前を変えた同じ相手)に何回かに分けて払ってしまい、どこから手をつければよいか分からなくなっている方に向けて書いています。返金されるかどうかは事情によって大きく変わり、ここで結果をお約束することはできませんが、手続きの順番を整理するお手伝いはできます。

支払いの一覧表を作る|「指示したアカウント」の欄を必ず入れる

一覧表は、手続きの窓口を振り分けるためだけでなく、アプリをまたいで動いていた相手の姿を第三者に伝えるための資料にもなります。通帳、ネットバンキングの取引履歴、カードの利用明細、暗号資産交換業者の取引履歴、コンビニのレシートなどを手元にそろえ、古い順に1行ずつ書き出してください。

日付金額支払い手段送金先支払いを求めたアカウント名目
(例)3月5日30,000円銀行振込口座名義(カタカナ)・銀行名・支店名アプリA「ひろ」投資の初回入金
(例)3月20日100,000円暗号資産の送信送信先アドレス・取引IDLINE「Hiro」追加投資
(例)4月2日50,000円電子マネーのギフトカードカード番号(写真)・購入店SNS B「hiroshi」出金手数料

「支払いを求めたアカウント」の欄には、どのアプリの、どの表示名の相手から指示を受けたかを書きます。相手が途中で名前を変えたり、「アシスタント」「サポート担当」を名乗る別アカウントが出てきたりした場合も、そのまま書いておいてください。後から見返すと、別々の人に払ったと思っていた送金が、同じ筋書きの中でつながっていることに気づく場合があります。

記録が見つからない支払いがあるとき

ネットバンキングの履歴は、一定期間を過ぎると画面から消えることがあります。見当たらない振込は、銀行の窓口やコールセンターで取引の明細を出してもらえるか問い合わせてみてください。金額や日付があいまいでも、「3月中旬ごろ、約5万円」と分かる範囲で書いておけば、一覧表からは外さないほうがよいでしょう。

同じ相手かどうかは、自分で決めなくていい

アプリごとに名前も写真も違えば、「これは同じ人なのか、別々の詐欺なのか」と悩むのは当然です。ただ、その判断を被害者が一人で下す必要はありません。

むしろ、「別の人だと思うから」と一部の送金を相談から外してしまうと、つながりを示す大事な手がかりが抜け落ちるおそれがあります。振込先の口座、暗号資産の送信先、相手が使った言い回しなどから関係を見るのは警察や弁護士の仕事です。相談するときは、関係がありそうだと思う支払いはすべて一覧表に入れたまま持っていってください。

一方で、送金先の名義が送金のたびに違っていても、それだけで別人とは言い切れません。詐欺では、本人とは関係のない他人名義の口座が使われることがあります。犯罪収益移転防止法は、他人に使わせる目的などで預貯金通帳やキャッシュカードを譲り渡したり譲り受けたりすることを、罰則つきで禁じています。名義が違うのはこうした口座が使われているためかもしれず、名義人の名前だけで相手の正体を推し量らないことが大切です。

振込先の口座が複数あるときの銀行への連絡

振込による支払いがある場合は、一覧表ができた時点で、自分が振込をした銀行に連絡します。振込先の銀行ではなく、振込元の自分の銀行が窓口です。複数の銀行から振り込んでいれば、それぞれの銀行に連絡します。

  1. 銀行に「詐欺の被害にあった可能性がある」と伝え、振込日・金額・振込先を一覧表から読み上げる
  2. 振込先の口座について、銀行間で取引の停止などの対応を検討してもらう
  3. 警察に相談した場合は、相談した警察署や受理番号を銀行にも伝える

いわゆる振り込め詐欺救済法は、詐欺など人の財産を害する犯罪で振込先として使われた口座を対象に、金融機関による取引の停止などの措置と、その口座に残っていたお金を被害者へ分配する手続きを定めた法律です。対象は「振り込め詐欺」に限られず、振込が使われた詐欺全般に及びます。分配の手続きが始まると、預金保険機構のサイトで口座が公告され、そこから被害者が申請する流れです。

振込先が複数あれば、口座ごとに別々の手続きとして扱われます。ある口座では手続きが進み、別の口座では残高がなくて分配が見込めない、ということも起こります。公告は口座ごとに確認し、申請の期限を逃さないようにしてください。手続きの細かな流れは振込した後の対処法にまとめています。

暗号資産・電子マネー・カードが混ざっているとき

警察庁の令和7年の集計では、SNS型ロマンス詐欺の被害のうち、振込による被害が3,055件だったのに対し、暗号資産を送らせる形の被害も2,177件あり、前の年の約2.8倍に増えています。途中から支払い方法を変えさせられるのは珍しいことではありません。

支払い手段まず連絡する先手元にそろえるもの
暗号資産自分が使った暗号資産交換業者送信日時、送信先アドレス、取引ID(トランザクションID)、交換業者への入金記録
電子マネーのギフトカードカードの発行会社カード番号が写った写真、購入したレシート、相手に番号を伝えた画面
クレジットカードカード会社利用明細、支払った先のサイト名や表示名、やり取りの画面
コード決済・送金アプリそのアプリの運営会社送金履歴の画面、送金先の表示名やID

暗号資産は、送った先の相手を特定しにくく、取り戻すのは難しいことが多い手段です。それでも、交換業者に早く伝えることで、送金先のアドレスに関する情報が残されたり、同じ手口による被害の防止に役立てられたりすることがあります。ギフトカードも、発行会社に早く連絡するほど、利用を止めてもらえる余地が残ります。

借金をして払っていた場合

国民生活センターが紹介したロマンス投資詐欺の事例には、マッチングアプリで知り合った相手に勧められ、銀行や消費者金融から借り入れて合計約500万円を投資したものの、出金しようとすると保証金を求められ、連絡が途絶えたというものがあります。送金の原資が借金だった方は、被害の回復とは別に、返済の問題にも向き合わなければなりません。

  • 貸金業者や銀行から借りたお金は、その使い道で被害にあったとしても、返済の義務そのものは原則として残ります。延滞が続く前に、借入先に事情を話して返済方法を相談してください
  • 返済が苦しい場合は、弁護士や司法書士に相談する方法があります。費用の支払いが難しいときは、法テラス(日本司法支援センター)で、収入などの条件を満たせば費用の立替えを利用できることがあります
  • 「借りてでも払えば取り戻せる」という相手の言葉に応じて、新たに借りることは避けてください

家族に内緒で借りている場合、打ち明けることに強いためらいがあるかもしれません。ただ、返済や今後の生活を一緒に考える人がいると、相手からの追加の要求にも冷静に向き合いやすくなります。

「保証金」「税金」「手数料」の追加請求には払わない

複数のアプリやアカウントから送金を求められてきた方は、この段階で「最後の支払い」を持ちかけられることがあります。国民生活センターの事例では、出金しようとしたら、利益を含めた総資産の15%にあたる180万円を保証金として払うよう求められていました。

名目が「保証金」「税金」「手数料」「凍結解除」のどれであっても、お金を引き出すために先にお金を払わせるという構造は同じです。払えば戻るという説明に根拠はなく、支払いが増えるほど被害も大きくなります。求められた時点で手を止め、一覧表に「請求された日・金額・名目・請求してきたアカウント」を書き足してください。

この段階では、これまでの相手とは別の「取引所のサポート」「税務の担当者」「被害回復を手伝う専門家」などを名乗るアカウントが、新たに別のアプリから連絡してくることもあります。登場人物が増えても、求められているのが先払いである限り、構造は変わりません。新しく現れたアカウントも、一覧表の「支払いを求めたアカウント」の欄にそのまま加えておくと、後で相談するときに全体の流れが伝わりやすくなります。

相談先と、持っていくもの

一覧表ができたら、次の窓口に相談します。どこに相談しても、一覧表と、各アプリ・LINEのやり取りの画面、振込の控えなどを見せられるようにしておくと話が早く進みます。

  • 警察:まずは #9110 で相談し、被害届を考えるなら最寄りの警察署へ。届けるかどうか迷っている段階でも話を聞いてもらえます(警察での手続き)
  • 消費生活センター:消費者ホットライン 188。サイトや業者との契約をめぐる支払いがある場合に向いています
  • 弁護士:相手や口座の調査、返還請求を依頼したい場合。費用の考え方は弁護士に依頼する前にで整理しています

支払いが多く、自分では整理しきれないという方は、相談予約から状況をお聞かせください。

よくある質問

Q. 送金先の名義が毎回違いました。同じ相手とは言えないのでしょうか?

A. 名義が違うだけでは判断できません。詐欺では他人名義の口座が使われることがあるためです。同じ相手かどうかは、送金を指示したアカウントややり取りの内容もあわせて警察や弁護士が見ていくので、すべての支払いを一覧にして相談してください。

Q. 一部は自分から「もっと投資したい」と言って送りました。それでも被害として相談できますか?

A. 相談できます。相手の説明を信じて自分から追加したお金も、経緯の一部です。どの時点でどんな説明を受けたかが大切なので、当時のやり取りの画面を残しておいてください。

Q. 少額の送金が何十回もあります。全部書き出す必要がありますか?

A. できる限り書き出すことをおすすめします。少額でも振込先の口座ごとに手続きが分かれることがあり、一件ごとの記録が申請の根拠になります。どうしても難しければ、口座ごと・月ごとの合計だけでも先にまとめ、明細は後から補ってください。

Q. 複数のアプリで知り合った相手への送金は、まとめて一か所に相談すれば足りますか?

A. 相談の入口は一か所でかまいませんが、返金の手続きは振込なら各銀行、カードならカード会社というように、支払い手段ごとに別々に進める必要があります。相談先で整理してもらいながら、窓口ごとの連絡を漏れなく進めてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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詐欺返金相談ナビの相談前整理事例

サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。