InstagramのDMで「作品をNFTで買いたい」|ガス代を先に払わせる手口

Instagramにイラストや写真、ハンドメイド作品を投稿していると、知らないアカウントから「あなたの作品に感動した。NFTとして2ETHで買いたい」「OpenSeaに出品してくれたらすぐ購入する」といったDMが届くことがあります。やり取りを進めるうちに「出品にはガス代が要る」「ウォレットの認証費を先に払って」と言われ、送金を求められる流れです。

この記事の結論は次のとおりです。大手マーケットのOpenSeaは、固定価格で出品されたNFTを買うときのガス代は買い手が負担すると説明し、ガス代を個人のウォレットへ送るよう求めることは決してないと明記しています。見知らぬ「買い手」の指示で売り手が先にお金を送る必要が出てきたら、その取引は進めないでください。投資の勧誘として届くNFTのDMについても、後半で触れます。

作品を投稿している人に届くDMの流れ

クリエイターを狙うDMには、おおむね次のような順序があります。

  1. 作品を具体的にほめ、収集家やギャラリー関係者を名乗る
  2. 相場より高い金額(数十万円相当の暗号資産など)で買いたいと伝え、期限を切る
  3. 「NFTにしてOpenSeaに出品して」と頼み、相手が送ったリンクから登録させる
  4. 出品や受け取りの段階で「ガス代」「ミント代」「ウォレットの有効化費用」が必要だと言う
  5. 支払うと、今度は「取引でエラーが起きた」「サポートに解決手数料を払う必要がある」と別の請求が続く

OpenSeaのヘルプセンターは、よくある詐欺の型として、購入者が取引でエラーに遭ったと称して売り手に資金を送らせる偽のオファー、OpenSeaを名乗るQRコードつきのメッセージ、「開発者」「取引担当」を名乗る仲介役を挙げています。同社は、OpenSeaの開発者や仲介役とやり取りを求められることはないと説明しています。

数字でも裏づけがあります。2026年6月に警察庁が出した令和7年分の確定値を見ると、SNS型投資詐欺の入口として一番多く使われたのはInstagram(1,934件)でした。そのうち、DMが最初の接触だったものに絞ってもInstagramが1,000件で最多です。Instagramが、知らない相手から金銭の話を持ちかけられる入口として多用されていることが分かります。

ガス代は本来だれが払うのか

ガス代とは、ブロックチェーン上で取引を記録してもらうために支払う手数料です。OpenSeaのヘルプセンターでは、負担する人を次のように説明しています。

場面ガス代を払う人
固定価格で出品されたNFTを買う買い手
届いたオファーを受け入れて売る売り手
あるコレクションのNFTを初めて出品する売り手(コレクションの承認で発生する場合がある)

つまり、売り手がガス代を負担する場面はあるものの、それは自分のウォレットからブロックチェーンへ手数料として払うもので、買い手や仲介役のアドレスへ直接送金するものではありません。OpenSeaも、ガス代をまかなうために個人のウォレットアドレスへ資金を送るよう頼むことは決してないと明記しています。

「相手が買ってくれるなら、ガス代くらい先に出してもいい」と考えたくなる気持ちは分かります。ただ、本当に買いたい人は、公開されているマーケットで出品を見つけて自分で購入ボタンを押せば済みます。売り手が相手に送金する工程が挟まっている時点で、編集部はその取引を止めるべきだと考えます。

偽のマーケットや「サポート担当」への誘導を見分ける

DMに書かれたリンクの先が、本物そっくりの偽サイトであることもあります。OpenSeaが自社について公表している点を、判断のものさしにしてください。

  • ドメイン:OpenSeaの公式サイトは opensea.io。似たつづりや別の末尾のURLは開かない
  • メール:OpenSeaからのメールは opensea.io のドメインからしか送られない
  • DM:OpenSeaの担当者がSNSで先にDMを送ってくることはない
  • QRコード:取引のためにQRコードを読み取るよう求めることはない
  • 秘密情報:シードフレーズ、パスワード、秘密鍵を聞くことはない

Instagramのプロフィールで確かめること

  • アカウントの作成時期が新しく、投稿がほとんどない、またはフォロワーの大半が海外の無関係なアカウント
  • ほかのクリエイターにも同じ文面のコメントやDMを送っている形跡がある
  • 「ギャラリー」「コレクター」を名乗るのに、実在の展示や購入履歴が確かめられない

リンクを開く前に、マーケットの公式サイトはブックマークか検索から自分で開く習慣をつけると、偽サイトを踏む危険を減らせます。

返信する前に試したい3つの手順

  1. 金額を比べる:提示額が、自分の作品のこれまでの販売価格や同じ規模の作家の相場から大きく外れていないか。けた違いに高い申し出は、それ自体が注意のサインになる
  2. 自分の手で出品する:相手のリンクは使わず、公式サイトを自分で開いてNFTを出品し、「このページから購入してください」とだけ返す
  3. 反応を見る:相手が公開の出品から買わず、別のサイトでの登録、QRコードの読み取り、送金、ウォレットの「認証」を求めてきたら、そこでやり取りを終える

本当に作品を気に入った相手なら、この手順で困ることはありません。手順から外れた要求を重ねてくるかどうかが、判断の分かれ目になります。

自分の作品が勝手にNFTにされていたら

DMの詐欺とは別に、投稿した作品が本人の知らないところでNFTとして発行・販売されている被害もあります。国民生活センターが発行する月刊誌のNFT特集(2023年10月号)は、NFTが誰にでも発行できる点を踏まえ、権利者ではない第三者が発行したとみられるNFTの流通が多く見られると指摘しています。同特集によると、経済産業省も2022年度にNFTマーケットでの正規版コンテンツの流通に関する調査事業を行い、2023年7月に報告書を公表しました。

見つけたときの動き方

  1. 出品ページのURL、コレクション名、出品者のアドレス、価格を画面ごと保存する
  2. 自分が作者であることを示せる資料(元データ、制作途中の画像、最初に投稿した日時の分かる画面)をそろえる
  3. マーケットの権利侵害の報告窓口から削除を求める

OpenSeaは、著作権・商標・パブリシティ権を侵害するコンテンツを、米国のDMCAなどの法律に沿って削除すると定めています。申し立てには、署名(ペンネーム不可)、侵害しているアイテムへの直接リンク、連絡先、無断使用であることの宣誓などが必要とされています。既存のコレクションや有名人を装ったり、偽って提携をうたったりするアイテムも禁止対象です。

払ってしまった・ウォレットをつないでしまったとき

まず、それ以上の支払いを止めます。「エラーを直せば全額戻る」「あと一度だけ認証費を」という連絡が続いても応じないでください。

ウォレットを接続したり署名したりした場合

OpenSeaは、アカウントが乗っ取られた疑いがあるときは、残っている資産を安全なウォレットへすぐ移し、そのうえでヘルプセンターから連絡するよう案内しています。偽サイトで何らかの許可を出していると、時間がたってから資産が動かされることがあるためです。許可の取り消し方は承認をrevokeで取り消す手順の記事で説明しています。

DMの記録を残す

  • 相手のアカウント名(@から始まるユーザーネーム)とプロフィール画面
  • 購入を持ちかけたDMから支払いを求めたDMまでの一連のやり取り
  • 送られてきたリンクのURL(開かずにコピーで控える)
  • 送金した場合は、送付先アドレス、日時、金額、トランザクションID

保存が終わってから、Instagramのアプリ内でアカウントを報告し、ブロックします。先にブロックすると、やり取りが見づらくなることがあります。

相談先と、投資を勧めるDMへの向き合い方

Instagramでは、作品の購入話のほかに「NFTで資産を増やしている」「一緒に運用しよう」という投資の勧誘がDMで届くこともあります。こちらは相手が指定するサイトに暗号資産を送らせ、出金時に費用を求める形が多く、マッチングアプリ経由の勧誘についてはNFT転売をうたう勧誘の記事で詳しく扱っています。

相談できるところ

  • 被害届や今後の見通し:お住まいの地域の警察署、相談だけなら「#9110」
  • 支払ったお金や契約について:電話の「188」で、地元の消費生活センターの相談員につないでもらう
  • 海外のマーケットや相手の場合:FBIのIC3(インターネット犯罪苦情センター)は米国の窓口だが、OpenSeaは盗難品の報告に使える警察の報告書の例としてIC3への届出も挙げている
  • 法的な手続きを検討したい:相談予約

送った暗号資産を取り戻すのは簡単ではなく、返金を約束できる人はいません。だからこそ、DMで知らない相手からお金の話が出た段階で、この記事のチェックに立ち戻ってください。

よくある質問

Q. InstagramのDMで「作品をNFTで買いたい」と言われました。本物の買い手もいますか?

A. 本物の買い手が連絡してくる可能性はゼロではありません。ただ、本当に買いたい人は公開の出品を自分で購入すれば済みます。売り手に先払いや特定リンクからの登録を求める相手とは、取引を進めないでください。

Q. 買い手から「ガス代を先に送って」と言われました。

A. OpenSeaは、固定価格の出品を買うときのガス代は買い手が払うと説明し、ガス代を個人のウォレットへ送るよう求めることはないと明記しています。相手のアドレスへの送金には応じないでください。

Q. OpenSeaのサポートを名乗るアカウントからDMが来ました。

A. OpenSeaは、SNSで先にDMを送ることはなく、サポートはヘルプセンター経由で行うと公表しています。DMのリンクは開かず、公式サイトを自分で開いて確認してください。

Q. 自分の絵が知らないうちにNFTで売られていました。

A. 出品ページの情報と自分が作者である証拠を保存し、マーケットの権利侵害の報告窓口から削除を申し立てます。OpenSeaは著作権などを侵害するコンテンツを削除する方針を公表しています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

この記事をシェアして注意を広める

詐欺返金相談ナビの相談前整理事例

サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。

相談前に、被害状況を整理しておきましょう

LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。

LINEでチェックリストを受け取る 登録は無料 / 一般情報の提供を目的としています

参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。