マッチングアプリの相手に海外FX口座を作らされた|身分証やパスワードを渡した後の対処

マッチングアプリで知り合った相手に言われるまま海外FXの口座を開き、運転免許証の画像やログイン用のパスワードまで渡してしまった。そういう状況なら、最初にやるのは口座の管理を自分の手に戻すこと、その次が名義の悪用に備える手続きです。お金を取り戻す話は、その二つを済ませてからでも遅くありません。順番を逆にすると、相談している間に残高を動かされたり、身分証の画像を別の申込みに使われたりする余地が残ります。

この記事は、相手から「設定はこっちでやる」「取引は任せて」と言われて口座を操作されていた人、本人確認のために身分証や顔写真を送った人に向けたものです。恋愛感情を入口にした投資勧誘の見分け方はFX投資型の恋愛詐欺の記事にまとめているので、ここでは口座と個人情報を他人に握られた状態からどう抜け出すかに絞ります。

相手に口座を任せると、何が起きうるのか

海外FXの口座は、あなたの名前と本人確認書類で開かれています。ところが実際に画面を操作していたのが相手なら、入金も取引も出金先の登録も、あなたの知らないところで行われた可能性があります。ここで困るのは、損をしたかどうかだけではありません。

  • 記録上は「本人の取引」になる:業者から見れば、正しいIDとパスワードでログインした人が本人です。後から「自分は操作していない」と伝えても、それを示す材料がなければ話が進みにくくなります。
  • 規約違反を理由に口座が止まる:多くの取引サービスは、口座の貸し借りや第三者による操作を利用規約で禁じています。相手の操作が発覚すると、残高ごと口座を凍結される場面もありえます。どう定めているかは、開設時に同意した規約の該当箇所で確かめてください。
  • 身分証が別の用途に回る:免許証やマイナンバーカードの画像、顔写真の組み合わせは、ほかのサービスの本人確認にも使われうる情報です。

SNSやマッチングアプリで出会った人から持ちかけられる投資話について、金融庁は、LINEグループや偽のサイトへ誘導され、入金の後で手数料や税金の名目でさらに支払いを求められる流れを注意喚起しています。「二人の将来のため」と口座開設を急がせる話は、この流れの入口にあたることがあります。

今日中にやる:口座の管理を取り戻す5つの手順

相手とのやり取りが続いていても、次の作業は相手に知らせずに進めて構いません。先に伝えると、残高を移される心配があるためです。

  1. 画面の記録を残す:ログイン履歴、入出金履歴、登録されている出金先、登録メールアドレスと電話番号を、変更する前にスクリーンショットで保存します。変更した後では「相手が登録した情報」が消えてしまうからです。残し方は証拠の残し方も参考にしてください。
  2. パスワードと登録メールを変える:取引口座だけでなく、登録メールアドレス自体のパスワードも変えます。メールを握られていると、パスワード再設定の案内が相手に届きます。
  3. 二段階認証を自分の端末に付け替える:認証アプリやSMSの送り先が相手の端末になっていないか確かめます。認証コードを相手に教えたことがあるなら、その設定は作り直してください。
  4. 遠隔操作アプリを消す:「設定を手伝う」と言われて画面共有や遠隔操作のアプリを入れたなら、アンインストールし、端末の各種パスワードも見直します。
  5. 業者のサポートに事情を書面で伝える:第三者に操作されていた事実、身に覚えのない出金先の登録があることを、問い合わせフォームやメールで送り、送信控えを保存します。

筆者は、この5つのうち1と2だけは相手に相談せず今日のうちに済ませることをすすめます。相手が本当にあなたを思っているなら、あなたが自分の口座を管理することに反対する理由はないはずです。

身分証や顔写真を送ってしまったときの備え

本人確認書類の画像は、送った相手から取り戻すことができません。できるのは、悪用されたときに早く気づき、被害を広げないための手当てです。

信用情報機関の本人申告

指定信用情報機関のCICには、本人の申し出で「本人申告」を登録する仕組みがあります。CICの説明では、身分証の紛失・盗難で不正利用が心配な場合や、名義を他人に悪用されるおそれがある場合に登録でき、有効期間は登録から5年です。クレジット会社などが審査の際にこの申告を見ることで、なりすましの申込みに気づくきっかけになります。ただし審査の判断は各社が行うもので、登録すれば必ず防げるわけではない点もCIC自身が断っています。ほかの信用情報機関にも同様の制度がないか、あわせて確かめておくと安心です。

自分の名義で何か起きていないか見る

  • 知らない金融機関やカード会社からの郵便、SMS、メールが届いていないか
  • 携帯電話会社から、身に覚えのない契約の案内が来ていないか
  • 信用情報の開示を受け、見覚えのない申込みや契約がないか

気になる動きがあれば、その会社に連絡し、警察にも相談します。送った画像の種類(免許証の表裏、マイナンバーカード、顔写真つきの自撮りなど)と送った日時、送付先のアカウント名は、この時点でメモにまとめておくと後の説明が楽になります。

入金してしまったお金はどこに払ったかで道が分かれる

取り戻しの可能性は、業者の名前よりもお金がどの経路で誰に渡ったかで大きく変わります。振込明細や決済の履歴を手元にそろえ、次の表のどれに当たるかを確かめてください。

払い方最初に連絡する先知っておきたいこと
国内の銀行口座へ振込(個人名義・見知らぬ会社名義)振込先の銀行、自分の銀行、警察受け取った側の口座を銀行が止めた後なら、振り込め詐欺救済法という仕組みを通じて、凍結時点の残高を被害者で分け合う形で戻ってくることがあります。対象口座の公告は預金保険機構が載せています。
クレジットカードカード会社利用明細の加盟店名と日付を伝え、調査を依頼します。応じてもらえるかはカード会社の判断です。
暗号資産で送金警察、送金に使った国内の交換業者相手のウォレットアドレスと、送金ごとのトランザクションIDを記録します。いったん送られた暗号資産を取り戻すのは難しいのが実情です。
相手に現金や電子マネーを直接渡した警察受け渡しの日時、場所、メッセージの記録が中心的な材料になります。

国民生活センターは、SNS上の投資グループをきっかけにしたFXトラブルの注意喚起のなかで、個人名義の口座へ振り込むよう指示されても振り込まないよう呼びかけています。入金先が個人名義だったなら、それだけでも急いで銀行と警察に伝える理由になります。

相手に切り出す前に、確かめておきたいこと

口座を取り戻したあと、相手に何と言えばよいか迷う人は多いはずです。気持ちの整理は後回しにして、次の点だけは先に確かめておくと判断がぶれにくくなります。

  • 業者は日本で登録を受けているか:金融庁の「金融事業者一括検索」に業者名を入れて探します。見つからなければ、日本の居住者を相手に営業する登録がない可能性を考えます。金融庁は、海外に所在する業者でも日本の居住者を相手に金融商品取引を業として行うには登録が必要だとしています。
  • 相手は実際に会える人か:ビデオ通話や対面を何度も避ける、アプリの外の連絡先へすぐ移りたがる、といった点は冷静に振り返る材料になります。
  • 出金を試したらどうなったか:「今出すと損をする」「手数料を先に」と止められたなら、その文面を保存します。

相手を問い詰めて反応を見るのは、おすすめしません。証拠を消されたり、アカウントごと姿を消されたりするおそれがあるからです。やり取りを保存したまま、相談先に話を持っていく方が安全だと筆者は考えます。

家族や友人に打ち明けるかどうか

恥ずかしさから一人で抱え込む人ほど、相手からの「もう少しだけ入金すれば出金できる」という言葉に引き戻されやすくなります。全部を話す必要はありません。「投資の話でお金が戻ってこない、手続きを一緒に確認してほしい」と一言伝えるだけでも、追加の支払いを踏みとどまる支えになります。相手が家族や職場に知らせると脅してきた場合も、その文面を保存して警察に伝えてください。

相談先と、持っていくもの

相談先は、何を解決したいかで選びます。

  • 警察相談専用電話 #9110:被害の申告や、名義悪用が心配なときの相談。今まさにお金を要求されているなど急ぐ場合は110番です。
  • 188:消費者ホットラインの番号で、お住まいに近い相談窓口へ案内されます。海外の事業者が相手のトラブルでも相談できます。
  • 0570-050588(金融庁の詐欺的投資の相談ダイヤル):業者の登録や勧誘の内容についての相談。平日10時から17時。
  • 弁護士:取り戻しの交渉や法的な手続きを考えるとき。当サイトの相談予約からも申し込めます。

持っていくものは、相手のプロフィール画面、アプリ内と外部チャットのやり取り、口座のログイン履歴と入出金履歴、振込明細やカードの利用明細、送った身分証の種類と日時のメモです。何を先に集めるかで迷ったら相談前チェックリストが便利です。なお、このシリーズのLINEグループ経由で出金できないときの記事では、出金申請が通らない場面を扱っています。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手に海外FXの口座のパスワードを教えました。まず何をすればいいですか?

A. ログイン履歴と登録情報を画面に残してから、口座と登録メールのパスワードを変え、二段階認証を自分の端末だけに設定し直してください。そのうえで業者に、第三者に操作されていた事実を書面で伝えます。

Q. 身分証の画像を送っただけで、お金は払っていません。それでも相談した方がいいですか?

A. 相談して損はありません。身分証の画像は名義の悪用につながりうるため、CICの本人申告などの備えを検討し、不審な契約の案内が届いたら警察に相談してください。

Q. 口座の名義は自分なので、相手が操作した取引の損失も自分の責任になりますか?

A. 業者との関係では本人の取引として扱われやすいのが実情です。ただ、相手にだまされて操作を任せた経緯があれば、相手に対して責任を問えるかは別に検討できます。個別の判断は弁護士に確認してください。

Q. 相手は「一緒に出金しよう」と言っています。待った方がいいですか?

A. 出金を相手の段取りに任せる必要はありません。自分で出金申請を試し、断られた場合の文面を保存しておくと、後の相談で役に立ちます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。