ロマンス詐欺の弁護士相談|依頼の流れとメリット、回収が難しい理由

ロマンス詐欺の被害を弁護士に相談すると、振込先口座の名義人を調べたり、その名義人に請求したりと、個人では難しい手段が使えるようになります。一方で、相手が海外にいて本名も分からない国際ロマンス詐欺では、送ったお金がほとんど戻らない例が多いのも事実です。

この記事は、弁護士への相談を考えている被害者に向けて、弁護士に頼むメリットと限界、相談から依頼までの流れ、費用の考え方、依頼先を選ぶときの注意点をまとめたものです。当サイトは特定の法律事務所を紹介・推薦していません。記事の内容は公的機関と弁護士会が公開している情報をもとに編集部がまとめたもので、個別の見通しは相談先の弁護士に確認してください。

弁護士に依頼すると使える手段(メリット)

弁護士は依頼者の代理人として、次のような手段を取れます。どれも被害者本人だけでは進めにくいものです。

  • 弁護士会照会:依頼を受けた弁護士が、所属弁護士会を経由して銀行や携帯電話会社などに事実の報告を求める仕組みで、根拠は弁護士法第23条の2です。振込先口座の名義人の住所などが分かれば、請求の相手を特定できる場合があります。回答が得られないこともあります。
  • 口座名義人や受け取り役への請求:実際にお金を受け取った口座の名義人や、お金を移し替えた人に対して、不法行為による損害賠償を求める交渉や訴訟を起こせます。
  • 財産の仮差押え:訴訟の結果が出る前に相手の預金などが動かされないよう、裁判所に仮差押えを申し立てる方法があります。
  • 刑事手続きへの関与:告訴状の作成を手伝ったり、犯人が検挙されたときに示談や被害弁償の窓口になったりします。
  • 二次被害の防波堤:被害の後に届く「返金できる」という連絡への対応を任せられます。

振り込め詐欺救済法の分配金の申請は本人でもできますが、口座凍結の要請や他の手段との組み合わせを判断してもらえる点も利点です。

国際ロマンス詐欺で回収が難しい理由

東京弁護士会の広告調査部会は、国際ロマンス詐欺の被害回収は現実には難しく、多くの場合は全く回収できないか、ごく少額の回収にとどまると指摘しています。難しくなる理由は、主に次の3つです。

  1. 実行役が見えない:やり取りの相手は偽名で、海外から連絡していることも多く、日本の裁判所の手続きで請求するのが難しくなります。
  2. 口座の残高がすぐに動く:振込先の口座からは短時間で引き出しや送金が行われ、凍結できた時点で残高がほとんどない場合があります。
  3. 暗号資産は追いにくい:外部のアドレスへ送った暗号資産は取り消せず、送付先の持ち主を突き止めるのも容易ではありません。

編集部の考えとしては、弁護士に相談する目的を「全額を取り戻すこと」に置くと、期待と結果の差が大きくなりやすいと見ています。着手金を払ったのに回収はゼロ、という結果になれば、被害額に弁護士費用が上乗せされる形になるからです。凍結できる口座が残っていないか、請求できる国内の名義人がいるかを見極めてもらう場と考えるほうが、判断を誤りにくくなります。

相談から委任契約までの流れ

一般的な流れは次のとおりです。相談したからといって、依頼しなければならないわけではありません。

  1. 相談の予約:送金の回数と合計額、送金手段、最後に送金した日を伝えます。
  2. 法律相談:記録を見てもらいながら、使える手段と見通しを聞きます。30分程度で終わることが多いので、聞きたいことはメモにしておきます。
  3. 見積もりの提示:依頼する場合の着手金、報酬金、実費の説明を受けます。
  4. 委任契約:日弁連の会規である弁護士職務基本規程により、弁護士は事件を引き受ける前に見通しと進め方、費用を説明しなければならず、依頼者に有利な結果を約束することも禁じられています(第29条)。報酬の取り決めを書面にした委任契約書を作るのが原則です(第30条)。
  5. 着手と報告:弁護士会照会や請求を進め、途中経過の報告を受けます。

持っていく資料と当日の進め方は 弁護士への法律相談の準備と当日の流れ、国際ロマンス詐欺に特有の準備は 国際ロマンス詐欺の被害を弁護士に相談する前に で詳しく扱っています。

相談の場で弁護士に聞いておきたい質問

30分ほどの法律相談で判断材料をそろえるには、聞く順番を決めておくと効率的です。ロマンス詐欺の相談で、特に確認しておきたいのは次の5点です。

  1. 使える手段はどれか:弁護士会照会、口座名義人への請求、仮差押え、告訴のうち、自分のケースで現実的なものはどれか。
  2. 請求の相手は誰になるか:やり取りした相手本人か、振込先口座の名義人か、投資サイトの運営会社か。
  3. 回収の見込みをどう見ているか:数字で言えない場合でも、「難しい」「一部なら可能性がある」など率直な評価を聞く。
  4. 費用の総額と、回収できなかったときの負担:着手金、報酬金、実費を合わせた見積もりと、途中でやめた場合の扱い。
  5. 自分でできることは何か:救済法の分配金申請や警察への届け出など、弁護士に頼まなくても進められる手続き。

回答をその場でメモしておくと、複数の事務所で相談したときに比べやすくなります。編集部としては、少なくとも2か所で話を聞き、見通しの説明と費用の両方を比べてから決めることをすすめます。見通しを楽観的に語る事務所ほど、費用の説明も丁寧に確認してください。

弁護士費用の考え方と、費用を抑える方法

弁護士費用は事務所ごとに決められており、全国一律の料金表はありません。多くの場合、依頼時に払う着手金、結果に応じて払う報酬金、郵送料や印紙代などの実費に分かれます。

ロマンス詐欺では、回収できる見込みが低い案件で着手金が高額になると、依頼した結果として手元のお金がさらに減るおそれがあります。見積もりを受けたら、次の点を確かめてください。

  • 着手金はいくらで、回収できなかった場合に返ってくる部分があるか
  • 報酬金は回収額の何パーセントか、最低額の定めがあるか
  • どの相手に、どの手段で請求するのか(弁護士会照会だけか、訴訟までか)
  • 回収の見込みについて、どのような説明を受けたか

収入や資産が一定の基準以下なら、法テラスの民事法律扶助を使い、無料の法律相談や弁護士費用の立替えを受けられる場合があります。立替えを受けた費用は、原則として分割で返していきます。各地の弁護士会も法律相談センターを運営しており、全国共通の予約番号(日弁連の「ひまわりお悩み110番」、0570-783-110)に電話をすれば、発信地に近いセンターへ案内されます。

依頼先を選ぶときに確かめたいこと

国際ロマンス詐欺の被害者を集める弁護士広告については、東京弁護士会が問題点を具体的に挙げています。たとえば、架空の取扱事例の掲載、弁護士が1人なのに「24時間365日対応」とうたう表示、取り扱い実績がないのに「専門弁護士」と名乗る表示、別の種類の詐欺で回収できた例をロマンス詐欺の実績のように見せる表示などです。「LINEで相談」とうたいながら、実際には事務職員がメッセージを作っていた例も指摘されています。

同会は、依頼するときは法律事務所に出向き、担当弁護士と実際に顔を合わせて説明を受け、紙の契約書に署名・押印する手順を踏むよう勧めています。あわせて、次の点も確認しておくと安心です。

  • 日本弁護士連合会の弁護士情報検索で、名前と登録番号、所属弁護士会が一致するか
  • 広告の電話番号が、登録された事務所の番号と同じか
  • 面談の前に着手金の振込だけを急がせていないか

弁護士を名乗る人物からSNSで連絡が来た場合の確かめ方は 弁護士広告のルールと紹介業者の見分け方 を参考にしてください。

弁護士以外の窓口と組み合わせる

弁護士への相談と並行して、公的な窓口も使えます。警察には被害の申告を、振込先の銀行には口座凍結の依頼を、それぞれ本人が進められます。事業者が運営する投資サイトなどが関わっていれば、消費者ホットライン188で相談できます。

報酬目当てに他人の法律事務を扱えるのは原則として弁護士に限られ、資格のない業者が返金交渉を請け負うことは弁護士法第72条に触れるおそれがあります。「返金代行」「調査で相手を特定」とうたう業者に費用を払う前に、弁護士会や公的な窓口に一度相談してください。依頼した後で「説明と違う」「連絡がつかない」と感じたときは、その弁護士が所属する弁護士会の市民窓口に苦情を相談できます。費用の返還などをめぐって話がまとまらない場合は、弁護士会に紛議調停を申し立てる方法もあります。依頼前だけでなく依頼後にも相談できる場所があると知っておくと、契約をためらう気持ちも少し軽くなるはずです。

相談先の役割の違いは 警察・188・弁護士・法テラスの違い にまとめています。

よくある質問

Q. ロマンス詐欺を弁護士に依頼すれば、送ったお金は戻りますか?

A. 戻るとは限りません。弁護士は有利な結果を保証してはならないと定められており、国際ロマンス詐欺では回収できない、またはごく一部にとどまる例が多いと弁護士会も指摘しています。相談では、凍結できる口座や請求できる名義人があるかを確認してもらいましょう。

Q. 被害額が数十万円でも、ロマンス詐欺を弁護士に相談する意味はありますか?

A. 相談だけなら費用を抑えられる窓口もあります。依頼する場合は、着手金などの費用が回収見込み額を上回らないかを必ず確認してください。法テラスの無料法律相談は、収入などの条件を満たせば利用できます。

Q. オンラインだけで依頼を完結できる事務所は避けるべきですか?

A. オンライン対応そのものが問題なわけではありません。ただ、東京弁護士会は国際ロマンス詐欺の案件について、事務所で弁護士本人に会い、紙の委任契約書に署名押印することを勧めています。少なくとも、担当する弁護士本人から直接説明を受けてから契約してください。

Q. 警察に被害届を出す前に弁護士に相談してもいいですか?

A. かまいません。順番に決まりはなく、弁護士に相談したうえで被害届や告訴の準備を進めることもできます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。