恋人や「アドバイザー」から電話でFXの入金を急かされたら|通話中の指示の断り方

恋人との通話で「今のうちに買って」「このボタンを押して」とFXの売買を指示される。あるいは恋人から紹介された「アドバイザー」や「サポート担当」から電話があり、入金を急かされる。こうした状況にいる人に最初に伝えたいのは、電話がつながっている間は、入金も売買の操作もしないという一点です。

正規に登録されたFX業者は、頼まれていない人に電話をかけて店頭FXを勧誘することを法律で禁じられています。望んでいないのにFXの電話が続くこと自体が、立ち止まる理由になります。この記事では、電話という手段がなぜ判断を狂わせやすいのか、通話中にどう断るか、通話をどう記録し、切った後にどこへ連絡するかを順に説明します。

恋愛からFXへの誘導で電話が使われる場面

消費生活センターに寄せられた相談として国民生活センターが紹介している例に、マッチングアプリで知り合った女性と無料通話アプリに移って頻繁に連絡を取るうちに、外国のFXアプリを入れるよう勧められ、「アドバイザー」を紹介されたうえ、毎晩の連絡で「ここを押して」と売買の指示を受けていた50歳代男性のケースがあります。合計210万円を入れた後、出金を頼んでも返信が来なくなりました。

電話が出てくる場面は、おおむね次の3つに分かれます。

  1. 恋人本人との通話:甘い会話の流れで、相場の話や入金の話に移る
  2. 紹介された第三者からの電話:「先生」「アドバイザー」「カスタマーサポート」を名乗り、口座開設や追加入金を求める
  3. 知らない番号からの着信:「彼(彼女)から話を聞いた」と切り出し、取引を持ちかける

警察庁の2025年の集計を見ると、SNS型ロマンス詐欺で被害時にやり取りしていた手段は、9割を超えてLINEでした。電話といっても、実際には通話アプリを通じた音声通話であることが多いと考えられます。

電話だと断りにくくなる理由

文字のやり取りなら、返信する前に一晩考えることができます。電話ではそうはいきません。筆者は、FXの話が電話に移った時点で、相手が「考える時間」を取り上げにかかっていると受け止めたほうがよいと考えています。

  • 即答を迫られる:「今この値動きを逃すと損をする」と言われると、確認する余裕がなくなります。
  • 声が信頼を強める:好意を持っている相手の声で頼まれると、文字で読むよりも断りづらく感じます。
  • 記録が残りにくい:何を言われたかが後で曖昧になり、相談のときに状況を説明しにくくなります。
  • 操作をその場で誘導される:アプリの画面を見ながら指示されると、自分で判断して売買しているつもりでも、実際には相手の言うとおりに動いていることがあります。

恋人に悪気がないと信じたい気持ちは自然です。それでも、お金に関わる操作を通話中に行わないというルールを自分の中で先に決めておくと、迷いが減ります。

FXの電話勧誘について法律が決めていること

金融商品取引法には、FXの勧誘の仕方について次のような決まりがあります。金融先物取引業協会の解説をもとに整理すると、ポイントは3つです。

ルール内容
不招請勧誘の禁止(第38条第4号)勧誘を頼んでいない顧客に、訪問や電話で店頭FXの契約を勧めることは禁止
再勧誘の禁止(第38条第6号)契約しないと伝えた顧客に勧誘を続けることは禁止。取引所で行うFXにも適用される
適用されない場合直近1年間に2回以上の取引がある顧客や、未決済の建玉を持っている顧客などは対象外

金融庁も「あなたが望んでいない勧誘、それは詐欺かも」という見出しで、SNSで知り合った人からのFXや暗号資産の勧誘に注意を促しています。電話をかけてくる相手が業者の一員なのか、恋人個人として話しているのかは外からは分かりません。ただ、頼んでもいないFXの電話が続き、断っても終わらないなら、日本で登録を受けた業者のふつうの営業とは違うと考えてよいでしょう。

通話中にしないことと、短い断りの言葉

通話中にしないこと

  • 振込、送金、FXアプリでの入金や売買のボタンを押す
  • 画面共有を始める、言われたアプリを新しく入れる
  • 身分証の番号、ログインのパスワード、銀行のワンタイムパスワードを口にする
  • 「借りてでも入れて」という話に、その場で返事をする

そのまま使える断りの言葉

  • 「お金のことは電話では決めません。いったん切ります」
  • 「このFXの取引はしません。今後、この話で電話はしないでください」
  • 「決める前に家族にも話します」

理由を細かく説明する必要はありません。言い返されても同じ言葉を繰り返し、切ってしまって構いません。2つ目の言い方のように「取引しない」とはっきり伝えておくと、その後も勧誘が続いたときに、再勧誘にあたる状況だったことを説明しやすくなります。

次の電話には誰かに同席してもらう

また電話がかかってきそうなら、家族や信頼できる友人にそばにいてもらい、スピーカーで一緒に聞いてもらう方法があります。第三者が横にいるだけで、その場で入金を決めてしまう流れを止めやすくなります。相手が同席を嫌がったり、「二人だけの秘密に」と言ったりするなら、そのこと自体を記録に書き留めておきましょう。

通話の中身を記録に残す

電話のやり取りは形に残りにくいので、切った直後の数分が勝負です。次の順で保存してください。

  1. 着信履歴のスクリーンショット:番号、日時、通話時間が写るように。通話アプリなら相手のアカウント名も入れます。
  2. 通話直後のメモ:名乗った名前と肩書き、会社名、求められた金額、振込先、期限、「今日中に」などの言い回しをそのまま書きます。
  3. 録音:端末や通話アプリに録音機能があれば使えます。録音を始めると相手に通知される仕組みの端末もあるので、その点は承知しておきましょう。録音できなくても、メモがあれば十分役に立ちます。
  4. 通話の前後のメッセージ:「あとで電話するね」「さっき話した口座に」といった文面は、通話の内容を裏づけます。

メモの書き方や保存先の分け方は証拠の残し方でも詳しく説明しています。

入金した後の電話で言われやすいことと、その受け止め方

いったん入金すると、電話の中身は「もっと入れよう」から「出金したいならお金が要る」へ変わることが多いとされます。金融庁も、出金の際に高額な手数料や税金の名目で入金を求められ、払った直後に連絡が取れなくなる流れに注意を呼びかけています。

電話で言われること受け止め方
「利益への課税分を先に払ってもらわないと、引き出しの手続きに進めない」出金のために先に払う話が出たら、払わずに相談する合図
「口座を維持するための保証金が足りない」国民生活センターの事例では、保証金を求められた後に相手と連絡が途絶えている
「あなたの入金ミスで口座が凍結された。解除費用が必要」支払いを重ねるほど、取り戻すための手がかりは増えない
「私も半分出すから、あなたも用意して」恋人が負担すると言っても、入金先と引き出せる見込みは何も変わらない

どの言い方でも、共通しているのは出金の前にお金を求めている点です。この段階の電話には「払いません」とだけ答え、内容を記録して相談窓口へ持っていってください。

電話を切った後に連絡する先

まず、電話で名前の出た業者と、かかってきた電話番号を調べます。金融庁の金融事業者一括検索は、業者名だけでなく電話番号でも検索できます。調べ方の流れはFX業者の登録を金融庁のリストで確かめる記事にまとめました。

状況連絡先
勧誘の電話が続いている、業者の素性を確かめたい金融庁の詐欺的な投資に関する相談ダイヤル(ナビダイヤル0570-050588、平日10時〜17時)
FX取引をめぐる不正を知らせたい証券取引等監視委員会(情報提供の電話は0570-00-3581)
すでにお金を払った、脅すような電話が来る#9110か最寄りの警察署。身の危険を感じたら110番
契約や返金について聞きたい消費者ホットライン188

国内の口座に振り込んだ後なら、振込先の銀行へも早めに連絡しましょう。同じ番号から何度もかかってくる場合は、記録を取り終えてから着信拒否を設定して構いません。警察へ持っていくものは警察に相談するときの準備、全体の持ち物はチェックリストで確認できます。

よくある質問

Q. 恋人との電話で「ここを押して」と言われ、FXの売買をしてしまいました。まずすべきことは?

A. 追加の入金を止め、そのときの取引画面、入金履歴、通話の前後のメッセージを保存してください。業者の登録を金融庁のサイトで確かめたうえで、警察の#9110や188に相談すると次の手順を教えてもらえます。

Q. FX会社を名乗る電話が来ましたが、こちらからは何も頼んでいません。

A. 店頭FXについて、頼まれていない人に電話で勧誘することは金融商品取引法で禁じられています。その場で話を進めず、名乗った会社名と番号を控えて、金融庁の一括検索や相談ダイヤルで確かめてください。

Q. アドバイザーとの通話を録音しても大丈夫ですか?

A. 自分が当事者の通話を、相談や被害の申告に使うために記録しておくことは一般に行われています。録音した音声をSNSで公開することは避け、相談先に渡す用途にとどめてください。

Q. 取引しないと伝えたのに、また電話がかかってきます。

A. 日時と番号、言われた内容を記録し続けてください。断った後も勧誘が続く状況は、金融庁の相談ダイヤルに伝える重要な情報になります。記録を取り終えたら着信拒否を設定してもかまいません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。