ロマンス詐欺の被害届と警察への相談|相手が海外・偽名でも伝えること

ロマンス詐欺の相手が外国人を名乗っていても、本名や住所が分からなくても、警察に相談して被害届を出すことはできます。届け出の中心になるのは、相手の名前ではなく、お金の送り先と連絡に使われたアカウントの情報です。

この記事では、国際ロマンス詐欺の被害を警察に伝えるときの窓口の選び方、相手を特定する手がかりとして役立つ記録、届け出た後に起きることを順に説明します。被害届の様式の書き方は 詐欺の被害届の書き方 で、受理されなかったときの対応は 被害届が受理されないときは で扱っています。

どの窓口に連絡するか

状況によって、最初に使う窓口が変わります。

状況連絡先
今まさに送金しようとしている、受け取りに来た人がいる110番
詐欺かどうか分からない、どこに行けばよいか知りたい警察相談専用電話 #9110
被害届を出したい住所地を管轄する警察署
まず事実を伝えておきたい、平日に動けない警察庁の案内するオンライン受付、都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口

警察庁は、サイバー事案について「通報」「相談」「情報提供」をインターネットで受け付ける窓口を設けています。e-Govの電子申請システムを使い、住所地の都道府県警察を選んで送る仕組みで、スクリーンショットなどのファイルも添付できます。ただし、被害届そのものは警察署に出す必要があると案内されているので、オンラインで伝えた後も警察署への連絡を予定に入れてください。

オンラインの送信欄には、被害の概要を数行で書き、送金の一覧と相手のアカウント情報を続けて記入します。トークのスクリーンショットは送金を求められた場面を中心に選んで添付すると、読み手に伝わりやすくなります。送信した日時と内容は控えておき、警察署へ出向いたときに「先にオンラインで通報した」と伝えれば、情報をつなげてもらいやすくなります。

相手の本名が分からなくても届け出はできる

ロマンス詐欺の相手は、他人の写真と偽名を使い、海外にいると話していることがほとんどです。そのため「相手が誰か分からないと警察は動けない」と考えてしまいがちですが、被害届では相手が不明のままでもかまいません。

警察が捜査の手がかりにしやすいのは、次のような情報です。

  • 振込先の口座:銀行名、支店名、口座番号、名義(カナ)。国内の口座なら、名義人は日本国内にいます。
  • 暗号資産の送付先:送付先アドレス、トランザクションID、使った交換業者の名前。
  • 連絡に使われたアカウント:SNSのURLやユーザー名、LINE ID、電話番号、メールアドレス。
  • 誘導された投資サイトやアプリ:URL、アプリ名、ログインID。

相手が「外国人」「軍人」「医師」と名乗っていても、お金の受け皿は国内の口座や国内の交換業者であることが少なくありません。その部分を正確に伝えることが、捜査や口座凍結につながる近道です。

国際ロマンス詐欺で持っていくと役立つ記録

一般的な持ち物に加えて、国際ロマンス詐欺ならではの記録があります。

  • 相手のプロフィール写真と、送られてきた自撮りや家族の写真(他人の写真の盗用を調べる手がかりになる)
  • パスポート、軍の身分証、医師免許などとして送られてきた画像
  • 「荷物を送った」と言われた場合の追跡番号、配送業者を名乗るサイトのURLとメール
  • 弁護士、銀行員、税関職員などを名乗る第三者から届いた連絡
  • 送金を頼まれた場面のトーク(日時が分かる形で)
  • 自分の送金記録の一覧(日付、金額、送金手段、送り先)

トークが長い場合は、全部を印刷するより、送金を求められた部分に付箋を付けるなどして示せるようにしておくと説明が短く済みます。相手から届いた写真や画像は、スクリーンショットだけでなく、保存した元の画像ファイルも消さずに残しておいてください。日付順の経過をどう書き出すかは、来署前に作るメモの見本を下敷きにすると迷いません。

警察署で話す順番と、帰る前に控えること

警察署の窓口では、最初の数分で「どんな被害か」が伝わると、その後の聞き取りが進みやすくなります。次の順番で話す準備をしておきましょう。

  1. 結論:「SNSで知り合った相手に、恋愛関係を装われて合計〇〇万円を送らされた」
  2. 期間:知り合った時期と、最初と最後の送金の日付
  3. お金の行き先:送金手段ごとの送り先(口座、アドレス、送金サービス)
  4. 相手の手がかり:使われたSNSアカウント、LINE ID、電話番号
  5. 今の状況:相手から今も連絡があるか、追加の送金を求められているか

恋愛のやり取りの細かな経緯は、聞かれたときに答えれば十分です。説明が前後しても、警察官が質問しながら整理してくれます。

帰る前には、対応してくれた警察官の所属部署と名前、被害届を受理した場合は受理番号を控えておきます。後から銀行や弁護士に「どこの警察署に、いつ届け出たか」を伝える場面があるためです。追加で思い出したことや新しい連絡が来たときに、誰に連絡すればよいかも確認しておくと安心です。

被害届・告訴・相談のどれにするか

警察への関わり方には段階があります。

  • 相談:事情を話して助言を受ける。記録は残るが、捜査が始まるとは限らない。
  • 被害届:犯罪の被害に遭ったことを警察に申告する。捜査のきっかけになる。
  • 告訴:犯人の処罰を求める意思をはっきり示す。書面で出すことが多く、弁護士に作成を頼む人もいる。

編集部としては、送金がすでにあるロマンス詐欺なら、相談で終わらせず被害届まで進めることをすすめます。振込先口座の凍結や、後の被害回復の手続きで、被害を申告した事実が意味を持つ場面があるためです。窓口で「民事の問題」と言われたときは、相手がうそをついて送金させたこと、同じ手口の被害が社会問題になっていることを、記録を示しながら改めて伝えてください。

送金が何回にも分かれていても、一連の被害としてまとめて相談できます。送金の一覧表を渡すときは、それぞれの送金をどんな名目で頼まれたかを横に書き添えておくと、うその内容と送金の結びつきが伝わりやすくなります。

届け出の後、お金の面で起きること

警察に届け出ても、送ったお金が警察から返ってくるわけではありません。ただし、次の手続きにつながる場合があります。

  • 口座の凍結:警察から金融機関へ、振込先口座が詐欺に使われている疑いがあると情報提供が行われることがあります。口座が止まった時点で残っていたお金は、振り込め詐欺救済法の手続きを経て被害者に配られる可能性があります。
  • 示談・被害弁償:受け取り役などが検挙されると、弁護人を通じて示談や弁償の申し出が来ることがあります。
  • 被害回復給付金:組織的な詐欺で犯人の財産が刑事裁判で没収・追徴された場合、検察庁が被害者に給付金を支給する制度があります。検察庁は申請に手数料を求めないと明記しています。

令和7年のSNS型ロマンス詐欺の認知件数5,645件に対し、同じ年に検挙できたのは261件でした。届け出たからといって必ず結果が出るとは限らない点も、あらかじめ知っておいてください。

警察への相談と並行して進めること

警察の捜査は、被害者のお金を直接取り戻すための手続きではありません。届け出と並行して、次のことを自分で進めておくと、回復の可能性を少しでも残せます。

  • 銀行・交換業者への連絡:振込先口座の凍結の依頼や、暗号資産の取引記録の保全を求めます。警察に相談した日付と警察署名を伝えると話が通りやすくなります。
  • SNS運営会社への通報:相手のアカウントを通報し、他の人への被害の広がりを抑えます。通報の前にプロフィールとやり取りは保存しておきます。
  • 消費生活センターへの相談:投資サイトの運営会社など、事業者が関わる部分は消費者ホットライン188で相談できます。
  • 弁護士への相談:口座名義人への請求や告訴状の作成を考えるなら、早めに見通しを聞いておきます。

どれも警察の許可を得る必要はなく、同じ週のうちに進めてかまいません。ただ、相手に届け出たことを知らせるのは避けてください。口座のお金を急いで移されるおそれがあります。

警察を名乗る連絡に注意する

被害の後には、警察官を名乗る人物から「あなたの口座が犯罪に使われている」「被害金を返すので手続き費用を」といった連絡が届くことがあります。本物の警察が、電話やSNSで返金の手数料や保証金の振込を求めることはありません。

連絡を受けたら、その場で折り返し先を聞くのではなく、自分で調べた警察署の代表番号か #9110 にかけ直して確認してください。ビデオ通話で制服姿や警察手帳を見せられても、それだけで本物とは判断できません。手口の詳細は 投資・恋愛被害のあとに警察や被害回復を名乗る連絡が来たら で紹介しています。

届け出の前にやっておきたい初動は ロマンス詐欺の初動対応チェックリスト にまとめています。

よくある質問

Q. ロマンス詐欺の相手が海外にいる場合、日本の警察に相談しても意味がありますか?

A. あります。相手が海外にいても、振込先の口座や使われた交換業者が国内にあれば、口座凍結や受け取り役の捜査につながる場合があります。相手のアカウント情報も含めて伝えてください。

Q. ロマンス詐欺の被害届は、住んでいる地域以外の警察署でも出せますか?

A. 住所地の警察署に出す人が多いものの、犯罪捜査規範第61条は、届け出の事件が管轄区域のものかどうかを問わず受理するよう定めています。とはいえ、捜査を担当する署に引き継がれることもあるため、事前に #9110 で相談しておくと行き違いを防げます。

Q. 恥ずかしくて、警察で恋愛のやり取りを見せたくありません。

A. 警察に見せる目的は、送金を求められた経緯を示すことです。私的なやり取りを全部説明する必要はありません。送金の依頼に関わる部分を中心に整理して持っていけば足ります。

Q. 被害届を出したら、自分が口座を貸したことも調べられますか?

A. 相手の頼みでお金を受け取って送り直したことがある場合は、そのことも正直に伝えてください。事情を早めに説明しておくことが、自分の立場を守ることにもつながります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。