メールで案内が届いた特定商取引法とサクラサイトを疑ったときの確認方法
メールで案内が届いた特定商取引法とサクラサイトに注意が必要なケース n メールで案内が届いた特定商取引法とサクラサイトのような状況に遭遇した場合、その内容に不審…
インスタグラムのDMで仲良くなった相手に別のサイトへ誘われ、ポイントを買い続けた。気づいたときには相手のアカウントが消え、DMもサイト内のメッセージも手元にほとんど残っていない。そんな状態でも、お金を取り戻す話を進められるのか。
参考になるのが名古屋地方裁判所 平成26年3月4日判決です。原告の手元に、問題のメールの大半は残っていませんでした。それでも裁判所は、ほかの記録や国民生活センターに寄せられていた相談の内容と照らして原告の説明を信用できるとし、サイトの運営会社2社と代表者個人に、支払った金額と弁護士費用の賠償を命じています。
ここでは、弁護士らの団体「サクラサイト被害全国連絡協議会」がウェブ上に載せている判決文のPDFを読み、裁判所が何を手がかりにしたのかを確かめたうえで、DMが消えた人が今から集められる記録につなげます。同じ結果を約束するものではありません。
事件番号は平成24年(ワ)第2827号。岐阜県の原告が、出会い系サイトを運営していた会社、その運営を引き継いだ会社、両社の代表取締役の3者を訴えました。判決文から確認できる数字を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 振込額 | 最初の運営会社へ1,926万2,000円、引き継いだ会社へ2,515万8,000円 |
| アドレス交換の費用 | 1回につき3万6,000円。本来1回で済むはずの手続を何度もさせられた |
| 認められた賠償額 | 最初の会社に2,130万3,007円、引き継いだ会社に2,781万3,324円、代表者個人に両社分を合わせた4,911万6,331円(いずれも弁護士費用を含む) |
| 認められなかった点 | 慰謝料、引き継いだ会社が前の会社の債務まで負うという主張 |
被告側は「使いすぎたのは原告自身の判断」と過失相殺を主張しましたが、故意の不法行為であるとして退けられています。
判決文は、原告が述べた内容そのもののメールを示す証拠はないと認めたうえで、次の4つに照らせば原告の説明は自然であり信用できる、と判断しています。
4つめは見落とされがちですが重要です。有料サイトの一般会員なら、メールを送るたびに料金を払っているはずです。それが口座に見当たらないことが、相手は会員ではなく運営側の人間だという判断につながりました。
原告は、ある相手から「サイト内でかかったお金は全て返金します。だから続けて欲しい」、別の相手から「毎週30万円振り込みます」、さらに「裏技で、サイトの料金を無料にしたり、抽選を当選にできます」といったメールを受け取ったと述べています。サイト名義のメールも、費用負担が軽くなった、アドレスを配信する手続を行う、と後押しする内容でした。
残っていたメールの大半は、日々のたわいもない出来事でした。裁判所は、送信にも開封にも手数料がかかるサイトで、送り手が多額の手数料を負担してまでこうした文面を送っていたとは考えにくい、と指摘しています。原告がやり取りをやめようとすると、引き留めるようなメールが届いていたことも認定されました。
被告の代表者は「従業員は自分を含めて最大でも3人で、サクラとして人を雇ったことはない」と述べましたが、判決は、サクラ書き込み機能(管理者がキャラクターを作り、一般会員を装ってやり取りする機能)を備えた出会い系サイトプログラムが販売されていることを挙げ、従業員が少ないことはサクラを使っていない理由にならないとしています。
会社を相手に勝っても、会社が閉じてしまえば回収は難しくなります。その点で、この判決が代表取締役個人の責任を認めたことは注目されます。
代表者は本人尋問で、会員とのやり取りや請求・入金の確認は弟に任せていて、業務の中身は把握していなかったという趣旨の説明をしました。判決は、その説明を前提にしても、会社がサクラを使った行為について、共同不法行為上の過失と、代表取締役としての任務懈怠があるのは明らかだとしました。そのうえで、民法上の不法行為責任と、会社法429条1項(役員等が職務を行うについて悪意・重大な過失があった場合の第三者への責任)に基づく責任を認めています。
「任せていたから知らない」という説明がそのまま通らなかった点は、相手が会社の代表者の関与を否定してきたときの参考になります。ただし、個人に責任が認められるかは、事件ごとの事実によって判断されます。
判決の事案と同じく、失った記録の代わりになるものは意外とあります。インスタから誘導された場合に当てはめると、次のようになります。
| 失ったもの | 代わりになりうる記録 |
|---|---|
| インスタのDM | 相手のユーザーネームやプロフィールURLのメモ、通知の画面、家族や友人に送ったスクリーンショット、自分のアカウントのデータダウンロードで残っている範囲 |
| サイト内のメッセージ | サイトから届いた通知メール、ログインできるなら今残っている分の保存、相手の名前の一覧 |
| 支払いの記録 | 銀行の取引履歴(振込依頼人欄に会員IDを入れるよう指示されていれば、それ自体が利用の記録になる)、カード明細、電子マネーの購入レシート |
| 経緯の記憶 | 日付入りのメモ。いつ、誰に、何を言われ、いくら払ったかを思い出せる範囲で書く |
判決でも、原告が作ったメモと陳述書が証拠として出されています。記憶が新しいうちに、時系列のメモを作っておくことをすすめます。画面の保存方法は証拠の保存手順を参考にしてください。
この判決では、ほかの利用者が国民生活センターに寄せた相談の件数と内容が、原告の説明を裏づける材料のひとつになりました。各地の消費生活センターで受けた相談はPIO-NETと呼ばれるデータベースに入力され、国センのウェブサイトに載っている出会い系サイト関連の相談件数(2023年度6,938件、2024年度4,402件、2025年度3,399件)も、この登録を数えたものです。件数は減ってきていますが、年に数千件の相談が続いていることになります。
自分の相談がそのまま誰かの裁判に使われるとは限りません。それでも、同じサイトについて相談が重なることは、被害の実態を示す手がかりになりえます。証拠が少なくて相談をためらっている人ほど、188(消費者ホットライン)に一度つないでおく価値があると考えます。
電話では、サイトの名前(途中で変わった場合はすべて)、最初に誘われた経路がインスタのDMだったこと、払った合計と支払い方法、相手が約束した内容の4点を最初に伝えると、話が早く進みます。記録が残っていないことは、隠さずそのまま伝えて構いません。
相談の前に、次の3点をそろえておくと話がまとまります。
相談先は、188番のほか、だまされたと感じるなら警察相談専用電話#9110です。インスタのDMの残し方そのものはインスタのDMからメール交換サイトへ誘導されたときの記事で扱っています。裁判所がサクラをどう認定したかをもっと知りたい人は、全額が認められた東京高裁の判決例もあわせて読んでみてください。
A. あります。名古屋地裁平成26年3月4日判決では、問題のメールの大半が残っていない中で、残っていた一部のメール、サイトの登録状況、他の利用者の相談内容、口座の入金記録などから原告の説明が信用されました。支払いの記録と時系列メモを用意して相談してください。
A. お金を払ったのが誘導先の有料サイトなら、基本的な相手はそのサイトの運営者です。サイトの運営者表示、振込先の名義、カード明細の表示名を控えておくと、相談先が相手を特定しやすくなります。
A. この判決では、運営を引き継いだ会社は自分が運営していた期間の分について責任を負うとされましたが、前の会社の債務を引き継ぐという主張は認められませんでした。時期ごとに誰に払ったかを整理しておくことが大切です。
A. この判決では、財産上の損害に加えて慰謝料が必要といえる特別な事情を認める証拠がないとして、慰謝料は認められませんでした。慰謝料を求められるかは事案によって判断が分かれるため、弁護士に確認してください。
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。
サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。
LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。