ロマンス詐欺で送金してしまった場合の返金と対処法
ロマンス詐欺でお金を送金してしまった場合、できるだけ早く行動することが回収の可能性を高めます。銀行振込なら「組戻し」、クレジットカードなら「チャージバック」が有…
海外の現場で働くエンジニアを名乗る恋人から、「プロジェクトの報酬の一部を、二人の将来のためにあなたの口座へ送った」と連絡が来た。数日後、海外の銀行や送金会社を名乗るメールが届き、「送金は保留中です。受取人が手数料を支払えば着金します」と書かれている。この記事は、そのメールが本物かどうか迷っている人に向けたものです。
結論を先に書きます。海外からの送金を受け取るために、受取人が見知らぬ窓口へ手数料を前払いするという形は、国内の銀行が案内している受け取りの流れには出てきません。確かめる相手は、メールの差出人ではなく、自分が口座を持っている銀行です。
もう一つ大事な点があります。「届いたお金の一部を別の口座へ移して」と頼まれた場合は、2026年7月10日から罰則が設けられた、いわゆる「送金犯罪」に巻き込まれるおそれがあります。受け取る話だから安全、とは考えないでください。
送金を知らせるメールを使った請求は、次のような順で進むことが多いようです。
この構図は、外務省が海外邦人事件簿で紹介してきた古い型の国際詐欺とよく似ています。石油を扱う役所の幹部を名乗る人物から口座名義を貸せば謝礼を払うと持ちかけられ、送金の許可を得る手数料として数百万円を前払いさせられた事例や、海外の遺産を相続できるとして手続き料を求められた事例です。外務省は、緊急性を訴え、巨額のお金が絡むことを強調し、秘密を守るよう求める点が特徴だと述べています。恋人という関係に置き換わっても、「大きなお金を受け取るために、先に小さなお金を払う」という骨組みは変わりません。
比べる材料として、ゆうちょ銀行が公開している「国際送金のお受け取り」の案内を見てみます。流れは次のとおりです。
手数料について、同行は、送金を仲介する機関の手数料が送金額から差し引かれると説明しています(米ドル建てなら通常10米ドルなど)。また、法令に基づく確認のため入金まで1か月以上かかる場合があること、法人の取引にかかる国際送金を個人の口座で受け取ることはできないことも明記しています。
| 確かめる点 | 銀行が案内する受け取り | メールで届く話 |
|---|---|---|
| 手数料の払い方 | 送金額から差し引かれる | 受取人が別に先払いする |
| 連絡してくる相手 | 自分が口座を持つ銀行 | 聞いたことのない銀行名、フリーメール |
| 確認のされ方 | 銀行が送金目的や送金人との関係を尋ねることがある | 「誰にも言わないで」と口止めされる |
| 支払い先 | 該当なし | 個人名義の口座、暗号資産、ギフトカード |
ゆうちょ銀行は、送金の目的や原資、送金人との関係を資料で十分に確かめられない場合には入金を断り、送金元へ返すことがあるとも説明しています。会ったことのない交際相手から大きなお金が届くという話は、銀行の確認の段階で説明に困る可能性が高いものです。銀行から問い合わせがあったら、相手に言われた筋書きではなく、知り合った経緯をそのまま話してください。
手続きの細部は銀行ごとに異なります。迷ったら、自分の銀行に直接確かめるのが確実です。
相手の恋人に「銀行に確認した」と伝えると、「その銀行は国際送金の担当ではない」「担当者に直接連絡して」と別の窓口を示されることがあります。それでも、確認先は自分の銀行から変えないでください。
かつては不自然な日本語が見分ける手がかりとされていましたが、翻訳ツールやAIの普及で、整った日本語のメールも珍しくなくなりました。文面の出来ばえではなく、「誰に、何の名目で、どこへ払わせようとしているか」で判断するほうが確かです。
話の途中で、実際に知らない名義からお金が振り込まれることもあります。そのうえで「一部を別の口座へ送って」「現金で引き出して渡して」「暗号資産に替えて送って」と頼まれたら、応じないでください。
アメリカでネット犯罪の被害を受け付けているFBIの窓口IC3は、恋愛・信頼関係につけこむ詐欺の定義に、相手のためにお金や物を移し替えさせる行為も含めています。振り込まれたお金が、別の被害者から送らせたものである可能性があるためです。
警察庁の統計でも、2025年にSNS型投資・ロマンス詐欺の受け子などとして検挙された人は304人にのぼります。お金の受け渡しを担った人が捜査の対象になりうることは、数字からも読み取れます。
日本では2026年に犯罪収益移転防止法が改正され、警察庁によると、通帳などの不正な譲渡への罰則の引き上げと、いわゆる「送金犯罪」の罰則の新設が、同年7月10日から施行されました。大阪府警察は、他人から振り込まれた財産を別の口座へ移す行為を罪に問われうる例として挙げ、2年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金と案内しています。どのような場合に当たるかの解釈は警察庁が公表しており、事情によって判断が分かれるため、心当たりがあれば早めに警察に相談してください。
全国地方銀行協会は、口座が犯罪に使われると、ほかの自分名義の口座まで凍結されたり、将来にわたって口座を作れなくなったりすることがあると注意しています。頼まれて動いた側が失うものが大きい、という点を覚えておいてください。受け取りや転送の頼みごとについては荷物や送金の代行を頼まれたとき、口座の貸し借りについては口座を「貸して」と言われたときもあわせて参考にしてください。
| してしまったこと | 最初の連絡先と伝えること |
|---|---|
| 「受取手数料」を振り込んだ | 振込をした自分の銀行。詐欺の疑い、振込日時、金額、振込先を伝える |
| 暗号資産やギフトカードで払った | 利用した交換業者やカード発行会社。送信日時やカード番号を伝える |
| ネットバンキングのIDやパスワードを入力した | 取引銀行。利用停止とパスワード変更、不正な出金がないかの確認 |
| 口座番号や名義を教えた | 入出金を見守り、見覚えのない入金があれば動かさずに銀行へ連絡 |
| 知らない名義からの入金を転送してしまった | 取引銀行と最寄りの警察署。経緯と相手とのやり取りを持参 |
どの場合も、メール本文、送金証明書とされる画像、恋人とのトーク、振込の控えを保存してから動きます(証拠の残し方)。外務省は、この種のメールに一度返信すると共犯の疑いをかけられる危険もあると述べています。メールにはもう返事をせず、保存した記録を持って最寄りの警察署へ行くか、#9110に電話して今後の動き方を聞いてください。
お金を送ってほしいと頼まれれば、多くの人は立ち止まります。ところが、「あなたに送った」「受け取ってほしい」という話は、損をする話に聞こえにくいぶん、警戒がゆるみがちです。
けれども、ここまで見てきたように、受け取る側にも手数料の前払いを求められる、口座を犯罪に使われる、送金犯罪に巻き込まれる、といった危険があります。筆者は、会ったことのない相手の「送金した」という言葉は、自分の銀行で入金を確かめられるまでは存在しないものとして扱うのがよいと考えています。そして、仮に入金が確認できたとしても、そのお金を相手の指示で動かさないことが、自分を守るいちばん確かな方法です。
A. PDFや画像は作れるため、それだけでは判断できません。添付は開かず、自分が口座を持つ銀行に、海外からの送金が届いているか、保留になっているかを直接確かめてください。
A. 受け取る前に、知らない窓口へ税金や手数料を送る必要があるという説明は、銀行が案内する受け取りの流れとは合いません。払わずに、自分の銀行と警察に相談してください。
A. 入金があっても安心材料にはなりません。別の被害者が送らされたお金の可能性があります。引き出したり移したりせず、そのまま取引銀行と警察に連絡してください。
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。
サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。
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