「家相が悪い」とリフォームを勧められたら|契約前後の確認とクーリング・オフ

「鬼門に水回りがあるから家族の病気が続く」「この間取りのままだと財産が逃げる」。家相や風水の鑑定をきっかけに、キッチンや浴室の移設、玄関の付け替え、増改築などの工事を勧められた人に向けた記事です。

結論として、家相の指摘と工事の契約は切り分けて考えてください。工事が本当に必要かは、建物の状態と見積の中身で判断するものです。自宅に来た業者と契約したのであれば、特定商取引法の訪問販売として、契約書面を受け取ってから8日間はクーリング・オフができ、工事が終わっていても対象になります。家を元に戻す費用は業者の負担です。霊感などを理由に不安をあおられて契約した場合は、8日を過ぎても消費者契約法で取り消せる可能性があります。

本記事は法令と国民生活センター・国土交通省などの公開情報をもとにした一般的な解説で、個別の契約の有効性を判断するものではありません。

家相を理由にした工事の勧誘はどんな流れで進むか

家相・風水とリフォームが結びつく勧誘には、いくつかの入り口が考えられます。

  • 鑑定の延長:占いや風水鑑定を受けた場で「この方角の水回りを動かさないと運気が戻らない」と言われ、提携しているという工務店を紹介される。
  • 訪問による指摘:「近くで工事をしている」「家相の無料診断をしている」と訪ねてきた人が、間取りや外観の問題を指摘して工事を勧める。
  • 点検と組み合わせた勧誘:屋根や床下の点検のついでに「この家は家相的にも良くない」と言い添えて、複数の工事をまとめて契約させる。

家相そのものに関する公的な統計は見当たりませんが、訪問販売によるリフォーム工事の相談は多く寄せられています。国民生活センターのまとめ(2026年5月31日現在のPIO-NET登録分)では、訪問販売によるリフォーム工事の相談は2023年度11,879件、2024年度9,839件、2025年度5,544件でした。点検に来たと言って工事を契約させる「点検商法」の相談は2023年度12,550件、2024年度19,249件、2025年度19,696件と増えています。

国民生活センターが2023年10月に公表した屋根工事の点検商法の資料では、契約当事者の8割超が60歳以上で、不安をあおるトークや、次々に別の工事を勧めるトークが典型例として紹介されています。家相の話はこの「不安をあおる」部分に使われやすい、と編集部は見ています。

契約する前に確かめる6つのこと

家相を気にして工事を考えること自体は個人の自由です。ただ、金額が大きくなりやすいので、署名の前に次の点を確認してください。

  1. その日のうちに契約しない:「今月中に着工しないと凶方位になる」と期限を切られても、見積書を持ち帰って家族と相談する時間を取ります。
  2. 見積の内訳:「一式」ではなく、工事項目・数量・単価・諸経費が分かれて書かれているか。家相の鑑定料や「お清め」の費用が工事代金に混ざっていないか。
  3. 建設業の許可:国土交通省によると、建築一式工事以外の工事は1件の請負代金が500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)であれば許可が不要です。これを超える工事を請け負う業者は建設業の許可が必要なので、許可番号を尋ね、許可行政庁の情報で確かめます。
  4. 相見積もり:同じ工事内容で別の業者にも見積を依頼し、金額と工事範囲を比べます。
  5. 家相の指摘と工事内容の対応:「どの指摘を解消するために、どの工事をするのか」を書面に書いてもらいます。後で勧誘の内容を説明するときの材料になります。
  6. 着工日と支払い条件:契約前に工事を始めていないか、前金の割合が極端に高くないかを見ます。

見積が妥当か自分で判断できない場合は、国土交通大臣指定の住まいの相談窓口「住まいるダイヤル」(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)が、リフォームの見積チェックを受け付けています。

工事の途中や完了後でも使えるクーリング・オフ

業者が自宅を訪ねてきて契約した工事は、特定商取引法の訪問販売に当たるのが一般的です。この場合、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、理由を問わずクーリング・オフができます。

工事が進んでいても対価は払わなくてよい

特定商取引法9条5項は、クーリング・オフがあった場合、すでに役務が提供されていても、事業者はその対価を請求できないと定めています。消費者庁の特定商取引法ガイドも、役務が既に提供されている場合でも対価を支払う必要はない、と説明しています。

元に戻す費用は業者持ち

同じ条文の7項により、工事で土地や建物などの現状が変わっていれば、消費者は業者に無償で原状回復するよう請求できます。壁を壊した、配管を移したといった場合も、元に戻す措置を業者の費用で求められます。

8日を過ぎても可能な場合

契約書面に必要な記載がない、クーリング・オフについて事実と違うことを言われた、脅されて通知を出せなかった、といった事情があれば、8日を過ぎていてもクーリング・オフができる場合があります。

自分から業者を呼んだときの注意

特定商取引法26条6項1号は、消費者が自宅での契約を求めて呼んだ場合の訪問販売を、クーリング・オフを含む規定の適用対象から外しています。ただ、鑑定や見積のつもりで来てもらった場で別の工事を勧められたケースなど、呼んだ目的や経緯によって扱いが変わりえます。自分で呼んだから無理だと決めつけず、経緯をメモして消費生活センターで確認してください。

家相を理由にした勧誘と消費者契約法の取消し

クーリング・オフの期間を過ぎていても、勧誘の仕方によっては消費者契約法で契約を取り消せます。家相のケースで関係しやすいのは次の3つの規定です。

勧誘の内容関係する規定取消しの期限
「このままでは家族が大病する」など、霊感等の特別な能力による知見として重大な不利益を告げ、工事が不可欠だと言う4条3項8号追認できる時から3年、契約から10年
契約する前に工事を始めてしまい、元に戻すのを著しく難しくして契約を迫る4条3項9号追認できる時から1年、契約から5年
頼んでいないのに「あなたの家のために特別に調査した。費用を払ってもらう」と告げて契約を迫る4条3項10号同上

また、訪問販売で工事の必要性について事実と違うことを告げられて契約した場合は、特定商取引法9条の3による取消しも検討できます(追認できる時から1年、契約から5年)。

どの規定を使うにしても、勧誘の言葉が残っていることが大切です。鑑定書、パンフレット、LINEやメールのやりとり、訪問時のメモを捨てずに保管してください。

リフォームローンや高齢の家族がいる場合の注意

ローン・クレジットで払う契約

工事代金を個別クレジット(リフォームローン)で払う契約にした場合、クーリング・オフの通知は工事業者とクレジット会社の両方に同時に出してください。国民生活センターのクーリング・オフ特集でも、クレジット契約をしている場合は販売会社とクレジット会社に同時に通知するよう案内しています。業者とのトラブルが解決しないまま請求が続くときは、支払停止の抗弁をクレジット会社に申し出られる場合があります。

親が契約していたと後で分かった

屋根工事の点検商法の相談では60歳以上が8割を超えており、家相を理由とした工事でも高齢の家族が一人で契約している場合がありえます。消費生活センターへの相談は家族からもできます。親の家で見慣れない工事の契約書や見積書を見つけたら、日付を確認し、8日以内であればすぐに通知の準備をしてください。親が風水の商品を買っていた場合の進め方は高齢の親が風水グッズを買っていたときの対応で扱っています。

保険金で直せると言われた

国民生活センターは、屋根工事の勧誘で「保険金を使えば負担なく直せる」というトークに注意するよう呼びかけています。工事の必要性や保険の適用は、自分で保険会社に確認してください。

相談先と、相談前に準備するもの

  • 消費者ホットライン188:近くの消費生活センターにつながり、工事契約をやめられるか、業者にどう伝えるかを一緒に考えてもらえます。
  • 住まいるダイヤル(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター):リフォーム工事の内容や見積、工事費用についての相談窓口です。公式サイトの表示では電話03-3556-5147、受付は平日10時〜17時です。
  • 法テラスの霊感商法等対応ダイヤル:「このままでは家族に災いが」など霊感めいた言葉で工事を迫られた場合に。0120-005931、平日9時30分〜17時の受付です。
  • 警察相談専用電話 #9110:帰ってくれない、脅されたなど、身の危険を感じたとき。

準備するもの

  • 契約書・申込書・見積書・工事の図面(受け取った日が分かるもの)
  • 家相・風水の鑑定書や、指摘の内容を書いた紙
  • 業者の名刺、会社名、許可番号(聞いていれば)
  • 工事前後の写真、支払いの記録、ローンの契約書

風水をかたる勧誘の全体像は風水師をかたる詐欺の見分け方、置物など物品を買った場合の返品は開運グッズ・置物の返品とクーリング・オフ、記録の残し方は証拠の残し方を参考にしてください。

よくある質問

Q. 家相の鑑定料だけ払って、工事は断ることはできますか?

A. 鑑定と工事が別々の契約であれば、工事の契約をしない自由があります。すでに工事の契約書に署名している場合は、訪問販売であれば書面を受け取った日から8日以内にクーリング・オフを通知してください。鑑定料と工事代金が一つの契約にまとめられている場合は、契約書を持って消費生活センターに相談してください。

Q. 工事が終わってからでもクーリング・オフできますか?

A. 訪問販売の工事であれば、期間内なら工事完了後でもクーリング・オフができ、工事の対価を払う必要はありません。建物の現状が変わっている場合は、業者に無償で元に戻すよう求めることもできます(特定商取引法9条5項・7項)。

Q. 自分から業者を家に呼んで契約した場合もクーリング・オフできますか?

A. 自宅での契約を自分から求めた場合は、クーリング・オフの規定が適用されないことがあります(特定商取引法26条6項1号)。一方、見積や鑑定のために呼んだ場で別の工事を勧められた場合などは、経緯によって扱いが変わりえます。呼んだ目的と当日の流れをメモして188に相談してください。

Q. 「家相が悪いから工事が必要」と言われた見積が妥当か分かりません。

A. 同じ工事内容で他の業者から見積を取って比べるほか、住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)のリフォーム見積チェックを利用できます。家相の鑑定料やお清め費用が工事代金に含まれていないかも確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。