高齢の親が風水・開運グッズを買っていたら|家族の対応と成年後見

実家の棚に見覚えのない置物や数珠が増えている。通帳を見たら、同じ名義あての振込が何度も続いている。高齢の親が風水や開運グッズにお金を使っていたと気づいた家族向けに、最初にやること、買い方ごとに使える制度、成年後見をどう考えるかをまとめました。

先に結論を書きます。契約を取り消したり解除したりできるのは、原則として契約した本人(または法律上の代理人)です。家族にできるのは、本人を責めずに事実を集め、追加の支払いを止め、本人と一緒に消費生活センター(188)へ相談する段取りを整えることです。判断力の低下が心配なら、成年後見制度や社会福祉協議会の金銭管理支援も選択肢に入ります。どの手段が使えるかは購入の経路と時期で変わるため、以下の順に確認してください。

気づいた家族が最初の1週間でやること

親の買い物に気づいた直後は、驚きや怒りが先に立ちます。ただ、ここで「だまされたんでしょ」と言ってしまうと、本人は恥ずかしさから購入を隠すようになり、書類を捨てたり、業者とのやり取りを家族に見せなくなったりします。消費生活センターで相談するときも、返金を求める交渉をするときも、材料になるのは本人が持っている書面と記憶です。

話を聞くときの順番

  1. 「最近どんなものを買ったの」と品物の話から入り、値段は後で聞く
  2. どこで知ったか(訪ねてきた人、電話、新聞や雑誌の広告、テレビ通販、知人の紹介、展示会や講演会)を確かめる
  3. 「買わないと家族に悪いことが起きる」など、不安になる言葉を言われたかを聞く
  4. まだ続いている約束(次回の祈祷、追加の品、定期便)があるかを確認する

本人が「効果があった」「自分で納得して買った」と話す場合、その考えを否定するより、「支払いが続くと生活費が心配だから、一度だけ一緒に確認させて」と家計の話に置き換えると、協力を得やすくなります。

手元に集めるもの

  • 契約書、申込書、領収書、保証書、商品に同封されていた説明書やチラシ
  • 通帳(振込先の名義・日付・金額)、クレジットカードの利用明細、コンビニ払いの控え
  • 業者から届いた封筒、はがき、FAX、電話番号のメモ、カレンダーへの書き込み
  • 品物そのもの(箱や付属品も捨てない)

集めた書類は日付順に並べ、「いつ・どこで・何を・いくらで・どう払ったか」を1枚の表にしておくと、相談の場で説明が短く済みます。記録の残し方は証拠の残し方でも解説しています。

追加の支払いを止める

まだ請求が続いているなら、次の振込や引き落としを止めることが最優先です。カード払いなら本人からカード会社に連絡してもらい、事情を伝えます。業者から「途中でやめると効果が消える」「解約には違約金がかかる」と言われても、その場で払わずに相談を先にしてください。

買い方によって使える制度が違う

同じ開運グッズでも、どういう経路で買ったかによって、クーリング・オフが使えるかどうかが分かれます。表は特定商取引法と消費者契約法の主な規定を、家族が見当をつけるために並べたものです。実際に当てはまるかどうかは、消費生活センターや弁護士に書面を見てもらって判断します。

買い方主な制度期間の目安
自宅に来た販売員、路上や喫茶店での勧誘、展示会への呼び出し訪問販売のクーリング・オフ(特定商取引法9条)、過量販売の解除(同9条の2)書面を受け取った日から8日/過量販売は契約から1年
業者からかかってきた電話で申し込んだ電話勧誘販売のクーリング・オフ(同24条)、過量販売の解除(同24条の2)書面を受け取った日から8日/過量販売は契約から1年
新聞・雑誌・テレビ・ネットの広告を見て自分で注文した通信販売の返品ルール(同15条の3)。クーリング・オフの規定はない返品特約の表示がなければ商品到着から8日(送料は購入者負担)
「このままでは家族に災いが」などと霊感を示して不安をあおられた消費者契約法4条3項8号による取消し追認できる時から3年、契約から10年
判断力の衰えにつけ込み「買わないと今の生活が続かない」と言われた消費者契約法4条3項7号による取消し追認できる時から1年、契約から5年
同じような品を次々に買わされ、量が明らかに多い消費者契約法4条4項(過量契約)による取消し追認できる時から1年、契約から5年

訪問販売や電話勧誘販売のクーリング・オフは、法律で定められた内容の書面を受け取っていない場合や、業者がうそを言って撤回を妨げた場合には、8日を過ぎても主張できることがあります。「もう遅い」と決めつけずに、書面の有無を確かめてください。

通信販売は、広告に返品についての特約(「返品不可」など)がはっきり書かれていれば、その特約が優先します。ネット通販の開運グッズに多い論点はネット通販の開運グッズと表示のルールで別にまとめています。

家族が代わりに契約を取り消せるのか

家族が一番戸惑うのが、「子どもの自分が代わりに取り消せるのか」という点です。消費者契約法の取消しも、特定商取引法のクーリング・オフも、権利を持つのは契約した本人です。家族が本人に無断で業者へ「契約をなかったことにする」と通知しても、本人の意思が伴わなければ効力に疑問が残ります。

本人の名前で、家族が手伝う

現実的なのは、本人が署名した通知書を家族が一緒に作り、控えを残して送る方法です。消費生活センターに本人と家族がそろって相談すれば、相談員が事業者とのあっせんに入る場合もあります。本人が電話に出るのが難しいときは、本人の了解を得たうえで家族が同席し、補足する形をとります。

家族が直接使える特例は寄附が対象

2022年12月に公布された不当寄附勧誘防止法(正式名は「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」)は、扶養を受ける立場の家族が、本人に代わって寄附の取消権などを行使できる特例(10条)を設けました。ただし対象は法人等への寄附(金銭の給付)で、商品の売買代金には当てはまりません。開運グッズの購入代金を家族が直接取り戻す根拠にはならない点に注意が必要です。

本人の意思が確かめられないとき

認知症の進行などで本人が契約の意味を理解できない状態だった場合、民法3条の2により、意思能力のない状態でした契約は無効とされます。ただ、購入時点の状態を後から示すのは簡単ではなく、診断書や介護記録、当時の様子を知る人の話が必要になります。この主張を検討する段階では、弁護士への相談をおすすめします。

見守りで気づく目印と、次の勧誘を減らす工夫

国民生活センターが2026年9月16日に公表した集計では、契約当事者が65歳以上の消費生活相談は2025年度に330,497件で、相談全体の37.7%を占めました。年齢が上がるほど訪問販売や電話勧誘販売の割合が高くなり、85歳以上では訪問販売が通信販売を上回っています。自宅にいる時間が長い親ほど、家に来る・電話がかかってくる勧誘への備えが要るということです。

開運商法に絞った数字もあります。消費者庁が2022年8月の検討会に出した資料によると、「開運商法」のキーワードで登録された相談は2021年度に1,435件で、男女とも70歳以上が最も多い年代でした。

離れて暮らす家族が気づくための目印

  • 同じ業者名の封筒やはがきが繰り返し届いている
  • 置物、印鑑、水晶、財布など、似た品が短い間隔で増えている
  • 通帳に見慣れない名義への振込や、まとまった現金の引き出しがある
  • 電話口で「先生」と呼ぶ相手の話をする、家族に話せない約束があるようだ
  • 生活費が足りないと言い出す、年金の入金日前に口座がほぼ空になる

国民生活センターの見守り情報でも、不審な契約書や請求書がないか、同じような商品が大量にないか、通帳に不審な出金がないかを確かめるよう呼びかけています。

次の勧誘を減らす工夫

固定電話を常に留守番電話にして、知らない番号には出ないと家族で決めておく、訪問者にはドアを開けずインターホン越しに対応する、といった習慣が役に立ちます。「その場で決めない、必ず家族に電話してから」を本人との約束にしておくと、勧誘する側に時間を与えずに済みます。地域の見守り活動や民生委員とつながっておくのも一つの方法です。

家族が気づいた兆候を整理するときは、高齢の家族が被害にあったときのガイドも参考にしてください。

成年後見制度をどう考えるか

同じような買い物が何度も続き、本人に説明しても理解が難しいようなら、成年後見制度を検討する段階です。成年後見は家庭裁判所が本人を支える人(成年後見人・保佐人・補助人)を選ぶ仕組みで、本人の判断能力に応じて3つの類型があります。

類型対象となる人の目安支える人が取り消せる行為
補助重要な手続や契約の一部をひとりで決めるのが心配申立てにより家庭裁判所が定めた行為
保佐重要な手続や契約をひとりで決めるのが心配借金や相続の承認など民法13条1項の行為と、裁判所が追加で定めた行為
後見多くの手続や契約をひとりで決めるのが難しい原則としてすべての法律行為(日用品の購入など日常生活に関する行為は除く)

知っておきたい限界

  • 取消しの対象になるのは、原則として審判があった後の行為です。すでに済んだ開運グッズの購入をさかのぼって取り消せるわけではありません。過去の分は、前の章で触れた消費者契約法や意思能力の問題として別に検討します。
  • 補助の開始や、補助人に同意権・代理権を与える審判は、本人以外が申し立てる場合に本人の同意が必要です。
  • 後見が始まると、原則として本人の判断能力が回復するまで続きます。家族の都合だけで途中でやめられる制度ではありません。

申立ての費用と手順

厚生労働省の「成年後見はやわかり」によると、申立手数料は収入印紙800円、登記手数料は2,600円で、後見と保佐では医師の鑑定が必要になることがあり、鑑定料はほとんどの場合10万円以下とされています。このほか戸籍謄本や診断書の取得費用がかかります。申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族などです。

後見より軽い支援もある

判断能力の低下がそこまで大きくない場合は、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が使えることがあります。本人との契約にもとづき、預金の払い戻しや生活費の管理を手伝う仕組みで、相談窓口は市町村の社会福祉協議会です。本人の自尊心を守りながらお金の流れを見える状態にしたいとき、最初の一歩として検討しやすい制度です。

相談先の使い分けと持っていくもの

相談先は一つに決める必要はありません。お金を取り戻したいのか、これ以上の被害を防ぎたいのか、本人の暮らし全体を支えたいのかで、窓口を組み合わせます。

相談先こんなときに
消費者ホットライン188(消費生活センター)契約の取消し・解除の可否、事業者とのあっせん。家族や地域包括支援センターの職員など周りの人からの相談も受け付けている
地域包括支援センター高齢者の見守り、介護や成年後見の入り口の相談
市町村の社会福祉協議会日常生活自立支援事業による金銭管理の手伝い
法テラス・弁護士会返金請求の交渉や訴訟、成年後見の申立て。収入が一定以下なら費用の立替え制度がある
警察相談専用電話 #9110「払わないと家族に災いが起きる」と強く迫られた、帰ってくれと言っても居座られた

相談の前にそろえておくもの

  • 購入の一覧表(日付・品名・金額・支払方法・どこで知ったか)
  • 契約書や領収書、通帳やカード明細のコピー
  • 業者の名称、住所、電話番号、担当者の名前
  • 本人の最近の様子を書いたメモ(物忘れ、通院状況、介護認定の有無)

返金に応じるかどうかは事業者の対応や契約の内容によって変わり、必ず戻るとは限りません。それでも、書面がそろっていて、期間内に動けば、選べる手段は増えます。占いや開運をめぐるトラブル全体の流れは占い詐欺の解説に、風水をかたる勧誘の経路別の特徴は風水師をかたる詐欺の見分け方にまとめています。個別の事情を整理したい方は相談予約からご連絡ください。

よくある質問

Q. 親が「効果があったから満足している」と言う場合も相談できますか?

A. 相談はできます。本人が納得していると、取消しや返金を求めるのは難しくなりますが、支払いが生活費を圧迫している、同じような品が続いているといった事情があれば、消費生活センター(188)で今後の勧誘の断り方や家計の守り方を一緒に考えてもらえます。

Q. 子どもが親に代わってクーリング・オフや取消しをできますか?

A. 原則として権利を持つのは契約した本人です。本人の意思を確かめ、本人名義の通知を家族が手伝う形が基本になります。成年後見人などに選ばれていれば、その立場で取り消せる行為があります。家族が直接行使できる特例(不当寄附勧誘防止法10条)は寄附が対象で、商品の購入代金には当てはまりません。

Q. 何年も前に買った開運グッズでも取り消せますか?

A. 霊感を示して不安をあおる勧誘による取消しは、追認できる時から3年、契約から10年が期限です。そのほかの消費者契約法の取消しは1年と5年です。期間を過ぎていても別の理由が検討できる場合があるため、購入時期がわかる書類を持って相談してください。

Q. 成年後見を申し立てれば、過去の買い物も取り消せますか?

A. 成年後見人等が取り消せるのは、原則として審判の後に本人がした行為です。それ以前の購入は、消費者契約法の取消しや、意思能力がなかったことによる無効として別に検討することになります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

この記事をシェアして注意を広める

詐欺返金相談ナビの相談前整理事例

サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。

相談前に、被害状況を整理しておきましょう

LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。

LINEでチェックリストを受け取る 登録は無料 / 一般情報の提供を目的としています

参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。