友人に紹介されたFX自動売買はマルチ?解約20日ルールと借金の注意

学校の先輩や昔の友人から「いい話がある」と呼び出され、FX自動売買ツールを勧められた方、すでに契約して「人を紹介すれば元が取れる」と言われている方に向けた記事です。

最初に結論です。ツールの購入に加えて「紹介すれば報酬が入る」という話がセットになっているなら、いわゆるマルチ商法として特定商取引法の連鎖販売取引に該当する可能性があり、法定の書面を受け取ってから20日以内はクーリング・オフで解除できます。20日を過ぎても、将来に向けて退会する中途解約の仕組みがあります。相手が友人でも、法律上の扱いは変わりません。

本記事は公的機関の資料をもとにした一般的な解説です。特定の事業者や誘ってきた人を悪者と決めつけるためのものではありません。返金の結果も、個々の事情で変わります。

友人からの誘いが「連鎖販売取引」になるのはどんなときか

国民生活センターは、商品やサービスを契約したうえで自分も勧誘する側に回り、紹介料などの報酬を得る商法を「マルチ商法」と呼び、特定商取引法の連鎖販売取引とは必ずしも一致しないと注記しています。ただ、次の要素がそろっていれば、連鎖販売取引として法律の規制を受ける可能性が高くなります。

  • ツールやサービスの代金など、入会の際にお金の負担がある
  • ほかの人を紹介・勧誘すると、紹介料やボーナスなどの利益が得られると説明される
  • 紹介された人がさらに次の人を紹介する形で、組織が広がっていく

同センターは2019年、健康食品などの「モノ」ではなく、投資や副業といった「役務」を扱うモノなしマルチ商法の相談が若者で増えていると注意を呼びかけました。PIO-NETの集計では、2018年度にマルチ商法の相談のうち役務に関するものが5,490件あり、そのうち29歳以下が2,481件でした。FX自動売買ツールは、まさにこの「モノなし」の形で広がりやすい商材です。

なお、特定商取引法は連鎖販売取引について、勧誘を始める前に事業者の氏名(名称)、契約の勧誘が目的であること、扱う商品やサービスの種類を告げるよう義務付けています(第33条の2)。「久しぶりにご飯でも」と呼び出され、席に着いてから投資の話が始まった場合は、この点も相談時に伝えてください。

消費者庁の処分例に見る、友人経由の勧誘の実際

紹介料を得られるとうたってEA作成ソフトの利用サービスを広げていた連鎖販売業者について、消費者庁は2023年7月、連鎖販売取引の一部を15か月間停止させる命令を出しました。公表資料には、次のような勧誘の実態が書かれています。

  • 知人がオンラインミーティングに誘い、最初は勧誘が目的であることや事業者名を告げなかった
  • 「自動売買ツールは色々な投資家のデータを基にしているから、素人がやっても稼げる」「誘えば誘うほどもうかる」などと説明した
  • 投資の知識も経験もなく、月の収入が5万円から7万円ほどの学生に、日本円で約53万円の契約を勧めた
  • 支払い能力について事実と違う申告をさせ、概要書面や契約書面を渡さなかった

国民生活センターが2021年に紹介した相談にも、大学の先輩にファミリーレストランへ呼び出され「約50万円のFX自動売買システムを買えば何もしなくても稼げる」と勧められ、学生ローン2社から計50万円を借りて支払ったという20歳代の例があります。契約書はなく、会社の住所も連絡先も分からないままでした。

こうした事例を読むと、勧誘してくる友人本人も、上の立場の人から同じ話を聞かされて信じている場合が少なくないことが分かります。相手を責めるより、契約の仕組みそのものを冷静に確かめることが大切です。

返事をする前に、友人に聞いておきたい5つの質問

断りきれずに話を聞く場面では、相手の熱量に流されないよう、事実を確かめる質問を用意しておくと冷静でいられます。答えがあいまいなら、それ自体が判断材料になります。

  1. 契約の相手は誰か:ツールを提供する会社の正式名称、所在地、電話番号。海外の会社なら国名も聞きます。
  2. 書面はあるか:連鎖販売取引では、契約前に概要書面、契約時に契約書面を渡す義務があります。「データで送る」「後で渡す」は理由になりません。
  3. 紹介料は誰がどこから払うのか:新しい会員の代金から支払われる仕組みなら、会員が増え続けない限り成り立ちません。
  4. どの口座で運用するのか:指定されるFX業者が金融庁の登録を受けているかを、自分で調べられるよう名前を聞いておきます。
  5. やめたいときはどうなるか:退会の方法と返金の条件を、口頭ではなく書かれたもので見せてもらいます。

質問するだけで空気が悪くなるなら、その集まり自体が質問されたくない事情を抱えていると考えてよいでしょう。編集部としては、この5つのうち1つでも答えが出ない段階でお金を払うことはすすめません。

その場で使える断り方:「お金がない」ではなく「いりません」

国民生活センターは、「お金がない」と断ると「借りればいい」と返され、借金やクレジット契約で断る理由を封じられることがあるとして、「いりません」ときっぱり断るよう呼びかけています。友人との関係を壊したくないときほど、理由を並べずに短く伝えるほうが話がこじれません。

「誘ってくれたのはありがたいけど、この話には参加しない。この件はこれで終わりにしたい。」

次のような言葉が出てきたら、その場で決めずに席を立ってかまいません。

  • 「みんな学生ローンで払っている」「資格の学校の費用と言えば借りられる」
  • 「紹介を2人すれば元が取れる」
  • 「今日中に申し込まないと、この条件はなくなる」
  • 「親には言わないほうがいい」

借入れの理由や勤務先を偽って申告するよう言われた場合、それ自体が消費者庁の処分例で違反とされた行為に当たります。言われた内容はメモに残してください。

契約してしまったら:20日のクーリング・オフと中途解約

クーリング・オフ(20日以内)

連鎖販売取引のクーリング・オフ期間は20日です。起算日は法定書面を受け取った日で、商品の受け取りのほうが遅ければその日から数えます。通知は紙の書面でも、メールなどの電磁的記録でも構いません(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。嘘の説明や脅しによって手続きを思いとどまらせられた場合は、20日が過ぎていても解除の道が残ります。書面を一度も受け取っていないなら、その事実を相談先に伝えてください。

中途解約

クーリング・オフの期間が過ぎても、連鎖販売契約は将来に向かって解除(退会)できます。一定の条件を満たせば、あわせて商品の販売契約を解除できる仕組みもあります。ツールのように形のないサービスの場合にどこまで返金を求められるかは、契約内容によって変わるため、消費生活センターで確認するのが確実です。

取消し

「確実にもうかる」といった事実と違う説明や、重要なことを隠した勧誘によって誤認して契約した場合は、契約の意思表示を取り消せる規定もあります。消費者契約法にも、将来の利益のように確実でないことを「確実だ」と言い切って契約させた場合(断定的判断の提供)に取り消せる定めがあります。

どの手段を使う場合でも、通知は送った証拠が残る方法で出し、控えを保存してください。

借金をしてしまった場合と、すでに誰かを紹介した場合

借入れがあるとき

貸金業者や学生ローンから借りたお金は、ツール契約を解除しても、原則として返済義務が残ります。ただし、ツール代金が返金されればその返済に充てられます。借入れの経緯(誰に、どう申告するよう指示されたか)を記録し、返済が苦しい場合は早めに相談してください。返済計画の見直しは、消費生活センターや法テラスで相談先を案内してもらえます。

友人や後輩を紹介してしまったとき

自分が誘った人がいる場合、その人も同じように解約できる可能性があります。気まずさから黙っているより、「自分は解約することにした、クーリング・オフの期限を確かめてほしい」と早めに伝えるほうが、相手の被害を小さくできます。勧誘した側に回った期間が長い場合は、自分の立場について弁護士に相談しておくと安心です。

記録の残し方は証拠の残し方、SNSのグループを通じた類似の勧誘はSNS・LINEグループの投資詐欺も参考にしてください。

相談先と、友人との関係を保ちながら進めるコツ

  • 消費者ホットライン188:マルチ商法の相談を多く扱っており、クーリング・オフや中途解約の通知をどう書くかの相談にも応じています。
  • 警察相談専用電話 #9110:お金を払ったのに相手と連絡が取れない、脅された、といった場合に相談します。
  • 大学の学生相談窓口:学生の場合、学内で同じ勧誘が広がっていることがあり、大学が注意喚起をしている場合もあります。

友人との関係が気になるときは、「消費生活センターに相談したら、クーリング・オフの対象だと言われた」と、第三者の判断として伝えると角が立ちにくくなります。相談前に、誘われた日、会った場所、同席した人、説明された内容、払った金額と方法を書き出しておきましょう。弁護士への依頼を考える方は相談予約、全体の進め方は解決までの流れをご覧ください。

よくある質問

Q. 友人に勧められたFX自動売買ツールは、友人が相手でもクーリング・オフできますか?

A. 勧誘したのが友人でも、連鎖販売取引に当たる契約なら、法定の書面を受け取ってから20日以内はクーリング・オフの対象になり得ます。通知は契約の相手方である事業者に送ります。

Q. 契約書をもらっていません。20日はもう過ぎていますか?

A. クーリング・オフの期間は法定の書面を受け取った日から数えるため、書面を受け取っていない場合の扱いは専門家に確認する価値があります。受け取っていない事実を記録し、188に相談してください。

Q. 「紹介すれば元が取れる」と言われましたが、本当ですか?

A. 紹介料を前提にした収入は、次に勧誘できる人がいる限りでしか成り立ちません。消費者庁の処分例でも「誘えば誘うほどもうかる」といった勧誘が確認されています。紹介料を当てにした契約はおすすめしません。

Q. 友人に解約を伝えにくいです。黙って手続きしてもいいですか?

A. クーリング・オフや中途解約の通知は事業者に送るもので、友人の了承は要りません。関係が気になる場合は、手続きを済ませてから「相談窓口に確認して解約した」と伝える方法もあります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。