結婚相談所と婚活サイト・出会い系の法的な違い|クーリング・オフと中途解約

「婚活サービス」とひとまとめに呼ばれていても、法律上の扱いは大きく異なります。期間が2か月を超え、支払総額が5万円を超える結婚相手紹介サービス(いわゆる結婚相談所)は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たり、契約書面を受け取った日から数えて8日以内のクーリング・オフと、それを過ぎてからの中途解約が法律で認められています。一方、ポイント制の出会い系サイトや、ネットで申し込む単発のサービスには、この仕組みが使えないことが多くなります。

サクラを疑って「やめたい」「返してほしい」と考えたとき、最初にすべきことは、自分の契約がどの種類に当たるかをはっきりさせることです。この記事では4つのサービスの位置づけを比べたうえで、結婚相談所のクーリング・オフと中途解約の計算、事業者に課された義務、婚活サイトや出会い系で使えるルールを順に説明します。

同じ「婚活」でも法律上は別物:4つのサービスの位置づけ

サービスの種類主に関係する法律やめたいときの主な手がかり
結婚相談所(2か月超・総額5万円超)特定商取引法(特定継続的役務提供)クーリング・オフ(8日)、中途解約、違約金の上限
月額制の婚活サイト・マッチングアプリ特定商取引法(通信販売の表示規制)、消費者契約法、条件により出会い系サイト規制法利用規約、消費者契約法による取消し
ポイント制の出会い系サイト同上消費者契約法による取消し、支払い手段の窓口
単発の婚活パーティー特定商取引法(申込み方法による)、消費者契約法キャンセル規定、不当な違約金条項の無効

特定商取引法ガイド(消費者庁)によると、特定継続的役務に指定されている7つのサービスの中に、結婚相手紹介サービスが入っています(残りは語学教室や学習塾、家庭教師、パソコン教室、エステ、美容医療)。結婚相手紹介サービスの要件は「結婚を希望する者への異性の紹介」で、期間2か月超、金額5万円超。金額には入会金や関連商品の代金も含まれ、サービスが電話やインターネットを使って行われる場合も広く対象になると説明されています。

つまり、オンラインで完結する結婚相談所も対象になり得ます。一般的な月額制マッチングアプリが当たるかどうかは、紹介の方法や期間、金額など契約の中身によって判断が分かれるため、迷う場合は消費生活センターで確認するのが確実です。

結婚相手紹介サービスのクーリング・オフ:8日の数え方と伝え方

クーリング・オフの期間は8日間で、数え始めるのは法定の記載事項がそろった契約書面を手にした日です。その日を初日に含めて数えます(特定商取引法第48条)。申込みの日でも、サービスの開始日でもない点に注意してください。書面を受け取っていない、または記載に不備がある場合は、期間が始まっていないと扱われる可能性があります。

伝え方

クーリング・オフは書面か電磁的記録(メールや専用フォームなど)で行います。特商法ガイドは、書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便、メールなら送信済みメールの保存、フォームなら画面のスクリーンショットといった形で、証拠を残すことを勧めています。

クーリング・オフした場合の効果

  • すでにサービスを受けていても、その対価を払う必要はない
  • 損害賠償や違約金を払う必要もない
  • 支払済みのお金は速やかに返してもらえる
  • 事業者が事実と違う説明をしたり威圧したりして、クーリング・オフを妨げていた場合は、8日を過ぎていても行える

見落としがちなのが「関連商品」です。結婚相手紹介サービスでは、真珠・貴石・半貴石と、指輪その他の装身具が関連商品に指定されています。入会と同時に指輪やアクセサリーの購入を勧められていた場合、本体の契約と一緒に解除できます。

8日を過ぎても使える中途解約と、請求される額の上限

クーリング・オフの期間を過ぎても、消費者は将来に向かって契約を解除できます(同法第49条)。そのとき事業者が請求できる額には上限があり、それを超えて受け取っている分は返さなければなりません。結婚相手紹介サービスの上限は次のとおりです。

解除した時期事業者が請求できる上限
サービス開始前3万円
サービス開始後提供済みサービスの対価 +「2万円」と「契約残額の20%」のうち低いほう

計算例(仮の数字)

総額30万円の1年コースを契約し、提供済みのサービスが10万円分だった時点で解約したとします。契約残額は20万円、その20%は4万円なので、2万円のほうが低くなります。上限は10万円+2万円=12万円で、30万円を前払いしていれば18万円が返還の対象になります。実際の「提供済み分」の評価は契約内容によって変わるため、事業者の計算根拠は必ず書面で出してもらってください。

国民生活センターが2017年に公表した注意喚起では、勧誘時の説明と違うため解約を申し出たところ約18万円の違約金を示されたという事例が紹介されています。示された金額が上の上限を超えていないか、まず計算してみることをおすすめします。

結婚相談所に義務づけられていること:書面と禁止行為

特定継続的役務の事業者には、契約の前に概要書面、契約の後に契約書面を渡す義務があります。契約書面には、サービスの内容、対価、支払いの時期と方法、提供期間、クーリング・オフと中途解約に関する事項、事業者の名称・住所・電話番号などを記載し、クーリング・オフの部分は赤枠の中に赤字で、文字は8ポイント以上で書く決まりです。

禁止されている行為

  • 勧誘のときや解約を妨げるために、事実と違うことを告げる
  • 勧誘のときに、故意に事実を告げない
  • 威迫して困惑させる
  • サービスの内容などについて、著しく事実と違う、または実際より著しく優良・有利だと誤認させる広告を出す

たとえば、紹介できる会員の人数や成婚の実績について事実と違う説明を受け、それを信じて契約した場合には、契約の申込みを取り消せる規定もあります(同法第49条の2)。「登録している会員の多くが実在しなかった」といったサクラの疑いは、この取消しや不実告知の問題として相談することになります。前払いで5万円を超える事業者には、財務内容などの書類を消費者が閲覧できるようにしておく義務もあり、経営状態に不安があるときの確認手段になります。

婚活サイト・出会い系・マッチングアプリで使えるルール

通信販売にクーリング・オフはない

ネットで申し込むサービスは特定商取引法の通信販売に当たります。通信販売には、商品の引渡しを受けてから8日以内の返品ルールがありますが、対象は商品と特定権利で、サービス(役務)そのものは含まれていません。しかも事業者が広告で返品の特約を示していれば、そちらが優先されます。ポイント代や月額料金をクーリング・オフで取り戻す、という考え方は基本的に使えません。

出会い系サイト規制法は児童保護のための法律

インターネット異性紹介事業には、届出や利用者の年齢確認の義務があります(警察庁)。ただしこの法律の目的は児童を犯罪から守ることで、サクラによる課金の返金を定めたものではありません。

頼りになるのは消費者契約法

事業者が重要な事項について事実と違うことを告げ、消費者がそれを信じて契約した場合、その契約は取り消せます(消費者契約法第4条第1項第1号)。取消しは、追認できる時から1年以内、かつ契約から5年以内に行う必要があります(同法第7条)。さらに、社会生活上の経験が乏しく結婚について強い不安を抱えている人に対し、それを承知のうえで不安につけ込み、合理的な根拠もなく「このサービスがなければ結婚は難しい」と告げて契約させた場合(同法第4条第3項第5号)も、取消しの対象になります。解約時の違約金が同種の契約で生じる平均的な損害を超える部分は無効とされています(同法第9条)。

親が関わる結婚相談所の契約で起きていること

国民生活センターは2017年、親に向けた結婚相手紹介サービスの勧誘に注意を呼びかけました。親が関わる相談は2012年度で783件あり、そのうち家庭への訪問や電話勧誘がきっかけのものは43.9%、2014年度には46.4%と年々割合が増えていました。

公表資料には、子の結婚への不安をあおる勧誘、必ず結婚できるかのような説明、約束どおりに紹介されない、クーリング・オフをしても返金されない、国際結婚の成婚料として突然高額を請求された、といった問題点が並んでいます。国民生活センターは「結婚相手紹介サービスは成婚を約束するものではない」と明記しています。

当編集部の見方では、親が契約者になっている場合でも、クーリング・オフや中途解約のルールは同じように使えます。本人に内緒で契約させられている場合は、まず本人と話し合い、契約書面の日付を確認することが先決です。訪問や電話で勧誘された契約なら、書面の受領日から8日の期間を今日から数えてみてください。

サクラを疑ったときの確認手順

  1. 契約書面と概要書面を手元に出し、受け取った日付を確認する
  2. 期間(2か月超か)と支払総額(入会金・関連商品を含めて5万円超か)を確かめる
  3. 受領日から8日以内ならクーリング・オフを書面またはメールで送り、控えを残す
  4. 8日を過ぎていれば中途解約を申し出て、精算額の内訳を書面で求める
  5. 説明と実態の違い(会員数、紹介の頻度など)を記録し、消費生活センター(188)に相談する

支払い方法ごとの返金の進め方は婚活サイトの退会・返金の手順、相談先の選び方は婚活サイトのサクラ被害の相談先にまとめています。婚活パーティーで勧められた契約が気になる場合は婚活パーティーのサクラと対処法も参考にしてください。

よくある質問

Q. オンラインだけの結婚相談所もクーリング・オフできますか?

A. 特商法ガイドは、サービスがインターネットなどを使って行われる場合も広く対象になると説明しています。結婚を希望する人への異性の紹介で、期間2か月超・総額5万円超なら、特定継続的役務に当たる可能性があります。契約書面の受領日から8日以内かどうかを確かめてください。

Q. 入会金を払っただけで、まだ紹介を受けていません。解約料はいくらですか?

A. 結婚相手紹介サービスで、サービス開始前に中途解約した場合、事業者が請求できる上限は3万円です。それ以上を受け取っていれば、残りは返還の対象になります。

Q. マッチングアプリの月額課金はクーリング・オフできますか?

A. ネットで申し込むサービスは通信販売に当たり、サービス自体にはクーリング・オフの制度がありません。ただし契約内容によっては特定継続的役務に当たる場合や、消費者契約法で取り消せる場合があるため、消費生活センターに相談してください。

Q. クーリング・オフはメールで送っても有効ですか?

A. 特定継続的役務のクーリング・オフは、書面のほか電磁的記録(メールなど)でも行えます。送信したメールや送信完了画面は必ず保存しておきましょう。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。