マッチングアプリの外国人とパスポートや身分証の画像をやり取りしたら|悪用への備え

マッチングアプリで知り合った外国人を名乗る相手から、「信じてもらうために」とパスポートの画像が送られてきた。あるいは「荷物の受取に必要」「私も見せたからあなたも」と言われ、自分の運転免許証やマイナンバーカードの画像を送ってしまった。そんな人に向けた記事です。

要点は二つです。一つ目、相手から届いたパスポートなどの画像は、その人が本人である証明になりません。二つ目、自分の身分証の画像を送ってしまった場合は、悪用に備えた手続きを早めにとることです。信用情報機関には、本人確認書類の情報が漏れたときに登録できる「本人申告」の仕組みがあります。

この記事では、国民生活センターの相談事例、全国銀行協会などの信用情報機関の案内(2026年9月時点)をもとに、画像のやり取りにまつわる危険と、今日からできる備えを説明します。

相手から届くパスポート画像が、本人確認にならない理由

国民生活センターが2020年2月に公表した国際ロマンス詐欺の注意喚起には、相手のパスポートが送られてきたので信用し、荷物の受け取りを承諾したところ、高額な手数料を請求されたという相談が紹介されています。身分証の画像は、疑いを解くための道具として使われることがあるのです。

画像が本人確認にならない理由は、次のとおりです。

  • 画像の人物と、メッセージを書いている人が同じだと確かめる方法がない
  • 他人のパスポートの画像や、加工した画像が使われる可能性がある
  • 本物のパスポートの見た目や記載事項を、日本にいる一般の人が画像で見分けるのは難しい

警察庁は、ネット上の写真に翻訳アプリやAIを掛け合わせれば、なりすましの音声や動画まで用意できると警告しています。画像1枚で身元を信じることは、ビデオ通話で信じること以上に根拠が弱いと考えてください。むしろ、頼んでもいないのに身分証の画像を送ってくること自体が、何かを信じさせたい理由があるサインかもしれません。

受け取った画像は、消さずに保存しておいてください。相談の際に見せられるほか、同じ画像が別の名前のアカウントで使われていないかを確かめる手がかりにもなります。ただし、画像に写っている人物は、なりすましに写真を使われているだけの無関係な人である可能性もあります。その人を探し出したり、SNSで公開したりするのは避けましょう。

自分の身分証を求められるときの口実

相手の画像が届いた後に、「今度はあなたの番」と身分証を求められることがあります。よく見られる口実には、次のようなものがあります。

  • 「お互いを信頼するために交換しよう」
  • 「荷物の受取人として登録するのに必要」
  • 「あなたにお金を送るための手続きに必要」
  • 「ビザや結婚の書類に保証人として名前を載せたい」
  • 「投資アカウントを代わりに開設してあげる」

どの口実でも、会ったことのない相手にあなたの身分証が必要になる場面は、ほとんどないはずです。送金を受け取るのに必要な情報は銀行の窓口やアプリの手続きの中で自分が入力するもので、相手に画像を渡す理由にはなりません。

国民生活センターの2021年2月の公表資料には、免許証の写しを送ってしまった相手から、投資のために振り込んだお金を返さないと訴えると言われた相談も紹介されています。身分証の画像は、後で脅しの材料として使われることもあると覚えておいてください。

まだ送っていない人へ:会う前に伝えてよい情報の線引き

これから身分証を求められる可能性がある人は、会う前にどこまで伝えるかを先に決めておくと、その場の雰囲気に流されずに済みます。消費者庁の「マッチングアプリの動向整理」も、信頼できると分かるまでは自宅の住所や勤務先などの個人情報を安易に伝えないよう、利用者への注意点として挙げています。

会う前に伝えてもよいと考えられるもの会う前は伝えないほうがよいもの
呼び名、趣味、住んでいる都道府県程度の地域フルネームと自宅の住所の組み合わせ
仕事の業種くらいの大まかな話勤務先の名前、職場の場所
休日の過ごし方身分証の画像、口座番号、カード番号

断るときは、「身分証はどんな相手にも送らないと決めています」「会ったときにお互い名乗りましょう」と、自分の方針として伝えれば十分です。相手が先に自分の画像を送ってきたとしても、それに合わせる義務はありません。

身分証の画像を送ってしまったときに起こりうること

画像が悪用された場合に考えられることを、公的機関の公表内容をもとに整理します。すべてが必ず起きるわけではありませんが、備えの優先順位を決める参考にしてください。

起こりうること公表されている例・根拠
自分の名義で携帯電話などを契約される国民生活センターの2016年の速報に、荷物転送の仕事に応募して身分証を渡した人の名義で、携帯電話が勝手に契約された相談がある
自分の名義で借り入れやクレジットの申し込みをされる信用情報機関は、本人確認書類の紛失・盗難・漏えいで名義を悪用されるおそれがある場合に備える本人申告の制度を設けている
脅しの材料にされる国民生活センターの相談事例に、免許証の写しを送った相手から訴えると言われたものがある
別の詐欺の「信用づけ」に使われる他人の身分証の画像が、次の相手を信用させるために使われる可能性がある

送ってしまったことを恥ずかしく思う必要はありません。大切なのは、名義の悪用を早く見つけ、被害が広がる前に止めることです。

今日やること:信用情報機関への本人申告

全国銀行個人信用情報センター(全国銀行協会が運営)には「本人申告」という手続きがあります。これは、運転免許証などの本人確認書類の紛失、盗難、漏えいなどで名義を使われるおそれがある場合に、本人の申し出にもとづいて「本人申告情報」を登録し、加盟する金融機関からの照会に答える仕組みです。同センターは、詐欺などで本人確認書類の情報(画像データを含む)が第三者に漏れた可能性がある場合も、本人申告ができると案内しています。申し込みはインターネットか郵送で行います。

貸金業者などが加盟する日本信用情報機構(JICC)や、クレジット会社などが加盟するCICにも、同じような本人申告の制度があります。どの機関に申し出ればよいか、ほかの機関と情報が共有されるかは、各機関の案内で確かめてください。

本人申告の登録があると、金融機関は申し込みの審査の際に、本人からの申告があることを知ったうえで、より慎重に確認することが期待できます。ただし、すべての悪用を防げるわけではないので、次の章の確認とあわせて行いましょう。

あわせて確かめておきたいこと

本人申告のほかに、次の点を確かめておくと安心です。

  1. 携帯電話の契約:使っている携帯会社に、自分の名義で知らない回線が契約されていないか問い合わせる
  2. 銀行口座とカード:明細に見覚えのない取引がないか、しばらくのあいだ普段よりこまめに見る
  3. 郵便物:申し込んだ覚えのないカードや契約書類が届いていないか気をつける
  4. 信用情報の開示:必要に応じて、信用情報機関に自分の情報の開示を請求し、知らない契約や申し込みの記録がないか確かめる
  5. 警察への相談:身分証を送った経緯と、相手とのやり取りの記録を持って相談する

マイナンバーカードの画像を送った場合は、個人番号の扱いについてお住まいの市区町村の窓口にも相談してください。送った画像に写っていた情報(氏名、住所、生年月日、番号など)をメモにして残しておくと、どの手続きで何を伝えればよいかが整理しやすくなります。

脅されたとき、要求がエスカレートしたとき

「身分証をネットにさらす」「訴える」「あなたの名前で警察に通報する」と言われても、要求に応じてお金を払うのは避けてください。払っても画像が消える保証はなく、別の名目で請求が続くおそれがあります。

「訴える」と言われても、裁判所からの正式な書類は、メッセージアプリではなく郵便などで届くのが通常です。相手の言葉だけで慌てて支払わず、まず誰かに相談してください。

次のように動くのが安全です。

  • 相手とのやり取りを画面ごと保存し、それ以上返信しない
  • 脅しの文言が入ったメッセージは消さない
  • 警察相談専用電話「#9110」や、都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に相談する

画像や動画をめぐる脅しへの対処は、録画で脅され払ってしまったらでも詳しく扱っています。

相談先と、相談のときに用意するもの

身分証のやり取りがあった場合の主な相談先は次のとおりです。

  • 警察相談専用電話「#9110」:身分証を送った、脅されている
  • 188(消費者ホットライン):申し込んだ覚えのない契約の通知や請求が来た
  • 各信用情報機関:本人申告、情報の開示

相談の際は、相手のプロフィール、身分証を求められたメッセージ、送った画像の控え、相手から届いた画像を持っていくと話が早く進みます。荷物の受け取りと一緒に身分証を求められた場合は、荷物の受け取りを頼まれたらもあわせて確認してください。この記事は一般向けの情報で、個別のケースでどうなるかを保証するものではありません。

よくある質問

Q. マッチングアプリの外国人の相手から届いたパスポート画像が本物か、確かめる方法はありますか?

A. 一般の人が画像だけで本物かどうか、また画像の人物がメッセージの相手本人かどうかを確かめるのは困難です。画像を理由に相手を信用したり、お金や荷物の頼みごとを引き受けたりしないでください。

Q. 顔写真の部分を隠して身分証を送りました。それでも対処は必要ですか?

A. 氏名や住所、生年月日などが写っていれば、悪用されるおそれは残ります。写っていた情報をメモし、信用情報機関の本人申告など、この記事で紹介した備えを検討してください。

Q. 相手が先にパスポートを見せてくれたので、自分も送らないと失礼ですか?

A. 失礼にはあたりません。相手が画像を送ってきたかどうかにかかわらず、会ったことのない人に身分証の画像を送る必要はありません。「会ったときに名乗り合いたい」と伝えれば十分です。

Q. 本人申告をすると、自分がローンやカードを申し込むときに困りますか?

A. 本人申告情報は、金融機関が審査の際に慎重に確認するための情報です。自分で申し込むときに本人確認が丁寧になる場合があります。取り扱いの詳細は各信用情報機関の案内で確かめてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。