マッチングアプリで会った相手からの勧誘|マルチ・セミナー・デート商法の解約

最初に結論です。マッチングアプリで知り合った相手が、会ってすぐにセミナー、副業、投資講座、化粧品や宝飾品などの話を始めたら、その人は恋愛相手ではなく勧誘の入口として近づいてきた可能性があります。もし契約してしまっても、マルチ取引(連鎖販売取引)なら書面を受け取ってから20日、目的を告げずに呼び出されて契約した場合は訪問販売として8日以内ならクーリング・オフを検討できます。恋愛感情につけこまれた契約なら、消費者契約法による取消しも検討できます。

この記事は、マッチングアプリで出会った相手からの「商品・サービスの勧誘」に絞っています。暗号資産やFXなど海外の投資サイトへ送金させる手口はマッチングアプリで投資を勧められたら、LINEへ移った後の手口はLINEに誘導されたらで説明しています。どの制度が使えるかは契約の中身と経緯で変わり、解約や返金を保証するものではありません。

国民生活センターに届いている「アプリ発の勧誘」

国民生活センターが公開している相談の傾向ページには、マッチングアプリをきっかけにした勧誘の事例が複数の分野にまたがって載っています。

分野(ページ)掲載されている事例の要旨PIO-NETの相談件数
マルチ取引マッチングアプリで知り合った女性にセミナーへ連れていかれた。セミナーを人に紹介するとお金がもらえるという。断り切れずに契約してしまった2023年度5,158件、2024年度4,132件、2025年度4,003件
情報商材マッチングアプリで知り合った人に勧められ、投資講座のテキスト購入の契約をした。家族に話したら騙されていると言われた2023年度6,256件、2024年度4,163件、2025年度2,623件

件数はいずれも2026年7月31日更新のページによるもので、マッチングアプリ経由に限った数ではありません。それでも、恋愛や婚活の場が、マルチ取引や情報商材の勧誘の入口として使われている相談があることは読み取れます。

国民生活センターは2019年8月にも、「お金がない」と断る人に借金やクレジット契約をさせてまで契約を迫る手口に注意を呼びかけ、その事例の中にデート商法で長時間勧誘され、クレジットを組んでネックレスを契約したケースを挙げています。

出会いが勧誘に変わるときの段階

相談事例をたどると、最初から商品の話が出ることは少なく、次のような段階を踏むことが多いようです。

  1. プロフィールで親近感をつくる:「将来に向けて頑張っている」「自由な働き方をしている」といった自己紹介が多い。
  2. 早めに会う約束:カフェやファミレスなど、第三者を同席させやすい場所を指定される。
  3. 紹介したい人の登場:「尊敬している先輩」「メンター」が合流し、成功談を聞かされる。
  4. セミナーや勉強会への誘い:「一緒に行こう」と誘われ、会場で契約の話になる。
  5. 支払いの壁を越えさせる:「お金がない」と言うと、借入れやカードの分割払いを勧められる。

三つ目の「紹介したい人」が出てきた段階で、恋愛の話から仕事やお金の話に移っているなら、その場で契約の話を聞く理由はありません。

契約の種類ごとに使える制度

同じ「勧誘された」でも、契約の形によって使える制度と期間が違います。

契約の形制度期間の目安
商品やセミナーを買い、人を紹介すると報酬が出る(マルチ取引)特定商取引法 連鎖販売取引のクーリング・オフ。期間後も中途解約・返品のルールあり法定書面の受領日(商品の引渡しが後ならその日)から20日
「仕事を紹介するので教材や機材を買って」という契約特定商取引法 業務提供誘引販売取引のクーリング・オフ法定書面の受領日から20日
目的を告げずに呼び出され、店や事務所で契約した特定商取引法 訪問販売(アポイントメントセールス)のクーリング・オフ法定書面の受領日から8日
恋愛感情に乗じて「契約しないと関係が終わる」と迫られた消費者契約法 第4条第3項第6号の取消し追認できる時から1年、契約から5年
自分でネット上のページから教材を購入した通信販売。法律上のクーリング・オフはない最終確認画面の表示などに問題があれば取消しの余地

消費者庁の特定商取引法ガイドは、電話・郵便・SNSなどで販売目的を明らかにせずに呼び出して営業所などで契約させる方法を、アポイントメントセールスとして訪問販売に含めています。アプリのメッセージで「会おう」と誘われ、会った先で契約の話になった場合、この考え方があてはまるかを相談先で確認してください。

クーリング・オフは書面か電磁的記録で行えます。書面なら特定記録郵便や内容証明郵便、メールなら送信済みのメールを保存するなど、送った証拠を残してください。クレジットで払った場合は、カード会社や信販会社にも同じ内容を知らせます。

消費者庁のガイドによると、連鎖販売取引でクーリング・オフをした場合、業者は解除に伴う損害賠償や違約金を請求できず、商品の引取り費用も業者の負担です。支払った代金や取引料は返還され、受け取った商品は業者に返すことになります。

20日を過ぎたマルチ取引の抜け方(中途解約と返品)

連鎖販売取引では、クーリング・オフの期間が過ぎた後でも、組織に入った個人(店舗を持たない個人)は将来に向かって契約を解除し、退会できます(特定商取引法第40条の2)。さらに、退会した人は次の条件をすべて満たす商品について、商品の販売契約も解除できます。

  • 入会してから1年を経過していない
  • 商品の引渡しから90日を経過していない
  • 商品を再販売していない
  • 商品を使用・消費していない(販売した側が使わせた場合を除く)
  • 自分の責任で商品をなくしたり壊したりしていない

勧誘の際に事実と違うことを告げられたり、重要な事実を故意に告げられなかったりして誤認した場合は、契約の取消しも認められています(同法第40条の3)。「紹介すれば必ず元が取れる」と言われた、借入れの返済見込みを実際と違って説明された、といった事情があれば、その言葉の記録を相談時に見せてください。

自宅に届いた商品は、開封や使用をせずに保管しておくと、返品の条件を満たしやすくなります。

デート商法の取消し(消費者契約法第4条第3項第6号)

第6号は、社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘者に恋愛感情などの好意を抱き、相手も同じ感情を持っていると誤信していることを知りながら、それに乗じて「契約しなければ関係が破綻する」と告げる勧誘で結んだ契約を、取り消せるとする規定です。

逐条解説で示されている考え方

  • 年齢で決まらない:社会生活上の経験が乏しいかどうかは年齢で決まるものではなく、中高年でも該当しうる。
  • 好意の程度:恋愛感情のほか、恋愛感情と同程度に親密な好意も含まれる。
  • 事例:恋愛感情を抱かせたうえで「契約してくれないと、今までの関係を続けられない」と告げて高額な宝石を売りつけた場合は、関係が破綻する旨を告げたことにあたる。

取消しには、相手が何と言ったかが重要になります。「契約しないならもう会えない」「応援してくれないなら無理」といったメッセージは、削除せずにそのまま保存してください。

その場で断るための準備と言い方

勧誘の場では、断る理由を探すほど相手に反論の材料を与えてしまいます。国民生活センターも、「お金が支払えない」という断り方ではなく、きっぱり断るよう助言しています。

  • 言い方の例:「興味がないので契約しません」「今日は話を聞くだけと言われて来たので帰ります」
  • 避けたい言い方:「お金がないので」「親に聞かないと」は、借入れの提案や説得の続きにつながりやすい
  • 会う前の準備:初めて会う場所は自分で選び、帰る時刻を決めておく。家族や友人に行き先を伝えておく
  • その場で署名しない:「今日だけの条件」と言われても、書面は持ち帰って読む
  • 借入れを勧められたら終わり:消費者金融やカードで払うよう誘導された時点で席を立つ

帰らせてもらえないとき

「帰りたい」と伝えたのに引き止められ、その場で契約した場合は、消費者契約法第4条第3項第2号(退去妨害)による取消しの対象になりうると考えられます。帰る意思を伝えた時刻と、その後どれくらい引き止められたかを、スマホのメモなどに残しておいてください。借入れの際に収入や使いみちを偽るよう言われても応じないことも、国民生活センターが強く呼びかけている点です。

契約してしまった後の手順

  1. 日付を確かめる:契約書面を受け取った日を確認し、クーリング・オフの期限(8日または20日)を計算する。書面を受け取っていない、記載に不備がある場合は期間が進んでいないこともある。
  2. 記録を集める:アプリのプロフィールとメッセージ、会った日時と場所、同席した人の名前、契約書面、支払いの明細。
  3. 相手のアカウントを通報する:アプリの通報機能で、勧誘目的の利用だったことを運営に伝える。退会や相手のブロックで画面が消える前に保存を済ませる。
  4. 通知を送る:クーリング・オフや取消しの通知を送り、控えを残す。
  5. 相談する:消費者ホットライン188で消費生活センターへ。脅すような連絡があれば警察相談専用電話#9110へ。

記録の保存方法は証拠の残し方、当サイトへの相談は相談予約からどうぞ。

よくある質問

Q. マッチングアプリで知り合った人に誘われたセミナーに申し込みました。まだ間に合いますか?

A. マルチ取引なら法定書面の受領から20日、目的を告げずに呼び出されて契約した訪問販売なら8日の間にクーリング・オフを検討できます。まず書面を受け取った日を確認してください。

Q. 相手が「本気で好きだから勧めている」と言います。デート商法にあたりますか?

A. 好意を示すだけでは該当しません。消費者契約法第4条第3項第6号は、恋愛感情に乗じて「契約しなければ関係が破綻する」と告げた場合を対象にしています。相手の言葉を保存して相談してください。

Q. 30代・40代でもデート商法の取消しは使えますか?

A. 消費者庁の逐条解説では、経験の乏しさは年齢だけで判断せず、中高年であっても当てはまりうるとされています。就労経験や交友関係などから個別に判断されます。

Q. ネットで買った教材にもクーリング・オフはありますか?

A. 自分でウェブページから申し込んだ通信販売には法律上のクーリング・オフはありません。ただし、勧誘の経緯によっては別の取引類型にあたる場合もあるので、経緯をまとめて消費生活センターに相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。