軍人の「休暇申請費」を払ってと言われたら|マッチングアプリの相手の確かめ方

結論から書きます。軍人を名乗る相手から「休暇を取るには費用がかかる。あなたに立て替えてほしい」と頼まれたら、その場では払わずに手を止めてください。米連邦取引委員会(FTC)は2023年の注意喚起で、軍人が休暇を取るためにお金を払う必要はないと明記しています。国連も、軍の休暇を手数料と引き換えに承認することはないと公表しています。

この記事は、マッチングアプリで出会った「海外に派遣中の軍人」とやり取りしていて、休暇申請費・休暇許可証の代金・帰国のための手数料などを求められている人に向けて書いています。相手を疑いたくない気持ちがあっても、送金の前に確かめられることは残っています。すでに払った人向けの手順は後半にまとめました。

「休暇申請費」の依頼が届くまでの典型的な流れ

令和7年(2025年)の1年間に全国の警察が把握したSNS型ロマンス詐欺は5,645件あり、だまし取られた額を合計すると546.4億円に達しました。相手と出会った場所でいちばん多いのはマッチングアプリで1,846件。お金を求められた時期のやり取りはLINEに集中していて、5,294件と9割を超えます。アプリで知り合い、すぐにLINEへ誘われるという順番は、数字の上でも裏付けられています。

軍人を名乗る相手の場合、話はおおむね次のように進みます。

  1. プロフィールに制服姿や基地らしき写真があり、「紛争地に派遣されている」「任務の合間にしか連絡できない」と説明される。
  2. 毎日のようにメッセージが届き、数週間で「任務が終わったら日本であなたと暮らしたい」と将来の話が出る。
  3. 「会いに行くには休暇を取る必要がある。ただし休暇の申請には費用がかかり、戦地では自分の口座が使えない」と切り出される。
  4. 支払先として、軍の担当者・代理人・休暇手続きの会社などを名乗る第三者の口座、暗号資産のアドレス、ギフトカードの番号が示される。
  5. 払うと「承認が下りたが、今度は移動費が必要」「書類に不備があった」と別の名目が続く。

米陸軍の犯罪捜査部門(CID)は2012年の注意喚起で、陸軍から「休暇の書類を買う」ためにお金を送ってほしいと頼む事例を紹介しています。同じ記事では、送金先がたびたび第三者の住所になることにも触れています。

軍の休暇と費用について、公的機関はどう説明しているか

「休暇は有料」という話が本当かどうかは、恋人の言葉ではなく、軍や公的機関が公表している説明で確かめるのが近道です。今回確認できた一次情報は次のとおりです。

発信元書かれていること
米連邦取引委員会(FTC)2023年7月詐欺師は、あなたに会いに行く「休暇申請」のためにお金が要ると言うことがある。軍人が荷物・食事・治療を受けたり休暇を取ったりするのに支払いが必要になることはない。
国連(Fraud Alert)国連は、手数料と引き換えに軍の休暇や年金を承認したり、荷物を引き渡したりしない。
国民生活センター(2020年2月の公表資料)アメリカの軍人を名乗る男性に「日本へ行くため国連へ休暇を申請したいが、許可書の費用を払えない。代わりに850ドルを払ってほしい」と頼まれた相談事例。銀行が送金を断ると、国連を名乗る機関から別の送金先が指示された。
米陸軍CID(2012年・2014年の記事)「休暇の書類」の購入、戦闘で負った傷の治療費、戦地から帰る航空券の費用を求める事例がある。こうした陸軍の規則に関する主張は事実ではない。

各国の軍の休暇制度をすべて調べたわけではありません。それでも、少なくとも米国の公的機関と国連がそろって「休暇に手数料はかからない」「手数料で休暇を承認しない」と書いている以上、休暇を理由にした送金の依頼は、立ち止まる理由として十分です。

もう一つ押さえておきたいのは、写真や名前を使われている本物の軍人も被害者だという点です。CIDは、実在する兵士の階級と名前、ネット上の写真を組み合わせて架空の人物が作られていると説明しています。相手の写真の人物を責めても解決しません。

送金する前に確かめたい3つのポイント

相手が本物かどうかを、アプリやLINEの画面だけで見極めるのは難しいのが実情です。そこで、相手の身元よりも「お金の頼み方」に目を向けてください。次の3点のどれか一つでも当てはまれば、送金は見送る判断が妥当です。

1. 支払先が軍そのものではない

「休暇の手続きをする担当者」「軍が契約している代行会社」などの個人名義の口座、暗号資産のアドレス、ギフトカードの番号を伝えてくる場合です。FTCは、ギフトカード・電信送金・送金アプリ・暗号資産での支払いを求める恋愛相手について、それだけで詐欺だと言い切っています。

2. 期限を切って、周りに話さないよう求める

「今日中に払わないと休暇が取り消される」「このことは家族に言わないで」という言い方は、相談される前に払わせるための典型的な圧力です。本当に大事な手続きなら、数日待ったり第三者に相談したりしても困らないはずです。

3. 払うたびに次の名目が出てくる

休暇申請費のあとに航空券代、次に「空港での手数料」と続くなら、最初の支払いが通った相手として狙われている可能性があります。外務省の広域情報も、会いに来る途中で拘束された、荷物の手数料が要るなど、名目を変えて何度も送金を求める例を挙げています。

確認の方法としては、FTCが勧めるように、写真を画像検索にかけて別の名前で使われていないかを見る、相手の職業名と「scam」を組み合わせて検索する、といった手もあります。ただし、何も見つからなかったからといって本物だとは言えません。

マッチングアプリの中でしておくこと

送金を断ると、相手はアカウントを消したり、あなたをブロックしたりすることがあります。その前に、アプリ上の記録を手元に残しておきましょう。

  • 相手のプロフィール画面(表示名、年齢、自己紹介、写真)をスクリーンショットで保存する
  • アプリ内のメッセージを、LINEへ移る直前のやり取りまでさかのぼって保存する
  • LINEに移った後の会話、送られてきた「休暇申請書」「許可証」などの画像やPDFも残す
  • アプリの運営会社に、違反報告や通報の機能から事情を伝える

FTCも、詐欺の疑いがある相手とは連絡を絶ち、出会ったアプリやSNSにすぐ知らせるよう勧めています。運営会社への通報は、同じアカウントから別の利用者が狙われるのを防ぐことにもつながります。スクリーンショットの撮り方や保管場所の分け方は証拠の残し方のページで紹介しています。

同じマッチングアプリ経由でも、相手が投資や暗号資産の話を持ち出してくるパターンもあります。その場合の流れはSNS型ロマンス詐欺の手口と対処も参考にしてください。

休暇の費用をすでに払ってしまったときの手順

払ってしまった後でも、早く動くほど選べる手段は増えます。まず追加の送金を止め、支払い方法ごとに次の連絡先へ伝えてください。取り戻せるかどうかは、相手の口座に残高が残っているか、支払いの仕組みがどうなっているかで大きく変わるため、返金を約束できるものではありません。

支払い方法最初に連絡する先知っておきたいこと
国内の銀行振込振込元の銀行、警察振り込め詐欺救済法には、詐欺に使われた口座を金融機関が止め、残ったお金を被害者に分ける手続きが定められています。対象になった口座の公告は預金保険機構が公開しています。
海外送金・送金サービス利用した銀行・送金業者国外の口座に着金した後の組み戻しは難しいことが多く、時間との勝負です。
暗号資産利用した暗号資産交換業者、警察相手のウォレットアドレス、送った日時と数量、トランザクションIDをメモしておきます。
ギフトカードカードの発行会社カード番号とレシートを保管し、未使用分の利用停止ができないか問い合わせます。
クレジットカードカード会社請求の取り消しを検討してもらえるか相談します。

銀行振込で払った場合の具体的な進め方は、出会い系で振込した後の対処法にもまとめています。

相談先と、相談の前にそろえておくもの

送金するか迷っている段階なら、局番なしの188(地元の消費生活センターを案内してもらえる番号)や警察相談専用電話#9110に「休暇の費用を頼まれている」と伝えれば、手口に当てはまるかを一緒に確認してもらえます。すでに払って被害届を出したいときは、最寄りの警察署に相談してください。弁護士に頼む費用が心配な場合は、法テラス(0570-078374)で立替制度が使えるかを聞いてみてください。

窓口に行く前に、以下を1つのフォルダーや封筒にまとめておきましょう。

  • 相手の表示名、アプリ名、LINEのID、名乗った国籍・所属・階級
  • 休暇の話が出た日と、費用を求められた日、金額、名目
  • 振込の控え、送金履歴、暗号資産の取引画面、ギフトカードの番号
  • 相手から届いた「申請書」「許可証」などの画像

やり取りの経緯を時系列で紙1枚に書き出しておくと、窓口で何度も同じ説明をせずに済みます。休暇の話が出る前にどんな会話をしていたか(結婚の話、家族の話、写真の送り合い)も一行ずつ添えておくと、相談を受ける側が手口の型を見分けやすくなります。恥ずかしいと感じる内容でも、削らずに残しておいてください。全体の流れは相談の流れ、送る前に立ち止まりたいときはチェックリストを開いてみてください。当サイトに話を聞いてほしい場合は相談予約のページからどうぞ。軍人を名乗る相手のほかの手口は、軍人をかたる相手の接触経路別の特徴にまとめています。

よくある質問

Q. 軍人の休暇申請にお金がかかるという話は本当ですか?

A. 米連邦取引委員会(FTC)は、軍人が休暇を取るためにお金を払う必要はないと注意喚起しています。国連も、手数料と引き換えに軍の休暇を承認することはないと公表しています。交際相手に休暇費用の立て替えを頼む話が出たら、送金を見送って相談してください。

Q. マッチングアプリで知り合った軍人に休暇申請費を払ってしまいました。取り戻せますか?

A. 支払い方法と、相手の口座に残高が残っているかどうかで見通しが変わります。国内の口座に振り込んだ場合は、銀行と警察へ早めに知らせれば、相手の口座が止められ、残高を被害者で分ける手続きに進める場合があります。返金が約束されるものではないため、まず追加の送金を止めてください。

Q. 相手が本当に軍人かどうか、軍に問い合わせれば分かりますか?

A. 米陸軍CIDは、実在する兵士の名前や階級、写真が無断で使われていると説明しています。仮に同じ名前の軍人が実在しても、メッセージを送ってくる相手がその本人とは限りません。身元よりも、支払先が個人名義か、期限を切って急がせるかといった頼み方に注目するほうが判断しやすくなります。

Q. 休暇の費用を断ったら連絡が来なくなりました。何か手続きは必要ですか?

A. 送金していなければ金銭の被害はありませんが、アプリの運営会社への通報と、プロフィールや会話の保存はしておくと安心です。名前や住所、身分証の画像などを送っていた場合は、悪用に備えて警察相談専用電話#9110などに相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。