軍人の恋人の資金を預かる話と銀行・警備会社のメール|手数料の前に確認

軍人を名乗る恋人から「戦地で受け取った報奨金を安全な場所に移したい」「あなた名義で資金を預かってほしい」と頼まれ、その後、銀行・警備会社・輸送会社などを名乗るメールが届く。メールには、受け取りのための手数料や証明書の発行費用を先に払うよう書かれている。この形は、国民生活センターや外務省が公表している国際ロマンス詐欺の事例とよく似ています。

先に結論を書くと、預ける側の資金を受け取るのに、受け取る側が先にお金を払う必要がある、という話はまず疑ってください。この記事では、メールで届く「第三者」からの連絡をどう確かめるか、手数料を払う前に何を考えるか、払ってしまった後に何をするかを、公的機関の情報をもとに説明します。

「資金を預けたい」から手数料の請求までの流れ

メールが中心になる場合、話はおおむね次の順に進みます。

  1. 恋人からの打ち明け話:任務で得たお金、亡くなった家族の遺産、退役後の生活資金などがあり、軍の規則や現地の事情で自分では持ち出せない、と説明されます。
  2. 受取人になってほしいという依頼:「信頼できるのはあなただけ」と、氏名・住所・電話番号、ときには身分証の画像を求められます。
  3. 第三者からのメール:銀行、警備会社、輸送会社、外交官、弁護士などを名乗る差出人から、英語や不自然な日本語で「お預かりしています」「手続きを進めます」と連絡が来ます。
  4. 手数料の請求:保管料、名義変更の手数料、資金が合法であることを示す証明書の発行費用、税金などの名目で支払いを求められます。
  5. 次の障害:払うと別の書類や費用が必要になり、受け取りの日が先送りされていきます。

恋人本人は「自分は動けないから、担当者の指示に従ってほしい」と言い、お金の話は第三者の口から出てくるのが特徴です。恋人がお金を求めていないように見えるため、警戒がゆるみやすくなります。

公的機関が公表している事例と照らし合わせる

自分が受け取っているメールが、既に知られている手口と重なっていないかを確かめてみましょう。

  • 国民生活センター(2020年2月):国際ロマンス詐欺の相談として、資産譲渡のためにキャッシュカードの受け取りを承諾したら通関手数料を請求された、指定されたサイトで配送状況を確認すると通関手数料を請求されていた、といった例を紹介しています。面識のない海外の人と安易に受け取りの約束をしない、手数料を求められても払わない、と助言しています。
  • 外務省(2025年4月):生活を立ち上げるための荷物を送るので手数料を払ってほしい、仕事の契約を解除する違約金が必要、といった口実を典型例として挙げ、詐欺師が友人や弁護士、空港係官などの役を演じる場合もあると説明しています。
  • 米陸軍犯罪捜査司令部(CID):第三者や会社にお金を送ったり物を発送したりするよう求められたら強く疑うよう呼びかけ、その会社自体は実在していても、詐欺とは無関係で何も知らないことが多いと注意しています。

最後の点は、メールを確かめるときに特に重要です。実在する銀行や警備会社の名前が書かれていることは、メールが本物である理由になりません。名前を使われた会社は、多くの場合そのやり取りを知りません。

メールの差出人を自分で確かめる手順

銀行や会社を名乗るメールが届いたら、返信する前に次の点を確かめてください。

  1. 表示名ではなくアドレスを見る。画面に表示される差出人名は自由に設定できます。アドレスの@より後ろ(ドメイン)が、その会社の公式サイトのドメインと一致しているかを確かめます。フリーメールのアドレスから銀行が顧客に手続きを案内することは通常考えにくいでしょう。
  2. 返信先を確かめる。差出人のアドレスと、返信ボタンを押したときの宛先が違うことがあります。
  3. 公式サイトは自分で検索して開く。メールに書かれたリンクや電話番号ではなく、検索して見つけた公式サイトの問い合わせ窓口に「このメールは御社から送ったものか」と尋ねます。
  4. 日本の銀行を名乗るなら、金融庁の一覧を見る。国内で銀行業を営むには免許が必要で、金融庁のサイトで免許を受けた銀行の名簿を確認できます。名乗られた銀行名が一覧にあっても、それはメールの真偽とは別の話なので、必ず銀行の公式窓口で確かめます。
  5. メールのヘッダ情報を残す。メールソフトの「ソースを表示」「原文を表示」などの機能で、送信経路を含む情報を保存できます。調べるためというより、相談先に渡す記録として役立ちます。

恋人本人への確かめ方

第三者のメールについて恋人に尋ねると、「その会社は信頼できる」「早く手続きしないと資金が没収される」と、かえって急かされることがあります。尋ねるなら、答えを確かめられる質問にしましょう。たとえば「その会社と契約したときの書類を見せてほしい」「あなた自身が会社に電話して、私の名前で手続きが進んでいるか確認してほしい」と頼み、そのうえで自分でも会社の公式窓口に問い合わせます。二つの答えが食い違ったり、確認を嫌がったりするなら、話そのものを見直す材料になります。

メールの保存方法や、スクリーンショットだけでは足りない理由は証拠の残し方で詳しく説明しています。

添付ファイル・リンク・「オンライン口座」に注意する

第三者を名乗るメールには、証明書のPDF、預かり証の画像、口座の残高を確認できるというログイン用のリンクなどが添えられていることがあります。

残高が表示される画面を信じない

リンク先のサイトにログインすると、あなた名義の口座に大きな金額が入っているように見えることがあります。けれども画面の数字は、サイトを作った側がいくらでも書き換えられます。外務省は、投資に誘う手口について、利益が出たように見せかけても実際には存在しないものが示されると説明しています。残高画面も同じように考えてください。

身分証や口座情報の入力を求められたら

「本人確認のため」と、パスポートや運転免許証、マイナンバーカードの画像、銀行口座の情報の入力を求められることがあります。これらは名義の悪用につながりかねません。送ってしまった場合の手続きは恋愛相手に身分証の画像を送ったときの記事を参考にしてください。

知らないファイルは開かない

添付ファイルやリンクから、不正なアプリや偽のログイン画面に誘導されることもあります。万一開いてしまっても、文書の中にある連絡先やURLは使わないようにしましょう。

手数料を払う前に、立ち止まって考えたいこと

メールの見た目がどれだけ整っていても、話の筋に無理がないかを考えると判断しやすくなります。編集部としては、次の3つの問いに一つでも「はい」と答えられないなら、支払いは見送るべきだと考えます。

  • その資金が本当にあるなら、手数料をそこから差し引けないのはなぜか。受け取る側に先払いを求める理由を、自分の言葉で説明できるでしょうか。
  • 恋人本人と、名乗られた会社の両方に、自分で調べた窓口から確かめたか。メールに書かれた連絡先だけで確認していないでしょうか。
  • 家族や信頼できる人に、この話をそのまま説明できるか。「誰にも言わないで」と口止めされているなら、それ自体が注意信号です。

対面したことのない恋人への送金を控えるよう求める点では、米連邦取引委員会(FTC)の助言も同じです。支払いを断ったとたんに恋人の態度が変わる、責められる、別の名目の請求が来る、といった反応があれば、やり取りを続けるかどうかを見直す時期です。

「もう何度も払ったから、ここでやめたら全部無駄になる」と感じるのは自然なことです。ただ、これまでに払った金額と、これから求められる金額は切り離して考えてください。次の支払いで受け取れるという保証はどこにもなく、払うたびに新しい名目が加わる流れは、公的機関が紹介している事例と重なります。

払ってしまった・情報を送った後の手順と相談先

すでに手数料を払った、または身分証や口座の情報を送った場合は、次の順で進めてください。

  1. 追加の支払いを止める。「あと一回で受け取れる」と言われても応じません。
  2. 支払いに使った金融機関・サービスに連絡する。手数料を振り込んだ銀行、暗号資産を送った交換業者、ギフトカードや電子マネーの発行元など、お金が出ていった経路ごとに連絡を入れます。
  3. メールとやり取りを保存する。メール本文、ヘッダ情報、添付ファイル、偽サイトのURLと画面、恋人とのメッセージを残します。
  4. 警察に相談する。記録を持って最寄りの警察署に行くか、#9110に電話します。
  5. 消費生活センターにも話しておく。188に電話すれば地域の窓口につながります。

届いた文面ごと、日本データ通信協会の迷惑メール相談センター、あるいはフィッシング対策協議会に送って情報提供できます。情報提供はお金を取り戻す手続きではありませんが、同じ文面のメールによる被害を減らす手がかりになります。

弁護士への相談を考えているなら、送金の日時・金額・送金先の一覧を先に作っておくと話が早く進みます。準備の順番は被害後のチェックリスト、軍人を名乗る相手からの別の名目の依頼は国連職員・平和維持部隊を名乗る相手の記事もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 軍人の恋人の資金を預かっているという銀行からメールが来ました。銀行名で検索すると実在しています。

A. 実在する銀行の名前が使われていても、メールが本物とは限りません。米陸軍CIDは、第三者として名前を使われる会社は実在していても詐欺とは無関係なことが多いと注意しています。メールに書かれた連絡先ではなく、自分で調べた銀行の公式窓口に問い合わせてください。

Q. 資金を受け取るための「証明書の発行費用」を払えば、全額が振り込まれると言われました。

A. 受け取る側が先に費用を払う理由を確かめられないなら、払わないでください。国民生活センターは、国際ロマンス詐欺で受け取りを承諾した後に手数料を請求された相談を紹介し、手数料を求められても支払わないよう助言しています。

Q. メールのリンクからログインすると、自分名義の口座に大金が入っていました。

A. 画面に表示される金額は、サイトを作った側が自由に書き換えられます。残高があるように見えても、出金のための手数料を払う前に、家族や警察(#9110)、消費生活センター(188)に相談してください。

Q. パスポートの画像をメールで送ってしまいました。

A. これ以上の情報は送らず、送った日時と送信先を記録してください。名義を悪用されないよう、警察や消費生活センターに相談するとともに、身分証を送った場合の手続きを確認しておくと安心です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。