送ったNFT・盗まれたNFTは取り戻せる?「回収できる」電話の前に知る現実

NFTの投資話に乗って暗号資産やNFTを送ってしまった、あるいは偽サイトでウォレットから抜き取られた。その後しばらくして、知らない番号から「ブロックチェーンの追跡で資産を取り戻せる」「成功報酬なのでまず調査費だけ」と電話がかかってきた——。この記事は、そんな状況で判断に迷っている人のために書いています。

最初に現実を書いておきます。ブロックチェーン上の送付は取り消せず、相手のアドレスに移ったNFTを本人の同意なく戻す手段は、通常ありません。大手マーケットができるのも自社サービス上の売買を止めることまでで、NFTの返還はできないと明言しています。そのうえで、電話口で「必ず戻る」と言い切る相手には、費用を払う前に立ち止まってください。以下で、できること・できないことの線引きと、電話で確かめるべき点を具体的に説明します。

NFTが相手の手に渡った後、できることとできないこと

NFTを動かせるのは、そのNFTが入っているアドレスの秘密鍵を持つ人だけです。自分から相手のアドレスへ送った場合も、偽サイトの承認を使って抜き取られた場合も、NFTはいま相手の鍵で管理されています。

やりたいこと現実的にできるか補足
送付そのものを取り消すできないブロックチェーンに記録された取引は、送った側からは巻き戻せない
相手のアドレスからNFTを戻させる相手の協力がなければ困難相手を特定し、法的な手続きで求める必要がある
マーケットでの転売を止める条件つきで可能OpenSeaは警察の報告書を添えた報告で、自社サービス上の売買・送付を停止する
資金の流れを記録に残すできるトランザクションIDと移動先アドレスは誰でも閲覧できる

OpenSeaの盗難品に関する方針によると、停止は原則90日間で、捜査機関の要請があれば延長されます。停止が明けても、持ち主が争われている品だという目印が1年を上限に残ります。とはいえ同社は、アイテムはチェーン上に存在していて自社が預かっているわけではないので、失われたお金やNFTを回収することはできない、と明言しています。

「追跡できる」と「取り戻せる」は別の話

ブロックチェーンの記録は公開されているので、NFTや暗号資産がどのアドレスへ移り、その後どこへ流れたかをたどること自体は、専門のツールがなくてもある程度できます。回収をうたう業者が「犯人のウォレットを特定した」と言うのは、多くの場合この公開情報を見ただけのことです。問題は、アドレスが分かっても、その持ち主が誰なのか、どの国にいるのかまでは分からない点にあります。持ち主が分からなければ、返還を求める相手も決まりません。追跡の結果は警察に届けるときの材料にはなりますが、それだけで資産が戻るわけではないと理解しておいてください。

資金が国内外の交換業者に流れ込んだ場合、捜査機関の求めに応じて口座が凍結される可能性はあります。ただ、それは捜査や法的手続きの結果として起こりうることで、個人が電話一本の依頼で実現できるものではありません。

警察への届出が、NFTの被害で意味を持つ理由

「暗号資産やNFTは警察に言っても無駄」と考えて、届出をためらう人もいます。けれども、NFTの被害では警察への届出が実務上の前提になる場面があります。先ほどのOpenSeaの方針では、警察の報告書がなければ盗難として報告されたアイテムを停止できないと明記されているからです。報告書には、ウォレットアドレス、盗まれたアイテムの一覧(OpenSeaかEtherscanのURL、またはトークンID)、盗まれたという記載が必要とされています。

警察に持っていく情報

  1. 自分のウォレットアドレスと、使っていたウォレットの種類
  2. 失ったNFTのコレクション名とトークンID、失った暗号資産の種類と数量
  3. 移動の日時と、トランザクションID(取引ごとに固有の番号)
  4. 移動先のアドレス
  5. だまされた経緯(勧誘された場所、相手のアカウント、偽サイトのURL)
  6. 支払いに使った銀行口座や交換業者の記録

都道府県警察のサイバー事案の相談窓口は、警察庁のサイトから探せます。窓口の見当がつかなければ、全国共通の短縮ダイヤル「#9110」にかければ地元の警察の相談担当につながります。

「取り戻せます」という電話で確かめること

被害に遭った人に、回収や追跡をうたって近づく連絡は珍しくありません。金融庁の金融サービス利用者相談室は、「取り戻してあげる」と近寄ってきた相手が実は同じ詐欺グループの仲間で、もう一度お金を失ったという相談を受けていると明かしています。消費者庁も、被害回復をうたう二次被害にあわせて気をつけるよう呼びかけています。

海外でも同じです。FBIは2025年4月18日、IC3(FBIのネット犯罪届出窓口)の職員を名乗り、失った資金を取り戻せると持ちかける詐欺について警告しました。FBIによれば、本物のIC3が電話やメール、SNSで個人に直接連絡することはなく、資金回収のために支払いを求めることも、費用を取る回収会社を紹介することもありません。

電話口で聞かれたら注意したい言葉

  • 「ブロックチェーン解析で犯人のウォレットを特定済み。凍結の手続き費用を先に」
  • 「警察・金融庁・海外当局と提携している」
  • 「今日中に手続きしないと資産が海外へ移される」
  • 「確認のためにウォレットを接続して」「シードフレーズを教えて」
  • 「手数料は暗号資産で送って」

探偵業の業界団体である日本探偵業協会も、お金をもらって被害金の返還を求めたり交渉したりすることは、弁護士法第72条が禁止する非弁行為にあたると説明し、探偵業者を名乗る者の「返金が可能」という勧誘に注意を促しています。返金の交渉や請求を代わりに引き受けられるのは、原則として弁護士です。編集部としては、電話で回収を持ちかけてきた相手に、その場で費用を払うことは避けるべきだと考えます。

電話を受けたときの具体的な対応

その場で結論を出さないことが一番の防御になります。次の手順を試してください。

  1. 相手の情報を控える:名乗った会社名・個人名、所在地、折り返し先の番号、どこで自分の被害を知ったのか
  2. 個人情報を渡さない:ウォレットのシードフレーズ、秘密鍵、パスワード、身分証の画像は、どんな理由でも伝えない
  3. いったん電話を切る:「家族と相談してから折り返す」で十分
  4. 自分で調べた番号にかけ直す:相手が弁護士を名乗るなら、所属弁護士会の名簿や日本弁護士連合会の検索で実在を確かめ、事務所の代表番号へ自分から電話する
  5. 公的な窓口に聞く:警察の「#9110」や消費者ホットライン「188」で、その連絡について相談する

留守番電話やSMSに残った内容も、画面を保存しておきます。二次被害の手口全般は二次被害の注意点をまとめた記事でも紹介しています。

失ったNFTの税金上の扱い

確定申告の時期に、失ったNFTの損失を差し引けるのかという疑問も出てきます。2023年1月13日に国税庁がまとめたNFTの税務FAQでは、第三者の不正アクセスで購入したNFTが消失した場合について、次のように整理しています。

  • そのNFTが「生活に通常必要でない資産」や事業用資産等に当たらず、消失が盗難等に該当する場合は、雑損控除の対象になる
  • 事業用資産等に当たる場合は、事業所得や雑所得の計算上、必要経費に入れられる
  • 損失額は消失した時点の時価で、分からなければ購入金額としてよい

ただし注意点が二つあります。同じFAQは、主として趣味・娯楽・保養・鑑賞の目的で持つ資産を「生活に通常必要でない資産」の例に挙げています。また国税庁のタックスアンサー(No.1110)は、詐欺や恐喝による損失は雑損控除を受けられないと明記しています。自分でだまされて送った場合と、不正アクセスで抜き取られた場合とで扱いが分かれる可能性があるため、自分のケースがどちらに当たるかは、申告の前に税務署の相談窓口か税理士に聞いておくと安心です。

今日やることと相談先

最後に、優先順位を整理します。失ったものを早く取り返したいという焦りは、次の支払いを引き出す材料として使われがちです。順番を決めてから動くことが、被害をこれ以上広げない一番の近道になります。

  1. 回収をうたう相手への支払いを止め、連絡を記録する
  2. 残っている資産を新しいウォレットへ移す(元のウォレットの鍵が漏れた可能性があるなら特に)
  3. 失ったNFT・暗号資産の記録をまとめ、警察へ相談する
  4. 届出の受理番号や報告書をもとに、マーケットへ盗難を報告する
  5. 支払いに銀行振込を使っていれば、振込先の金融機関へも連絡する

相談先

  • 警察:都道府県警察のサイバー事案相談窓口、または「#9110」
  • 消費生活センター:「188」
  • 弁護士:費用や見通しを聞いたうえで依頼を決められる。相談予約からも受け付けています

暗号資産の送付後にできることを広く知りたい人は暗号資産を送った後の対応の記事、偽のミントでウォレットから抜き取られた経緯については偽ミントサイトの記事も参考にしてください。

よくある質問

Q. 盗まれたNFTは戻ってきますか?

A. 相手の協力なしに戻す手段は通常ありません。OpenSeaも、盗まれたNFTの売買を自社サービス上で止めることはできても、NFTや資金を取り戻すことはできないと説明しています。

Q. 「NFTを回収できる」という会社から電話が来ました。

A. 費用を払う前に、相手の会社名と所在地を控えていったん切り、警察の「#9110」や「188」に相談してください。金融庁は、被害回復を持ちかける者による二次被害の事例があると注意しています。

Q. 警察に届けると、NFTについて何が変わりますか?

A. OpenSeaでは、警察の報告書を添えて盗難を報告すると、そのNFTの自社サービス上の売買・送付が停止されます。報告書がなければ停止できないとされているため、届出は重要な前提になります。

Q. だまし取られたNFTの損失は確定申告で差し引けますか?

A. 国税庁は、不正アクセスによる消失が盗難等に当たる場合は雑損控除の対象になりうるとしています。一方、詐欺による損失は雑損控除を受けられないとしており、個別の判断は税務署か税理士に確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。