マッチングアプリの相手にパワーストーンを勧められたら|デート商法の取消しと相談先

要点から書きます。アプリでやり取りを始めた相手が、何度か会ううちに高額なパワーストーンや開運ブレスレットを勧めてくる場合、国民生活センターが「デート商法」として注意を呼びかけている流れに近いことがあります。相手への好意に乗じて「買ってくれないとこの関係は続けられない」と迫られて契約したなら、消費者契約法第4条第3項第6号で取り消せる可能性があります。販売目的を隠して事務所や展示会に呼び出されて契約したなら、特定商取引法の訪問販売(アポイントメントセールス)として、法定の書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフも検討できます。

この記事は、アプリで出会った人から石を買うよう勧められて迷っている方、すでに契約やローンを組んでしまった方に向けたものです。相手の本心は外からは分かりません。そのため「相手が悪い人かどうか」ではなく、「勧誘の仕方と契約の中身」で判断する手順をまとめました。

マッチングアプリからパワーストーン購入に進むまでの典型的な順番

国民生活センターの説明では、デート商法はSNSやマッチングアプリで販売目的を隠して近づき、好意を抱かせたうえで高額な商品の契約を持ちかけるものとされています。題材はアクセサリーが多いものの、石やブレスレットに置き換わっても、話の運び方はほとんど変わりません。相談の場面でよく語られる順番を、一般化して並べると次のようになります。

  1. メッセージで仕事や家族、体調の悩みを丁寧に聞いてくれる。
  2. 数回会って距離が縮まる。相手が自分から石やスピリチュアルの話を出すこともある。
  3. 「知り合いのお店」「自分が働いているサロン」「展示会」に一緒に行こうと誘われる。
  4. 店に着くと別の販売員も加わり、「あなたの今の運気にはこの石が合う」と数十万円の商品を見せられる。
  5. 迷うと「私たちの将来のためにも」「せっかく紹介したのに」と言われ、分割払いやローンの申込書を出される。
  6. 契約後は連絡が減る、または追加の石を勧められる。

このうち3と5がそろっているかどうかが、制度を使えるかを考えるうえでの分かれ目になります。3は「どこで、どう呼び出されたか」、5は「どんな言葉で決断を迫られたか」です。どちらも後から思い出すのは難しいので、気づいた時点でメモに残してください。

国民生活センターが示すデート商法の特徴

国民生活センターは2019年3月、10代から20代の若者を主な対象に、デート商法を体験できる恋愛シミュレーションゲーム風の動画を公表しました。筋書きは、SNSで知り合った女性と会った20歳の大学生が、仲良くなったあとで相手の職場に連れて行かれ、相手がデザインしたという40万円のネックレスを勧められる、というものです。

同じ資料で示された消費者へのアドバイスは3点です。

  • 販売員の好意は、商品を売るための手口であることを覚えておく。
  • あやしいと思ったら、すぐに契約したり、お金を借りたりしない。
  • 被害に気付いたら、すぐに消費生活センターに相談する。

動画の例はネックレスですが、パワーストーンでは「運気」「お守り」という意味づけが加わるぶん、断ることへの罪悪感が強くなりがちです。好意と開運の話が同時に出てきたときは、いったんその場を離れる理由を作ってください。「今日はカードを持っていない」「家で落ち着いて考えたい」で十分です。

契約をなかったことにできる可能性がある2つの制度

デート商法そのものの名前が付いた法律はありません。使えそうな制度は、契約の場所と勧誘の言葉によって変わります。

制度主な要件期限
消費者契約法 第4条第3項第6号(好意の感情の不当な利用)社会生活上の経験が乏しいために勧誘者へ恋愛感情などを持ち、相手も同じ気持ちだと思い込んでいる。事業者側はそれを分かっていて、買わなければ二人の関係が壊れると伝えた追認できる時から1年、契約から5年(同法第7条)
特定商取引法の訪問販売(アポイントメントセールス)電話・郵便・SNSなどで販売目的を明示せずに呼び出され、営業所などで契約した法定の書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフ。通常必要な量を著しく超える購入なら契約から1年は過量販売解除も

消費者契約法の取消しで確かめること

条文は、単に好意を持っていたことではなく、勧誘する側がその気持ちに気づいたうえで「契約しないと関係が終わる」と伝えたことを求めています。「買ってくれないなら、もう会えない」「本気なら形で示して」といったメッセージが残っていれば、重要な材料になります。条文に年齢の条件は書かれていませんが、要件に当たるかどうかは個別の事情で判断されます。

訪問販売のクーリング・オフで確かめること

アプリのメッセージで「ご飯のあとに友だちのお店に寄ろう」と誘われ、行った先で契約した場合は、アポイントメントセールスに当たるかを検討します。8日の数え始めは、店で受け取った契約書面の日付です。書面をもらっていない、あるいは記載が足りないと感じるときは、期限を自分で判断せずに消費生活センターに確認してください。

「石を持たないと不幸になる」と霊感を根拠に不安をあおられていた場合は、別の取消し規定もあります。開運商法全体の制度はパワーストーン・開運グッズ詐欺の対策で整理しています。

お金を払う前に見直したい6つのポイント

次の項目のうち2つ以上に当てはまるなら、その日に決めるのはやめておくのが無難だと、当編集部は考えます。

  • 購入の話が出たのが、会って数回以内:関係が浅い段階で高額な買い物の話になるのは、恋愛としても不自然です。
  • 相手と店の関係が説明されない:相手が販売員なのか、紹介料を受け取る立場なのかを聞いてみてください。答えを濁すなら注意が必要です。
  • 価格の根拠が「波動」「特別な浄化」だけ:石の種類・重さ・産地などの説明がなく、目に見えない付加価値で値段が決まっている。
  • ローンやカードの新規作成を勧められる:手持ちがないと伝えたのに支払い方法を用意される。
  • その場に販売員が増える:相手と二人のつもりが、数人に囲まれて話が進む。
  • 契約書の販売者欄が空白、または読ませてもらえない:あとで誰に連絡すればよいか分からなくなります。

断ったときに相手の態度が急に冷たくなったり、連絡が途絶えたりしたら、それ自体が判断の材料になります。

アプリの外に誘われたときの考え方

やり取りの場がアプリからLINEや個人の電話番号に移ると、アプリ運営会社の通報機能が使えなくなり、相手のプロフィールも確認しにくくなります。石の話が出た時点でアプリ内に記録が残っているうちに、相手の表示名、登録写真、自己紹介文を保存しておいてください。当編集部の考えとしては、「恋人として会う予定」と「商品の購入」は切り離して扱うのが安全です。本当に関係を続けたい相手なら、買い物を断っても関係は続くはずだからです。

契約してしまった後にやることを順番に

  1. アプリ内のやり取りを保存する:相手のプロフィール画面、メッセージ全体、会う約束をした部分をスクリーンショットで残します。相手が退会するとメッセージが見られなくなることがあるので、最初に済ませてください。
  2. 契約書・領収書・ローン書類をそろえる:販売店の名前、住所、電話番号、契約日、金額、支払い方法を確認します。
  3. 日付を数える:書面を受け取った日から8日以内なら、クーリング・オフの通知を急ぎます。通知は書面か、メールなどの電磁的記録で行い、控えを保存します。
  4. クレジット会社やローン会社にも知らせる:分割払いやローンを組んでいる場合、販売店だけに連絡しても支払いは止まりません。
  5. 消費者ホットライン188に電話する:自分のケースで取消しとクーリング・オフのどちらを主張するか、書き方を一緒に考えてもらえます。

相手と直接話し合って解決しようとすると、再び好意に訴えられて判断が揺らぐことがあります。連絡は文書で、できれば第三者を介して進めてください。証拠の集め方は証拠の残し方も参考になります。

相談窓口と、電話する前に書き出しておくこと

デート商法が絡む相談は、最初の窓口を1つ決めておくと迷いません。当編集部は、まず188を勧めます。取消しとクーリング・オフのどちらで進めるかを、契約書を見ながら一緒に整理してもらえるからです。

  • 188(いやや):電話をかけると地元の消費生活センターの相談員につながり、通知文の文面や販売店との交渉の進め方を相談できます。
  • #9110:警察の相談専用ダイヤル。脅された、帰らせてもらえなかった、個人情報をばらすと言われた、など身の安全が気になるときに。
  • 法テラス・弁護士:ローンを含めて金額が大きい、相手側が話し合いに応じない場合。

電話の前に、次の5点を紙に書いておくと話が早く進みます。

  1. アプリの名前と、相手と知り合った日
  2. 初めて会った日と、店に行った日
  3. 店の名前・場所と、契約した日
  4. 商品名・金額・支払い方法(ローン会社名)
  5. 決め手になった相手の言葉(覚えている範囲でそのまま)

相談全体の進み方は返金相談の流れ、窓口ごとの役割は占い詐欺の公的相談先にまとめています。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手が本当に好意を持っていたかもしれません。それでも取消しを主張してよいのですか?

A. 取消しの判断で見るのは相手の本心ではなく、勧誘の仕方です。消費者契約法第4条第3項第6号は、好意に乗じて「契約しなければ関係が破綻する」と告げたかどうかを問題にしています。メッセージや会話のメモをもとに、消費者ホットライン188で相談してください。

Q. 勧められたブレスレットをもう身につけてしまいました。クーリング・オフに影響しますか?

A. 訪問販売で使うと戻せなくなるとされるのは、健康食品や化粧品など政令で指定された消耗品です。石やブレスレットはこれに当たらないと考えられるため、身につけただけで期限内の通知ができなくなるわけではありません。箱や保証書と一緒に保管しておきましょう。

Q. 自分から「その店に行きたい」と言った場合もクーリング・オフできますか?

A. 自分の意思で店に出向いて買った場合は、原則として訪問販売のクーリング・オフの対象外です。ただし、販売目的を告げられずに呼び出されたのであれば、アポイントメントセールスに当たる可能性があります。どんな誘い方だったかをメッセージで確認してください。

Q. パワーストーンの代金をローンで払っています。販売店と連絡がつきません。

A. ローン会社やクレジット会社にも、契約の経緯とクーリング・オフや取消しを通知したことを伝えてください。分割払いで支払総額が4万円以上などの条件を満たせば、割賦販売法に基づいて支払いの停止を申し出られることがあります。条件があるため、188で相談しながら進めると安心です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。