税務署を名乗る電話・訪問は本物?税務調査や未納をかたる詐欺の確かめ方

「税務署の者ですが」「国税局査察部です」と名乗る電話がかかってきた、あるいは税務職員だという人が自宅に来た。本物の税務調査なのか、それとも税務署をかたる詐欺なのかを、その場で見極めたい方に向けた記事です。

要点を先に書きます。税務職員からの電話そのものは実際にありますが、ATMの操作、指定口座への振込、自動音声による納付の催促、アンケートと称した聞き取りは、国税庁が「行わない」と公表しています。訪問の場合も、職員は身分を示す証票を必ず持っています。迷ったら即答せず、いったん電話を切って、自分で調べた税務署の番号にかけ直してください。それだけで多くの手口は先に進めなくなります。

税務職員が電話をかけてくるのはどんなときか

「税務署から電話が来ること自体がおかしい」と考える方もいますが、そうとは限りません。国税庁によると、税務職員が電話で問い合わせるのは、提出された申告書などをもとに、その内容を本人に確かめる場合が原則です。たとえば確定申告書の記載に不明な点があったときなどが当たります。

ですから判断の基準は「電話が来たかどうか」ではなく、電話の中で何を求められたかに置くのが現実的です。自分が出した申告書の中身について聞かれるのは自然な流れですが、次のような要求が出てきたら、本物の税務職員の仕事の範囲から外れています。

  • 銀行やコンビニのATMへ行くよう指示される
  • 個人名義などの口座を指定され、振込を求められる
  • キャッシュカードの暗証番号や口座番号を聞かれる
  • 手数料や保証金の支払いを求められる
  • 「今日中に」「このまま切らずに」と、確認する時間を与えない

国税庁は、税務職員を名乗る電話で不審に感じたら、その場で答えず、相手の所属部署と氏名、電話番号を聞いたうえで通話を終え、近くの税務署(総務課)や国税局の納税者支援調整官に確かめるよう勧めています。本物の職員であれば、この確認を嫌がる理由はありません。

国税庁が「電話や訪問ではしない」と公表していること

国税庁の「不審なメールや電話にご注意ください」には、国税局・税務署を含めて行っていない連絡が列挙されています(2026年9月時点で確認)。電話と訪問に関係するものを表にまとめました。

場面国税庁が公表していること
還付金の受取・納付ATMの操作を求めることはない
納付金融機関の口座を指定して振込を求めることはない
自動音声AIや自動音声による電話で国税の納付を求めることはない
アンケートアンケートなどと称して電話をかけることはない
滞納整理外部の業者に委託することはない
勧誘会報の購読や有料講習会の受講を勧めたり、手数料を求めたりしない

とくに覚えておきたいのは自動音声の項目です。録音された音声で税金の未払いを告げ、番号のボタンを押すよう促す電話は、この公表内容と正面から食い違います。ボタンを押すとオペレーターにつながり、そこから個人情報や支払いの話に進む流れが考えられるため、何も押さずに切ってください。

「滞納整理を外部業者に委託しない」という点も大事です。「国税の債権回収を委託された会社です」と名乗る電話は、この説明と合いません。

確認されている電話の切り出し方と、電話が入口になる割合

国税庁は、税務署や国税局をかたった電話の事例として、次のような切り出し方を挙げています。

  • 「税務署からのアンケートの協力依頼です」と始め、個人情報を聞き出そうとする
  • ATMを操作させて振込をさせる(振り込め詐欺)
  • 株取引などに関連づけて、銀行の口座情報を聞いたり手数料を求めたりする
  • 「定額減税の関係で還付を受けられる」と始め、口座番号や暗証番号を聞き出そうとする
  • 「国税局査察部です。税金の未納があります」と始め、住所・氏名・口座番号を聞き出そうとする

「査察部」「差押え」といった重い言葉で不安にさせるものと、「還付」「アンケート」のように軽い用件を装うものの両方がある点に注意してください。後者は警戒されにくく、最初の電話では情報だけを集め、後日あらためて別の名目で連絡してくることもあります。

このほか国税庁は、国税庁の職員をかたってビジネスチャットツールで税務調査の連絡をしてきた事例も公表しています。国税庁が税務調査などでオンラインの連絡手段を使うのは、納税者が希望した場合に限られます。

電話が入口になる割合

警察庁の統計(令和7年・確定値)では、特殊詐欺全体で最初の接触手段の78.8%が電話でした。還付金詐欺やオレオレ型の詐欺に限ると、電話が9割を超えています。警察庁のSOS47によれば、同じ年に特殊詐欺で使われた電話番号のうち約75.5%を、+1や+44などで始まる国際電話番号が占めました。税務署を名乗っているのに、表示された番号が「+81」以外で始まるなら、それだけで出る必要はありません。

自宅や事務所に来た「税務職員」の見極め方

自宅や事務所に「税務署の調査です」と人が来た場合も、確かめる手段があります。国税庁は、職員の種類ごとに携帯している書類を公表しています。

職員の種類必ず携帯しているもの
税務調査の担当質問検査章と、顔写真付きの身分証明書
滞納整理(徴収)の担当徴収職員証票と、顔写真付きの身分証明書
査察などの強制調査裁判官が発付した「臨検・捜索・差押許可状」を呈示する

さらに、現金などを差し押さえた場合には差押目録や差押調書が作られ、その謄本が交付されます。徴収担当の職員が自宅などで現金を受け取るときは、領収証書をその場で渡すことになっています。書類を見せない、控えを渡さないまま現金やカードを持ち帰ろうとする相手は、本物の手続きの形をしていません。

国税庁は、自宅を訪れて帳簿や金庫を見たうえで、現金やカードを持ち去った事例を公表しています。玄関先で証票を見せてもらい、所属と氏名を控えたら、いったん待ってもらって税務署に電話で確かめてください。本物の職員であれば、確認の電話を理由に怒ることはないはずです。

封筒ではなく宅配便で届く「照会文書」

書面の照会にも偽物があります。本物は原則として国税局・税務署・業務センターの名前が印字された封筒で届きます。国税庁が公表した事例では、依頼主を「○○国税局」と手書きしたゆうパックで「過度な節税(租税回避)に対し、深い懸念」などと書いた文書を送り、生命保険の契約内容を聞き出そうとしていました。封筒の形がいつもと違うときは、書かれた連絡先ではなく税務署に直接問い合わせます。

電話を受けたときの手順と、着信を減らす工夫

電話を受けたとき、切った後にすることを順に並べます。

  1. その場で答えない:口座番号・暗証番号・家族構成・資産の話には応じません。「確認して折り返します」と伝えれば十分です。
  2. 所属・氏名・電話番号を聞く:メモを取ります。答えを渋ったり、折り返し先として携帯番号を示したりした場合は、その時点で記録に残しておきます。
  3. 電話を切る:「切らないで」と言われても切って構いません。
  4. 自分で調べた番号にかける:管轄の税務署は、国税庁サイトの「税務署の所在地などを知りたい方」のページで探せます。そのうえで総務課に「この名前の職員から連絡があったか」を尋ねます。国税局の納税者支援調整官も相談先です。
  5. 家族に話す:同じ相手が家族に電話をかけてくることもあるので、内容を共有しておきます。

着信そのものを減らす

警察庁は、固定電話で海外と話す機会がない人に、国際電話の利用休止を勧めています。申し込みは国際電話不取扱受付センターで受け付けています。あわせて、番号表示・非通知拒否のサービスや、防犯機能付きの電話機も選択肢になります。高齢の家族がいる家庭では、先に設定しておくと安心です。

伝えてしまった・渡してしまったときの連絡先

話を合わせてしまった、情報を伝えてしまったと気づいたら、伝えた内容ごとに連絡先が変わります。

  • 口座番号・キャッシュカードの暗証番号:金融機関に連絡し、カードの利用停止と暗証番号の変更を依頼します。
  • ATMで振込をしてしまった:一刻を争うので、相手の口座がある銀行と警察に同時並行で知らせます。口座が止まれば、残高の範囲で被害回復分配金を受け取れる道が残ります(振り込め詐欺救済法)。直後の動き方は還付金詐欺でATM操作をしてしまったときの記事で時系列にまとめています。
  • 訪問者に現金やカードを渡した:迷わず110番に通報し、金融機関にカードの停止を依頼します。
  • 住所・氏名・家族の情報だけ:お金はまだ動いていなくても、別の名目の電話が続く可能性があります。知らない番号には出ない、留守番電話で相手を確かめる、といった対策を続けてください。

いずれの場合も、警察相談専用電話の#9110や、消費者ホットライン188で相談できます。電話を受けた日時、表示された番号、名乗った所属と名前、話した内容をメモにしておくと、相談がスムーズに進みます。SMSをきっかけに電話がかかってくる流れは役所を名乗るSMSと電話を組み合わせた手口で、e-Taxをまねたメールは「税務署からのお知らせ」メールの見分け方で説明しています。

よくある質問

Q. 税務署から電話がかかってくることは本当にありますか?

A. あります。国税庁は、提出された申告書などの内容を本人に確かめるために電話をすることがあると説明しています。ただし、ATMの操作、指定口座への振込、自動音声での納付の催促、アンケート名目の電話は行わないとしています。不審に感じたら相手の所属・氏名・番号を聞いて切り、税務署に自分でかけ直してください。

Q. 「国税局査察部」を名乗る電話で未納があると言われました。

A. 国税庁は「国税局査察部です。税金の未納があります」と切り出して住所や口座番号を聞き出そうとする事例を公表しています。その場で情報を伝えず、電話を切って管轄の税務署に自分で問い合わせてください。本当に未納があれば、そこで確認できます。

Q. 税務職員を名乗る人が家に来ました。本物か確かめる方法は?

A. 税務調査の担当は質問検査章と顔写真付きの身分証明書を、徴収の担当は徴収職員証票と身分証明書を必ず持っています。提示を求め、所属と氏名を控えたうえで、税務署に電話して在籍や訪問の予定を確認してください。現金を受け取る場合は、その場で領収証書が渡されます。

Q. 自動音声で「未払いの税金があります」と流れる電話が来ました。

A. 国税庁は、AIや自動音声による電話で国税の納付を求めることはないと公表しています。ボタンを押したり折り返したりせずに切ってください。着信が続く場合は、番号の着信拒否や国際電話の利用休止も検討できます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。