Xから誘導されたサクラサイトを行政に知らせる|特商法の申出と団体訴訟

Xで見かけた「お金を配ります」「話を聞いてくれる人を探しています」といった投稿や、リプライ欄・DMから外部のサイトに誘導され、ポイント代を払ってしまった。自分のお金を取り戻したいのはもちろん、同じ投稿に引っかかる人をこれ以上増やしたくない、と考える人もいるはずです。

この記事では、個人の返金手続きとは別に用意されている「行政に知らせる」「団体が代わりに動く」制度を説明します。要点は次のとおりです。

  • 特定商取引法60条の申出制度では、誰でも国や都道府県に事業者の問題を知らせ、調査と措置を求められます。ただし、個人のトラブルを解決する制度ではありません。
  • 消費者庁には、特商法違反が疑われる情報を送るオンラインのフォームもあります。
  • 適格消費者団体は不当な勧誘や広告の差止めを、特定適格消費者団体は多数の消費者に代わって被害回復の訴訟を起こせます。
  • 自分の返金(188への相談、支払い方法ごとの手続き、弁護士への依頼)は、これらと並行して進める必要があります。

Xからサクラサイトへ誘導される流れ

国民生活センターが公表している相談事例には、支援金を渡すという内容のメールに返信して出会い系サイトへ案内され、ポイント代を払い続けても支援金は手に入らなかった、というものがあります。消費者庁も、サクラサイトの誘い文句には出会いを求めるもののほか、同情心をあおるもの、お金をあげると利益を持ちかけるものがあると整理しています。

Xでは、こうした誘い文句が次のような形で届くことが考えられます。

  • 「フォローとリポストで◯万円プレゼント」といった投稿から、受け取り手続きとして外部サイトへの登録を求められる
  • 悩みや恋愛についての投稿にリプライが付き、DMに移ったあと、別サイトでのやり取りを持ちかけられる
  • 有名人を思わせるアカウントから「事務所には内緒で話したい」と連絡が来る

どの入口でも、X上のやり取りは無料で、お金を払うのは誘導された先のサイトです。インターネットで申込みを受けて有料のサービスを提供する形なので、そのサイトは通常、特定商取引法の「通信販売」の規制を受けます。この点が、後で説明する申出や差止請求の出発点になります。

特定商取引法60条の「申出制度」とは

特定商取引法60条1項は、何人も、特定商取引の公正や購入者等の利益が害されるおそれがあると認めるときは、主務大臣に申し出て適当な措置をとるよう求めることができると定めています。申出を受けた行政機関は必要な調査を行い、申出の内容が事実と認めるときは、この法律に基づく措置などをとらなければなりません(同条2項)。

申出の要点

  • 申し出られる人:消費者庁の特商法ガイドによれば、直接被害に遭った人に限らず誰でも申し出られます。
  • 書く内容:申出人の氏名・住所、事業者の名称・所在地、取引の種類、ルール違反の具体的な内容などを申出書に記載します。様式は特商法ガイドの「申出制度・情報提供」のページにあります。
  • 提出先:勧誘や契約をした都道府県の範囲で活動する事業者なら都道府県知事、広域で活動する事業者なら消費者庁長官または経済産業局長です。国に出す場合は郵送のほか、PDFにした申出書をメールで送る方法も案内されています。
  • 事前の助言:指定法人の一般財団法人日本産業協会が、申出をしようとする人への指導・助言を行っています。

申出ではできないこと

特商法ガイドのQ&Aは、申出制度は同じような被害の拡大を防ぐための制度で、個人の救済を目的としたものではないと明記しています。調査の状況や結果も、申出人には知らされません。お金を取り戻したい場合は、申出とは別に消費生活センター(188)へ相談する必要があります。

申出書に書く「違反の具体的な内容」の整理例

サクラが疑われるサイトについて申し出るときは、特定商取引法の通信販売の規定と照らし合わせて、気付いた点を具体的に書くと調査の材料になりやすくなります。

気付いた点関係する規定
運営者の名称・住所・電話番号が表示されていない、表示された所在地に会社が見当たらない11条(通信販売の広告の表示事項)
「完全無料」とうたいながら、メッセージを送るたびに課金される12条(誇大広告等の禁止)
申込みの画面で、支払う金額や契約の内容が分かりにくい12条の6(特定申込みを受ける際の表示)
退会の申し出を受け付けない、約束した返金を実行しない14条1項1号(債務の履行拒否・不当な遅延)

事実と推測を分けて書く

申出書では、「サクラだと思う」という推測よりも、「◯月◯日に届いたDMで『登録すれば10万円を受け取れる』と言われた」「登録後に◯回、合計◯円のポイントを買ったが、受け取りの手続きは一度も案内されなかった」のように、日付・発言・金額を並べた事実のほうが調査の手がかりになります。推測を書く場合は、事実の記載と段落を分けておくと読み手に伝わりやすくなります。

X側の記録(投稿のURL、アカウントのID、DMの画面)と、誘導先サイトの画面・規約・支払いの記録をセットにして、「どの投稿から、どのサイトへ、いくら払ったか」が一目で分かるようにまとめておきます。

主務大臣は、通信販売の事業者に指示や業務停止命令を出したとき、その旨を公表しなければなりません(14条3項、15条4項)。過去の処分は特商法ガイドの「執行事例の検索」で調べられるため、誘導先のサイト名や運営会社名で一度検索しておくと、相談のときに話が早く進みます。

情報提供フォームと、消費者安全法にもとづく公表

申出書を作るほどではないが、まず情報を届けたいという場合は、消費者庁の「特定商取引法違反被疑情報提供フォーム」が使えます。フォームの注意事項には、寄せられた情報は法令違反等の調査に活用すること、個別の民事紛争の仲介は受け付けないこと、60条の申出をする場合はフォームではなく申出書の様式で行うことが書かれています。詐欺的な被害に関わる内容と判断された場合、警察当局に情報が提供されることがあるとも明記されています。

また、消費者安全法38条1項は、消費者被害の発生や拡大を防ぐため、内閣総理大臣が消費者の注意を喚起するのに必要な情報を公表すると定めています。消費者庁の「注意喚起」のページからは、この規定にもとづく財産分野の注意喚起の公表ページへ進めます。誘導先のサイト名で公表がないかを確かめておくことも、状況の把握に役立ちます。

情報を寄せても、行政が個別の返金をあっせんするわけではありません。それでも、同じ事業者についての情報が集まることは、処分や公表を判断する材料になります。筆者としては、X上で同じ誘導を何度も見かける場合ほど、自分の相談と並行して情報提供もしておく意味は大きいと考えます。

適格消費者団体の差止めと、特定適格消費者団体の被害回復

消費者庁は消費者団体訴訟制度を、内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者に代わって事業者に対して訴訟などをすることができる制度と説明しています。役割は大きく2つです。

差止請求(適格消費者団体)

適格消費者団体は、事業者が不特定かつ多数の消費者に対して不当な行為を現に行い、または行うおそれがあるとき、その停止や予防を求められます。通信販売については、特定商取引法58条の19が、広告での著しく事実に相違する表示や、申込み画面での不実の表示などを差止めの対象にしています。消費者契約法12条も、不実告知などの不当な勧誘行為を差止めの対象にしています。

被害回復(特定適格消費者団体)

消費者裁判手続特例法は、特定適格消費者団体が、相当多数の消費者に共通する原因で生じた被害について、事業者が金銭の支払義務を負うことの確認を求める訴え(共通義務確認の訴え)を起こせると定めています。対象には、契約上の債務の履行、不当利得、不法行為に基づく損害賠償などの請求が含まれます(同法3条1項)。現行の条文では、一定の要件のもとで慰謝料や、事業者の被用者個人に対する請求も対象になっています。

この手続きは、団体が一段目の訴訟で勝った後、二段目で個々の消費者が債権を届け出る流れです。団体に情報を寄せても、訴訟にするかどうかは団体が判断し、時間もかかります。自分の請求の期限(消費者契約法の取消しは1年、不法行為は3年など)を待ってくれるわけではないため、個別の手続きは止めずに進めてください。

自分の返金のために並行して進めること

  1. 188に相談する:消費生活センターは、事業者とのあいだに入ってあっせんを行うことがあります。個別のトラブル解決を扱う点が、申出制度との違いです。
  2. 支払い方法ごとに動く:カード会社への相談、振込先口座の凍結の依頼、電子マネー発行会社への連絡は、時間がたつほど難しくなります(決済手段別の解説)。
  3. Xの記録を固める:投稿やアカウントは削除されることがあります。投稿のURLとIDを控え、画面を保存しておきます(証拠の残し方)。
  4. 弁護士に相談する:消費者契約法による取消し(解説記事)や不法行為の損害賠償(解説記事)を具体的に進めるなら、弁護士への依頼が選択肢になります。

お金をだまし取られたと感じているなら、警察にも状況を伝えてください(#9110 または最寄りの署)。当サイトの相談予約でも、状況の整理をお手伝いしています。

よくある質問

Q. 特商法の申出をすれば返金されますか?

A. 申出制度は同じような被害の拡大を防ぐための制度で、個人の救済を目的としていません。調査の結果も知らされないため、返金の相談は消費生活センター(188)や弁護士に別に行ってください。

Q. 自分は被害に遭っていませんが、Xで見かけたサクラサイトへの誘導を申し出られますか?

A. 申し出られます。消費者庁の特商法ガイドは、直接被害に遭った人に限らず誰でも申出ができると説明しています。投稿のURLや誘導先サイトの画面など、具体的な情報を添えると調査の材料になりやすくなります。

Q. X(旧Twitter)のアカウントを通報するだけでは足りませんか?

A. 通報でアカウントが停止されることはありますが、誘導先のサイトの運営者には直接届きません。行政への申出や情報提供と組み合わせると、サイト側への対応につながる可能性があります。

Q. 適格消費者団体に連絡すれば、代わりに訴えてもらえますか?

A. 情報提供は受け付けられていますが、差止めや被害回復の訴訟を起こすかどうかは団体が判断します。自分の請求の期限は進み続けるため、個別の相談は並行して進めてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

この記事をシェアして注意を広める

詐欺返金相談ナビの相談前整理事例

サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。

相談前に、被害状況を整理しておきましょう

LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。

LINEでチェックリストを受け取る 登録は無料 / 一般情報の提供を目的としています

参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。