仮想通貨詐欺を金融庁に申告する方法|3つの窓口と申告でできること

先に結論を書きます。金融庁は、だまし取られたお金を取り戻す手続きをする機関ではありません。金融サービス利用者相談室は、個別の取引について「あっせん・仲介・調停を行うことは出来ません」と明記しています。それでも申告には意味があります。寄せられた情報は、無登録業者への警告や金融機関の監督、SNS上の偽広告を削除につなげる取り組み、不正に使われた預金口座の情報提供などに使われるからです。

この記事は、暗号資産の投資話でお金を失った人、勧誘を受けて金融庁に知らせるべきか迷っている人に向けて、金融庁の3つの窓口の使い分け、申告の前にそろえる情報、伝え方の例、申告の後に進む先を順に説明します。返金を目指す場合は、警察や振込先の銀行、弁護士への相談と並行して進めてください。

金融庁の窓口は目的別に3つある

暗号資産がからむ詐欺で使う金融庁の窓口は、次の3つです。電話番号が似ているので、かけ間違えないよう目的で選びます。

窓口向いている場面受付方法
詐欺的な投資に関する相談ダイヤル(2024年6月19日開設)SNSやマッチングアプリで知り合った人、著名人を名乗る人に勧誘され、無登録の業者と暗号資産やFXの取引をした。まだ取引していないが迷っている電話:0570-050588、IP電話なら03-6206-6066(受付は平日10時〜17時)。ウェブは終日
金融サービス利用者相談室登録を受けた暗号資産交換業者とのトラブル、フィッシングによる不正送金など、金融サービス全般電話:0570-016811、IP電話なら03-5251-6811(受付は平日10時〜17時)。音声案内の「5」が暗号資産。ウェブでも受付
SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口(2024年10月1日開設)著名人になりすました広告や投稿をきっかけに勧誘を受けた、被害に遭った入力フォームのみ・24時間。照会や相談には応じない

このほか、金融庁の中にある証券取引等監視委員会も、著しい高利回りをうたう商品や投資詐欺的な資金集めについての情報を受け付けています。こちらは匿名でも情報を出せますが、個別のトラブル処理や調査の依頼には対応せず、調査の有無や結果の問い合わせにも答えない、と説明されています。

申告すると何が起きるか|できることとできないこと

金融庁にできないこと

  • 相手の業者との間に入って返金を交渉すること(あっせん・仲介・調停)
  • 申告者の代わりに業者へ連絡したり、口座の残高を調べて返したりすること
  • 情報受付窓口に出した情報について、その後の対応を個別に回答すること

金融庁が情報を使う場面

  • 論点の整理と他の機関の紹介:相談室の相談員が電話で状況を聞き、どこに何を相談すべきかを整理します。
  • 監督や検査への活用:寄せられた情報は庁内で共有され、金融機関へのヒアリングや検証に使われます。2026年4月から6月の受付状況の公表資料では、活用した情報の例として「無登録営業に関するもの」「暗号資産交換業者における不適切な顧客対応に関するもの」が挙げられています。
  • 不正に使われた口座の情報提供:同じ期間に、預金口座の不正利用に関する情報をもとに85口座分の情報を金融機関と警察当局へ提供したとされています。
  • 無登録業者への警告と名称の公表:無登録で暗号資産交換業を行っている業者には警告書が出され、名称が金融庁のサイトで公表されます。
  • 偽広告の削除:広告の情報受付窓口は、SNS事業者と連携して広告の削除につなげることを目的に設けられました。

つまり、申告は「自分のお金を取り戻す」手続きではなく、「同じ手口の被害を減らす」ための行動です。筆者は、返金をあきらめる前提ではなく、警察や銀行への連絡を先に済ませたうえで、並行して金融庁にも知らせる順番をおすすめします。

数字で見る金融庁への相談

金融庁は相談室の受付状況を3か月ごとに公表しています。2026年4月1日から6月30日までの資料によると、相談室が受け付けた件数は全体で15,418件、そのうち暗号資産に関するものが1,374件(全体の9%)でした。前期の1,466件からはやや減っています。

  • 暗号資産の相談のうち、個別の取引や契約の結果に関するものが991件(72%)
  • 日本暗号資産等取引業協会などの業界団体を紹介した相談が228件
  • 投資商品と暗号資産の相談のうち、詐欺的な投資勧誘に関するものが1,961件、そのうち何らかの被害があったものが1,616件

詐欺的な勧誘の相談の8割あまりが、すでに被害が出てからのものだということになります。お金を送る前に電話していれば防げた相談も含まれているはずで、筆者は「迷った段階でかける」使い方がもっと広まってよいと考えています。相談ダイヤルは、損害が出た人だけでなく、勧誘を受けて不審に思った人や投資を悩んでいる人の相談も受け付けると案内しています。

申告の前にそろえる情報

電話でもウェブでも、次の情報が手元にあると話が早く進みます。すべてそろわなくても相談はできます。

  • 業者やサービスの名前、サイトのURL、アプリの名前
  • 勧誘してきた人のSNSアカウント名やID、最初に接触した日とSNSの種類
  • 誘導されたLINEグループやチャットの名前
  • 日本円を振り込んだ先の銀行名・支店名・口座名義
  • 暗号資産を送った場合は、送金元の取引所名、送金先アドレス、送金日時、数量、トランザクションID(TxID)
  • 出金を断られた理由として言われたこと(税金、保証金、手数料など)

広告の情報受付窓口に出す場合は、入力フォームで必須とされている項目も確認しておきます。氏名と電話番号、被害や勧誘の具体的な内容、SNSの種類、広告を特定する情報(広告ならライブラリIDか広告のURL、投稿ならURL、アカウントならURL)、広告の概要、なりすまされていた著名人の名前、LINEグループなどクローズドなチャットへの誘導があったかどうか、などです。広告は短期間で消えるので、見かけたらすぐにURLとスクリーンショットを残してください。保存のしかたは記録の保存方法が参考になります。

電話で伝えるときの順番と例

相談時間は限られているので、次の順番で話すと要点が伝わります。

  1. いつ、どこで勧誘されたか
  2. どの業者・サイトで、何をしたか
  3. いくら、どの方法で払ったか
  4. 今どうなっているか(出金できない、連絡が取れない、追加の支払いを求められている)
  5. すでに相談した先(警察、消費生活センター、銀行など)
「5月にインスタグラムで知り合った人から暗号資産の運用を勧められました。案内されたサイトで口座を作り、国内の取引所で買った暗号資産を3回に分けて送りました。出金しようとしたら税金として別に支払うよう言われ、止まっています。サイトの業者は金融庁の登録一覧に見当たりません。警察には明日行く予定です。ほかにどこへ知らせればよいでしょうか。」

聞き取りのあと、相談員から他の窓口を案内されることがあります。案内された窓口名と電話番号、相談した日時、対応した担当者の名前も書き留めます。後日ほかの窓口で経緯を話すとき、このメモがそのまま使えます。

登録業者か無登録かで次の相談先が変わる

金融庁の相談室は、相手が登録を受けた暗号資産交換業者かどうかで、次の相談先を分けて案内しています。

相手が登録業者の場合

まず業者の問い合わせ窓口で話し合い、解決しなければ日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)に相談します(電話03-3222-1061、平日9時30分〜17時30分)。ただし協会が扱うのは会員会社とのトラブルに限られます。

相手が無登録業者の場合

無登録の業者は金融庁や財務局の検査・監督の対象外で、JVCEAも利用できません。相談室は、トラブルの解決なら弁護士か消費生活センター、だまされたと考えるなら警察に相談するよう勧めています。業者が登録を受けているかは、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧で確かめられます。見分け方は仮想通貨取引所の詐欺サイトの見分け方、警察へ持っていく記録は警察に被害届を出す方法にまとめました。

日本円を銀行に振り込んでいる場合は、金融庁への申告より先に、振込先の銀行へ連絡してください。相手の口座が凍結されると、残高が振り込め詐欺救済法の手続きで被害者に分けられる道が開けます。

金融庁を名乗る連絡に注意する

被害を申告したあとに「金融庁です。あなたの被害金を返還します」「手続きのために本人確認をします」といった連絡が来たら、なりすましを疑ってください。金融庁は、当庁から直接本人確認を行ったり、現金などの支払いを求めたりすることはないと注意を呼びかけています。金融庁の職員を名乗る人物が動画で投資を勧誘している例も報告されており、金融庁の職員が投資取引を勧めることもない、としています。

警察や弁護士を名乗る「被害回復」の連絡も同じ構図です。相手が名乗った機関には、自分で調べた代表番号からかけ直して確かめます。二次被害の典型的な流れは警察や被害回復を名乗る連絡の見分け方にまとめています。

よくある質問

Q. 仮想通貨詐欺を金融庁に申告すれば、お金は戻ってきますか?

A. 金融庁は個別の取引についてあっせん・仲介・調停を行わないため、申告だけでお金が戻るわけではありません。返金を目指すなら、振込先の銀行、警察、弁護士への相談を並行して進めてください。申告した情報は、警告や監督など被害を減らす取り組みに使われます。

Q. 金融庁への申告は匿名でもできますか?

A. SNS上の偽広告の情報受付窓口では、氏名と電話番号が必須項目になっています。証券取引等監視委員会の情報提供窓口は匿名での情報提供も可能と案内しています。相談室に電話する場合は、名乗らずに一般的な質問をすることもできます。

Q. 申告した後、金融庁から結果の連絡はありますか?

A. 広告の情報受付窓口と証券取引等監視委員会の窓口は、提供された情報のその後について個別に回答しないと明記しています。相談室や相談ダイヤルでは、相談員が電話で論点の整理や他機関の紹介を行います。

Q. 金融庁の職員を名乗る人から「被害金を返す」と連絡が来ました。

A. 金融庁は、当庁から本人確認を行ったり、現金などの支払いを求めたりすることはないと注意喚起しています。手数料や個人情報を求められても応じず、金融庁の代表番号(03-3506-6000)など自分で調べた番号に問い合わせてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。